カスタマーエクスペリエンス管理のMedalliaが音声テキスト変換のVociを買収

現在の市場ではM&Aのペースはすっかり落ちているが、タイミングと金額が合えば、M&Aのための資金はまだある。米国時間4月22日、Medalliaが音声のテキスト変換スタートアップのVoci Technologiesを5900万ドル(約63億3000万円)の現金で買収すると発表した。Medalliaは、オンラインのレビューやソーシャルメディアなどのソースを調査し、企業の良い面と悪い面、改善すべき箇所を提案する、カスタマーエクスペリエンスのプラットフォームだ。

MedalliaはVociのAIテクノロジーを統合して、音声のやりとり、例えばコールセンターにかかってきた通話などを、同社のプラットフォームで分析するデータとして利用する計画だ。ソーシャルメディアやメッセージングが多く活用され、そして今は人々がオンラインへと大幅にシフトしているが、そのような状況でも音声は依然として企業と顧客とのやりとりの大きな部分を担っている。そのため、Medalliaにとって音声への取り組みは重要だ。

Medalliaの社長兼CEOのLeslie Stretch(レスリー・ストレッチ)氏は声明で「Vociでライブと録音の通話を100%文字に起こせば、迅速に分析して顧客満足度を判断でき、Medallia Experience Cloud(同社のSaaSプラットフォーム)にとって有力な材料になる。同時に、Vociで毎回の通話が終わった瞬間に分析し、コールセンター運営のあらゆる側面を確実に最適化できる。バーチャルやリモートでコンタクトセンターを運営しようとする際には特に重要だ」と述べた。

現在、市場には音声をテキストに変換する製品は多数あるが、Vociの特徴は感情、性別、意見、声による生体認証など、内容以外の多くの詳細を認識できるということだ。データを詳しく分析する際に、個人を識別する情報を取り除いてプライバシーを確実に保護することもできる。

Vociはカーネギーメロン大学からスピンアウトしてスタートし、Grotech Ventures、Harbert Growth Parnters、そして同大学などの投資家から合計で約1800万ドル(約19億3000万円)を調達した。3人の創業者はいずれも同大学で博士号を取得している。最終評価額はシリーズBの調達中だった2018年3月の2800万ドル(約30億円)で、今回の買収額は最終評価額の2倍をやや上回る。

Vociはこれまで急成長してきたようだ。同社はおよそ20億分間の音声を処理し、1月にはその勢いを示す数字として、直前の四半期にコンタクトセンターの業務が増加したことに伴い契約が63%増えたと発表していた。

コンタクトセンターだけでなく、金融、ヘルスケア、保険などの分野でもアウトソーシングを請け負っているとのことだが、取引先の社名は明らかにされていない。このところ新型コロナウイルスの影響で移動が制限され、人が実際に接触する機会が減っているため、リモートでサービスを提供する製品を手がける企業や組織はどこもそうだが、Vociでも需要が高まっている。

VociのCEOのMike Coney(マイク・コニー)氏は声明で「エクスペリエンス管理のリーディングカンパニーであるMedalliaの戦力となれることを当社全体で喜んでいる。Vociのパワフルな音声テキスト変換機能がMedallia Experience Cloudに組み込まれるのはすばらしいことだ。コンタクトセンターのあらゆる事柄がビデオやアンケートなどの重要なフィードバックと統合されれば、業界を大きく変える」と述べた。

Vociがここ数カ月で資金を調達しようとしていたのか、あるいはMedalliaから積極的にアプローチしたのかは明らかになっていない。しかし一般論としていうと、M&Aはテック業界で重要性を増している。現在、スタートアップの資金調達は難しくなってきた。有望な企業とテクノロジーが完全に倒れてしまうことを避けるためのひとつの方法として、最後の神頼み的なM&Aが増えるかどうかは大きな問題だ。

Sequoiaなどから資金を調達した後、2019年7月に上場したMedalliaは、市場の多くの企業と同様にここ数週間で株価が下落している。現在の時価総額はおよそ28億ドル(約3003億円)で、公開前の最終評価額と比べて4億ドル(約429億円)の成長に止まっている。

Medalliaによれば、買収は2020年5月に完了する予定だ。

画像クレジット:dotshock / Shutterstock

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(翻訳:Kaori Koyama)

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TechCrunch Japan

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