フォードが約470万円の2022年型商用電気カーゴバンE-Transitを公開

Ford(フォード)は米国時間11月12日、さまざまな仕様が選べる純電気自動車のカーゴバンE-Tansit(イートランジット)を公開した。法人顧客の新たな主力車両になると同社は見込んでいる。

E-Transitは、115億ドル(約1兆2000億円)を投じたFordの車両電動化計画のほんの一端に過ぎない。しかしこの車には、計画の中でも最も重要な存在となる可能性が秘められている。Fordは、消費者市場での車両の電動化に重点を置いてきた。その代表格が、2020年末からディーラーに出荷されるMustang Mach-E(マスタング・マックイー)だ。

E-Transitで、Fordはカーゴバン市場での優位性をいっそう確かなものにすることを目指している。ガソリンエンジンを搭載した現行のTransitバンは、このカテゴリーで40%のシェアを誇っているものの、EVならさらに大きな機会が期待できる。BEV(バッテリー式電気自動車)の商用バン市場では、2030年までの商用バンの売上げは1100億ドル(約1兆1550億円)にのぼるとFordは見積もっている。

E-Transitは3種類の屋根の高さと長さ、カーゴバン、キャブシャーシ、カットアウェイといった形状など、8種類の仕様が選べる。また、標準で12インチのタッチスクリーン、音声コントロールとカーナビゲーションを内蔵したFordのSync 4(シンクフォー)情報システムが装備され、オプションで電動工具用の2.4kWのコンセントも付けられる。どの車両にも、Fordの8年間または10万マイル電気自動車保証がつく。

Fordは11月12日に、低屋根型のカーゴバンの詳細を公開した。価格は米国のフリートカスタマー向けの場合、最もも安いもので4万5000ドル(約470万円)を下回る。このタイプは67kW時のバッテリーを搭載し、1回の充電で126マイル(約203km)走行できる。Fordが配布した仕様書によれば、中程度の屋根の高さでロングボディーのE-Transitは1回の充電の走行距離が116マイル(約187km)、ホイールベースを延長したタイプで108マイル(約174km)となっている。

画像クレジット:Ford

E-Transitは、交流と直流の高速充電の両方に対応する。家庭用の120Vのコンセントに接続して使えるFord Mobile Charger(フォード・モバイル・チャージャー)は標準で付属する。これを240Vのコンセントに挿せば高速充電が可能になる。また、E-Transitを8時間でフル充電できる性能を持つConnected Charger Station(コネクテッド・チャージャー・ステーション)の販売も予定している。

走行距離はTesla(テスラ)の改造トラックに劣るが、法人顧客は価格に敏感で、何が必要かを正確に把握しているとFordは豪語する。

「法人顧客は、車両の保有にかかる総経費というレンズを通して車両を見る点で際立っています」と電気トラック、バン、商用車両のグローバルマーケティング・ディレクターであるYaro Hetman(ヤロー・ヘットマン)氏は、先日のインタビューでTechCrunchに話していた。いい換えれば、法人顧客は実用性第一だということ。できる限り効率性を追求するが、過剰な性能にコストはかけたくない。それは走行距離にも当てはまる。

ヘットマン氏によれば、Fordは現行のエンジン式Transitバンの、北米での3000万マイル(約4800万km)を超える走行状況を分析したという。その結果、平均的な商用バンの場合、1日に74マイル(約120km)も走れれば事足りるとわかった。

それ以上の走行距離を望む声が出てくることも、当然考えられる。ヘットマン氏は、走行距離がより長く高性能なバージョンの発表も、将来的に期待して欲しいと話していた。

T-Transitの維持経費の安さも、Fordのセールスポイントだ。2020年型ガソリンエンジン式Transitの8年間または10万マイル走行までの平均的な定期点検費用に比べて、40%安くなると同社は見ている。

このE-Transitカーゴバンと、純電気自動車のF-150トラックの両方を発売することで、FordはEV市場のシェア拡大を狙っている。米国内の多くの都市でガソリン車の規制がますます厳しくなる中、これが競争力と収益性の両方を約束してくれることに、同社は賭けている。

しかし、純電気自動車のT-150は2022年半ばにならないと発売されないため、すべての注目と期待はカーゴバンのほうに集中している。同社は、フリートカスタマー向けの細かい仕様を打ち出した。車線検知、ドライバーの居眠り警告、衝突防止アシスタント、自動非常ブレーキなどが標準装備される。もちろん、後付けのオプションもある。車間距離調整機能付きのクルーズコントロール、ナビゲーション機能付き制限速度標識認識および自動速度制限装置、駐車とバックの支援装置などを含む高度ドライバー支援システムだ。

画像クレジット:Ford

また、車両の運用管理を改善するFord Telematics(フォード・テレマティックス)やFord Data Service(フォード・データサービス)とペアリングできるモデムも搭載される。

生産性の向上、ドライバーの安全確保と指導を助ける車両管理ツールも、顧客を魅了するものになるとFord Commercial Solutions(フォード・コマーシャル・ソリューションズ)のCOOであるJulius Marchwicki(ジュリアス・マーチウィッキ)氏はいう。

「私たちのツールでは、充電レポートなどによるドライバーの支援が可能になります。車がどの程度の性能を発揮しているかを把握し、仕事場に向かう前に、リモートで走行距離を最大にできるよう事前調整ができるのです」と、マーチウィッキ氏は先日のインタビューで話していた。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Ford電気自動車

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(翻訳:金井哲夫)

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TechCrunch Japan

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