廃棄木材を活用し二酸化炭素を大規模に除去するCarbo Cultureが6.7億円を調達

農業や林業から出る廃棄木材を使った大規模な二酸化炭素除去を構築するための工業工程に取り組んでいるCarbo Culture(カーボ・カルチャー)が、シリコンバレーVCのTrue Venturesがリードするシードラウンドで620万ドル(約6億7500万円)を調達した。本ラウンドは欧州のアーリーステージベンチャーファームCherry Venturesと共同でリードし、スイスの気候投資家Übermorgen Venturesも参加した。調達した資金はチームとプロダクト開発の拡大、そして欧州最大の二酸化炭素除去施設を建設するのに使われる。

太陽からのエネルギーは植物に光合成を促し、CO2を最終的に分解されて大気に再び戻る植物性物質に変える。Carbo Cultureはこの既存のプロセスを模倣していて、ただし早く行われるようにしている。

Carbo Cultureは自社のプロセスを「超急速コンバージョン」と表現する。このプロセスでは木質残留物が極めて高温で機能的なバイオカーボンに変わる。そして二酸化炭素を1000年間は分解されない木炭のようなものに「閉じ込める」。

木からCO2を除去するのと同様、廃棄木材からこのバイオカーボンを生み出す全プロセスは、文字どおり住宅を温めるのに使ったり発電するためにタービンを回したりするのに使うことができる再生可能な熱を生み出す。バイオカーボンの残りはバイオマテリアルや環境工学に使うことができ、他の汚染物質に置き換えたりガス化装置に使ったりし、また温室効果ガスの削減やおそらく土壌を改善するために農業で活用したりもできる。

このように、Carbo Cultureは主要プロダクトとして2つのものを販売する。二酸化炭素除去クレジットとバイオカーボンそのものだ。

CEOで共同創業者のHenrietta Moon(ヘンリエッタ・ムーン)氏は次のように述べた。「何十億トンという二酸化炭素を分離するために我々は時間との戦いを繰り広げています。そして我々は世界最大の削減メカニズムの1つである自然の炭素循環を完全に利用してすらいません。Carbo Cultureではバイオマスで二酸化炭素を分離し、1000年閉じ込めるものに変える画期的なテクノロジーで取り組んでいます」。

ラウンドをリードしたTrue VenturesのパートナーであるToni Schneider(トニ・シュナイダー)氏はこう語った。「ベンチャーキャピタルは持続可能な地球を作り出すという点で大きな役割を果たすべきだと信じています。そしてCarbo Cultureは地球が抱えている最も差し迫っている問題の1つを解決するために正しい要素を多く持っています。二酸化炭素の回収に対する需要は高まっていて、こうした需要に応えるには再考が必要です。ヘンリエッタと彼女のチームは経験、テクノロジー、情熱、そしてこの大きなアイデアを真に影響力のあるものに変える明白なビジョンを持っています」。

Cherry VenturesのパートナーであるSophia Bendz(ソフィア・べンズ)氏は次のように述べた。「Carbo Cultureは特許を取得したテクノロジーを通じて最も効果的なネガティブエミッション技術(二酸化炭素の排出を削減し、また過去に排出され蓄積している分も回収・除去する技術)の1つを作り出しました。同社が事業を拡大し、大量の二酸化炭素を大気から除去するのを心待ちにしています。ヘンリエッタとクリス、そしてチーム全体が創作力、テクノロジー面のノウハウ、スケール展開するのに必要な度胸、そして最も重要なものとして皆に影響を及ぼす大きな環境問題に取り組むという意思を持っています。このすばらしいチームと提携し、CO2を除去するという彼らのミッションをサポートすることにこの上なく心を躍らせています」。

Carbo Cultureの競合相手としてはClimeworks (1億4500万ドル、約158億円を調達)、Carbon Engineering、CarbFix、Charm Industrial、CarboFexなどがいる。

CTOで共同創業者のChristopher Carstens(クリストファー・カーステン)氏は「我々はなんとか生産能力をボリュームで8倍に拡大し、システムをさらに開発し、そして民間研究機関、顧客、大学とともにテストを開始することができました。現在、輸送用コンテナ規模のパイロットプラントをカリフォルニア州のセントラルバレーで動かしています。そこでは1時間あたり200ポンド(約90kg)超のバイオマスを処理できます」と述べた。

共同創業者2人は2013年にNASAのエイムズ研究センターであったシンガラリティ大学の3カ月のプログラムで出会った。

基礎的なテクノロジーはハワイ大学からライセンス提供されてきたが、共同創業者らはカーボンネガティブマーケットプレイスのPuro.earthによって独立して承認されてきたと話す。

Carbo Cultureはこのほど、初となるSouth Poleによる二酸化炭素除去クレジットの大規模(プレ)購入を発表した。

ムーン氏は「当社の二酸化炭素除去にかかるコストは現在、1トンあたり600ドル(約6万5000円)を上回っていて、2022年末までに400ドル(約4万3000円)に下げ、2024年までに200ドル(約2万1000円)を達成することを目指しています。当社は今後18カ月で大規模な施設を建設し、それは欧州最大の二酸化炭素除去施設の1つとなります」と説明した。

Carbo Cultureの新たな投資家にはAlbert Wenger(アルベルト・ウェンガー)氏、Gold&Green Foodsの創業者Maija Itkonen(マイヤ・イトコネン)氏、Geltor副社長Alex Patist(アレックス・パティスト)氏、既存投資家にはDavid Helgason(デビッド・ヘルガソン)氏、Moaffak Ahmed(モアファック・アーメド)氏、Lifeline Ventures、Paul Bragiel(ポール・ブラギエル)氏とDan Bragiel(ダン・ブラジエル)氏がいる。

科学者の大半は、二酸化炭素排出を抑制しながら大気から二酸化炭素を除去し、グローバルの気温上昇を摂氏2度以下に抑えて壊滅的な気候変動を避けるために2050年までにネットゼロエミッションを達成する必要があると信じている。

カテゴリー:EnviroTech
タグ:Carbo Culture資金調達木材二酸化炭素温室効果ガス

画像クレジット:Carbo Cultureの共同創業者。写真:Miikka Pirinen Copyright © 2021 Miikka Pirinen / Carbo Culture /

原文へ

(文:Mike Butcher、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。