Spotifyの車載デバイス「Car Thing」が米国で一般販売開始

Spotify(スポティファイ)の不思議な名前の車載エンターテインメントシステムで2019年からテストされていた「Car Thing」が、米国で一般販売開始となった。2021年10月の限定販売分よりも10ドル(約1150円)高い89.99ドル(約1万350円)で、AppleのCarPlayやAndroid AutoなどSpotifyに簡単にアクセスできるインフォテインメントシステムを備えていない自動車の所有者を主にターゲットとしている。

Car ThingとスマートフォンのSpotifyアプリを接続し、スマートフォンの携帯回線(または利用可能ならWi-Fi)を利用して音楽やポッドキャストをカーオーディオでストリーミング再生する。カーオーディオとスマートフォンをUSB、Bluetooth、Auxのいずれかで接続して使う。

Spotifyはまず、ユーザーが車内でサービスをどう使うかを知るためにCar Thingの実験を始めた。そこから数年が経ち、デバイスのハードウェアと工業デザインはシガーソケットに差し込む小さいアイテムから、大きいつまみやカラフルなタッチスクリーン、音声コントロール機能、多様な接続やマウントのオプションを備えた親しみやすいプロダクトへと進化してきた。

画像クレジット:Spotify

現在は「Hey Spotify」と話しかける、タッチスクリーンをタップする、ダイアルを回す、上部にある4つのプリセットボタンのいずれかを押すといった操作でSpotifyのサービスを利用する。プリセットボタンには好きなアーティストやステーション、プレイリスト、ポッドキャストを設定しておくことができる。

Spotifyはテストを通じて、ユーザーはそれまでの車内でのメディアの楽しみ方よりもCar Thingを好むことや、音声コマンドでのメディアの操作が気に入っていることを把握した。その結果、ユーザーは車内でSpotifyを聴くことが以前よりも増えたと同社は説明したが、このことを示す具体的な数字は明らかにしなかった(このデバイスを一般に販売するには、プロジェクトはある程度成功する必要があっただろう)。

Spotifyの第3四半期収支報告でCEOのDaniel Ek(ダニエル・エク)氏は、数カ月間でCar Thingのウェイトリストに200万人以上が登録したと述べ、消費者の需要があるとの判断につながった。

一般販売されるCar Thingは以前の製品と同じものだが、小規模なソフトウェアアップデートが予定されている。ナビゲーションアプリと同様のナイトモード機能が追加され、夜は画面が暗くなる。音声コマンドの「Add to Queue」(キューに追加)で音楽やポッドキャストを再生キューに追加することもできるようになる。Spotifyは、これらの新機能を今後のCar Thingのアップデートで公開すると述べている。

画像クレジット:Spotify

これまでCar Thingはウェイトリストに登録し、プレミアム(個人、ファミリー、学生を問わず)の契約をしている米国のユーザーしか購入できなかった。現在もプレミアムの契約は必要だが、ウェイトリストの登録は不要になった。Car Thingは当面、米国のみの製品だ(販売価格には送料を含むとSpotifyは説明している)。

唯一変更されたのが、Car Thingのパッケージだ。以前はピンク色の箱だったが、今度はSpotifyアプリのアイコンで使われているブランドカラーよりもミントっぽい、明るいグリーンになった。箱には、動作しているユーザーインターフェイスを表す画像が配置されている。

Car ThingはSpotifyを車内で聴きたいサブスク利用者には便利だが、結局はSpotifyにとって、ユーザーが移動中にサービスをどのように利用するかについての直接的なデータを収集する手段となる。しかも運転中はハンズフリーで操作する必要があるのだから、同社はユーザーの音声データにアクセスすることにもなり、今後のサービス向上に役立てられるだろう。

画像クレジット:Spotify

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(文:Sarah Perez、翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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