米国時間11月4日の取引終了後、米国ライドシェアリングの巨人、Uber(ウーバー)が第3四半期の決算を報告した。注目すべきは、長年利益を上げていなかった同社が、純損失は未だに20億ドル(約2268億円)を超えているにも関わらず、調整後EBITDA(大きく修正された利益指標)800万ドル(約9億円)の利益をひねり出したことだ。
調整後利益のニュースは、Uberの国内ライバルであるLyft(リフト)が、最近やはりなんとか利益を上げたことを報告した数日後のことだった。第3四半期、Uberの総取扱高(同社プラットフォーム上を流れたすべての商品、サービスの総額)は231億ドル(約2兆6199億円)で対前年比57%増だった。そこから生まれた売上48億ドル(約5444億円)は対前年比72%増だった。そしてその売上はUberに純損失24億ドル(約2722億円)をもたらした。この数字は、同社が保有する他社株式の再評価による「20億ドルの純損失」を含んでいる。
同社の1株当たり調整前純損失1.28ドルは、前年同期の0.62ドルの2倍強だった。
アナリストらは、1株あたり損失0.33ドル、売上442億ドル(約5兆129億円)と予測していた。同社の株価は時間外取引で5%前後下落した。
部門ごとの実績に入る前にいっておくと、Uberは次の第4四半期の総取扱高を250億~260億ドル(約2兆8353億〜2兆9488億円)、その結果の調整後EBITDA利益を2500万~7500万ドル(約28億〜85億円)と予測している。Uberほどの規模と歴史をもつ会社が、GAAP純利益のような成熟企業の数値ではなく、いまだに調整後EBITDAのような子どもだましの指標を使っていることは、普通なら嘲笑の対象だ。しかし、Uberは投資家に対し、2021年修正後利益の境界値を越えるべく必死に努力すると長年言ってきただけに、このガイダンスは注目に値する。
部門別実績
全体を見渡すと、ここ数年Uberのフードデリバリー事業の総取引高は、同社のライドシェアリング事業よりもはるかに大きい。実際、そろそろUberをタクシーアプリよりもフードデリバリー会社と考えるべき時かもしれない。
それはともかく、同社の部門別成績を総取扱高から見てみよう。
最近同社のライドシェアリング事業がフードデリバリー事業よりも早く成長していることは注目すべきだが、これにはわけがある。Uber Eats(ウーバーイーツ)がパンデミックの最中に雑草のように伸びたのに対し、人間の移動は人々がステイホーム期間中激減した。COVID(新型コロナウイルス感染症)の勢いが一部の地域で弱まり始めている今、状態は戻りつつある。
Uberが乗車よりも食べ物で多く収益を上げていることを踏まえ、上記の総取扱高から下記の売上が生まれていることに注目して欲しい。
タクシーサービスとオンデマンド食品配達の収益がほぼ同じであること、貨物輸送事業が同社の事業全体の中で意味のある位置を占めるだけの収益を上げていることはいずれも注目に値する。
次に、各グループの利益を、実際には調整後EBITDAだが、見てみよう。
表からわかるように、Uberはフード事業をほぼ採算水準に持ち込むことに成功した。これは、1年前の同サービスの位置づけと比べて大きな前進だ。そしてUberのライドシェアリング事業の利益は、同社の調整後事業経費をほぼ相殺している。全体では、Uberは調整後の黒字につま先を届かせ、上述のように調整後EIBTDA、800万ドルを達成した。
しかし、正直なところ「本当に」印象的なのは、Uberが調整後EBITDAの数値をわずか1年でここまで改善したことだ。
しかし、すべての費用、諸経費を含めると、UberのGAAP経常損益はマイナス5億7200万ドル(約649億円)になる。そこに利息費用その他の経費を算入すると、四半期の損失は24億4000万ドル(約2767億円)、毎月8億ドル(約907億円)に上る。Uberの経常損失とGAAP損失の相違を生んでいるのはなにか? 投資の価値下落だ。会社は次のように述べている。
2021年9月30日までの3カ月および9カ月の債券および株式の未実現損失については、Didi(ディディ)への投資によるそれぞれ32億ドル(約3629億円)および17億ドル(約1928億円)の主な未実現純損失を、2021年第3四半期中に実現したZomato(ゾマト)への投資の未実現利益9億4000万ドル(約1066億円)、Aurora(オーロラ)への投資によるそれぞれ1億200万ドル(約116億円)および5億7300万ドル(約650億円)の未実現利益、および公正価値オプションの下で計上されたその他の証券投資によるそれぞれ7300万ドル(約83億円)および5600万ドル(約64億円)の未実現純利益が一部相殺しています。
まあ簡単に言えば、中国政府のDidiへの介入によって、Uberの純利益は悪い方へ行き着いたということだ。
要約すると、Uberは今も不採算だが、パンデミックから立ち直りつつあり、少なくとも調整後利益はなんとか達成した。次は真の損益分岐点に達するかどうかに注目だ。
画像クレジット:NurPhoto / Getty Images
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(文:Alex Wilhelm、翻訳:Nob Takahashi / facebook )