不均衡なクリエイターエコノミーや貧弱なセキュリティ、一元的な管理や不満を持つコミュニティなど、Web 2.0の欠陥はここ数カ月間で明らかになった。
まず、Facebookの元プロダクトマネージャーであるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)は2021年10月に、当ソーシャルメディアの巨人は「安全性よりも利益を優先している」と議会で証言した。そしてそれを合図にしたかのように、Facebookの中央集権的なサービスが世界中でダウンした。この障害は非常に広範囲におよび、Facebook自身がサーバーにアクセスすることさえできなかった。
そんな中、不満を抱いた匿名のハッカーが、Amazonが運営する人気ストリーミングサービス「Twitch」の膨大な内部データを公開した。このハッカーは、ソースコードやトップクリエイターの報酬情報とともに、Twitchコミュニティを「オンライン動画ストリーミングの分野におけるさらなる破壊と競争の促進」を企てる「嫌な毒の巣窟」と呼び、改善を呼びかけた。
これらのプラットフォームが成長し、普及し、収益を上げているにもかかわらず、旧態依然とした人々が多くのことを取り違えたことは明らかだ。ネットワーク効果、大規模なスケール、勝者総取りの経済性を重視した中央集権型のWeb 2.0は、もはや社会のためにはならない。
今こそ変化を起こす時だろう。Web3の起業家として、より協調的・創造的でユーザー中心のインターネットを育むオープンなインフラを構築するにあたって、前世代のテクノロジーの根本的な欠陥を解決するのは私たちの役目だ。
Web3がどのように現在のデジタルエコノミーの最も顕著な問題点を解決できるのかを説明しよう。
セキュリティやデータ管理の不備
Twitchは、背景をAmazonの創業者である億万長者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)の写真に置き換えるなどのいたずらに悩まされ続けている。これらのセキュリティ問題は元従業員からの報告にもあったように、常在していたようだ。
中央集権的な組織と共有しているデータはすべて危険にさらされていることがわかってきた。銀行、小売業者、SNSプラットフォームからの個人情報の流出が何年も続いていることからも、インターネット上のものは何であれ、真の意味でのプライバシーを保てるとは考えられない。
Web3は暗号プリミティブに基づいて構築されており、多くの場合オープンソースコードを採用しているため、誰でもコードをレビューすることでプロジェクトに貢献することができる。これによりユーザーのセキュリティが向上し、透明性が競争力につながる。これは、単にプライバシーに基づいているだけではなく、実際にユーザーの価値を守ることにつながる。セキュリティ研究者の@samczsunは、0x、Livepeer、Kyber、Nexus Mutual、Aragon、Curveなどのプロトコルに潜在するエクスプロイトを特定し、失われた可能性のあった価値を数十億ドル(数千億円)分救済した。
相互運用可能な規格の意味するところは、ERC-721ベースのNFTは多数の異なるフロントエンドアプリケーションで取引や閲覧ができ、ERC-20トークンは注目と価値を得るために競い合う金融商品のエコシステム全体にアクセスできるということだ。これにより、プラットフォームにとってはリスクが上がり、セキュリティ侵害があった場合にユーザーの流出につながる可能性がある。
有害性とプラットフォームの説明責任
Twitchのハッカーたちは、違法で不道徳な行為を行ったが、ある点では正しかったと言える。ストリーミングプラットフォームの有害性は増しており、大規模なハイテク企業は問題の大きさに見合った対応をするのに苦労している。だがWeb 2.0の世界では、ストリーマーには実行可能な代替手段がない。YouTubeやFacebook Liveに移行することはできても、それはまた別の有害なアテンション・エコノミーのプラットフォームに置き換えるだけのことになる。
これらの現実は、クリエイターがこれまで以上に力を持つ環境を受けた結果だ。ファンは好きなクリエイターを好きなプラットフォームでフォローし、それがクリエイターに大きな影響力を与える。有害性から逃れるためには、クリエーターはクローズド・プラットフォームから出て、コミュニティとの直接的な関係を通じて自分の運命をコントロールするためのWeb3ツールが必要だ。
またWeb3は、ユーザーとプラットフォーム間の力関係を再調整し、ユーザーは自分のデータをコントロールできるようになる。Spruceのようなデータ管理プラットフォームが提供する相互運用性とポータビリティのおかげで、Web3プラットフォームによってユーザーは簡単に「退場による意思表示」を行い、別のプラットフォームに移行できるようになる。
ConfluxやMoralisのような企業によって、ブロックチェーンや規格を超えた規模拡大が容易になったため、競合他社は機会があればいつでも迅速に行動を起こすことができる。例えば、NFTの取引プラットフォームであるOpenSeaが、どのNFTが取り上げられるかを知った上でインサイダー取引を行っていた可能性があることがユーザーに発覚した際には、Artionのような代替プラットフォームが登場し、NFT市場で認識されている不満の一部を解消した。このような市場の動きに対する迅速な反応は、規模の大きさと閉鎖的なアクセスに依存して新規参入を阻む従来のWeb2.0のエコシステムには存在しないものだ。
しかし、Web3.0はユーザーとの直接的な関係をはるかに超えている。これらのプラットフォームはユーザーが所有し、コミュニティが主体となっているため、コミュニティが自ら節度ある行動をとるような動機付けがなされている。動画配信のケースでは、大切なメンバーを他所に追いやるようなヘイト・レイドを望むコミュニティはないだろう。
Web2.0の世界では、ユーザーはプラットフォームが行動を起こすのを待たなくてはならない。Web3では、ユーザーは内蔵されたガバナンスとモデレーションのメカニズムを通じて行動することができる。Mirrorのブログプラットフォームでは、毎週誰が記事を書いて公開するかをユーザーが投票で決めている。Web3 indexでは、掲載されているプロジェクトが後続のプロジェクトの追加や削除を管理し、エコシステムの健全な成長を確実にしている。
Facebookの内部告発者は、Facebookには2層構造の司法制度があり、有名人は一般ユーザーとは異なる扱いを受けていることも明らかにした。一般のアカウントが利用規約に違反するとペナルティを受けることがあるが、多くのフォロワーを持つアカウントは同じ行為をしても逃げられる可能性がある。
Web3ではこの点も修正され、ブロックチェーンの不変性のおかげで透明性が高まり、検閲にも耐えられるようになった。意思決定はSnapshotのようなツールを使ってオープンに行われ、より広範なコミュニティによって推進される。ガバナンスはブロックチェーン上で行われ、誰もが見ることができる。裏取引や二層構造の司法制度はない(もちろん、投票でそう決められた場合は別だが)。すべてコミュニティ主導で行われるため、方向性や透明性のレベルに納得がいかない場合は、参加者は簡単に去ることができる。
不均衡なクリエイターエコノミー
Twitchのリークにより、トップパフォーマーと一般のクリエイターの支払い額に大きな格差があることが明らかになった。このようなダイナミクスは、プラットフォームと一部のクリエイターのみの間でインセンティブの合意を形成する。少数のクリエイターが収益の大半を占めるようになると、プラットフォームは最も重要なインフルエンサーに注目を集めるようになる。
Web3のパラダイムは、アクセスを民主化し、クリエイターとファンの間のサイロを解消することで、このようなインセンティブのズレを解消する。NFT、デジタルペイメント、トークン、クラウドファンディングといったWeb3のクリエイター向けマネタイズメカニズムは、クリエイターに優しいやり方で条件を平等にする。glass.xyzのようなプラットフォームを利用しているアーティストたちは、魅力的なライブストリームとともにNFTによって、Web 2.0モデルで販売するよりもはるかに優れた方法でコンテンツを収益化できることを発見した。
Web3では、ユーザーは自分のプラットフォームを所有することができ、多くの場合トークンによって調整される。ユーザーはプラットフォームの成長によって直接利益を得られるため、例えばモデレーションのような重要なサービスを提供する動機にもなる。
また、ユーザーはファントークンを購入することで、お気に入りのクリエイターにさらにコミットし、情熱を共有することで、健全なファンコミュニティを育むポジティブなフィードバックループを構築することができる。Rally、Socios(Chiliz上に構築)、Rollなどのプラットフォームは、クリエイターが自分の評判、権威、創造性を仲介者なしで直接収益化できるツールを提供する。これによりクリエーターがプラットフォームとなることで、インセンティブがさらに合致に近づく。クリエイターは関与のルールを定義することができ、利害関係のない第三者に干渉されずに、健全なコミュニティの維持に必要なことを行うことができる。
インターネットのアップグレードは、社会にとって良いこと
社会構造や経済構造の多くが民間企業数社が管理するインフラに依存していることは、間違いなく有害である。また、そのような企業が説明責任を果たさず、変革を約束しても注目が集まらなければ道半ばで終わってしまうようでは、ダメージはさらに大きくなる。
しかしWeb 2.0を完全に排除することはそれほど重要ではなく、社会が切実に必要としているインターネットのアップグレードを行うことが重要なのだ。Web 2.0のツール自体は非常に大きなポジティブなインパクトを持っているが、そこにはトレードオフもある。Web 2.0の構造的な誘引により、責任を負わない柔軟性に欠けるビッグテックによる独占が起こった。Web3は、先行するWeb 2.0の良い点を取り入れ、すべてのユーザーの間でエコノミーとインセンティブを調整することで、インターネットを進化させ、広告モデルの悪影響を回避できる。
文化とコントロールという点では、中央集権的なクローズド・プラットフォームよりも分散型サービスの方が圧倒的に有利だ。Web3は、データのポータビリティと相互運用性によってユーザーに力を与え、自己管理型のコミュニティをサポートするような動機を中心に置き直すことで、コミュニティを育成するためのまったく新しい方法を提案している。
ハウゲンは正しい。「Facebookを解体することが重要なのではありません。進むべき道は、透明性とガバナンスです」。私たちは皆、より良いものを得られるべきだ。そして、透明性とコミュニティのガバナンスを優先するサービス、プラットフォーム、製品こそが、次のデジタル経済の時代に繁栄するだろう。
画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images
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(文:Doug Petkanics、翻訳:Dragonfly)