接続可能な無料の公衆WiFiを探して自動で接続・認証してくれる「タウンWiFi」は、スマホの通信量を削減して、通信キャリアの速度制限を気にせずにネットが利用できるようになるアプリだ。
2016年5月にリリースされ、2016年11月に開催されたイベント「TechCrunch Tokyo 2016」のスタートアップバトルでは審査員特別賞を受賞したこのWiFi自動接続アプリは、2018年4月現在、ダウンロード数が250万以上となった。現在、国内外200万以上のWiFiスポットにログインが可能で、日本以外では、韓国、アメリカ、台湾、香港、マカオでサービスを展開している。
アプリを運営するタウンWiFiは4月4日、総額2.5億円の資金調達実施を発表した。第三者割当増資はセプテーニ・ホールディングス、電通、日本アジアグループ、ベクトル、千葉功太郎氏などを引受先として行われた。そして既存株主のインキュベイトファンドからも新たに追加増資を受けている。
同社は資金調達と同時に、電通および日本アジアグループ傘下の国際航業とそれぞれ業務提携契約を締結した。提携により、WiFiオーナーのマネタイズを実現するマーケティングツール開発に取り組んでいく。
タウンWiFi代表取締役の荻田剛大氏は「世界中のWiFiに自動的につながるサービスを目指そうとしたときに、ネックとなるのが、小売店などのオーナーがWiFi設置への意欲が湧かないこと。月額1000円、1500円と通信費もかかり、『インバウンド需要で集客ができる』などと言われても、設置効果に実感がないのが実情だ。そこで、WiFiを活用したマーケティングツールを用意して、店舗への集客の仕組みを作ろうと考えた。その仕組みづくりのパートナーとして、今回2社との提携に至った」と提携の目的について説明する。
電通には、位置情報を活用した広告プラットフォームに、WiFiでの端末の接続履歴など、タウンWiFiが収集する情報を提供して連携。ユーザーが小売店などに来店したときの接続状況を検知し、来店頻度などによるセグメントで広告を配信できるようなサービスを開発し、より効率的な集客につなげていく。
国際航業は、地理情報データを使った出店コンサルティングや、ポスティングチラシなど広告の配布プランの支援などを行っているが、今までは静的な情報を元にサービスを提供してきた。提携により、ユーザーの現在位置での分布や移動経路など、タウンWiFiがリアルタイムで集計する動的なユーザー情報に基づき、小売店向けの新しい商圏分析などのマーケティングツールを共同で開発していく。
調達資金は、ユーザー獲得のためのマーケティングに使うと荻田氏は話している。ユーザーの行動データを増やすことで、WiFiオーナーがよりWiFiを使ったマーケティングをやりやすくして、WiFi設置数を増やし、日本のWiFi環境をさらに良くしたいとの考えだ。
また、これまで接続可能なWiFiを拡大する際、一つ一つ人力で調査していたWiFiの情報収集と解析をAIで実現するシステム「WiFi認証AI」の開発も加速する。
荻田氏は「我々は通信サービスだと考えている。WiFiをアグリゲートして、世界中のどこでもネットが使える環境を実現したい」と語る。
タウンWiFiでは近々、世界30カ国のWiFiサービスに対応する予定だということだ。荻田氏は「現地のユーザーもネットが使えて、旅行者も現地SIMがなくてもWiFiでネットを利用できる、というようなグローバル通信サービスを目指す」として、「その実現には、WiFiを設置してもらうためのモチベーションを上げる仕組みが必要。他の国でも、WiFiオーナーの集客につながるマーケティングツールは提供していくつもりだ」と話している。