米議会下院は2022年度アメリカ競争法を可決しました。この法案には世界的な不足が続く自動車やコンピューター向けの半導体不足を脱するため、また中国に対する半導体製造面での優位性を維持するため520億ドルにのぼる補助金を計上し、さらに研究開発のために3000億ドルという巨額の予算を設定しています。
ナンシー・ペロシ下院議長は「サプライチェーンの面で米国の自給自足を実現し他国への依存をなくすことが法案の目的」だと述べました。最終的に法案が成立すれば、技術的・産業的優位に立ちつつある中国に米国が対抗するための包括的な試みになるはずです。
下院での可決により、この法案は上院との間で妥協案を模索する交渉に入ることになっています。ただ、このままでは予算が最終的に承認されるかどうかはわかりません。下院は民主党がやや優勢だったため法案が通ったものの、共和党はたとえばこの法案でに織り込まれた、発展途上国を支援するためにパリ協定で設立された緑の気候基金(Green Climate Fund)への拠出金80億ドルをはじめとして気候変動への対処に余分な条項が多すぎると主張しています。またこの法案では中国の責任を追及するのに不十分とも述べています。
交渉は早くて数週間、時間がかかれば数か月になると予想され、ジーナ・ライモンド商務長官は「数日の遅れが寄り大きな遅れになり、それは国内国家安全保障上のリスクを増加させるだろう」として交渉の迅速な決着を求めました。またバイデン大統領もこの法案が「重要なものである」と述べ「米国には待っている余裕はない」ています。大統領が法案に署名して法律として成立させるには、上下院の摺り合わせによって両院を通過しなければなりません。
今回の法案に対する投票は、北京冬季オリンピックの開会式の数時間後、議会で中国でのオリンピック開催を決めた国際オリンピック委員会に対する批判が出ているなか行われました。人権団体は以前から中国の人権に対する姿勢を批判していますが、中国はその主張を否定しています。
また今回の可決に対する自動車業界の反応としては、たとえばフォードの最高政策責任者兼法務顧問のスティーブン・クローリー氏はこの法案が成立すれば「フォードが世界的な半導体不足による生産の制約を緩和し、製造ラインの稼働を維持し、顧客が求めるエキサイティングな機能を備えたコネクテッドカーや電気自動車を提供するために役立つ」とコメント、フォード、GM、ステランティスを代表する米自動車政策協議会も上下院の「意見の相違を迅速に解決」することを議会に求めました。
一方、IT産業ではインテルが先月、オハイオ州に200億ドルを投じて半導体製造工場を建設すると発表しており、その際にこの法案から業界に追加支援があれば、今後10年間で新工場に1000億ドル規模の投資を行う可能性があるとしていました。またこの法案では、ほかにアップルや台湾TSMCのアリゾナ工場など、半導体製造施設の新設(すでに着工したものを含む)のために390億ドル(約4兆5000億円)の補助金を盛り込んでいます。
(Source:New York Times。Coverage:Automotive News。Engadget日本版より転載)