本日(現地時間4/18)行われたF8カンファレンスで、FacebookはWorkplace by Facebookのさまざまなアップデートに関する発表を行った。数々の新たなパートナーシップやボットの導入などが含まれていた発表内容からは、大企業のニーズを満たすために成長を続けるWorkplaceの様子がうかがえた。
Workplaceは、Facebookのサービスをビジネスの世界に応用するという試みとして、昨年の秋にローンチされた。しかし、消費者とは違う法人顧客のニーズを満たすためには、他社製のソフトともシームレスに連携できなければならない。Workplaceの主要なライバルのひとつであるSlackのチームは、当初からその重要性を理解しており、他のソフトとの連携を意識しつつSlackの開発を行った。
ファイル共有ツールとの連携やボットの導入、コンプライアンス・ガバナンスツールの統合など、本日発表されたアップデートの内容を見ると、FacebookがWorkplaceをSlackと同じレベルの統合システムに進化させようとしているのがわかる。Workplace担当VPのJulien Codorniouは、他社製のツールとの連携はWorkplaceの開発の初期段階から検討されていたと言う。
「コミュニケーション手段、そしてさまざまなツールを見つけるためのディスカバリ・プラットフォームとしてのWorkplaceという構想は当初からありました」と彼は語った。「私たちはWorkplaceを全てを繋げるアプリにしようとしているのです」
ファイルサービスとの連携
まず、FacebookはBox、Microsoft、Quip(Salesforce)の3社とのサービス連携を発表した。これにより、今後WorkplaceのユーザーがFacebookグループでファイルを共有すると、リンクの代わりにファイルのサムネイルが表示され、それをクリックすると直接ファイルの保存先に飛び、ファイルの編集・コメント付けができるようになる。
Quipの共同ファウンダーでCEOを務めるBret Taylorは、異なるサービス間の連携は企業にとってますます重要になってきていると話す。ちなみに、Quipはプロダクティビティ・ソフトウェアを開発している企業で、昨年夏にSalesforceに7億5000万ドルで買収された。
「クラウドソフトに関する問題のひとつは、社内で使うソフトの数が急増するということです。これが、データの置き場や各ファイルへのアクセス方法が分からなくなるといった(問題を)助長しています。(各サービス)がシームレスに連携できるようになれば、ユーザーはさまざまソフトを行ったり来たりせずに仕事を進められるようになります」とTaylorは説明する。
これはWorkplaceに限ったことではない。Salesforce/Quipも、Workplaceの競合にあたるソフトに似たような連携機能を組み込んでいるが、顧客がWorkplaceを使っているのを見て、歩み寄るしかないと判断したとTaylorは言う。「結局のところ、自分たちのソフトが顧客の使っているツールと連携できなければ、顧客がいなくなるだけです」
ボットの導入
さらにFacebookは、Workplace上のMessengerとグループチャットにボットを導入することを決めた。これでWorkplace上でも、ユーザーはSlackと同じように強力なボットの力を借りられるようになる。例えば、機材が故障したときに@repairbotを呼び出せば、ボットがその機材を修理する人を探し出してくれる。ボットはユーザーのリクエスト内容を理解できるほか、手が空いている機材の担当者を特定し、その人の名前をユーザーに送り返すことまでできるのだ。
メッセージの解読・送信、アクションの実行という機能の組み合わせは大変強力で、単調なタスクであれば、ボットの方が人間よりも速く片付けられるかもしれない。これらのボットは、1対1のMessengerだけでなく、グループチャットにも対応している。
「なぜここまでカスタムボットの導入に私たちが興奮しているかというと、Facebookには日々のタスクの手助けをするためのボットが100種類以上も存在するからです」とCodorniouは話す。
Facebookはボットの導入にあたり、Converse、PullString、The Bot Platform、kore.ai、Avaamoを含む、多数のボットプラットフォームとタッグを組んでいる。
エンタープライズ級のコンプライアンスツール
Facebookのような企業がエンタープライズ向け市場に参入する際の大きな問題のひとつが、既存のコンプライアンス・ガバナンスシステムとのリンクだ。これができなければ、大企業のIT・セキュリティ担当者の信頼を勝ち取るのは極めて難しい。というのも彼らは、消費者向けサービスとして有名なFacebookのツールは信じられないと思い込んでいるかもしれないのだ。
Facebookはこのことに気づいていたようだが、自分たちで専用のツールを開発する代わりに、既にこの分野で名が知られている企業とパートナーシップを結ぶことに決めた。これは賢い選択だと言える。
そもそもWorkplaceのようなシステムのことを信用していない可能性のある大企業のIT担当者も、Facebookが開発したものよりは、よく知られた企業のツールを使う方が安心するだろう(将来的にFacebookが自前のツールを開発するかどうかは別として)。
コンプライアンス周りのパートナー企業には、CSDiscoやNetskope、Smarsh、Skyhighなどが含まれている。
昨年10月にローンチされたばかりのWorkspaceだが、Facebookによれば、既に1万4000社が同システムを利用しており、作成されたグループの数は40万を超えるという。ちなみに、Slackが発表したDAUの数は500万人だった。
今回の発表内容は全て、Workplaceをビジネス環境に馴染みやすくすると共に、同システムに競合のSlackと張り合えるような機能を盛り込むためのものだった。しかしこれは同時に、法人顧客のニーズを満たすためには、ツールを一式揃え、他サービスとの連携や他社とのパートナーシップにも力を入れなければならないということを、Facebookが認めたことの表れでもある。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)