TikTokの親会社ByteDanceは中国の輸出管理規制に「厳密に従う」と表明

中国政府は、Huawei(ファーウェイ)に対する米国政府のプレッシャーに繰り返し声高に反対している一方で、TikTok(ティクトック)がこのところ米国で困難な状況に陥っていることについては比較的静観している。しかし人気のビデオアプリTikTokの米国事業売却が近づき、中国当局は売却をより複雑なものにする予想外の動きに出た。

米国時間8月28日夜、中国商務部は安全保障貿易管理に人工知能(AI)テクノロジーを含めるためにカテゴリーをアップデートした(中国商務部リリース)。AIはTikTokを含むByteDance(バイトダンス)のプロダクトの要だ。TikTokはカスタマイズされたコンテンツが機械的に表示されることで人気を高めてきた。8月29日、中国国営通信社の新華社通信は、アップデートされたルールはByteDanceに適用されうるという学者Cui Fan(クウィー・ファン)氏の言葉を引用した(新華社通信記事)。クウィー氏は進行中の取引を抱えている企業に対し、「関連する手順を伴う交渉と取引を中止する」ことをアドバイスした。

8月29日夜、TikTokの親会社ByteDanceは新たなテクノロジー輸出ルールに「厳密に従い」、「関連する輸出事業」を管理するという声明を出した。

新たなルールはTikTokのディールを明確にターゲットにしているわけではないが、このタイミングは興味深い。ByteDanceが中国外で最大のマーケットから追い出される期限のわずか数週間前だ。中国の大学で国際ビジネス・経済学の教授であるクウィー氏によると、パーソナライズされたレコメンデーションやAIで動くインターフェーステクノロジーの輸出が新ルールで規制されているため、ByteDanceが進めているTikTok売却は障壁にぶつかる可能性がある。

TikTokの売却は、中国の通商規制の前から技術的な面ですでに複雑なものになっている。The Informationが指摘したように、北京を拠点とするByteDanceのエンジニアやデベロッパーは、TikTokを含む傘下のアプリの全ソフトウェアコードを提供している。これは中国のテック部門で「中央プラットフォーム」として知られる戦略だ。生産性を高め、また余剰のリソースを最小限にするとされていて、Alibaba(アリババ)やTencent(テンセント)の多くの事業の基盤を支えている。そのため、中国の親会社からTikTokを切り離すことでアプリのオペレーションが短期的にはほぼ崩壊する恐れがある。

多くの中国人ネットユーザーが、米国のプレッシャーに降参しているとしてByteDanceのCEO、Zhang Yiming(張一鳴、チャン・イーミン)氏を厳しく非難してきた。米国は国家安全保障上の脅威だとしてTikTok売却を命じた。一部の人は世界で最も価値の大きなスタートアップであるByteDanceの最高責任者を「裏切り者」呼ばわりさえしている。そうした人々はチャン氏をHuaweiの最高責任者Ren Zhengfei(任正非、レン・ジェンフェイ)氏と比較する。任氏の米国による制裁への対応はより攻撃的だった。

中国政府がTikTokの交渉にさらに介入するのかは不透明だ。米国の業界ウォッチャーは、今回のケースがHuaweiのものとは異なると指摘している。Huaweiの5Gテクノロジーは中国が米国と展開する競争の焦点であり、Huaweiは中国国内の製造業で直接・非直接的に多くの雇用を創出してきた。欧米のインターネットにかなり浸透しているとはいえ、ByteDanceは置き換えが可能で、狭いレンジのエリート人材に頼っているソフトウェアを開発している。

TikTokアプリのダメージは、このアプリによって生計を立てているマーケッターからの苦情につながるかもしれない。しかし、トランプ大統領のWeChatとの取引禁止命令で見られる企業抵抗のようなレベルとはおそらくならないだろう。WeChatの件では、Apple(アップル)、Walmart(ウォルマート)、Disney(ディズニー)がホワイトハウスと協議している。

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画像クレジット:Zhang Yiming, founder of Beijing ByteDance Technology Co. Photographer: Giulia Marchi/Bloomberg via Getty Image

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(翻訳:Mizoguchi

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TechCrunch Japan

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