鉄道ストもなんのその―Uberの「ボートで通勤」を試してみた

Uberはあらゆる交通手段に革命を起こそうとしている。BART〔ベイエリア高速鉄道〕が月曜日にストに突入しそうだと聞いてUberはBoatboundというサービスと提携し、Boat To Work〔ボートで通勤〕というオプションを新設した。今朝、私はこのサービスを利用してオークランドからサンフランシスコまで渡ってみた。

Uberは30億ドルの会社評価額で1億5000万ドル以上の巨額の資金調達を計画しているという情報が流れている。つまりUberは「より便利なタクシー」以上のものを目指しているわけだ。Uberの本質は、人間であろうと物品であろうと行きたいところへ移動するのを容易にすることだ。現在は自動車が対象だが、他の輸送手段にも巨大な可能性が広がっている。

たとえば、Uberはオンデマンドのアイスクリーム販売、マリアッチ楽団の派遣、シドニーでは水上タクシー、オースティンでは人力車、ニューヨークではハンプトンの別荘地へのヘリコプター飛行などを提供してきた。もっともこれらはビジネスというより話題づくりのマーケティング・キャンペーンだった。

BoatboundというAirbnbのボート版のレンタルのスタートアップのファウンダー、CEOのAaron Hallがストライキが差し迫っているというニュースを聞いて、「通勤客をボートでサンフランシスコ湾を横断させるというサービスにUberが協力してくれないだろうか?」と思いついた。HallはUberの投資家ShervinPishevarに連絡し、PishevarがUberに話をつないでくれたのだという。 その結果、「ボートで通勤」プロジェクトが動き出した。

HallのBoatboudは、P2Pネットワークでボートを貸し出すことによってオーナーの高額な維持費の軽減を図ろうというサービスだ。“BoatTo Work”はBoatboundの利用者のコミュニティーを広げるためのPR活動としてうってつけというわけだ。”BARTのストは直前でジェリー・ブラウン知事の介入で回避されたが、今朝はたまたまベイブリッジでトラックが火災を起こしたために通勤は大混乱している。

錨を上げろ!

6:30am: Uberアプリを開くと、‘Boat’という新しいオプションが表示された。30ドルでUberは自宅に車を差し向け、オークランド・ドックでボートに乗り換えてサンフランシスコ湾を渡り、また車でTechCrunchのオフィスまで送ってくれるという。私はドックで気さくなScott船長に会った。Boatboundを利用するのはこれが初めてだそうだ。

7:00am: “われわれのボートはRollercoaster”号という44フィートのレース用ヨットだ。手回しよくコーヒー、オレンジ・ジュース、デニッシュが用意されていた。私はキャプテン帽をかぶって水面に脚をぶらぶらさせながらこれを書いている。

7:40am: 同乗者のEricaは本当に通勤客で、われわれも紹介したことがあるZaarlyというモバイル・eコマースのスタートアップのUXデザイナーだ。「船で通勤するのはBARTより遅いけど、面白そうだから試してみたの」だそうだ。

7:50am: 寒い。さいわいUberが毛布を用意してくれた。曇り空の下で海が泡だっている。しかしベイブリッジの下をくぐると、トラック火災のおかげで車の長い行列が立ち往生しているのが見えた。これなら海も悪くない。

8am: 上陸! オークランドを出港してから1時間でサンフランシスコのフェリービルディングに着いた。本船の引き波に何度か揺すられたものの、誰も船酔いにはならなかった。通勤客は出迎えのUberXリムジンに乗り込んでそれぞれの職場に向かった。

たしかにこの旅行はBARTに比べればだいぶ高いし、時間もかかった。しかし印象に残る体験だった。Boat To Workは大ビジネスにはならないだろうが、新しいサービスをあっという間に立ち上げたスピードには驚かされる。Uberは大規模なイベントや災害などの突発的な事態に対応して即座に臨時の輸送手段を提供できることを実証した。.

Uberのコミュニティ・マネージャーのMatt Hernsにドックでインタビューしたが、Hernsは「われわれのフレームワークを使って何ができるか、ときおりテストする必要がある。それに面白い体験になるしね」と語った。

実際、特別な体験を提供できることがUberの本質的強みの一部だろう。 UberのリムジンはちょっとしたVIPになった気分を味あわせてくれるし、BoatTo WorkはBARTでぎゅう詰めの日常を一瞬忘れさせてくれる。目的地に着くことも大事だが、旅自体も重要なのだ。そこにUberの成功の秘密があるのではないか?

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(翻訳:滑川海彦 Facebook Google+


投稿者:

TechCrunch Japan

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