Zoom疲れ対策を目指す元GitHubエンジニアのビデオ会議データベース化サービス「Rewatch」

パンデミックによってリモートワークが増加した。オフィスが閉鎖、準閉鎖状態のため企業は業務を分散作業に切り替えている。我々は以前よるはるかに多くの時間をビデオ会議に費やすようになり、ZoomやGoogleハングアウトを使ってコミュニケーションを図っている。企業は事業部署やタイムゾーンを超えて、世界に広く拡散したチームが緊密にコミュニケーションを図る方法を考え出す必要が生じている。

Rewatchは、会議を効率化(できれば短縮化)したいと考えている。共同ファウンダーのConnor Sears(コナー・シアーズ)氏、Scott Goldman(スコット・ゴールドマン)氏は 企業が会議を保存してプライベートなビデオチャンネルを作り、社員が自分の都合がいい時間に再生するサービスを提供しようとしている。

Rewatchは本質的な部分でZoomなどと反対の非同期的体験だ。共同ファウンダーたちはビデオ会議を視聴する新しい方法を提供することで、「Zoom疲れ」と戦うことができると期待している。

仕組みはこうだ。Rewatchを導入した企業はZoomまたはGoogleハングアウトによる会議を記録し、データベースにアーカイブする。この際、タグとメモを書き込んで動画検索を効果的にすることができる。たとえば参加者は自分が取り組んでいるプロジェクトが話題になった時間を記録しておくことができる。また同僚が突然なにか大声で主張した時間もタグ付けしておけば後からの検索に便利だ。

Rewatchでは企業独自のビデオライブラリを「ミニYouTubeチャンネル」と呼んでいる。サービスには会議音声の文字起こしも含まれている。つまり現在のビデオ会議は、リアルタイムでしか参加できない同期体験をRewatchはこれを非同期の動画掲示板とドキュメントに変換する。

「これまでビデオ会議の利用範囲を拡大する唯一の方法は、会議時間を長くするか会議の数を増やすしかありませんでした」とシアーズ氏は説明する。Rewatchを使えば「会議は終了しました」というそっけない無音の表示をどんなタイムゾーンにいるユーザーでもタグとテキストで検索できる対話的なビデオ情報源に変えることができる。

シアーズ氏は有名なデベロッパー向けサービスであるGitHubの元社員で、そこでRewatchのアイデアを得たという。オープン分散サービスであるGitHubは、タイムゾーンを超えて世界のデベロッパーが協力できるよう部内にYouTubeチャンネルを作成した。現在、共同ファウンダーたちは、GitHub内で人気を得ているこの機能を利用し、さらに拡充してメインストリームのサービスとしようと試みている。


RewatchはすでにGitHub自身を含め多くの顧客を獲得できたという。ただしその数は明らかにされていない。料金は未定だがサブスクリプションモデルを考えており一般公開の際には課金することになる。

当然GoogleドライブがRewatchのライバルとなる。しかしGoogleドライブはビデオコンテンツの保存と構造化に関して相当に遅れをとっている。Rewatchは、ライブ文字起こしやタグ付加などビデオを検索しやすい機能を追加してライバルに対する優位性を得ようとしている。他のライバルとしてはベルリンのスタートアップで非同期会議に取り組んでいるAcapela(未訳記事)や、ポッドキャストサービスのStoryboard(Business Wire記事)などが含まれる。後者は、ポッドキャストの作成者がオーディオコンテンツをオンデマンドで関係者に公開するのを支援する機能が含まれる。最近、両社とも数百万ドル(数億円)クラスの資金調達を実施した。

ビデオ会議開催体験の改良は確かに重要だ。しかしRewatchやそのライバルは企業の社員が会議コンテンツのデータベースをかなり頻繁に利用し、大きな意義を認めることにビジネスを賭けている。このビジネスはユーザー行動に大きく左右される。ただ正直なところ、現在の我々は休暇中に開催されて見逃した会議をわざわざ後から再生することは滅多にないだろう。

テクノロジー上のイノベーションが無意味だというという意味ではまったくないが、非同期ビデオ会議再生のようなビジネスが成功するためには、ユーザーの習慣に大きな変化が起こること必要になる。一方、冷笑主義を否定する投資家はすでに何百万ドルもこうした事業に投資している事実も考えねばならない。

実際、Rewatchのビジョンに納得した投資家は数多い。このスタートアップはTechCrunchの取材に対し、今回のプレシードラウンドはSemil Shah(セミル・シャー)氏のHaystackがリードし、Kent Goldman(ケント・ゴールドマン)氏のUpside Partnershipが参加し200万ドル(約2億1000万円)の資金の調達に成功したことを確認した。投資家にはこの他、GumroadのCEOであるSahil Lavingia(サヒル・ラビンギア)氏、GitHubのCTOであるJason Warner(ジェイソン・ワーナー)氏、ZendeskのシニアバイスプレジデントであるJason Smeale(ジェイソン・スミール)氏らが含まれる。

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カテゴリー:ネットサービス
タグ:RewatchGitHubZoomリモートワーク

画像クレジット:Bryce Durbin

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

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TechCrunch Japan

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