TikTokがコンテンツ管理改善のため欧州に安全諮問委員会を設置

TikTok(ティックトック)は子どもの安全や、若年層のメンタルヘルスと過激主義などを専門とする外部専門家が参加するSafety Advisory Council(安全諮問委員会)を欧州に設置する。そうした分野でのコンテンツモデレーションに役立てるのが狙いだ。

米国時間3月2日に発表されたこの動きは、イタリアのデータ保護当局による2021年1月の介入を受けてのものだ。イタリアでは、TikTokでの失神チャレンジに参加した少女が窒息死したと現地メディアに報じられた事件を受けて、現地当局がTikTokに年齢を確認できていないユーザーをブロックするよう命じた。

関連記事:「失神チャレンジ」による少女死亡事件でTikTokのイタリア当局への対応に注目

TikTokはまたEU消費者保護当局によって取りまとめられた一連の苦情の対象にもなっていた。当局は2021年2月、子どもの安全に関する懸念を含め、EUの消費者保護とプライバシーの規則に関する数多くの違反を詳細に記した2つのレポートを発表している。

「当社は常に既存の機能と規則をレビューし、安全を最優先とするための大胆な新しい対策を考え出そうとしています」とTikTokは説明し、欧州でプラットフォームの安全性を改善する必要性を肯定的にとらえている。

「諮問委員会には欧州中の研究機関や市民社会のリーダーに参加してもらいます。各委員は当社が直面している課題についてそれぞれ異なる、新鮮な見方を示し、当社のコンテンツモデレーション規則と実行についてアドバイスする際にその特定分野の専門性を提供します。今日当社が抱えている課題を解決する前向きな規則を定めるのをサポートするだけでなく、将来TikTokや当社のコミュニティに影響する新たな問題を特定するのにも力を貸してくれます」。

そうしたアドバイザー機関をTikTokが立ち上げるのは今回が初めてではない。同社は1年前、選挙誤情報の拡散と広範なセキュリティの問題をについて米国の議員から厳しい調査を受けることになった後、米国安全諮問委員会を発表した。セキュリティの問題には、中国企業が所有するTikTokアプリが中国政府の命令で検閲を行っているという告発も含まれた。

しかしTikTokの欧州コンテンツモデレーション諮問組織への最初の被任命者の一覧は、同社の欧州でのフォーカスが子どもの安全と若年層のメンタルヘルス、過激主義、ヘイトスピーチに向けられていることを示しており、これは欧州の議員や当局、市民社会からこれまで最も厳しい目が向けられている主要分野であることを反映している。

TikTokは欧州の諮問委員会に9人を指名した(リストはここ)。さしあたっては、いじめ対策、若年層のメンタルヘルス、デジタルペアレンティング、オンラインでの子どもの性的搾取・虐待、過激主義と脱急進化、偏見と差別、ヘイトクライムの対策の外部専門家に参加してもらう。委員会のメンバーは今後さらに増やす、とTikTokは話している(「将来当社をサポートしてもらうために、より多くの国や異なる専門性を持つメンバー」を加えるとしている)。

TikTokはまた、EUでサービスを展開しているプラットフォーム向けに準備中の汎EU規則にも注意を向けている。

EUの議員たちは最近、デジタルサービスプロバイダーが推進して収益を上げているコンテンツに説明責任を持たせることを目的とする法案を提出した。現在は草案で、EUの共同立法過程を経ることになるDigital Services Act(デジタルサービス法)は、さまざまなプラットフォームが明らかに違法なコンテンツ(ヘイトスピーチや子どもの性的搾取など)を削除するのにどのように対応しなければならないかを定める。

EUのデジタルサービス法は若年層のメンタルヘルス問題など、多岐にわたる害に対応するプラットフォームのための特定の規則を定めることを回避した。それとは対照的に、英国はソーシャルメディアを規制するための計画でそうした問題に対処することを提案している(Online Safety bill、オンライン安全性法)。しかし、計画された法制化はさまざまな方法でデジタルサービスをめぐる説明責任を推進するという意図だ。

関連記事:2021年提出予定の英国オンライン危害法案の注意義務違反への罰金は年間売上高10%

例えば法案には、TikTokが含まれるであろう大手プラットフォームに外部研究者がそのサービスの社会的影響を研究できるようデータを提供することを求める、というものが含まれている。耳目を集める(独立した)研究が、注目を引いているサービスのメンタルヘルス影響を調べることになるというのは想像に難くない。なので、プラットフォームのデータは、例えばユーザーに安全な環境を提供できていないなど、サービス事業者にとってマイナスのPR材料と変わり得る。

監視体制が導入される前に、プラットフォームは先回りして良い位置に付けられるよう、欧州の市民社会への接触を高めるためのインセンティブを増やしている。

【更新】TikTokへの最近の消費者・データ保護苦情を取りまとめた欧州の消費者協会であるBEUC(欧州消費者機構)にTikTokの諮問機関についてのコメントを求めたところ、審議官Ursula Pachl(アルスラ・パクル)氏の名前で次のような声明が送られてきた。「どのようにユーザーを、特に子どもをこれまで以上に保護するのか、専門家からアドバイスを受けるようTikTokに促すことしかできません。第一に取り組むべきTikTokの懸念は、同社が欧州と国内の法令に則るためにあらゆる方策を取るようにすべき、ということです」。

カテゴリー:ネットサービス
タグ:TikTokヨーロッパモデレーション

画像クレジット:Chesnot / Getty Images

原文へ

(文:Natasha Lomas、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。