ブロックチェーンをベースにしたツールでMediachainはアーティストの著作権管理を目指す

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インターネット上で言う「アグリゲーション」とは、実際は誰も賛美しない最上級の社交辞令となっている。

あらゆる形式のコンテンツは、デジタル時代において、徐々にコモディティーや通貨に変わりつつある。しかし、世界中どこでも瞬時にコミュニケーションができるスピードと簡便さ、そして無制限にコピーできるキャパシティーの実現により、クリエイターと彼らの作品が切り離されやすくなってしまった。

ブルックリンに拠点を置くMediachainはそれを変えたいと考えている。

ブロックチェーンに似た分散化メディア・ライブラリとコンテンツ認証テクノロジーを組み合わせることで、Mediachainのツールから誰でも作品を登録したり、クリエイティブ作品をインターネット上やアプリからトラックしたりすることができる。

「Mediachainは世界規模のメディア・ライブラリで、その構造はビットコインのブロックチェーンにヒントを得ています。また、ShazamやGoogle画像検索で活用されているのと似たコンテンツIDテクノロジーを利用しています」とMediachainの共同ファウンダーであるDenis Nazarovは言う。

アプリ開発者は、コンテンツのメタデータを使って自動で作品の帰属を設定し、コンテンツ利用などの履歴を保存する。また、コンテンツがどのように使用されているかというアナリティクスも提供する。

Mediachainは同社のサービスについて、ブログで次のように説明している。

フィードに流れてきたバイラルGIFのアーティストを知ることができる状況を想像してみてください。あるいは、どんな画像でも発祥や歴史を知ることができたり、あなたが音楽の再生ボタンを押す度にそのミュージシャンに自動で報酬が入ったりすることも可能です。世界の文化に関する情報を発見したり、再利用したりすることが可能なツールを使って、開発者はこのような仕組みを構築したり、さらに拡張的な仕組みを作ることもできます。

Mediachainは、同社のレポジトリにはすでに200万以上の画像があるという。同社のコンテンツライブラリには、The Museum of Modern Art(MoMA)、Getty Images、the Digital Public Library of America and Europeanaなどの団体のメタデータの記録もあるという。

「もしインターネット上にある全ての情報が共有されていたらどうでしょう。Mediachainを使うと、どこで使用されているメディアであっても、その作者を特定し、画像のストーリーを知ることができます」ともう一人の共同ファウンダーであるJesse Waldenは言う。

Waldenによると、最終的な目標はコンテンツ利用をスムーズで効率化することという。「現在、画像がバイラルに広がって何百万人がそれを見たとしても、その画像のクリエイターは真っ当な評価を受けることができないこともあります」とWaldenは言う。

そして、オンラインでは著作権の帰属という概念は浸透していない。著作権への帰属がなされていなかったり、盗作が相次いでいる。

いつまで経っても同じことが繰り返されている。

「希少性を主張するのは実りの少ない努力です」とWalden。「これは人為的な希少性をコントロールしたり、創作したりするのとは違います」。

Waldenによると、既存のコピーライト団体が取り組みが失敗している理由はそこにあると話す。

WaldenとNazarovのどちらも、ほぼ無料で全てのファイルを共有できる時代を過ごしてきた。NapsterもBitTorrentもTumblrは基本的に無料で、そして基本的に無秩序なファイルシェアリングのためのプラットフォームだ。

これらのプラットフォームはイノベーションには役立ったが、Mediachainの共同ファウンダーの両名は、クリエーターが自身の作品のオーディエンスと関わることができない形で、著作権が奪い取られていることに気がついたと話す。

一つの問題は、作者が作品のコントロールをオーディエンスに失っていること、そしてもう一つは作品を支持する人に、本来の作者が見えなくなってしまっていることだ。

Andreessen、Union Squareといった投資家やその他Digital Currency Group、LDV Capital、Alexis Ohanian、William Mougayar、Kanyi Maqubela、David Lee、Mathieu Drouin、Brian Messageらもファウンダーの考えに同意している。

「オンラインのエコノミーは、注目度が重要なエコノミーです」とWaldenは言う。「誰もがクリエイターです。InstagramやTumblrに何かを投稿し、他の誰かがライクしたり、フォロワーができたりします。プラットフォーム経由でマネタイズできますが、作品の所有権を渡すことでしかマネタイズできないのです」と言う。

Mediachainでは、作者がシステムに登録し、Mediachainのノードを作成することで所有権を示すことができる。開発者は、Mediachainのプロトコルを使用してコンテンツを登録する。ログインする開発者が増えるほど、Mediachainのデータセットを他のプラットフォームにも普及させていくことができる。

NazarovとWaldenのどちらにとっても、著作権の帰属の問題は学術的な意味にとどまらない。Nazarovはプログラマーの世界に入る前には、ファインアートの写真家だった。Waldenは、Solange Knowlesといった作曲家のマネジメント会社をローンチするのを手伝っていた。

「最終的な長期ビジョンは、配信先とは独立した形で、作品経由でクリエイターが認識されるようになれば、クリエイターは配信の全てのプロセスを保有し、最終的にこれまで不可能だった方法でマネタイズができようにすることです」とWaldenは言う。

「私たちはメディアがどのように配信されるか自由に選べる市場の世界で生きています」という。今のモデルは変わらなければならないとMediachainのファウンダーは考えている。配信先のプラットフォームではなく、クリエイター自身に権限があるモデルを目指している。

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(翻訳:Nozomi Okuma /Website/ twitter

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TechCrunch Japan

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