SpaceXの元エンジニアがクリーンな自律走行型の電気鉄道車両を開発中

SpaceX(スペースエックス)の元エンジニア3人が設立したParallel Systems(パラレル・システムズ)は、バッテリーで駆動する型鉄道車両を開発する会社だ。同社は米国時間1月19日に4955万ドル(約56億円)のシリーズAでステルスモードから脱却した。360万ドル(約4億円)のシードラウンドを含め、これまでに5315万ドル(約60億円)を調達した同社は、既存の鉄道インフラを活用した、より効率的で脱炭素の貨物ネットワークの構築に取り組んでいる。

共同創業者でCEOのMatt Soule(マット・ソウル)氏によると、今回の資金はParallel Systemの第2世代車両の開発と、同社の車両を実際の運用に組み込む方法を考案するための高度なテストプログラムの立ち上げに充てられる予定だ。

同社は、Anthos Capitalがリードし、Congruent Ventures、Riot Ventures、Embark Venturesなどが参加した今回のラウンドで得た資金を、約60人のエンジニアの雇用に充てるつもりだ。そうしたエンジニアの多くはソフトウェアを担当するとソウル氏は話す。

同社の鉄道車両アーキテクチャは、貨物の二酸化炭素排出、トラック輸送のサプライチェーン上の制約、鉄道貨物の限界といったいくつかの問題の解決を目指している。米国では、鉄道網が全貨物輸送の28%を占めているが、そのほとんどはバルク輸送であり、すなわち石炭や木材などの天然資源を輸送する大型列車だ。鉄道貨物輸送のごく一部はインターモーダル輸送と呼ばれ、基本的に船やトラックなどさまざまな輸送手段間で鋼鉄コンテナを移動させる。

「鉄道は、インターモーダル輸送に関しては成長するチャンスが多く、当社はこの分野に重点を置いています。というのも、競争とイノベーションの余地があると考えている分野だからです」とソウル氏はTechCrunchに語った。

Parallelが特許出願中の車両構造は、標準的な輸送用コンテナを1段または2段積みにして輸送することができる個別動力の鉄道車両を含む。この鉄道車両は合流して「小隊」を組んだり、途中で複数の目的地に分かれたりすることができる。つまり、サービスを経済的なものにするために大量の貨物を積載する必要はない。しかし、米国でほとんどの貨物輸送を担っているトラックよりもはるかに多くの重量を運ぶことができる、とソウル氏は話す。

「貨物列車のユニットエコノミクス(ユニット単位での経済性)がトラックと競争できるようになるには、非常に長い列車が必要で、機関車と乗務員のコストをその長い列車1本で償却することになります」とソウル氏は語る。「問題は、その長い列車をどこに停めたらいいのかということであり、答えは『あまりない』です」。

貨物輸送を長い列車に頼るということは、eコマース分野の需要増に対して頻繁に処理するのは難しい、ということだ。なぜなら、そうした長い列車は常に都市部や港にアクセスできるとは限らない。その物理的な大きさに対応するために、特別に作られた大きなターミナルが必要なのです、とソウル氏は指摘した。

「当社のユニットエコノミクスは、それほど大きな列車には依存しません」とソウル氏はいう。「荷揚げと荷積みのために1日中待機するのではなく、小隊で動くことができます。1〜2時間で出発し、他の小隊のためにスペースを空けることができます。そのため、港湾や内陸部の港湾シャトルシステムを構築することで、海に面した港から内陸部の港にコンテナを移動させることができます。内陸部の港はトラックにとってアクセスしやすい場所であり、倉庫保管場所にも近いのです」。

自律性に関して言えば、鉄道の閉じたネットワークは、レールへのアクセスが制限され、交通が集中制御されているため、自律走行技術を安全かつ早期に商業化するための理想的な運用設計領域だとParallelは見ている。ただ、同社の長期的なビジョンは有望と思われるものの、同社はまだ全国ネットワークでのテストを行っていないことに注意が必要だ。同社は、全国ネットワークから隔離されたロサンゼルスの小さな鉄道でプロトタイプ車両をテストしてきた。

米国の鉄道はオーナー制で私有化されていて、これによりParallelが車両や車両を動かす自律システムを大規模にテストすることは難しい。同社は、民間の鉄道会社を顧客に据えており、鉄道会社が日常的にサービスを運営するためのツールを販売またはリースする一方、技術の提供や統合という点でサポートする役割を提供したいと考えている。従来型鉄道のパートナーを得るまでは、同社の技術が実際の運用に対応できるかどうかを確認することはできない。

Parallelが手がけている技術の市場投入は数年先になるかもしれない、とソウル氏は話すが、世界中の荷主はより速い輸送だけでなく、よりクリーンな輸送も求めており、この分野の市場を手に入れるチャンスはある。

同社の小隊技術は、自律走行型鉄道車両が互いに押し合って荷重を分散させるのが特徴で、この技術によりParallelの車両がセミトラックと比較してわずか25%のエネルギーしか使わないようになると同社は予測している。

「貨物の脱炭素化を加速させること。これが当社の取り組みの根本的な狙いです。しかし、我々が目にしている問題は、鉄道の事業規模がサービスを提供できる市場に限定されていることです」とソウル氏は話す。「なので我々は、エネルギー効率を高めると同時に、運用面や経済面の障壁を取り払おうとしているのです。さらに、パワートレインを電動化することで、脱炭素化の効果をさらに加速させることができます。というのも送電網そのものはクリーンではないからです。当社が開発しているものとディーゼルトラックの比較において、米国の送電網の平均的なCO2含有量を見ると、当社の技術を使えば、現在のディーゼルトラックより貨物輸送1マイル(約1.6km)あたりにかかるCO2を90%削減することができます」。

画像クレジット:Parallel Systems

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(文:Rebecca Bellan、翻訳:Nariko Mizoguchi

投稿者:

TechCrunch Japan

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