国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構(量研)は12月7日、使用済みのリチウムイオン電池から99.99%という超高純度でリチウムを回収できる装置を開発したことを発表した。リチウムを100%輸入に頼っている日本において、国内資源循環への展望が拓かれる。
電気自動車(EV)の普及により世界中でリチウムの需要が急増し、今後、確保が難しくなることが予想される。2027年から2030年ごろまでに国内における需要に追いつけなくなるとの試算結果もある。現状ではリチウムのリサイクルがもっとも有力な対策となるが、既存技術では高コストとなり難しい。そこで、量研量子エネルギー部門六ヶ所研究所増殖機能材料開発グループの星野毅上席研究員らからなる研究グループは、新開発の高性能イオン伝導体を20枚積層してリチウムを回収する装置を作り、リチウム回収コストの評価を行った。
同機構の方式は、使用済みリチウムイオン電池を加熱処理(焙焼)して得られたブラックパウダー(電池灰)を水に浸し、その水侵出液50リットルを原液として、表面にリチウム吸着処理を施した高性能イオン伝導体20枚を積層した装置でリチウムを回収するというもの。そこに加える電圧、溶液の温度、流速の最適条件を導き出し、さらにブラックパウダーの中のリチウムが溶け出せる限界まで水侵出液のリチウム濃度を高めて回収速度を向上させたところ、2020年度貿易統計によるリチウムの輸入平均価格(1kgあたり1287円)の半分以下にまで製造原価を下げることができた。
99.99%という超高純度でリチウムを回収できることに加え、水素が発生すること、そして二酸化炭素ガスの吹き込みで電池原料となる炭酸リチウムを生成できるという副産物があることもわかった。これらにより、環境負荷の低い技術としての可能性も示された。
この技術により、これまでコスト面から困難とされてきた車載用大型リチウムイオン電池の工業的リサイクルが可能となる。しかも、リチウムは核融合の燃料ともなるため、核融合の早期実現にも貢献する。さらに今回開発された技術は、そもそものリチウムの供給源である塩湖かん水からのリチウムの回収も可能にする。また、塩湖かん水よりリチウム濃度は下がるものの、海水からのリチウム回収も不可能ではない。同機構は、「海水からのリチウム回収技術確立、すなわち無尽蔵のリチウム資源の確保を目指して研究開発を進めてまいります」と話している。