WhatsApp(ワッツアップ)には全世界で20億人以上のユーザーがいるが、ビジネス利用を開拓する努力は比較的控えめだ。現在1億7500万人を少し超えるユーザーが、WhatsAppのビジネスアカウントを使ってメッセージをやりとりして、日々のカスタマーサポートや製品検討を行っている。米国時間6月2日、Facebook(フェイスブック)は同社のF8イベントで、WhatsApp APIの体験を拡張するアップデートをいくつか公開した。
このニュースは、Facebookがこの日にInstagram(インスタグラム)Messenger APIの一般公開を発表した直後のことで、同プラットフォームのビジネス利用を便利にする一連の発表の一環だ。
全般的に、Facebookと同社サービスの多くは消費者向けサービスの色が非常に濃い。数十億の人たちが連絡を取りあい、気分転換し、自分にとって重要なことを知るために使っている。
しかし、企業はFacebookでつながりを作ったユーザーを中心とした非常に大きくてお金になる商用インフラストラクチャーを徐々に構築している。広告に始まり、マーケティング、カスタマーサービス、職場の生産性向上、ショッピングなどへと深く広げている。
F8カンファレンスは、元々はハッカソンとして生まれ、非常に大きいイベントへと成長した。2021年は、過去数年と比べて著しく縮小されたイベントになった。大観衆はなく(完全バーチャル)、大きいサービスやハードウェアの発表もなく、どちらかというとZoom(ズーム)会議のような印象だ。ビジネス志向のデベロッパーツールに関するこの日の発表は、イベントを当初のデベロッパー重点のイベントへとリセットするだけでなく、商業戦略を強化するものだ。
WhatsApp for Businessに関しては、WhatsApp for Businessを設定するところから、さまざまな種類のメッセージに対応することまで長年の課題がある。今回Facebookが取り組んでいるのはそこだ。
まず、WhatsAppでビジネスアカウントを設定するのに要する時間を5分に短縮する(これまでは数週間だったと述べている)。
次に、Facebookは設定したビジネスアカウントを簡単に使えるようにする。まず、企業はインバウンドメッセージに早く対応できるようになり(これまでは「24時間より前の顧客はフォローアップが困難」だった)、たとえば在庫確認などに関してオプトインしているユーザーにメッセージを送ることができる。
カスタマーサービスのためにこのツールを使っている企業は、最大10種類のメッセージ・テンプレートを作って対応をスピードアップできるようになり、よくある質問への返信を準備しておいて送るための返信ボタンを設定することもできる。
WhatsAppのニュース以外に、FacebookはMessengerにも、Facebook Login Connectを拡張するツールを追加する。
要するに、企業がFacebook Loginを統合すると、ユーザーは自分のFacebook認証情報を使ってその企業のアプリやウェブサイトにログインし、Messengerを通して企業と会話することができる。
これが便利なのは、ユーザーが1カ所で会話を追跡できるだけでなく、チャットボットであれ他のCRMデータベースへのリンクであれ、企業が元々Messengerで会話するために作ったツールをアクセスできることだ。Facebookによると、ユーザーの70%がLogin Connectツールの利用にオプトインするそうで、Facebookの認証情報をこのように使う意志があることを表している。
現在は限定ベータだが、数カ月のうちにもっと広く公開する、とFacebookは言っている。
最後に、FacebookはBusiness Suite(ビジネス・スイート、企業がFacebook、InstagramおよびMessengerを横断して行動を管理するためのプラットフォーム)の新機能を公開し、デベロッパーが「Business Apps」(ビジネス・アプリ)を作れるようにした。
これはアプリストアのような意味のアプリではなく、サードパーティー(デベロッパー)がFacebookの内蔵Business Suiteと協調して動かすために作るツールのことで、企業のサイトやアプリにFacebookのツールをさらに統合するとともに、企業のコンテンツ(カタログ項目など)を自社のFacebookページやInstagramアカウントなどに持ってくる。このプラットフォームではすでに90社のデベロッパーが開発中で、Bigcommerce(ビッグコマース)のようなeコマースプラットフォームと統合している、とFacebookは述べた。
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カテゴリー:ネットサービス
タグ:Facebook、F8 Refresh、API、WhatsApp
画像クレジット:WhatsApp.com
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(文:Ingrid Lunden、翻訳:Nob Takahashi / facebook )