Xiaomiが毎年行っている前年度のスマートフォン販売台数の発表を取りやめた。販売台数を公開することで、Xiaomiはこれまで多くのニュースの見出しを飾っていたが、本日同社のCEOはXiaomiが「早すぎる」成長を経て新たな段階に突入しようとしていると語った。
2016年の1月に、同社が2015年の販売台数が「7000万台以上」だったと発表したときには、既にこの戦略の変更がある程度予想されていた。スマートフォンの販売速度が世界中で落ちていることを考慮すると、2015年の結果も素晴らしいものだったと言えるが、この数字は当初の1億台から下方修正された8000万台という目標にも届いていない。
アナリストのレポートからも、2016年が人気企業Xiaomiの成長にとって素晴らしい年にならなかったことは明らかだった。売上では中国国内でトップに近い成績を残しており、同社が注目している新興市場インドの状況も堅調だったが、成長速度は以前に比べて落ちていた。ちなみに2012年に720万台だった販売台数は、2013年に1870万台、2014年には6100万万台へと急増していた。
Xiaomiの担当者は、TechCrunchに対して2016年の販売台数が公開されないことを認めた。
この変更は種々の状況を考えても予想できることだった。爆発的な成長を継続することが難しいことはもちろんだが、ハードウェアのコンポーネント化やオンライン限定での販売戦略など、Xiaomiを差別化していた要素が業界全体に広まってしまった。結果的にXiaomiはブランド力に頼らざるを得ず、これは”手頃な”デバイスを販売している企業としてはとても困難な課題であった。中国でAppleがXiaomiを突き放して人気ブランドの座についていることを考えるとなおさらだ。
しかしXiaomiにもその原因はある。同社は大胆な予測を立て、成長速度を誇示する宣伝を繰り返していたのだ。共同ファウンダー兼CEOのLei Junも、本日Xiaomiの戦略が拙速であったと認めている。
「最初の数年間は先を急ぎ過ぎていたため、短期的には奇跡的な成長を遂げることができましたが、長期的な成長が一部でないがしろにされてしまっていました。だからこそスピードを緩め、いくつかの点を改善し、長期的な未来のために持続可能な成長ができるような対策をとっていかなければならないと考えています」とLeiは従業員向けの文章に記した。
しかしLeiの思いがXiaomiの評価額に反映されているかどうかはハッキリとしない。同社の評価額は2014年12月の11億ドル規模のラウンドを受けて450億ドルに達したが、専門家の多くはXiaomiがそれ以後この金額を正当化できるほどのことをやっていないと感じている。
従業員向け文書には彼の正直な思いが綴られていたが、そのトーンはむしろ明るく、Leiは従業員に対して「困難の時は過ぎ去った」と記している。
売上に関する情報は発表されていないものの、Xiaomiはその他のさまざまな指標を公開し、そこからは最近採算が取れていないとXiaomi自体も認めていたスマートフォン販売だけでなく、今後どのように成長していくかを描こうとした同社の思いを感じることができる。
以下がLeiの文書に記載されていた情報だ。
- インドにおける年間売上額が初めて10億ドルを突破
- 現在54軒あるXiaomiのオフラインストアのうち、3店舗で2016年の流通総額が1億人民元(1450万ドル)を突破し(流通総額にはパートナープロダクトの売上も含まれている)、2017年には新たに200店舗、2020年までにはさらに1000店舗のオフラインストアを設立予定
- ”Mi Ecosystem”にスマートTVやフィットネストラッカーなどを含む、5000万台のデバイスが接続しており、そこからの売上が150億人民元(22億ドル)を記録
- 世界中で1万6000件の特許を申請しており、これまでにその中の3612件が認定される
- 「インターネットサービス」からの売上が2016年に倍増(実際の数値は公表されていないが、2015年のロイターのレポートをもとにすると、初めて10億ドルを突破)
さらに興味深いことに、Leiは今後Xiaomiのオフラインストア網を拡大していきたいと考えている。これは読み違えではなく、オンライン限定販売モデルの先駆者であるXiaomiが、旧来の販売方法に力を入れようとしているのだ。
Leiは、現在の流通モデルに限りがあることからXiaomiは販売網を拡大する必要があると話しているが、もうひとつの要因としては”競争の激化”が考えられる。
私たちのEC戦略にも課題が浮上してきました。現在オンライン販売はXiaomiの中国における小売売上高の10%強しか占めておらず、スマートフォン市場全体に占めるオンライン販売の割合は20%しかありません。Xiaomiは壮大な野望を持っており、私たちはただのECスマートフォンブランドという地位に満足していないため、今後は現在の小売モデルを進化させ、オフラインの店舗を新たな小売戦略に含めていかなければいけません。
さらに彼は「インターネットサービス」の収益モデルが確立されたと感じており、このビジネスを進化させて売上を拡大していくための次のステップとして、プロダクトをより広域に販売していかなければならないと考えているようだ。
店舗網の拡大の以外にも、Xiaomiは顔認識システムに既に導入されているAIの開発に注力していくほか、海外でのプレゼンスを高め、2017年中にフィンテックソリューションを開発しようとしている。既に同社はApple Payの競合サービスを提供しており、中国でのデジタルバンキングサービスのローンチに向けて準備を進めている。
スマートフォンの販売台数に関しては明確な目標を設定しないが、Lei Junは2017年の「控えめな目標」として売上額1兆人民元(145億ドル)を目指していると話す。
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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter)