Appleの音楽ストリーミングサービスは、Beatsを一から作り直してiTunesブランドを冠し、Appleのハード、ソフトとより密に統合されたものになると考えられているが、6月におそらくWWDCで正式デビューするらしい。同社の現状に詳しい情報筋がTechCrunchに語ったところによると、ターゲットは6月8日で、少なくとも正式発表はされるという。9to5MacのMark Gurmanは、Appleの年次デベロッパーカンファレンスでデビューすると予想している。日程は6月8日から12日の間になると言われているが正式な日付は決まっていない。
Appleの音楽ストリーミングは、Beats方式のパーソナル化と推奨機能を一部残すがソフトウェア面ではほぼ一新される可能性が高く、かつBeatsブランドは外すだろうと本誌は昨年9月に報じた。Appleはウェブ、Androidを含むプラットフォーム横断サービスを提供する計画であり、公開が当初報じられた3月ではなく6月になる理由の一つは、Android版開発のためと考えられる。
クロスプラットフォームがAppleにとって十分理にかなっている理由はいくつかある。第一に、音楽に関して同社は、iTunes for Windowsをはじめとしてライバルプラットフォームに手を差し伸ばしてきた歴史を持つ。さらに、ウェブ上のiCloudでは使用するハードウェアによらずiWorkを使えるようにした。Appleにとってサービス事業は、未だにハードウェア売上を伸ばすためのビジネスの一環だが、音楽ストリーミングやクラウドベースの生産性ソフトウェアは、自社のエコシステムを越えて顧客を捕えられるサービスであり、Appleデバイスを使えば、専用のアドオン機能によってさらに恩恵が受けらるようになれば理想だ。
Appleは、潜在ユーザーにとって魅力的な価格設定を考えている。月額料金は7.99ドルと言われており、これはSpotifyやRdioの有料定期購読よりも2ドル安い。
低価格と並ぶAppleの優位性は、その莫大なインストールベースだ。Spotifyは最近、ユーザー数6000万人、有料メンバー1500万人を突破したが、Appleは自社の音楽サービスを、億単位のiPhone、iPad、Macユーザーに推進できる。さらに、iTunesとApple Storeのおかげで、8億枚のクレジットカードが登録済みなので、好奇心あるリスナーを有料会員に変えるには、ほんの数クリックだけでよい。
Appleは、新サービスでファンの大好きなアーティストたちを確実に揃えるために必要な現金を、あり余るほど持っている。情報源によるとAppleはレコード会社の人材を集めており、すでに業界の「スーパーコネクター」Jimmy Iovineが指揮をとっている。ビートルズのように頑なアーティストとストリーミングで独占契約すれば、Appleはストリーミングのアーリーアダプターだけでなく、幅広いリスナーを引き寄せることができるだろう。テイラー・スウィフトはSpotifyと決裂した後、iTunesと手を組んでアルバムを提供しているが、Appleが彼女のレコードレーベルBig Machineに関心を示しているという噂もある。
不振にあえぐ音楽業界にあって、Appleの購買力はテクノロジーよりはるかに大きい。蓄えた利益のほんの一部を使うだけで、ストリーミングのベストセレクションを勝ち取ることができる。
Appleと戦うために、Spotify等のサービスは、パーソナル化とプレイリスト、初期のネットワーク効果、そしてAPI経由のサードパーティーアプリ・エコシステムによる囲い込みに頼るしかない。
しかし世界中の殆どの人々は、歴代レコード音楽の無制限ストリーミングを体験したことがない。そして、自ら繰り返し証明してきたように、Appleには、早期に何かを成し遂げた会社を、自分がうまくやることによって圧倒する力がある。
本誌はAppleにコメントを求めており、回答があり次第続報する。
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(翻訳:Nob Takahashi / facebook)