直近では企業向けの総菜販売サービス「オフィスおかん」を提供するおかんや、モノづくりプラットフォーム「rinkak」を提供するカブクなどに出資しているサイバーエージェント・ベンチャーズ(CAV)。同社が新しいファンドを組成した。
新ファンドの名称は「CA Startups Internet Fund 2号」。これまで運用してきたファンドは総額24億円だったが、新ファンドは総額50億円のものとなる。CAVではこれまで、IT分野のシード、アーリーステージ向けに数千万円出資するということが多かったが、新ファンドでは、同様の分野、ステージにおいて追加投資も含めて最大1億円程度の出資を予定するという。ただし、同社はこれまでも「株式の20%以上を持たないようにする」というスタンスだったそうで、今後もそれは続けたいそうだ。
またCAVではこれまで、クラウドワークス(の吉田浩一郎氏)やKAIZEN Platform(の須藤憲司氏)といった、比較的事業経験の豊富な起業家に対しての出資を重視してきたが、今後はより広い人材に投資をしていくという。
新ファンドの立ち上げにともなって、CAVでは今後、起業家や起業準備中の人物を対象にしたオフラインイベント「Startup Workout」を定期的に開催する。第1回は7月2日の予定で、15人程度の参加を募集中だ。このようなイベントをする背景には、CAVがどうしてもCVC(コーポレートベンチャーキャピタル)に見られがちだということがあるようだ。CAVは事業会社の子会社だし、当然「CVCか?」と言えばCVCなのだが、「事業会社とのシナジーがあるかどうか」という点にこだわって投資をするわけではなく、キャピタルゲインを求める純投資をしている。そこを改めて伝えていきたいのだという。
CAVと藤田ファンドの立ち位置の違い
ところで以前から、CAVのファンドと“藤田ファンド”ことサイバーエージェント投資事業本部の関係性がいまいちはっきりしないところがあったので、改めてその点について聞いてみた。やはり基本的にはCAVはシード、アーリーステージが対象、そこから先のステージが藤田ファンドの投資領域となるそうだ。シード期にCAVから資金調達し、その後のラウンドで藤田ファンドから資金調達しているクラウドワークスなどはその例とも言える。
ただ一方で、藤田ファンドでは非公開の投資先も含めて比較的若いステージに出資しているケースもあったため、CAVのファンド出資者周辺からは、「(CAVと藤田ファンドは)競合になっており、利益が相反するのではないか」という不満の声が挙がっていた。
このあたりについて、僕は以前サイバーエージェント代表取締役社長 CEOの藤田晋氏から「藤田ファンドでは起業家、創業者を見て出資をする」という話を聞いているし(もちろん市場も事業も見ている上での話だ)、先日新日本有限監査法人が開催したイベントに登壇したCAV代表取締役社長の田島聡一氏が「サイバーエージェントはグループ会社にも独自の文化を認めている。藤田が『ノー』と言っても、CAVで投資できるといったいい文化がある」とグループの多様性に触れている。2人の話は、グループ内で競い合って成長してきたサイバーエージェントの風土そのものが表れているようにも見える。
ただしそんな風土もファンド出資者からすれば不安になりかねない話だ。複数関係者から聞いたところでは——もちろんそういった問題を防ぐためだけでもないようだが——新ファンドは事業会社1社から大半の資金を集めているそうだ。