インターネットの未来を守るために米国主導のテック外交は変革が迫られている

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

米国は最近の民主主義サミットにおいて「志を同じくする民主主義国」が「インターネットの未来に向けた連合」を新たに形成し、オンラインのオープンで自由な価値観を擁護することを提案した。協調を目指す構想の長い系譜の中で最も新しいこの構想は、前進を実現する有望株である。しかし現在の様相からすると、その構想は不足をきたす恐れがある。当局者間の意見の不一致で始動が遅延している今、米国はこれを再考の機会とする必要がある。

この連合の背後にある基本的な論理は理に適っている。インターネットの自由は世界中でますます危機にさらされ、諸政府は競って自らの権限を主張し、幾十年にもわたって形成されてきたボランティア団体の統治システムからは今やきしみ音が聞こえているのだ。バイデン政権のテクノロジー政策担当アドバイザー、Tim Wu(ティム・ウー)氏は最近「我々は間違った道を進んでいる」と述べた。こうした背景をふまえると、インターネット時代のオープンで自由な価値観を奨励し、擁護する新しい構想が切に必要とされている。

しかし、現実には、米国は「志を同じくする民主主義国」による協調を重視することによって、自らの目標をむしばむ危険を冒している。なぜなら、自分たちだけで話し合う民主主義国の小さなクラブや強制だけでは、オープンなインターネットの未来は保証されないからだ。そうではなく、連合というものは、もっと包摂的で、経済や安全保障のインセンティブを適正な位置に置くことを最初から重視し、広範で持続可能な連合を長期にわたって構築するものでなければならない。

このことは、インターネット政策に対して米国が通常採用する必要のあったアプローチよりもずっと国際主義的なアプローチが必要なことを示している。何十年もの間、オープンなインターネットモデルはアメリカの並外れた管轄権限によって支えられてきた。世界のインターネットユーザーのうち、米国にベースがあるユーザーはわずか7.1パーセントにすぎないが、世界のインターネットの核となるインフラストラクチャーサービスの61パーセントは米国にある。使用許可の必要ない革新的で相互運用可能なネットワークと「ダムパイプ」(自らは伝送内容を知ることができないインフラストラクチャー)のモデルは、米国の優位性によって支えられてきたのだ。このことによって、巨大な経済的・社会的価値が生み出されてきた。世界のインターネットユーザーの19パーセントがいる中国だけが、地政学上比較可能な位置を占めている。

しかし、米国の覇権に依存して自由なインターネットを維持することはもうできなくなった。インターネットの統御の仕方において多くの国が転換点を迎えており、検閲、監視、遮断などの権威主義的なインターネットモデルが急速に勢いを増している。加えて、今日、37億の人々が依然としてインターネットを利用できない。

接続状況が向上するにつれ、このグループのほとんどの人がいる発展途上国がインターネットの未来を決めることになるだろう。そして、今のところ、それらの国は必要な資金を他のどこよりも中国から調達する可能性が高い。多極的なインターネットへのシフトは既定路線だが、その方向は、つまり開かれているか閉ざされているか、自由か権威主義的かは、定まっていない。

この傾向をふまえると、今日の民主主義国間の協調だけを重視することは、インターネットの先細りの部分を指標として過度に重視することになる。また、価値観だけで協調すると、インターネット規制のいくつかの分野に関するEUと米国の協定など、従来の協定がまだ合意されていない分野が目立つようになる。したがって、どんな連合も成功のためには「志を同じくするパートナー」という決まり文句を乗り越え、2本立てのアプローチを採用する必要がある。経済および安全保障のインセンティブの優先と、インターネットの遮断の禁止など、インターネットの開放性の確約である。そうすることで、参加国の幅を広げることができる。

この戦略は、ますます制限的なインターネット政策を検討している国を納得させる上で特に重要になる。例えば2015年以来、アフリカの54か国のうち31か国がある程度ソーシャルメディアへのアクセスをブロックしている。明らかに、こうした遮断の一部はあからさまな弾圧に起因しており、国際的に強い対応で応じる必要がある。それでも、比較的イデオロギー色の薄い介入もある。暴力的なオンラインコンテンツのために指導者が公共の安全に懸念を持つ場合、政策の混乱、国の許容度の低さ、主要なソーシャルメディアサービスによるコンテンツモデレーションへの投資の不足が相まって、もっと支援があれば回避できた可能性のある残念な行動につながってきた。

この傾向をとどめ、インターネットの核心となる自由を守るのに遅すぎることはない。しかし、そうした努力は強制だけでは成功しないだろう。権威主義に対する戦いは極めて重要であるが、あらゆる議論をひとまとめにして「民主主義対権威主義」という二極化した言葉にしてしまうと、実際には協調の機会が閉ざされて、制限と分断が加速されるだけになる可能性がある。この徐々にむしばむ過程の影響は、すでにアフリカで見ることができる。西側はアフリカの国々を米国と中国の大規模な「冷戦」の「委任状争奪戦」の現場としてしか扱わないことがあまりにも多い。こうした思考はどれも役に立たない。

中国は西側のパートナー、競合相手、対抗者のどれかなのではなく、そのすべてなのだ。米国、EU、その他の国は、中国を世界のインターネットのインフラストラクチャー市場から強制的に締め出すことはできないし、それを望むべきでもないし、そうする必要もない。どの国も供給を独占したり費用を全部負担したりすることのない、インターネットインフラストラクチャーの世界的な競争市場があれば、アフリカも米国も中国も皆、その方がメリットがあるだろう。

同様に、アフリカ諸国だけに独自の政治的な優先順位や課題があるのではなく、支援を提供することが西側自身の経済的利益になることもよくある。例えばインターネットを利用できない37億の人々をすべてつないだとしても、コストは米国、英国、韓国、日本などOECD諸国の国民総所得のわずか0.02パーセントにすぎないが、利益は25倍にもなる

それでも、G7が2022年、中国のインフラストラクチャー構想に対抗するために策定した「Build Back Better World(より良い世界再建)」プロジェクトに乗り出したとき、新たな金銭的裏付けはなかった。また、米国が影響力を持つはずの世界銀行やIMFの開発プログラムを刷新する努力もほとんど払われていない。それらのプログラムは競争がなく官僚的、リスク回避的であり、脆弱な開発過程と差し迫った雇用創出の要求に直面しているアフリカの多くの指導者にとって高くつくにもかかわらず、である。

長年にわたって我々は、この種のプログラムに関して必要な政治的リーダーシップと熱意に欠けてきた、しかし、インターネットの未来に向けた連合はリセットのための力を秘めている。成功のためには、インターネットの核心となる自由がむしばまれるままにして繫栄の道はないことを示し、同時に、さまざまなアプローチを可能にする適切なガイダンスとインセンティブも提供する必要がある。参加しようとしない国は常に存在するだろうが、こうした強力なインセンティブがあれば、インドネシア、ケニヤ、ブラジルなど、多くの「態度を決めかねている国」を参加するよう説得することができる。経済と安全保障の面で皆の持続的な利益になる幅広い国際主義的な連合を構築することでのみ、オープンで世界的なインターネットを長期にわたって真に守ることができるのだ。

編集部注:本稿の執筆者Andrew Bennett(アンドリュー・ベネット)氏はトニー・ブレア地球変動研究所のシニア・ポリシー・アナリスト。インターネット政策と地政学を専門とする。最近、共著で「The Open Internet on the Brink: A Model to Save Its Future.」を上梓。

画像クレジット:metamorworks / Getty Images

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(文:Andrew Bennett、翻訳:Dragonfly)

反体制派をスパイウェアから守れるのは民主主義国家だ

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

スパイウェアを購入するような政府には「公共の安全を脅かすテロなどの脅威と戦う必要性」という共通の口実がありがちである。しかし、独裁政権が最先端の監視テクノロジーを手に入れるとき、それは活動家、ジャーナリスト、学者など、脅威とみなされる反対派の声に対して使われる場合があるというのも周知の事実である。所有者の知らないうちに携帯電話やその他のハードウェアを感染させ、動きを追跡して情報を盗むために使われるスパイウェアプログラムは、銃と同じように確実に弾圧の道具となるのである。

21世紀に起きているこの現実を無視するには、あまりにも多くの事例が立証されている。しかし企業らは、それが何を意味するのかをあたかも知らないふりをしてスパイウェアを専制君主制の政府に売り続けている。この傾向は、世界中の政治的反体制者コミュニティを揺るがし、彼らを逮捕、さらにはもっと悪い事態に追いやっているのである。

我々はこういったテクノロジーの被害者になったことがあるため、この事実をよく知っている。サウジアラビアから帰化したアメリカ人と、イギリス人の学者として、同記事の共同筆者2人は、多くの同僚とともにこういったテクノロジーの被害にあったのである。

私たちの1人、Ali Al-Ahmed(アリ・アル・アハメッド)は、サウジアラビア政府がTwitter(ツイッター)から個人情報を盗み出し、それを使ってアハメッドのTwitterのフォロワーを追跡し、投獄し、拷問するのを目撃した。

もう1人のMatthew Hedges(マシュー・ヘッジス)は、アラブ首長国連邦に研究に来ていた大学院生で、後に入国前から当局に携帯電話をハッキングされていたことが発覚している。ヘッジスは2018年に逮捕された後にスパイ容疑で起訴され、当初は終身刑の判決を受けている。最終的には6カ月間拘束されたのだが、その間も手錠をかけられ、衰弱させる薬物が投与されていた

こういった痛々しい体験は未だどこかで繰り広げられている。今私たちは米国や英国に住んでいるため比較的安全だが、これらの体験はあまりにも一般的なものなのになっている。権威主義的な政権が国際法や人権のあらゆる原則に反して、日々人々に与えている継続的かつ体系的な虐待を、これらの体験が浮き彫りにしているのである。

独裁政権が市民の行動を逐一追跡できるのは、それを可能にしているスパイウェアベンダーの責任でもある。自社の製品がこのように利用されていることに目をつぶっている企業を民主主義政府が確実に取り締まるまで、世界中の反体制派は背中を狙われることになるだろう。

米国を含む民主主義諸国は今、この乱用を抑制するために断固とした行動をとるべきなのである。西欧の民主主義国の指導者たちはビッグテックを抑制する必要性について議論を続けているが、政府の規制とテック企業の果てしない綱引きの中で「ユーザーが一番の犠牲者になっている」と、監視組織のFreedom House(フリーダムハウス)の新たな報告書は伝えている。いつでも自国の政府の餌食になるのは一般のオンライン市民なのである。

中国やロシアは国家ぐるみのハッキングや弾圧を行い、その規模の大きさから世界的にも注目されている。しかし、サウジアラビアのような米国の同盟国も、しばしば最悪の犯罪者であることが少なくない。

例えばサウジアラビア、アラブ首長国連邦、バーレーンなど、反体制派に対して最も冷酷な扱いをする中東の国々は、イスラエル企業のNSO Group(NSOグループ)からスパイウェアを購入している。これらの政府はNSOのPegasusソフトウェアを使って人権活動家や批評家の電話を次々とハッキングしており、その多くは自国の国境をも越えている。

ドバイの支配者、Sheikh Mohammed bin Rashid Al Maktoum(シェイク・ムハンマド・ビン・ラーシド・アル・マクトゥーム)氏のように、こうした政権を支配する独裁者が純粋に個人的な動機で動いている場合もある。イギリスの裁判所は、同氏がPegasusを使って元妻とその子どもたち数人をスパイしていたことを明らかにした

これは、NSO Groupの関係者がある夜遅くにイギリスの著名な弁護士に電話をして、監視について密告したため世間に知られることになった。首長がPegasusを悪用したこともそうだが、同氏が自分たちの技術を不正に使っていたことをNSO Groupが認知していたというのはそれ以上に穏やかでない。このケースでは、上級管理職の人間も内部告発をするのに十分な露出度を感じていたようだが、同社は顧客による他の不正行為について明かしていない。

人権侵害で有名な警察や諜報機関にスパイウェアを売っているのは何もNSO Groupだけではない。イスラエルのCandiruやCyberbitも同様のビジネスをしているし、ドイツのFinfisherやイタリアのHacking Team(2015年のスキャンダルを経て現在はMemento Labsに改名)の製品も、虐待との関連が指摘されている。

NSOは、サウジアラビアアラブ首長国連邦がPegasusを悪用したとして契約を打ち切ったと報じられているが、企業の自己強化だけでは十分ではない。民主主義国家はこれらの企業に対し、製品が人権侵害に使われれば輸出禁止の制裁が下り、企業幹部も制裁を受けることになるという明確なメッセージを送るべきだ。

もう1つの重要なステップとして、米国商務省と英国や欧州連合(EU)などの民主主義諸国が、乱用を可能にしている企業との取引を制限するためのブラックリストを拡大することが挙げられる。米国商務省はすでに、NSO Group、Candiru、ロシアのPositive Technologies、シンガポールのComputer Security Initiative Consultancyを「Entity List」に登録しており、これらの企業は特別なライセンスなしに米国の販売者から部品を購入することができない。しかし、こういったことを世界規模で行えば、さらなる効果を発揮するはずだ。

また、民主主義国はスパイウェアの使用に関するオープンで統一されたルールを確立すべきである。先週、ホワイトハウスでは、権威主義と戦い、人権を促進することを目的とした、世界のリーダーたちによるバーチャル「Summit for Democracy(民主主義サミット)」が開催された。この連合が活動を開始するにあたり、スパイウェアはその最重要議題となるべきだ。

電子諜報活動とデジタル抑圧の新時代に突入した今、規制や法的保護を強化することによってのみ、民主主義国家はその存続を確保することができ、言論の自由を実現し、市民の福利を守ることができるのである。

編集部注:Ali Al-Ahmed(アリ・アル・アーメド)氏はInstitute for Gulf Affairsの創設者でありディレクター。Matthew Hedges(マシュー・ヘッジ)博士は、エクセター大学の博士研究員として教鞭をとっている。

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(文:Ali Al-Ahmed、Matthew Hedges、翻訳:Dragonfly)

バイデン大統領の民主主義サミットのコミットメント拡大にはパートナーシップが鍵となる

TechCrunch Global Affairs Projectとは、ますます複雑に絡み合うテクノロジー分野と世界政治の関係性を検証するためのプロジェクトである。

バイデン米大統領は2021年12月、100カ国を超える国々の首脳を招き、待望のバーチャル民主主義サミットを開催した。1年間の協議、調整、行動の後、これらの指導者たちは再び2回目のサミットに集まり、人権尊重の促進、権威主義への対抗、腐敗との戦いへの1回目のコミットメントの進捗状況について報告した。

旧ソ連出身の私は、このサミットに楽観的な思いを持たずにはいられなかった。ごく幼少の頃でさえ、表現や言論の自由が制限され、情報や生活のほぼすべての側面が国家や選ばれた少数の権力者により大きく支配されている場所に住むことから生じる冷たさを感じていた。この個人的な経験は、米国市民であることに感謝の気持ちを抱かせる。一方で、権威主義体制の下で暮らした経験から、このサミットが開催されている理由、つまり世界中で起こっている民主主義の後退に非常に神経質になっている。

この民主的競争において、技術ほど重要な領域はないだろう。首脳たちがサミットの3つの柱を前進させることを望むなら、技術が民主主義と人権に貢献することを確保する必要がある。これには、デジタル権威主義に対抗する方策としてのオープンインターネットと重要なインフラへの投資の促進、偽情報への対処、社会的レジリエンスの強化、そして民主主義的価値観と多様性に調和する先端技術およびテック系起業家精神への投資の増進が含まれる。

報道によると、インターネットの強化、メディアリテラシーと市民教育のための資金の増強、二重使用技術の輸出規制の実施などに向けたイニシアティブ実行へのコミットメントが表明される可能性が高い。これらはすべて有用なステップである。しかし、サミットを超えて存続していくには、真に実行し、規模を拡大するために、官・民・市民のパートナーシップが必要となる。ここでは、私たちが共有すべき留意に値する3つの領域を取り上げたいと思う。

第1に技術の規制、検閲、輸出を通じ、国内的に市民を抑圧する目的で技術を利用するデジタル権威主義は、世界的に蔓延する問題となっている。先駆的な国家管理インターネットを構築している中国や、インターネットインフラ、オンラインコンテンツ、プライバシーに対する統制を強化し続けているロシアはその最たる例である。さらに、このような権威主義形態をアフリカや中南米など世界の他の地域に輸出することで、これらの国は民主主義国と権威主義体制との間の「システム競争」を助長している。

この進化する脅威に対抗するために、民間セクター、市民社会、政府が協働できることは多く存在する。具体的には、抑圧的な技術の輸出管理を強化しながら、新興市場における重要なインフラを共同で開発することが挙げられる。地方レベルで言えば、米国とその同盟国は、特に周縁化されたコミュニティに焦点を当て、インターネットへのアクセスを増やし、インターネットの自由を促進することに取り組むべきである。市民社会においては、政府と民間セクターの双方の説明責任が維持されるように、地域の規制と慣行を支持する声を上げる必要がある。多国籍企業も、事業展開する国で人権評価を行うことで、自らの力を有効に活用し、人権侵害に加担したり、意図せず独裁政権の商慣行を助長したりしないことを保証するべきである。

第2に、虚偽と半真実の意図的な拡散である偽情報は、世界の民主主義にとって深刻な脅威であり続けている。近年、選挙や新型コロナウイルス関連の偽情報が、ソーシャルメディアプラットフォーム、メインストリームメディア、そして信頼できるネットワークを通じ、米国および世界中で山火事のように広がっていくのを私たちは目にしてきた。ロシア中国イラン、および国内の当事者は、カオスと混乱を引き起こすだけではなく、2021年1月6日の暴動の際に見られたように、深刻な損害をもたらす偽情報キャンペーンを展開している。さらにこうした偽情報キャンペーンは、女性や少女、LGBTQ+コミュニティやジャーナリストを含む周縁化されたコミュニティに対するヘイト的なレトリックにまで広がっている。これは、今後1年間に政府、民間セクター、市民社会が自らのコミットメントに基づいて行動すべき、また行動しなければならない領域の1つである。そうしなければ、民主主義国は、オンラインでもオフラインでも、情報汚染に対処することなどできないであろう。

その方法はいくつかある。私が所属していた超党派の組織、Task Force on the U.S. Strategy to Support Democracy and Counter Authoritarianism(民主主義と反権威主義を支援する米国の戦略に関するタスクフォース)は、情報環境における信頼を築く目的で、Global Task Force on Information Integrity and Resilience(情報の完全性とレジリエンスに関するグローバルタスクフォース)の設立を提唱した。私たちの提案の根底には、このタスクフォースは志を同じくする国々のリーダーによって主導されるかもしれないが、民間セクターと市民社会の両方が強固な関与を確保すべきであり、これらの脅威を予測し、先手を打って対抗するために協働して、偽情報、オンラインヘイトおよびハラスメントに関する情報を共有していくことが重要であるという信念が置かれている。最終的な目標は、長期的な社会的レジリエンスを構築することにある。

第3に、民間セクターと市民社会は、政府とのパートナーシップに投資して規模の拡大を図り、資本を越えて市民に届くような形で、既存および新興の民主主義国におけるデジタルとメディアリテラシー、市民教育に関するイニシアティブを実行しなければならない。同時に、2022年に向けて、民間セクター、とりわけデジタルプラットフォームやメインストリームメディアは、信頼性が高く質の高い情報を市民へ提供することに一層の努力を払う必要がある。アルゴリズムバイアス、データの悪用、悪意あるコンテンツ拡散の防止を目的とした、デジタルプラットフォームの透明性と説明責任の向上に関する提案が数多くなされている。究極的には、可能な限り最高の情報エコシステムを構築していく上で、これらの原則は市民、コンテンツプロバイダー、政府、業界の間に信頼を築くことにつながるものである。

人工知能、機械学習、自然言語処理などの先端技術への多額の投資がなければ、こうした脅威への対策に目立った変化をもたらすことはできないであろう。脅威を特定して顕在化させ、そのインパクトを把握することへの投資は、米国や欧州に限定されるものではない。スタートアップがこれらの技術を開発する際には、自分たちのプロダクトが安全に新興市場に拡大できることを確保すべきである。

新興市場におけるイノベーションと起業家精神の促進は、民間セクターと市民社会が政府と協働する有意義なオポチュニティが存在する最後の領域である。イノベーションと起業家精神が経済成長を生み出すことが研究で示されており、これは技術セクターにも当てはまる。発展途上国に権威主義的な技術を予防する接種措置を行う最も確実な方法は、次世代の人材、特に若者、女性、少女、その他の周縁化されたコミュニティに投資することである。自国にもたらされる権威主義的な脅威に先端技術を使って対抗できる、確かな地域の声、起業家、イノベーターを育成することは、私たちが求める成果に到達するための最善の方法かもしれない。

技術に関して言えば、私たちは民主主義的価値観と権威主義によって強要される生活様式との間で影響力を競っている。2021年のサミットは、意味のある民主主義復活への道を開くものだ。しかし行動と協議の年に入り、民主主義のための技術的アジェンダに必要な規模の拡大と実行を可能にするのは、官・民・市民のパートナーシップである。

編集部注:本稿の執筆者Vera Zakem(ベラ・ザケム)氏は、Institute for Security and Technologyのシニアテクノロジー・政策アドバイザーで、民主主義とテクノロジーに関する取り組みをリードしており、Zakem Global Strategiesの創設者でもある。2020年から2021年まで、超党派の「民主主義を支援し権威主義に対抗するための米国戦略に関するタスクフォース」のメンバーを務める。

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(文:Vera Zakem、翻訳:Dragonfly)

【コラム】Web3こそが関心や大きな注目が価値を生むアテンションエコノミーの欠陥を修復できる

不均衡なクリエイターエコノミーや貧弱なセキュリティ、一元的な管理や不満を持つコミュニティなど、Web 2.0の欠陥はここ数カ月間で明らかになった。

まず、Facebookの元プロダクトマネージャーであるFrances Haugen(フランシス・ハウゲン)は2021年10月に、当ソーシャルメディアの巨人は「安全性よりも利益を優先している」と議会で証言した。そしてそれを合図にしたかのように、Facebookの中央集権的なサービスが世界中でダウンした。この障害は非常に広範囲におよび、Facebook自身がサーバーにアクセスすることさえできなかった。

そんな中、不満を抱いた匿名のハッカーが、Amazonが運営する人気ストリーミングサービス「Twitch」の膨大な内部データを公開した。このハッカーは、ソースコードやトップクリエイターの報酬情報とともに、Twitchコミュニティを「オンライン動画ストリーミングの分野におけるさらなる破壊と競争の促進」を企てる「嫌な毒の巣窟」と呼び、改善を呼びかけた。

これらのプラットフォームが成長し、普及し、収益を上げているにもかかわらず、旧態依然とした人々が多くのことを取り違えたことは明らかだ。ネットワーク効果、大規模なスケール、勝者総取りの経済性を重視した中央集権型のWeb 2.0は、もはや社会のためにはならない。

今こそ変化を起こす時だろう。Web3の起業家として、より協調的・創造的でユーザー中心のインターネットを育むオープンなインフラを構築するにあたって、前世代のテクノロジーの根本的な欠陥を解決するのは私たちの役目だ。

Web3がどのように現在のデジタルエコノミーの最も顕著な問題点を解決できるのかを説明しよう。

セキュリティやデータ管理の不備

Twitchは、背景をAmazonの創業者である億万長者Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)の写真に置き換えるなどのいたずらに悩まされ続けている。これらのセキュリティ問題は元従業員からの報告にもあったように、常在していたようだ。

中央集権的な組織と共有しているデータはすべて危険にさらされていることがわかってきた。銀行、小売業者、SNSプラットフォームからの個人情報の流出が何年も続いていることからも、インターネット上のものは何であれ、真の意味でのプライバシーを保てるとは考えられない。

Web3は暗号プリミティブに基づいて構築されており、多くの場合オープンソースコードを採用しているため、誰でもコードをレビューすることでプロジェクトに貢献することができる。これによりユーザーのセキュリティが向上し、透明性が競争力につながる。これは、単にプライバシーに基づいているだけではなく、実際にユーザーの価値を守ることにつながる。セキュリティ研究者の@samczsunは、0x、Livepeer、Kyber、Nexus Mutual、Aragon、Curveなどのプロトコルに潜在するエクスプロイトを特定し、失われた可能性のあった価値を数十億ドル(数千億円)分救済した。

相互運用可能な規格の意味するところは、ERC-721ベースのNFTは多数の異なるフロントエンドアプリケーションで取引や閲覧ができ、ERC-20トークンは注目と価値を得るために競い合う金融商品のエコシステム全体にアクセスできるということだ。これにより、プラットフォームにとってはリスクが上がり、セキュリティ侵害があった場合にユーザーの流出につながる可能性がある。

有害性とプラットフォームの説明責任

Twitchのハッカーたちは、違法で不道徳な行為を行ったが、ある点では正しかったと言える。ストリーミングプラットフォームの有害性は増しており、大規模なハイテク企業は問題の大きさに見合った対応をするのに苦労している。だがWeb 2.0の世界では、ストリーマーには実行可能な代替手段がない。YouTubeやFacebook Liveに移行することはできても、それはまた別の有害なアテンション・エコノミーのプラットフォームに置き換えるだけのことになる。

これらの現実は、クリエイターがこれまで以上に力を持つ環境を受けた結果だ。ファンは好きなクリエイターを好きなプラットフォームでフォローし、それがクリエイターに大きな影響力を与える。有害性から逃れるためには、クリエーターはクローズド・プラットフォームから出て、コミュニティとの直接的な関係を通じて自分の運命をコントロールするためのWeb3ツールが必要だ。

またWeb3は、ユーザーとプラットフォーム間の力関係を再調整し、ユーザーは自分のデータをコントロールできるようになる。Spruceのようなデータ管理プラットフォームが提供する相互運用性とポータビリティのおかげで、Web3プラットフォームによってユーザーは簡単に「退場による意思表示」を行い、別のプラットフォームに移行できるようになる。

ConfluxやMoralisのような企業によって、ブロックチェーンや規格を超えた規模拡大が容易になったため、競合他社は機会があればいつでも迅速に行動を起こすことができる。例えば、NFTの取引プラットフォームであるOpenSeaが、どのNFTが取り上げられるかを知った上でインサイダー取引を行っていた可能性があることがユーザーに発覚した際には、Artionのような代替プラットフォームが登場し、NFT市場で認識されている不満の一部を解消した。このような市場の動きに対する迅速な反応は、規模の大きさと閉鎖的なアクセスに依存して新規参入を阻む従来のWeb2.0のエコシステムには存在しないものだ。

しかし、Web3.0はユーザーとの直接的な関係をはるかに超えている。これらのプラットフォームはユーザーが所有し、コミュニティが主体となっているため、コミュニティが自ら節度ある行動をとるような動機付けがなされている。動画配信のケースでは、大切なメンバーを他所に追いやるようなヘイト・レイドを望むコミュニティはないだろう。

Web2.0の世界では、ユーザーはプラットフォームが行動を起こすのを待たなくてはならない。Web3では、ユーザーは内蔵されたガバナンスとモデレーションのメカニズムを通じて行動することができる。Mirrorのブログプラットフォームでは、毎週誰が記事を書いて公開するかをユーザーが投票で決めている。Web3 indexでは、掲載されているプロジェクトが後続のプロジェクトの追加や削除を管理し、エコシステムの健全な成長を確実にしている。

Facebookの内部告発者は、Facebookには2層構造の司法制度があり、有名人は一般ユーザーとは異なる扱いを受けていることも明らかにした。一般のアカウントが利用規約に違反するとペナルティを受けることがあるが、多くのフォロワーを持つアカウントは同じ行為をしても逃げられる可能性がある。

Web3ではこの点も修正され、ブロックチェーンの不変性のおかげで透明性が高まり、検閲にも耐えられるようになった。意思決定はSnapshotのようなツールを使ってオープンに行われ、より広範なコミュニティによって推進される。ガバナンスはブロックチェーン上で行われ、誰もが見ることができる。裏取引や二層構造の司法制度はない(もちろん、投票でそう決められた場合は別だが)。すべてコミュニティ主導で行われるため、方向性や透明性のレベルに納得がいかない場合は、参加者は簡単に去ることができる。

不均衡なクリエイターエコノミー

Twitchのリークにより、トップパフォーマーと一般のクリエイターの支払い額に大きな格差があることが明らかになった。このようなダイナミクスは、プラットフォームと一部のクリエイターのみの間でインセンティブの合意を形成する。少数のクリエイターが収益の大半を占めるようになると、プラットフォームは最も重要なインフルエンサーに注目を集めるようになる。

Web3のパラダイムは、アクセスを民主化し、クリエイターとファンの間のサイロを解消することで、このようなインセンティブのズレを解消する。NFT、デジタルペイメント、トークン、クラウドファンディングといったWeb3のクリエイター向けマネタイズメカニズムは、クリエイターに優しいやり方で条件を平等にする。glass.xyzのようなプラットフォームを利用しているアーティストたちは、魅力的なライブストリームとともにNFTによって、Web 2.0モデルで販売するよりもはるかに優れた方法でコンテンツを収益化できることを発見した。

Web3では、ユーザーは自分のプラットフォームを所有することができ、多くの場合トークンによって調整される。ユーザーはプラットフォームの成長によって直接利益を得られるため、例えばモデレーションのような重要なサービスを提供する動機にもなる。

また、ユーザーはファントークンを購入することで、お気に入りのクリエイターにさらにコミットし、情熱を共有することで、健全なファンコミュニティを育むポジティブなフィードバックループを構築することができる。Rally、Socios(Chiliz上に構築)、Rollなどのプラットフォームは、クリエイターが自分の評判、権威、創造性を仲介者なしで直接収益化できるツールを提供する。これによりクリエーターがプラットフォームとなることで、インセンティブがさらに合致に近づく。クリエイターは関与のルールを定義することができ、利害関係のない第三者に干渉されずに、健全なコミュニティの維持に必要なことを行うことができる。

インターネットのアップグレードは、社会にとって良いこと

社会構造や経済構造の多くが民間企業数社が管理するインフラに依存していることは、間違いなく有害である。また、そのような企業が説明責任を果たさず、変革を約束しても注目が集まらなければ道半ばで終わってしまうようでは、ダメージはさらに大きくなる。

しかしWeb 2.0を完全に排除することはそれほど重要ではなく、社会が切実に必要としているインターネットのアップグレードを行うことが重要なのだ。Web 2.0のツール自体は非常に大きなポジティブなインパクトを持っているが、そこにはトレードオフもある。Web 2.0の構造的な誘引により、責任を負わない柔軟性に欠けるビッグテックによる独占が起こった。Web3は、先行するWeb 2.0の良い点を取り入れ、すべてのユーザーの間でエコノミーとインセンティブを調整することで、インターネットを進化させ、広告モデルの悪影響を回避できる。

文化とコントロールという点では、中央集権的なクローズド・プラットフォームよりも分散型サービスの方が圧倒的に有利だ。Web3は、データのポータビリティと相互運用性によってユーザーに力を与え、自己管理型のコミュニティをサポートするような動機を中心に置き直すことで、コミュニティを育成するためのまったく新しい方法を提案している。

ハウゲンは正しい。「Facebookを解体することが重要なのではありません。進むべき道は、透明性とガバナンスです」。私たちは皆、より良いものを得られるべきだ。そして、透明性とコミュニティのガバナンスを優先するサービス、プラットフォーム、製品こそが、次のデジタル経済の時代に繁栄するだろう。

画像クレジット:Peter Dazeley / Getty Images

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(文:Doug Petkanics、翻訳:Dragonfly)