Y CombinatorのW20デモデーに参加したスタートアップ(消費者向け事業)

新型コロナウイルス(COVID-19)の感染拡大に対する懸念が高まる中、Y Combinator(Yコンビネーター)はこれまで慣れ親しんできた2日間にわたる米国サンフランシスコでの会合からイベントの開催方式を切り替え、デモデーのウェブサイトを通じて、招待された投資家とメディアにクラス全体を同時公開する方法で開催することを決定した。

さらに驚きなのが、投資家の動きが加速してきた事実を受け、YCがデモデー開催日を1週間前倒しにしたことだ。このため、デモデーのウェブサイトに録画したプレゼンを掲載するというプランは変更せざるをえなくなり、各事業は代わりにスライドに事業概要、今後の見通し、チームの経歴などの説明をまとめてプレゼンを行った。急速に進化する投資環境と相まって、この新たなスタイルがこのクラスにどのように影響するかは今のところはわからない。

プレゼンやウェブサイトのほか、場合によっては以前の記事から収集した情報をもとに、我々が集めたそれぞれのクラスの各事業のメモをまとめてみた。

読みやすさを優先し、全事業をすべて羅列するのではなくカテゴリー別にまとめている。以下は消費者向けの商品またはサービスの販売に焦点を当てた事業だ。そのほかのカテゴリー(ハードウェア、AI、フィンテックなど)に関してはこちらから読むことができる。

消費者向け事業

Apartio
Apart出張者をターゲットにした長期・短期レンタルサービスだ。同社はブラジルを訪問する従業員のいる企業をターゲットにして、AirbnbとBooking.comで直接旅行者を顧客とする予定だ。

Valienta
Valientaは中南米諸国での直接販売ネットワークプロセスの簡素化を目的としたソフトウェアだ。直接販売市場は270億ドル相当(2兆9100億円相当)を占めており、中南米では大きなチャンスと言える。1300万人の直接販売者は、主に個人的なネットワークに転売する女性達である。例えば米国のAvonレディのように、Valientaはこのプロセスを単一のアプリで近代化したいと考えている。

Trustle
子どもが夜寝てくれない時やかんしゃくを起こす時、途方もなく感じてしまうのが子育てだ。Trustleは保護者に向けた月額50ドル(5400円相当)のサブスクリプションで、育児と児童発達の専門家にいつでもアクセスできるサービスだ。創設者によると、インターネット上には育児に関する相反したアドバイスや意見が無数に飛び交っており、答えを求めて延々とグーグル検索を続けても、良い意見を得られることは少ないと言う。また、Trustleはほかの問題点も解決したいと考えている。児童発達における修士号を有する約18万人の幼稚園教師の年収は平均35000ドル(約380万円)と言われており、驚くほどに多くの専門知識が過小評価され、活用されていないことを示している。Trustleはこの2つの問題を結ぶシステムを築くことにより、保護者が子どもの認知、社会、感情、行動における発達について学び実行できるようにしたいと考えている。創設チームには、Google for Education反響部門の元トップ、臨床児童心理学者、およびEdTechスタートアップの元創設者が含まれている。

Viya
Viyaはモバイルファーストの中南米市場向けアパートレンタルシステムだ。テナントの生活を簡素化することを目的とし、クリーニング、メンテナンス、ランドリーサービスと併せて市内中心部の部屋やアパートのリースを提供している。

Jamiphy
Jamiphyのプレゼンは「ミュージシャン用のTikTok」とシンプルだ。世界中で相次ぐライブイベントの閉鎖に伴い、同スタートアップはミュージシャンらにショートビデオのライブミュージックを共有する場を提供するという潜在的な市場を得たと言える。同社は今月初めにインドネシアで事業を立ち上げている。

Breezeful
Breezefulは機械学習を用いて、顧客の住む地域で最良の住宅ローンを見つけてくれるサービスだ。同社が顧客に代わって貸し手と交渉し、取引が成立したときに貸し手から仲介手数料を得るシステムだ。9週間前のローンチ以来、7000ドル(約976万円)の収益を上げている。

Modern Village
Modern Villageは忙しい家庭の「補佐官」になれたらと考えている。月額30ドル(約3300円)で育児、掃除、食料品の買い物、食事などにおける計画を担う。このサービスにより利用者は1週間に約10時間を節約できると同社は見積もっている。現在はプライベートベータ版で運営中。

LegionFarm
eスポーツコーチング。Legionfarmは1時間毎の利用量を払うことで、『Apex Legends』『Destiny 2』『Fortnite』などのゲームの指導を一流プレイヤーやプロゲーマーから受けられるサービスだ。同社によれば、昨年だけでも35万時間以上のコーチング(プレイヤーの支払いは1時間あたり平均約16ドル(約1700円)と720万ドル(約7.8億円)のARR(年間収益予測値)を達成したとの事だ。Legionfarmに関しては以前にもこの記事で伝えている。

StayQrious
8〜15歳のインドの子供向けオンライングループクラス(コーディングクラスから開始)。同社によると、3か月前のローンチ以来生徒の定着率は90%に達している。

Yukstay
インドネシアでの長期レンタルを促進するプラットフォーム。仲介業者が新規物件を掲載し、顧客が閲覧と予約をできるシステムだ。同社によれば、3月の総収入は17万ドル(1850万円相当)になる見込みだ。

Refund Giant
多くの人は知らないが、英国への訪問者は出国時にVAT(付加価値税)還付を得られる。これをサポートするのがRefund Giantだ。ユーザーが領収書の写真をアップロードするとRefundGiantがすべての事務処理を行い、還付金額の25%が引かれるシステムだ。

Sayana
チャットボットのようなインターフェースを使用して、ユーザーが自身の感情の変化を記録できるようにするサブスクリプションベースのメンタルウェルネスアプリ。マインドフルネスにおけるアドバイス等を提供する。現在毎月の売上は約15000ドル(約163万円)で、月間で25%の成長率を達成している。

HelpNow
HelpNowはAHA認定のトレーニングと基本的な生命維持装置をUberドライバーに提供し彼らを活用することで、インドで救急車が到着するまでに必要な時間を短縮しようとする試みだ。ムンバイには347台の車両が存在し、9100件以上の支援の要請に対応した。創設者の1人の父親が心臓発作を起こし、45分以上救急車を待つことになると告げられたことをきっかけに同社が設立された。自分たちの車で病院へ運ぶことを選択し、幸いにも創業者の父親は一命を取りとめている。

Global Belly
インフルエンサーによるカスタムブランド製品を開発、販売する事業。ベーキングキットやレシピボックスなど、食品関連に焦点を当てた製品を皮切りに開始した。同社によれば、現在プラットフォームには17人のインフルエンサーがおり、今後200人のインフルエンサーが追加される予定だ。現在月間収益は約25000ドル(約272万円)を達成している。

Whatnot
プロによって認証された収集品を売買するための市場。FunkoPopフィギュアを皮切りに開始した。GOATの収集品版のようなものだ。同社によれば、GMV(流通総額)はローンチ後約3か月で月額3万ドル(約326万円)を上げているという。Whatnotについて以前書かれた記事はこちら

Pantheon
Science Bowlや英国のUniversity Challengeのような、大学生に向けた知識ベースのクイズショーイベントをモデルとしたPantheon。中高の生徒が集い競い合うだけでなく、同じような趣味を持つ仲間と出会って井戸端会議もできるアプリである。また、大学や企業が有望な候補者を見つけることができる一種の「採用」プラットフォームとしても機能する。

Glimpse
新型コロナウイルスの蔓延を遅らせるため自主隔離を行なっている最中、1人で過ごす孤独な時間を少しでも和らげることができるアプリがこれだ。Glimpseを使用すると、友達や友達の友達と2分未満の短いビデオチャットをセットアップできる。Instagramを無制限にスクロールするような受動的なものではなく、1日中費やす会議よりも短時間の対話のほうが価値を感じる場合がある。

Multiverse
独自のロールプレイングゲームを構築できるプラットフォーム。『Dungeons & Dragons』のようなオープンエンドのゲームやRobloxなどDIYのゲーム構築サイトに着想を得て設立された。

Nugget
ずばり「オーディオ版Instagram」。ユーザーは短いオーディオクリップを録音し、フィルターを適用してサウンドをアレンジし、ソーシャルフィードで共有することができる。自発的なスナップショット型のポッドキャスティングは、間違いなく我々の時代に合ったアプリと言えるだろう。

Together
Facebookはプライバシーにおいては改善されるべき点が多い。ユーザーのプライバシーを確保するため、Togetherはそのギャップを有料のソーシャルメディアアプリで埋めることを目指している。

Zelos
Zelosではゲーマーが無料で複数のビデオゲームにおいて報酬を獲得することができる。毎週32000人のプレイヤーがチャレンジを完了し(1分間に3人のキルを達成など)、バーチャルグッズ、割引、ガチャなどと交換できるポイントを獲得している。より多くのエンゲージメントを求めるゲーム開発者には、Zelosと統合することにより、ポイントスコアリングを高速化し開発者と分割する月額5ドル(約540円)のプレミアムサブスクリプションも用意している。

The Mercer Club
The Mercer Clubは高級ストリートウェアとシューズのメンズ向けレンタルサービスだ。月額75ドル(約8000円)を支払うと顧客は毎週2点までのアイテムを借りることができる。Instagramで1度着るだけのために10万円のグッチのパーカーを買う必要がなくなるというわけだ。「メンズ向けRent The Runway」の同事業モデルはすでにARR10万ドル(約1080万円)にまで成長している。

Adla
Adlaは試着してから購入できる服が詰められた箱を大学生の女の子に送り、購入したくない残りの服を受け取りに来るというサービスだ。同社はキャンパスコミュニティでの人口密度と人気の広がり早さで利益を伸ばしている。アイテムごとに7ドル(約760円)のマージンを請求し、最終的には顧客ベースを活性化させたいブランドを推奨することでコミッションを獲得したいと考えている。

Virgil Insurance
Virgil Insurance は65歳になる高齢者がメディケアの助成を受けた健康保険を購入するのを支援するサービスだ。オンラインブローカーを使用すれば、プランを簡単に比較することができ、コールセンターで延々と待たされることもない。毎日1万人の米国人が65歳を迎えるため、保険ブローカーは年間60億ドル(約6500億円)の手数料を稼いでいる。創設者らは以前に、サブスクリプションをキャンセルするためのTrimや、パワースポーツ車両購入のための資金調達をするOctane Lendingなどのフィンテックスタートアップを立ち上げた経歴を持つ。

Art in Res
Art In Resは、顧客が作品を予約購入できるファインアートのためのマーケットプレイスだ。同スタートアップは販売数よりも生産数の方が多いアーティストを登録し、割引や分割払いの価格付けや、ソーシャルメディアのフォロワーを収益化するためのツールを提供する。生計を立てるためにコーディングを学んだ画家としての過去を持つArt In Resの共同創設者は、現在新しいeコマースチャネルを探している125人のアーティストと提携している。

Hideout
米国のレストラン事業は8600億ドル(約93兆円)の市場であるが、全売上の59%はミレニアル世代によるもので、テイクアウトまたは配達用であるとHideoutは述べている。同スタートアップはデリバリーに特化したレストランブランドのポートフォリオを構築しており、日本のカツサンドやオーガニックボウルのブランドを皮切りに、イタリアのサブサンドや弁当ボックスに焦点を当てたコンセプトにも着手する予定だ。

Duffl
Dufflは大学生の「今すぐ欲しい」リアルタイムでの必需品需要をターゲットとし、10分以内にアイテムを届けるというサービスだ。キャンパス付近に学生が頻繁に購入する商品を保管し、学生を雇って電動スクーターで商品を届けるというものだ。収益は配送料のほか、大量購入によるマージンによって捻出されている。

Thunderpod
フィットネスを餌とするたまごっちのようなアプリ。各ユーザーはThunderpodアバターを取得し、アクティビティを実行するごとにそれが成長する仕組みだ。アプリはユーザーの動きを記録し、友達とフィットネスチャレンジで対戦したり、ユーザーが作成したダンスなどのフィットネスチャレンジの莫大なカタログから試すことも可能。インドで急成長中のテクノロジー市場から誕生した、増え続ける消費者向けソーシャルアプリの1つだ。

Carupi
中古車のP2Pマーケットプレイスを開発したCarupiはブラジルで事業を開始した。2021年の第1四半期までに米国に進出する予定だ。

Motion
MotionのチームはChromeユーザーがウェブ上での時間をより効率的に管理できるようにする拡張機能を構築している。より柔軟な構造を持つ同ツールは、単純なブラックリストやホワイトリストの域を超え、ユーザーがサイトを「非生産的」と指定することにより徐々に習慣を変えていくというものだ。現在このツールは無料で使用できるが、消費者に広く受け入れられるようになった後、より広範なB2B戦略に発展させることを望んでいる。

Cron
CronはGoogleカレンダーのための「超人」を構築している。Cronの共同創設者であるRaphael Schaadは以前、オリジナルのiA Writerアプリの作成に貢献した経験を持つ。彼の新しいスタートアップはGoogleカレンダーのパワーユーザーに月額19ドル(約2000円)をチャージし、ワークフローをクリーンアップしたり、ほかの生産性アプリと統合したりできる追加のパワー機能を提供する。

Moons
中南米版のSmileDirectClubとして自身を説明するMoons。2019年3月のローンチ以来、矯正治療とクリアアライナーを提供しており、SmileDirectClubの半額の価格であると主張している。同社の月間売上高は60万ドル(約6500万円)で、15の店舗で200人以上の人材を雇用している。Moonsについて以前書かれた記事はこちら

Chutney
インドの増加し続けるオンラインユーザー人口をターゲットとして、Chutneyは「インドにおける大衆市場向けのAmazon」になりたいと考えている。顧客はWhatsAppを使用して近くの小規模な店から新鮮な果物や野菜を購入し、翌日ピックアップするというものだ。

Yassir
Yassirはフランス語圏のアフリカ向けにデザインされたアプリだ。29か国に住む4億3000万人と推定される人口に一連の金融サービスを提供したいと考えている。

EduRev
試験勉強をしている2億人のインド人学生を対象とするエドテック企業がEduRevだ。試験準備プラットフォームのサブスクリプション費用は年間50ドル(約5400円)で、月毎のアクティブユーザーは45万人を超える。放課後の塾の代わりにと開発されたEduRevのアプリでは、生徒達にデジタル形式の受験コースを提供している。

Riya Collective
インドのウェディング衣装は高価なため、Riya Collectiveはウェディングに特化したRent The Runwayスタイルの事業をローンチした。2人のインド系米国人起業家によって設立された衣料品レンタルの同スタートアップは、データ駆動型のスタイリングおよびサイジングアルゴリズムを使用。同社の収益は3か月で月1万ドル(約110万円)から月5万ドル(約540万円)に成長している。

TagMango
「インド版Cameo」と言えるTagMangoは、トップインフルエンサーや有名人からのパーソナライズされたビデオメッセージを予約し購入できるというもの。同スタートアップは、単純に言えばボリウッドをよりインタラクティブで身近にすることで利益を得るという目論見だ。同社は1ビデオあたり平均20ドル(約2150円)をチャージしている。

FitnessAI
1万8000人の有料ユーザーを誇るFitnessAIは、パーソナライズされたウエイトトレーニングプランを提供している。創設者Jake Morは、10年間にわたるアプリ制作の経験を持ち、フィットネスアプリ制作に関しては4年の歳月をかけている。年間費用は90ドル(約9700円)となっている。FitnessAIについて以前書かれた記事はこちら

GiveAway
12か月前に設立されたGiveAwayは、中古品を提供するP2Pマーケットプレイスを構築している。5か国にまたがるユーザーベースで17万件を超える取引を成立させている。従来の市場とは異なり、ユーザーは入札を通じて仮想通貨で商品を購入する仕組みだ。

Deep Meditate
Deep Meditateでは個人に合わせたメディテーション(瞑想)のトレーニングを年額26ドル(約2800円)で提供している。同アプリは現在、月間15万8000人のアクティブユーザーを獲得している。

Pahamify
インドネシアのYouTubeサイエンスインフルエンサーによって設立されたPahamifyは、インドネシアの学生の大学入試をサポートするアプリだ。同スタートアップは従来の対面式個人指導などとは異なる指導方法を提案している。同社によると、年間約24ドル(約2600円)の同サービスは月間約6万5000人のユーザーを獲得している。

Edlyft
大学でコンピューターサイエンスを専攻した2人の高校の元同級生が、大学卒業後ベイエリアで再会したことから設立された同社。コンピューターサイエンスを勉強した経験がないものの、今後専攻したりキャリアにしたりしていきたいと思っている大学生を、メンターネットワークやチューターを通して支援するというものだ。

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TechCrunch Japan

TechCrunchは2005年にシリコンバレーでスタートし、スタートアップ企業の紹介やインターネットの新しいプロダクトのレビュー、そして業界の重要なニュースを扱うテクノロジーメディアとして成長してきました。現在、米国を始め、欧州、アジア地域のテクノロジー業界の話題をカバーしています。そして、米国では2010年9月に世界的なオンラインメディア企業のAOLの傘下となりその運営が続けられています。 日本では2006年6月から翻訳版となるTechCrunch Japanが産声を上げてスタートしています。その後、日本でのオリジナル記事の投稿やイベントなどを開催しています。なお、TechCrunch Japanも2011年4月1日より米国と同様に米AOLの日本法人AOLオンライン・ジャパンにより運営されています。