WWWの父ティム・バーナーズ=リー氏のスタートアップ「Inrupt」が約34.2億円以上の資金調達に向け交渉中

Tim Berners-Lee(ティム・バーナーズ=リー)氏は「world wide web」すなわち今日のウェブのスタンダードを30年前に作り、その後、数え切れないほど多数の企業が人間の想像力を超えたスケールで栄えるための道を敷いた。彼の新しいベンチャーはInruptといい、それらの企業の多くが作り出した混乱を収拾することを目指している。そしてその資金は、個人やエンジェルではなくマーケットから得ている。

2人の詳しい筋と私が手に入れた投資家向けプレゼンコンテンツによると、Inruptはひと握りの投資家たちとの協議により、投資前評価額1億4000万ドル(約159億5000万円)で3000万ドル(約34億2000万円)から5000万ドル(約57億円)の資金を調達した。そのシリーズAのラウンドはまだ完了していないため条件が変わることもありえる、と周辺の人たちは未了の投資ラウンドについて、匿名を条件に語ってくれた。

Inruptの広報担当者は無言だ。

Akamai TechnologiesやGlasswing Venturesなどを投資家とする同社は、ユーザーに自分のデータのコントロールを与えるプラットフォームを作ることによって「インターネットを一から作り直す」ことを試みる。Inruptが作ったプラットフォームでは、ユーザーが自分の個人データをPOD(Personal Online Datastores)と呼ばれるものに保存する。同社の顧客には、政府機関や大企業がいる。

「政府とエンタープライズはユーザーデータの管理を支えたいと願っているが、そのためのプラットフォームがない。企業は消費者データに、必ずしもそれをどこかに保存せずにアクセスしたいと思っているが、これに関しても、そのためのグローバルでオープンなプロトコルがない」と投資家向けプレゼン資料にはある。

続けて「私たちが現在作っている新しいプラットフォームは、世界の全人口に自分のデータに対するコントロールを与え、政府にはデータを安全に保存するためのプログラム与え、そして企業には危険や悪用のおそれなく容易にデータにアクセスできる能力を与える」とある。そしてそのプロダクトは、Solidと呼ばれる。

同じく投資家への売り込みでInruptは、その対象市場は「データマーケットの全体」である、という。そのために同社は、クレジットカードの処理ならVisa、DNSのスタンダードを商用化したVerisignなどの、企業の中核的インフラストラクチャをエミュレートすることを試みている。

同社はすでに、スウェーデンやアルゼンチン、バスクなどの政府と契約を交わしている。これらのパートナーシップは、まだ報道されていない。同社の2020年の売上は22万5000ドル(約2560万円)、2021年9月の売上は20万ドル(約2280万円)となっている。これまた出典は投資家向け売り込み資料だ。

また「Inruptの経営チームと取締役会は、企業が究極の完全無欠性と、透明性と、最高度の倫理とプライバシースタンダードを確保できるためのガバナンスシステムにコミットしている」という。

原文へ

画像クレジット:Pedro Fiúza/NurPhoto/Getty Images

(文:Manish Singh、翻訳:Hiroshi Iwatani)

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。