Xestoの3D足型採寸アプリがネットショップで靴を買う不安を解消

ネットショップで靴を買うとき、頭を悩ませるのはサイズだ。足型採寸に特化したスタートアップがこの不安を解消してくれるのをずっと前から待ち望んでいたのだが、ここにきて同時に2つ登場した。1つは、ブラックフライデーのセールに間に合わせる形で本日ローンチされたXesto(ゼスト)だ。ゼストは、先日取り上げたもう1つのNeatsy(ニーツィー)と同様、iPhoneのTrueDepth(トゥルーデプス)カメラを利用して3D足型採寸を行い、ユーザーに最適なサイズを提案するアプリを提供している。

カナダ発のスタートアップであるゼストだが、これまでずっと「足」について研究してきたわけではない。ゼストのCEOで共同創業者のSophie Howe(ソフィー・ハウ)氏は、母校であるトロント大学との長年にわたる共同研究を経て、2015年にゼストを創業したが、当初の目的はヒューマンコンピュータインタラクションの分野におけるビジネスアイデアについて研究することだった(ちなみに、もう一方の創業者で主任研究員のAfiny Akdemir(アフィニ・アクデミル)氏も同大学で数学の博士課程を専攻中である)。

しかし、2017年に3Dカメラを搭載したiPhone XがApple(アップル)から発売された直後に、ゼストはスマホを使った採寸アプリの開発に移行した、とハウ氏は語る。以降、iPhoneの後継モデルにも3Dセンサーが搭載され、3Dカメラを使えるiOSユーザーがさらに増えた。いくつものスタートアップがバーチャルな試着体験に関わるビジネスチャンスを探っているのは、こうした動向が背景にある。

「これだ!とひらめいたのは今年の夏です。私のボーイフレンドがネットショップで素敵な靴を見つけてくれたことがきっかけでした。すごくお得な割引価格で販売されていて、彼は私にプレゼントしようとしてくれたんですが、私の足のサイズがわからなかったんです。彼は、私がそのブランドの靴を持っていないことも知っていたので、私のクローゼットで同じブランドの靴を見つけてサイズを確認することもできませんでした」とハウ氏は語り始めた。「そのとき、そういえば誰かに靴をプレゼントすることはあまりないな、と気づきました。相手のサイズに合うものを選ぶのが本当に難しく、できればギフトを返品したり交換したりしたくないと誰もが思っているからです。私も以前、彼のために靴を買おうとしたときは、結局彼に電話しなければならなかったので、サプライズが台無しになりました。同じような経験をしたことがある人がほかにもいると思います。友人と話していてわかったのは、皆がこの機能を無意識のうちに望んでいたということです。靴は、クローゼットの中にあるどのアイテムよりも個人の思い入れが強いアイテムですが、ついにそれをギフトとして誰かに贈れるようになったのです!」。

ハウ氏は、TechCrunchの記者である筆者宛てにダイレクトメッセージでゼストの宣伝メールを送信してきたのだが、そのメールには、ゼストの3D足型採寸テクノロジーはニーツィーのものよりも正確であるという、目を引く主張が書かれていた。その主張の裏付けとして、ゼストのアプリで生成したハウ氏の足の3Dスキャン画像とニーツィーのサイズ測定とを比較したものがメールに添付されていた(ハウ氏が送信した文面:「当社の採寸誤差は1.5ミリメートル未満です。ニーツィーの測定値を実サイズと比較してみると約1.5センチメートルの誤差がありました」)。

ゼストがニーツィーと大きく違う別の点は、ゼストが靴の販売を手がけていないことである。また、対象をスニーカーに絞らず、あらゆるタイプの靴を視野に入れている。3D足型採寸によって、対象の足にぴったりフィットするサイズ選びのサポートを提供するというコンセプトなのだ。

今のところ、ゼストのアプリは3D足型採寸のプロセスと生成される3D足型モデルに力を入れている。これによりユーザーが自分の足を「3Dポイントクラウドビュー」という写真のようにリアルなビューで確認できるようになったほか、精度の高い採寸も実現した。

また、3D採寸データを共有できる便利な機能が備わっているため、例えば、3Dセンサーが搭載されたiPhoneを持っていない人は、友人のiPhoneを借りて自分の足をスキャンしスキャンデータを入手できる。

ハウ氏によれば、共有機能を追加した主な理由は、適切なサイズの靴をギフトとして購入したい消費者をサポートするためだ。「グループ購入に便利なように」1つのアカウントで複数の人の足型プロフィールを作成・保存できるようにしているという。

ハウ氏は次のように説明する。「ゼストは、自分用に靴を[オンラインで]購入する場合と、他の人のために靴を買う場合という、2つの状況へのソリューションを提供しています。1つ目の問題は、靴をオンラインで購入する場合、各ブランドやモデルのサイズ感がわからないということです。同じブランドの靴を購入したことがない場合はサイズ選択の判断材料がかなり限られるため、購入はイチかバチかの賭けになります。たいていは、それぞれのブランドで自分に合うサイズを見つける必要があります」。

「2つ目の問題は、靴を購入するのは自分のためばかりではないという点です。そこで当社は、足型プロフィールを共有することによって、ギフト購入や(同居している家族や離れて暮らす家族のための)家族購入ができるようにしました」。

ゼストのアプリは、ユーザーの足の採寸値(誤差は1.5ミリメートル未満)と、各ブランドが公式に出しているサイズガイドラインを比較照合して、適切なサイズを提案してくれる。現時点で150以上のブランドに対応しているということだ。

ハウ氏は、この提案機能に顧客からのフィードバックを反映させていく予定だという。提案された靴をユーザーが実際に履いてみて、期待していたサイズよりも大きいと感じたのか、あるいは小さいと感じたのかを知るためにオンラインレビューを分析し、採寸精度を向上させていく考えだ。

ハウ氏は次のように述べている。「ゼストのアプリでは、3Dスキャンで足型を採寸することによってサイズに関する不安を取り除き、測定値を各ブランドのサイズ表記(または、入手できる場合は靴型)に関連付けています。そして、各ブランドのサイズガイドと顧客からのフィードバックに基づいてサイズを提案します。現時点で150以上のブランドに対応しており、対応可能なブランドやモデルを随時追加しています。なお、(当社がすべてのデータを確実に収集し終えるまでは)お手数ですがユーザーがご自分でレビューを確認し、サイズを上げる必要があるかどうかご判断いただくことをおすすめします」。

3D足型採寸に関するこうした取り組みを行うゼストと競合する企業があるかどうか、ハウ氏に尋ねてみた。すると同氏は、バーチャルな試着体験をサポートするアプローチにはいくつかの方法があることを認めた。例えば、ブランド同士を比較してサイズ提案を行うアプローチや、なんと、紙を使って足をスキャンするアプローチもあるという。とはいえハウ氏は、ゼストの強みは精度の高い3Dスキャンとソーシャル共有機能にあると主張する。言い換えれば、ゼストは、親友が買い物をあきらめなくて良いように3D足型採寸データを送ってあげることができるというアプリなのだ。

ハウ氏は次のように説明する。「当社の技術がユニークなのは、使用するのが3D深度データとコンピュータービジョンだけであるにも関わらず、わずか数分で1.5ミリメートル未満の精度(当社が知り得る限り他に類を見ない精度)の3D足型採寸画像を生成できることです。足に関する情報や参照用オブジェクトは一切必要ありません。ゼストは、スキャンした足のデータのみに基づいてサイズの提案を行います。そして、ユーザーはそのデータを大切な人とシームレスに共有することができるのです。この共有機能は、業界でもほかに見たことがありません。とても誇らしく思います」。そして、「靴をプレゼントしてもらえるチャンスが増えるから、という理由だけで喜んでいるわけではありませんよ」と笑いながら付け加えた。

ゼストのiOSアプリのダウンロードは無料である。3D足型採寸データをすばらしい3Dポイントクラウド画像として生成するのも、それを共有するのもすべて無料で、ハウ氏によれば、今後もそれは変わらないという。同社の収益化計画は小売店とのパートナーシップ構築を中心としており、その実現は2021年になる予定だ。

「現在は収益を上げていませんが、来年にはブランドのエコシステム内で直接提携するパートナーシップを発表する予定です」とハウ氏は述べ、「でもその前に、アプリだけは、ブラックフライデーとホリデーシーズンのショッピングに間に合うように発表したいという思いがありました。2021年には、いくつかのブランドと提携してエキサイティングな新しい試みを展開する予定です。もちろん、アプリはずっと無料でご利用いただけます」と続けた。

ハウ氏によれば、ゼストは約5年前の創業から今までに、エンジェル投資家からプレシードラウンドの資金を調達したり、国から先進研究への助成金を獲得したりしたことがあり、いくらかの営業利益を得たこともあるという。なお、同社は自社技術について1件の特許を取得済みであり、もう1件の特許は申請中だ。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:ファッション

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(翻訳:Dragonfly)

投稿者:

TechCrunch Japan

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