病理医の仕事を模倣するAI利用の癌診断プラットフォームIbex Medical Analyticsが約41億円調達

イスラエルを拠点とするIbex Medical Analyticsはより効率的に生検中の癌細胞を検出するAI(人工知能)駆動の画像処理技術を有しており、Octopus Ventures83NorthがリードするシリーズBの資金調達ラウンドで3800万ドル(約41億円)を調達した。このラウンドにはaMoon、Planven Entrepreneur Ventures、Dell Technologiesのコーポレートベンチャー部門であるDell Technologies Capitalも参加している。同社は2016年の設立以来、これまでに合計5200万ドル(約56億円)を調達しており、Ibexは今回の資金を北米や欧州の診断研究所へのさらなる売却に充てる計画だ。

もともとKamet Venturesのインキュベーターから生まれたIbexの 「Galen」 プラットフォームは病理医の仕事を模倣しており、癌をより正確かつ迅速に診断し、生検標本から新しい洞察を引き出すことができる。

がんの発生率が上昇し、また医療処置が複雑化しているため、病理医の仕事量は増えている。さらにIbexによると、病理医は世界的に不足しており、診断プロセス全体に遅れが生じる可能性がある。同社はこのソリューションを使用することで、病理医の生産性を40%向上できると主張している。

IbexのCEO兼共同創業者のJoseph Mossel(ジョセフ・モッセル)氏はTechCrunchの取材に対し「これは病理医のアシスタントと考えることができます。そのため症例を事前に準備し、関心のある領域をマークし、病理医が効率を向上させることができます」と語った。

モッセル氏によると、Ibexはフランス最大の病理学ネットワークと、英国などで24カ所のNHSトラストにサービスを提供する5つの病理学研究所であるLDパスと提携したという。

Kamet VenturesのMichael Niddam(マイケル・ニダム)氏は、Ibexは「Kametが創業者と非常に早い段階から協力していることを示すすばらしい例」だと述べた。Ibexの創業者であるモッセル氏とChaim Linhart(ハイム・リンハルト)博士は、アイデアを開発する前にEntrepreneurs in ResidenceとしてKametに参加していた。

カテゴリー:ヘルステック
タグ:Ibex Medical Analytics資金調達がん治療

画像クレジット:ForSight Robotics

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(文:Mike Butcher、翻訳:塚本直樹 / Twitter

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発

NVIDIAとハーバード大がゲノム解析を短時間低コストでこなすAIツールキット「AtacWorks」開発人の体内のほとんどの細胞は数十億の塩基対を核に押し込んだDNAの完全なコピーを持っています。そして身体の個々の細胞は、タンパク質の中に埋まっているDNAから必要な部分だけを外部からアクセスしやすくして、たとえば臓器、たとえば血液、たとえば皮膚など、異なる機能を持つ細胞になるための遺伝子を活性化します。

NVIDIAとハーバード大学の研究者らは、仮にサンプルデータにノイズが多く含まれていても(がんなどの遺伝性疾患の早期発見によくあるケース)、DNAのアクセス可能な部分を研究しやすくするためのAIツールキット「AtacWorks」を開発しました。

このツールは、健康な細胞と病気の細胞についてゲノム内の開かれたエリアを見つけるためのATAC-seq(Assay for Transposase-Accessible Chromatin with high-throughput sequencing)法と呼ばれるスクリーニング的アプローチをNVIDIAのTensor Core GPUで実行し、32コアCPUのシステムなら15時間ほどかかるゲノム全体の推論をたったの30分で完了するとのこと。

またATAC-seqは通常なら数万個の細胞を分析する必要がありますが、AtacWorksをATAC-seqに適用すれば、ディープラーニングで鍛えたAIによって数十の細胞だけで同じ品質の分析結果を得ることができます。たとえば研究チームは、赤血球と白血球を作る幹細胞を、わずか50個のサンプルセットを分析するだけで、DNAのなかのそれぞれの産生に関連する個別の部分を識別できました。

ゲノムの解析にかかる時間とコストを削減できるようになる効果から、AtacWorksは特定の疾患につながる細胞の病変やバイオマーカーの特定に貢献することが考えられます。また細胞の数が少なくてもゲノム解析ができるとなれば、非常に稀な種類の細胞におけるDNAの違いを識別するといった研究も可能になり、データ集積のコストを削減し、診断分野だけでなく新薬の開発においても、開発機関の短縮など新たな可能性をもたらすことが期待されます。

(Source:Nature Communications、via:NVIDIAEngadget日本版より転載)

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カテゴリー:バイオテック
タグ:医療(用語)AI / 人工知能(用語)NVIDIA(企業)NVIDIA Tensor Core(製品・サービス)オーダメイド医療がん / がん治療(用語)ゲノム医療ゲノム解析DNA / 遺伝子(用語)ハーバード大学(組織)Python(製品・サービス)

AIが「細胞を見分ける」新技術でがんの超早期発見などを目指すCYBO、6000万円調達

AIに細胞の高速解析・処理技術を開発するCYBOは3月1日、インキュベイトファンドを引受先とした第三者割当を実施し、6000万円を調達したと発表した。また、インキュベイトファンドのジェネラルパートナーである村田祐介氏が社外取締役に就任することも併せて発表した。

2018年に設立されたCYBOは、多数の細胞集団の中から特定の細胞を分離する「インテリジェント画像活性セルソーター(以下、画像活性セルソーター)」を基盤技術として、細胞解析に関する研究開発とサービス提供を行うスタートアップだ。

画像活性セルソーターは、細胞を超高速で画像化し、AIがその画像を選別、特定の細胞を分取するという技術だ。東京大学大学院の合田圭介教授が率いる研究グループが発表した新技術で、CYBO代表の新田尚氏は同グループのプログラムマネージャー補佐を務め2018年に同社を設立した。

既存の細胞識別技術には「蛍光活性セルソーター(FACS)」がある。これは、蛍光抗体で染色した細胞が発する「光の強度」を指標として、細胞を識別・分取するというものだ。国内ではソニーなどが製品化を行っている。このFACSに比べ、AIが画像を解析する画像活性セルソーターでは、光の強度に加えて、細胞の形、細胞内の分子の分布なども測ることができ、結果的に従来よりも精度の高い診断が可能となるという。

画像活性セルソーターの製品化プロジェクト「ENMA」のデザインイメージ

当たり前のように聞こえるだろうが、この領域では「精度」はとても重要だ。精度が高ければ、偽陰性のリスクも減らせるし、偽陽性によって患者に無駄な心理的・金銭的負担を強いることもなくなる。

また、例えばがんの早期発見のためには、患者への負担が低い(低侵襲)ために多くの人を高い頻度で検査でき、かつ精度も高いという2つの特徴を兼ね備えた検査方法が求められる。血液生検のみでがん等を診断できる低侵襲な検査技術「リキッドバイオプシー」に画像活性セルソーターの技術を応用すれば、低侵襲でかつ従来よりも精度が高いという、上記の2つの特徴を持った検査方法が確立できるということになる。

このような理由から、画像活性セルソーターはFACSに取って代わる可能性がある新技術として、開発と実用化が期待されており、米国ではAIベースの細胞識別技術をもつdeepcellがシリーズAで2000万ドル(約21億円)を調達するなどしている

CYBOは今回調達した資金をもとに、がん研有明病院と精度の高い子宮頸がん検診の実現を目指した共同研究を行うほか、オンコリスバイオファーマと共同で開発する「血中循環がん細胞検査(血液中を循環するがん細胞を検出する検査)」の実用化を推進していくという。

関連記事:免疫療法の改善からの新療法開拓のためバイオテックImmunaiが63億円を調達

カテゴリー:バイオテック
タグ:医療

免疫療法の改善からの新療法開拓のためバイオテックImmunaiが63億円を調達

創設からわずか3年で、バイオテックスタートアップImmunai(イミュナイ)はシリーズA投資6000万ドル(約63億円)を調達し、合計調達額は8000万ドル(約84億円)を超えた。若い会社ではあるが、Immunaiはすでに、単一細胞の免疫学的特質に関する世界最大のデータベースを確立し、既存の免疫療法の効果を高める機械学習を用いた同社の免疫解析プラットフォームを運用している。今回調達した資金で、同社はそのデータと機械学習の強みと幅を基盤に、まったく新しい治療法の開発へと業務を拡大する準備を整えた。

Immunaiでは「マルチオミクス」アプローチを採用し、ヒトの免疫システムに関連する新たな見識を獲得している。つまりそれは細胞のゲノム、微生物叢、エピゲノム(ゲノムの化学的命令セット)など、複数の異なる生物学的データの階層化分析だ。同スタートアップのユニークな点は、世界をリードする免疫学研究機関と提携して築き上げた、免疫に関する最大規模で奥深いデータセットと、独自の機械学習技術とを組み合わせて前代未聞のスケールで解析が行えるところだ。

「ありふれた表現かも知れませんが、私たちには、ゆっくり構えていられるだけの余裕がないのです」とImmunaiの共同創設者でCEOのNoam Solomon(ノーマン・サロモン)氏はインタビューで語った。「それは思うに、現在、私たちは最悪の状況にあるおかげで、機械学習やコンピューター処理技術が高度に発達し、そうした手段を活用して重要な見識を掘り出せるまでなったからです。周囲の人々と仕事ができる速度には上限があります。そこで私たちは、私たちのビジョンを活かし、そしてMITからケンブリッジ大学、スタンフォード大学、ベイエリアからテルアビブまで、非常に大きなネットワークの力を借りて、この問題を一緒に解決しましょうと人々に言ってもらえるよう、とにかく迅速に動きました」。

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サロモン氏とその共同創設者でCTOのLuis Voloch(ルイス・ボロシュ)氏は、どちらもコンピューター科学と機械学習における幅広い経験の持ち主だ。彼らはまず、そうしたテクノロジーと免疫学とを結びつけ、テクノロジーが応用できる免疫学上のニーズを特定した。その後、Scientific(サイエンティフィック)の共同創設者で戦略的研究担当上級副社長を務めるDanny Wells(ダニー・ウェルズ)氏が、がん性腫瘍の免疫療法の効率化に集中できるよう、彼らのアプローチの改善に力を貸した。

Immunaiのプラットフォームは、既存の治療法の最適な標的を特定できることを、すでに実証済みだ。ベイラー医科大学と提携して行われた、神経芽細胞腫(副腎に見られることが多い免疫細胞から発生するがんの一種)の治療での細胞療法製品の使用試験もその1つだ。同社は現在、治療の新たな領域に進出し、その機械学習プラットフォームと業界をリードする細胞データベースを使った新しい治療法の発見、つまり既存の治療法の標的の特定と評価だけでなく、まったく新しい治療法の開発に進もうとしている。

「私たちは、ただ細胞を観察するだけの段階から脱して、細胞をかき混ぜて、何が起きるかを見るという段階に移行しつつあります」とボロシュ氏。「これは、コンピューター技術の面からすれば、やがて相関性評価から実際の因果関係の評価への移行が可能になり、私たちのモデルがずっとパワフルなものになることを意味します。コンピューター技術と研究室のどちらの面においても、これは極めて最先端のテクノロジーです。私たちは、あらゆる規模での実用化を最初に果たすことになるでしょう」。

「その次の段階は、『よしこれで免疫プロファイルがわかったから、新しい薬を作ろうか?』となることです」とサロモン氏はいう。「私たちはそれを、免疫システムのGoogleマップを数カ月以内に作るようなものだと考え、実際に、免疫システムのさまざまな道路や経路のマッピングを行っています。しかしある時点で、まだ作られていない道路や橋があることに気がつきました。私たちは、これから新しい道路の建設が支援できるようになります。現在の病気の状態、つまり病気の街を、健康の街に建て替える先導役になれたらと願っています」。

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タグ:Immunai免疫がん治療機械学習資金調達

画像クレジット:Immunai

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(文:Darrell Etherington、翻訳:金井哲夫)

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

患者の負担を軽減する液体生検を用いた白血病遺伝子検査提供のLiquid Mineが資金調達

Plug and Play Japanは2月3日、東京大学医科学研究所発のスタートアップLiquid Mineへの出資を発表した。

Liquid Mineは、「最先端の遺伝子解析により、より多くのがん患者一人ひとりに最適な治療環境を提供する。」をミッションに、リキッドバイオプシー(液体生検。Liquid Biopsy)を用いたゲノム検査「MyRD」を提供する東京大学医科学研究所発のスタートアップ。患者個人に合わせたテーラーメイド医療(オーダメイド医療)を通じて、白血病患者の長期生存率向上、がんの克服を目指している。

白血病の検査としては、骨髄生検という手法が一般的なものの、非常に強い痛みを伴うため患者の肉体的・精神的・経済的負担が大きいという課題がある。一方Liquid Mineの提供するソリューションは、患者モニタリング期の骨髄生検を侵襲性の低いリキッドバイオプシーに代替することで、これら患者の負担軽減に貢献するという。

市場展開として、日本のみならず海外でもがん検査の新たなスタンダードとなる可能性を持つことから、世界に事業展開できるスタートアップに投資しているPlug and Play Venturesは、同社が目指すがんゲノム医療のポテンシャルを感じ、出資を決定した。

Plug and Playの投資部門Plug and Play Venturesは、世界にビジネスを拡大していく可能性を持つ日本のスタートアップに対し、事業領域を問わず投資を行っている。投資件数において世界で最も活発なベンチャーキャピタルのひとつでもあり、DropboxやPaypal、Lending Clubなど多数のユニコーン企業を輩出してきた。

2020年は162社のスタートアップに投資を実施したほか、ポートフォリオ企業から12社がExitを果たし、新たに4社がユニコーンとなった。

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