VCがいま新規事業に出資することはないが、1カ月後には何かが変わるかもしれない

法律事務所のFenwick & Westは米国時間4月9日、ベンチャーキャピタル業界の最新動向を把握するために、Eniac Ventures創設者でジェネラルパートナーのHadley Harris(ハドリー・ハリス)氏、Primary Venturesの共同創設者でジェネラルパートナーのBrad Svrluga(ブラッド・スヴルーガ)氏、GreycroftのパートナーEllie Wheeler(エリー・ウィーラー)氏の3人とバーチャル座談会を開催した。いずれもニューヨークで活動する投資家である。

彼らは皆、新型コロナウィルスによるロックダウンの影響を受けているが、個々の状況は当然ながら三者三様である。しかし、仕事の話になると全員が口をそろえて「現在の状況でVCが新規事業に出資することはない、ということを起業家たちに認識してほしい」と言う。

プライベートでは、ウィーラー氏は第一子の出産を控えており、ハリス氏は奥さんとのランチを毎日楽しんでいる。スヴルーガ氏は「こんなに毎日連続して子どもたちと食事をしたのは本当に久しぶりだ。もう10年以上こんなことはなかった」と話す(彼は今の状況をご褒美だと思っている)。

仕事面では、プライベートとは反対に苦戦を強いられており、3人ともこの数週間忙殺されている。どのスタートアップが一番危ういか、この状況でも救済する価値のあるスタートアップはどれか、予想外のビジネスチャンスに恵まれる可能性のあるスタートアップはどれかといったことを検討し、それぞれのケースに対応する方法を考える必要があるからだ。

あまりにも忙しすぎて、いま初めて出資を募ってきた起業家がいたとしても、誰も小切手を切る余裕などないだろう。実際にハリス氏は、この危機の中でも起業家たちの売り込みに対して門戸を開いていると話す投資家たちに対して異議を唱える。「多くのVCがこの状況の中でも出資の申し込みを受け付けていると話していることは知っている。しかし私は、Twitterでもかなりズバッと発言したように、今のような状況で出資を続けられるなんていうのはほとんどデタラメだし、起業家たちに間違ったメッセージを送ることになると思う」とハリス氏は語る。

「現時点でVC業界には新規投資案件を扱うための余力はまったくない。既存の投資先企業に対してやるべきことが山積みだからだ。余力がないことが今一番の足かせだ。資金の問題ではない」。

余力が回復したらどうなるのだろうか?そうなっても、直接会社に出向くことなくオンラインのみで起業家とやり取りすることが、出資判断において的確、正常、あるいは有効な方法だと考えているVCなどないという点は覚えておかねばならない。

「豊富な実績を持つ一部のアクセラレータやシードファンドが多数のスタートアップに対して、何らかの方法や形で短期的にリモートでの出資判断を行っている例はあるが、直接会ったことがない人物に対する出資を検討するなど、賢い方法とは思えない」とウィーラー氏は言う。

「出資先の調査で最初に行うことはいつも決まっている。何も難しいことではない。スタートアップのチームと会い、その会社に出向き、こちらのチームにも会ってもらう。これをオンラインでやるのは無理がある。正式な場あるいは仕事外のカジュアルな場で一緒に時間を過ごすことから得られる情報をオンラインで得られるとはとても思えない。そこをわかっていない人が多い。現在の状況が長引くほど、その点を認識する必要がある」とウィーラー氏。

いずれにしても、今の状況で何をVCに売り込めばいいのか。3人とも、新型コロナウィルスによって一変した世界とあまり関連のない分野にはほとんど興味がない。「例えば、今は実店舗ビジネスについて新しいアイデアを提案する時期ではない」とハリス氏は言う。ウィーラー氏は別の視点から、この数週間で多くの人が「分散型チームとリモートワークは思っていたよりも実行可能かつ持続可能である」と気づいたようだと指摘し、Greycroftは引き続きこうした環境を実現するソフトウェアに注目していることを示唆した。

Primary Venturesも、よりシームレスなリモートワークを実現するソフトウェアに注目しているとスヴルーガ氏は言う。在宅勤務については「当社の18人の社員でしばらく行ってみたら自然に受け入れられた」と同氏。

必然的な流れとして、3人はダウンサイジングについて、この座談会のモデレータであるEvan Bienstock(エヴァン・ビエンストック)氏から質問を受けた。この質問については3人とも一様に、スタートアップが今すぐにランウェイを引き伸ばすには、ダウンサイジングはほぼ不可避だと指摘した。「最悪だよ。今、人々は職を失っている。(新しい事業を育てるのに最適な環境だった)60日前と同じ組織でチームの運営を続けるなんて不可能だ」とスヴルーガ氏。

3人はまた、人員削減を余儀なくされている管理部門に対するアドバイスについても話し合った。そこでは、2回目を行わずに済むように最初の人員削減で思い切って切るべきだという意見で一致した。

一緒にやってきた人たちを誰も好んで切りたいとは思わないが、「『しまった。人員カットをやり過ぎた』と言ったCEOに会ったことは今までに一度もない」と、自身も二度の不景気を経験したことのあるスヴルーガ氏は言う。彼の知っているCEOの「少なくとも30%」は、企業文化も守りながら事業を保護できる状態まで人員削減を行えていないと認めたという。

「二度目の人員カットはもっと大変になる。大なたを振るうことになるのは二度目のレイオフだ」とウィーラー氏は付け加えた。

今後については、3人とも「既存の投資先がレイオフ、バーンレート、ランウェイ予測に関する業務がひと段落したら、起業家の新しいアイデアを受け入れられるようになるだろう。それに加えて、新しい経済対策をスタートアップが最大限に活用できるようにサポートしていく」と答えた。

それがどのくらい先になるのかについては、「1カ月後にはこの混乱も少し落ち着いているかもしれない」とウィーラー氏とスヴルーガ氏は指摘する。「起業家たちも、4週間くらいあれば自分たちが抱えているさまざまな問題点を調整するために必要な時間を確保できるはずだ」。

ハリス氏も同じ意見だ。「少しずつやっていくことになるだろう。来週どうなるかはわからないが、1か月経ったらぜひ連絡して欲しい。新規出資を再開できる状態かどうか伝えるよ」。

画像クレジット:Getty Images

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(翻訳: Dragonfly)

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TechCrunch Japan

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