Twitterの政治広告全面禁止は正しいだけに猛攻撃を覚悟せよ

Twitter(ツイッター)の創設者でCEOのJack Dorsey(ジャック・ドーシー)氏は突如(とはいえ、タイミング的には偶然というわけではなく)、witter上での政治広告を間もなく全面的に禁止すると発表した。これは正しい行動だが、さまざまな理由から相当な苦難を味わうことになる。テクノロジーと政治の世界の常として、善いことは罰せられるのだ。

政治広告やアストロターフィング(一般利用者を装って政治的な宣伝活動を行うこと)などの悪役は、国を後ろ盾にするなどしてインターネットを通じて米国の選挙への介入を継続を、またこれから始めようと企んでいる。こうした広告の完全撤廃は、手荒ではあるがわかりやすい対策だ。さまざまなオンラインプラットフォームがターゲットを絞った対策を試みてきたが、ほとんど成果が上がらなかった。それを思えば、現時点で実施できる現実的な手段はこれしかない。

「料金を支払って嘘の情報を流す行為の禁止は、企業にできるもっとも基本的で倫理歴な判断」と、民主党ニューヨーク州選出のアレクサンドリア・オカシオ・コルテス下院議員は、そのニュースの後にツイートしている。「企業が有料の政治広告をファクトチェックできない、またはしないなら政治広告は全面的に禁止すべき」と。

Facebookが政治広告や政治的コンテンツの制限を避けている理由のひとつには、それを行うことで、適切か不適切かを判断する、さらには無数の文化、言語、出来事にまたがり形成されるフラクタル構造の複雑な環境での実質的な裁定者になってしまうことがある。だが、ザッカーバーグ氏に泣きついても始まらない。これは彼自身が生み出したモンスターなのだ。私が進言したときに引退しておくべきだったのだ。
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しかしTwitterの、メスではなく大鉈を振るうという判断では、その本質的な困難を取り除くことはできない。そのため同社は、別の種類の懲罰に身を晒すことになった。なぜなら、何が適切かを判断する裁定者とはならず、何が政治的かを決める裁定者となったからだ。

これは、Facebookの課題よりもやや軽めだが、Twitterはそれが正しかったとしても強信的な共和党支持者や偏見による非難からは逃れられない。

たとえば、政治広告を禁止するという抜本的な判断は実に単刀直入で無党派的に見える。現職議員は従来型メディアへの依存度が高く、進歩主義者は若くてソーシャルメディアを上手に使いこなす傾向にある。ならばこれは、左派の候補者のツールを奪うことにならないか?だが、豊富な資金を持つ現職議員もソーシャルメディアへの出費を増やしているため、今の傾向を変える手段と考えることもできないか?誰がどのようにその影響を受けるのかは明確ではない。選挙運動や政治評論家の、終わりのない口論の種となるだろう。ちなみにトランプ大統領の再選をかけたキャンペーンでは「またしても保守派を黙らせるための試み」と断言している

「有権者登録に賛成する広告は今でも可能」とドーシー氏がすぐさま発表したことを考えてみよう。有権者登録とは、無党派的なよい落とし所ではないか?未登録の有権者は、さまざまな理由によりリベラル側に偏っているため、実際、保守派政治家の多くが一貫して反対している。従ってこれは、共和党支持の行為と考えることができる。

非公式な指針は存在するものの、Twitterは数週間以内に公式なものを打ち出すという。だが、満足のいく指針になるとはとうてい思えない。産業団体は、政府の補助金のおかげで新しい工場がうまく行っているとツイートできるのか?人権擁護団体は、国境での深刻な状況についてツイートできるのか?報道機関は選挙に関するツイートを出せるのか?特定の候補者を紹介するのはどうか?何かの問題に対する論評はどうか?

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これはいわば、政治の中の世界をパトロールするか、その境界線をパトロールするかの違いであり、明確化できるだろう。しかしそこにはまったく別の種類のトラブルがある。Twitterは苦痛の世界に足を踏み入れてしまった。

しかし、少なくとも事態は前進している。たとえそれが強硬手段であり、肝心な場所を強打するとしても(Twitterがそれを気にしていないというわけではない)、正しい判断だ。Facebookが臆病にも保身を貫いているのに対して、その決断は素晴らしい。Twitterが失敗したとしても、少なくとも挑戦したことを誇れる。

最後に、これがユーザーと有権者にとって、よい選択になったと言っておくべきだろう。巨大ハイテク企業や大手メディアが次々とユーザーいじめの決断を下すなかでの、稀有な例だ。大統領選挙の年を目前に、私たちは良質なニュースを入手して、利用できる。

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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