【インタビュー】恵まれない環境にいる起業家へのCompass創業者の助言、「成功したいのならプランBを用意してはいけない

CEO兼ファウンダーのロバート・レフキン氏(画像クレジット:Compass)

不動産テック企業であるCompass(コンパス)が2021年4月、新規株式公開に踏み切り数十億ドル(数千億円)の評価を受けた。

その際、TechCrunchのシニアエディターAlex Wilhelm(アレックス・ウィルヘルム)は創業者兼CEOのRobert Reffkin(ロバート・レフキン)氏を取材し、テクノロジー市場が荒れ狂う最中でのデビューについて話を聞いている。

そして、筆者はそれとはまったく異なるトピックについてレフキン氏を取材した。ホームレスとして亡くなった父親を持ち、家族に縁を切られたシングルマザーの母親に育てられた同氏が起業家になるまでの道のりについてである。レフキン氏は一般の人とは異なる背景を持つ人々に希望を与えるということに情熱を注いでおり、それに関するも出版している。

この会話の中でレフキン氏は、同氏の考える成功の秘訣の他、若い起業家、特に恵まれない環境にいる起業家へのアドバイスなどを話してくれた。

このインタビューはわかりやすくするために編集されている。

TC:私の息子は今ティーネイジャーですでにビジネスを始めようとしているので、あなたがその歳の頃DJをしていたと聞いてとても興味深く感じています。最終的に何がきっかけで学校に関心を持つようになり、どうやって短期間で卒業することができたのでしょうか?

レフキン氏:あなたの息子さんは正しい道を歩んでいるようですね。起業家同氏として、私からの励ましの言葉を伝えておいてください。

母によると、私がDJビジネスを始めるのを許可したことで他の親から頭がおかしいと思われたそうです。しかし高校時代にDJビジネスで成功できたことで、自分自身と起業に対する情熱について知ることができました。それが最終的には自己紹介書に反映され、入学審査チームの数人との関係の形成につながり、コロンビア大学に合格することができました。

常に大きな夢を見るということが初めの一歩だと思っています。私の場合はニューヨークへの旅行がきっかけでした。その際にコロンビア大学を見学してすっかり気に入ってしまったのです。入学が難しいというのは分かっていましたし、実際、高校のカウンセラーには「出願料を払うだけ無駄だから応募するな」と言われました。その瞬間、コロンビア大学に行きたいという気持ちが、単に強い想いから絶対的なものに変わりました。学校そのものに魅力を感じたというだけではなく、私のような人間がチャンスを得るために戦うということに、より大きな意味があるように感じたからです。私の平均成績はCだったのですが、トップ大学についていくために必要な能力があることを示すためSATの準備に力を注ぎました。そしてありがたいことに、それが功を奏したのです。

高校や大学では、微積分や西洋文明を学ぶことが自分の人生や夢にどう関係するのか理解できなかったということもあり、成績では常にCをとっていました。学校で優秀な成績を収めても、世界で自分を際立たせることはできないと思ったのです。その一方で、起業家としての活動や夏のインターンシップでエネルギーを得ていました。現実の世界の方がはるかに理に適っていると感じたため、学校を卒業して本当の人生を始めるためにできる限り早く行動しました。

TC:恵まれない環境にいるシングルマザーに育てられたことが、男性として、また起業家としてのあなたをどう形成したと思いますか?また有色人種であることが自分の道にどのような影響を与えたと思いますか?

レフキン氏:子どもの頃は私と母だけでした。母はイスラエルからの移民で、私が黒人のために両親から勘当されていました。父は私たちを捨て、私が幼い頃にホームレスとして亡くなりました。私が起業家になったのには母が教えてくれたことが一番大きく影響しています。母が起業家精神を体現し「打ちのめされても必ず情熱を持って立ち直ること」という最も重要な原則の1つを教えてくれたのです。母は、男との悪縁、破産、営業の仕事からくる日々の拒絶などに直面しても、必ず立ち直ってきました。そのため、私には決して達成できないと誰かに言われても、そういう言葉に直面する準備ができていたのです。私は母のおかげで立ち直る方法を知っていたのです。

CEOのロバート・レフキン氏と彼の母親(画像クレジット:Ruth / Compass)

黒人でユダヤ人の私は、常に居場所がないと感じていました。高校や大学のほとんどのクラスで私は唯一の黒人でしたし、就職して間もない頃ほぼすべての会議において黒人は私1人でした。Compassのために資金調達をしていたときも、机の反対側に黒人がいるのを見たことはほとんどありません。しかし幸運なことに、今は亡きVernon Jordan(バーノン・ジョーダン)氏や、アメリカン・エキスプレスの元CEOであるKen Chenault(ケン・シェノルト)氏、ゴールドマン・サックスのリードディレクターであるBayo Ogunlesi(アデバヨ・オグンレシ)氏など、多くの黒人のメンターからすばらしいアドバイスを得ることができました。本当に強力なコミュニティがあり、皆がお互いに支え合っています。

TC:これまでにすばらしいメンターと出会ってきたようですが、こういった関係はどのようにして発展したのでしょうか?また、これらの関係性がどのように役立っていますか?

レフキン氏:子どもの頃、私は常に誰かのアドバイスを求めていました。片親家庭で育った私は、より良い生活を送るための助言や知恵をいつも探していたのです。高校生のとき母が非営利団体を紹介してくれたおかげで、世界にはどれほど多くの機会と支援があるかを知りとても驚きました。

私が人生で学んだ最も重要な教訓は、人からのフィードバックは贈り物であるということです。たとえ耳が痛いようなことであってもフィードバックは贈り物なのです。多くのメンターとの関係が深まったのは、他人は教えてくれないだろうと思うような、本当に厳しい率直な意見を私が求め始めたからです。そしてそのアドバイスを実際に受け入れて自分の人生に活かし、それがどのように役立ったかを伝えるようにしました。これをすることで2つの効果がありました。1つ目は、より正直で実用的なアドバイスが得られるようになり、より早く向上できるようになったこと。2つ目は、アドバイスをくれた人たちが私の成功や私が取り組んでいることの成功に、より大きな関心を寄せてくれるようになったことです。

メンターたちが与えてくれたもう1つのことは、世間からは成功できないと言われていても、私は成功できるのだという感覚でした。社長やCEOにアドバイスをしてきたバーノン・ジョーダン氏のような人に出会えたことが、私に大きな影響を与えてくれました。彼は私にとって父親のような存在でした。彼と出会ったのは私が23歳のときでしたが、当時の私には黒人がビジネスの世界で成功できるという実例を見たことがなかったため、よく理解できていませんでした。私がLazard(ラザード)に入社したとき、黒人の投資銀行家はジョーダン氏だけでした。彼はシニアパートナーというだけではなく、フォーチュン500の企業で取締役を歴代最多で務めたことで広く知られる伝説的な人物でした。彼は私に強い関心を寄せ、サポートやアドバイスをしてくれました。そして私に自分の居場所を感じさせてくれ、自分が望むような成功を収める道を示してくれたのです。

私は20代のときにAmerica Needs You(アメリカ・ニーズ・ユー)という非営利団体を設立し、何千人もの学生にメンターシップ、キャリア開発、大学進学支援を行ってきました。私の新刊「No One Succeeds Alone」は、私が多くのすばらしい人々から学んだ教訓を、すべての人に提供することで恩返しをするために書きました。私が収益のすべてを、若者が夢を実現するのをサポートする非営利団体に寄付しているのはそのためです。

TC:起業を志す若い人たち、特に恵まれない環境にいる人たちにアドバイスをお願いします。

レフキン氏:大学を卒業したばかりで最初の仕事に就いている、過小評価されているグループの人へのアドバイスは次のとおりです。

1)社会にも、同僚にも、そして自分自身にも、誰にも自分の夢を邪魔させないことです。誰かにスピードを落とせと言われても、スピードを上げたら良いのです。

2)これからの10年間、できる限り賢い人たちからできるだけ多くのことを学んでください。他の人がくれないような率直なフィードバックをくれるメンターを仕事や仕事の外で見つけてください。フィードバックは贈り物です。聞くのが怖いかもしれませんが、相手があなたにフィードバックいうのは、実はもっと難しいことなのです。だから率直にお願いして、自分がそれを受け止められることを知ってもらう必要があるかもしれません。

3)ネガティブな状況を、自分を奮い立たせるようなポジティブなエネルギーに変える方法を学んでください。あなたには無理だとか、あなたのいる場所じゃないなどと懐疑的なことや嫌味をいう人は必ずどこにでもいるものです。

TC:Compassの今後の動きを教えてください。

レフキン氏:真の成功をつかむためには、プランBを用意してはならないと信じています。CEOとして、Compassの2万3000人のエージェントと従業員のために100%尽くす必要があるのです。私のメンターの1人がかつて「シャワーテスト」という言葉を教えてくれました。シャワーを浴びているときに仕事のことをワクワクしながら考えていないようなら、その仕事はすべきでないという意味です。うれしいことに、私は自分たちが作り上げているこの会社にとても大きな情熱を持っているので、今でもシャワーを浴びながらCompassのことを考えています。弊社はこの8年間で多くのことを成し遂げてきましたが、本当の意味でのスタート地点に、まだ立ったばかりなのです。

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タグ:Compass不動産インタビュー

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)

チャージカードスタートアップのBrexは、ユニコーン(10億ドル)ならぬデカコーン(100億ドル)の成功を目指す

【編集部注】著者のGregg SchoenbergはThe Financial Revolutionistの編集長兼共同創業者である。

企業のクレジットならびにチャージカードを再発明しようとしている若いスタートアップのBrexは、いまではシリコンバレーではよく知られた存在だ。まだ若い同社の共同創業者であるHenrique DubugrasとPedro Franceschi、著名な支援者たち、先月発表された1億2500万ドルのシリーズC,サンフランシスコでの積極的な広告宣伝、そして同社の猛烈な成長が、注目を大いに引き寄せる効果を発揮している。しかしもちろん、Brexをフィンテックユニコーンクラブに参加させたのは、リストのトップに躍り出た、最後のラウンドの評価額だった。

最近Brexは、Brexの成功に追いつくことを熱望する起業家たち専用の、新しいお得な報酬プログラムを発表したために、さまざまな発言の機会が増えている。しかし話題の中心は、DubugrasとFranceschiが、どのようにペイメントスタートアップの構築への困難な挑戦に取り組んだかの、具体的な方法である。

そうしたことに向けてのより良い理解を促すために、CEOのDubugrasが、彼とFranceschiが手がけた以前のスタートアップPagar.me(Pager.meは新しく公開されたブラジルのクレジットカード会社StoneCoによって買収された)や、すばやく成長する上での課題、Brexカードと従来の企業カード製品の違い、そしてビジネスサイクルの変動を乗り切る同社の計画、などについて打ち明けた。最後にDubugrasは、誰もが注目している、現在同社が直面するかなりのプレッシャーについて、率直かつ自信を持って語っている。

Gregg Schoenberg(以下GS):また会えて幸いです、Henrique。ご存知のように、Brexは短期間でゼロから素晴らしいものへと変化したために、多くの報道が行われています。しかし、これまでのBrexの話題をフォローしていなかった人のためにあえて質問しますが、このスタートアップで解決したかった問題とは何でしょう?

Henrique Dubugras(以下HD):FICOスコアを持っていなかったり、個人保証を提供できないために、創業者がクレジットカードを取得できない場合がその1つです。また別のケースとしては、創業者はカードを取得できるものの、個人保証を提供したくない場合です。

GS:よくわかります。

HD:そうですね、とてもスマートなアイデアだとは思っていません。Brexはこの問題を解決できるわけですが、それは個人保証なしに彼らにカードを発行することができるからです。また最後に、個人保証を気にしない創業者もいますが、クレジットカードを持っている体験に関連したもっと素晴らしいことが他にもあるのです。私たちはそれも解決しました。

GS:最初の2つは、これまでとは異なる融資引受アプローチですが、最後の課題は特に難しそうに思えます。

HD:はい。融資引受に際しては、現金残高と投資に参加しているVCを考慮に入れます。ゼロから利用可能なカードを手にするまでに、5分ほどしかかからないのが、シリコンバレー流の融資引受です。しかし、3番目のユースケースに関して言えば、沢山の人たちに「君たち、クレジットカードシステムをゼロから再構築することなんて不可能だよ。過去20年間で誰もそれをやっていないんだから」と言われました。

GS:それこそが、Pager.meについてお話を聞かせて欲しい理由なのです。なぜならそうすれば、あなたが疑念を払拭することが可能だという証拠を提供してくれると思うからです。

HD:そうですね、これまでは決済会社を構築していたので、やり方はある意味理解していました。そこで、単にすべてをゼロから再構築することにしたのです。StoneのIPOはご覧になったのですよね?

GS:はい。そして報告書に深く埋もれていましたが、2016年の残りにPager.meにどれほど費用がかかったかが指摘されていました。そのため、あなたとPedroは、成功したものを作り出してはいましたが、その収益で島を買うというわけにはいかなかったのですね。

HD:IPOに含まれない他の部分もありましたが、はい、わたしたちは今でも島を買うことはできません。

GS:そしてあなたとPedroがブラジルからここに来ることができた、この短期間のうちに驚くべき資金調達をできたという物語を、あなた方が巨額のエグジットを達成できたからだ、と説明するのは正確ではないのですね。そうではなくて、極めて官僚的な金融システムを泳ぎ渡った2人の姿が見えるのですが…。

HD:はいその通りです。

私たちは、米国の決済会社や、他のあらゆる場所のものと比べても、かなりユニークな経験を持っていました。

GS:…そして成功できるものを作り出す方法を考え出したのですね。

HD:そうです。ただ留意しておいて欲しいのですが、私たちは単なる製品以上のものを作り上げたのです。組織を作ったのです。100人以上の人たちを雇い、利益をあげ、十分な市場シェアを獲得し、そして買収されました。

GS:私の目から見た場合、大きな特徴は、あなたがたがそれをブラジルのフィンテックのブートキャンプで行ったことです。決済会社をそこで、あの規模で、あの時期に生み出すことはとても難しかったと思います。

HD:本当に難しかったです。そして、量的に見ると、Pagar.meは今日Stoneの大きな部分を占めています。

GS:規制当局とも相当交渉をする必要があったのでは?

HD:はい。中央銀行は、私たちがPagar.meを始めたころに、金融事業に対する規制を開始することを決定しました。

GS:Pagar.meはオンラインでビジネスを行っているすべての加盟店に、短期融資を提供しました。そうですよね?

HD:はい。市場では前払いが大きな部分を占めていましたので、商店に売掛金をすぐに渡すために、ブラジルの中で借金をしなければなりませんでした。私たちはまた、自分たち自身で持つのではなく、ライセンスを借りていました。そうしたことから、私たちは、米国の決済会社や、他のあらゆる場所のものと比べても、かなりユニークな経験を持っていたのです。

GS:米国のペイメントエコシステムの中から誰かが、そのような多様な挑戦に直面し、表に出てくることは非常に困難だったと思います。それこそが、Max Levchinのような早期投資家たちに「君たちが何を作ろうとも、それに投資したい。君たちの才能が大好きなんだ」と言わせて、心を掴んだ大きな理由なのですね。

HD:そうです。そしてMaxは、決済というものをとても良く理解していたので、私たちが自分たちの領域で何をしているかを知っていることを、きちんと理解できたのです。Pagar.meについて知っていたRibbit Capitalも同様です。

GS:Maxが決済会社への投資をすることは、Maxがヤワなスタートアップに投資することとは違います。決済のような世界では、彼が早い段階からあなたがたの後ろにぴったりくっついていたことが大きいと思うのですが。

HD:正しいですね。

GS:さてBrexのことに戻りましょう。発表したばかりの報酬プログラムに興味を持っています。これはパラダイムシフトですよね。このプログラムでは、報酬は蓄積されるのではなく、継続的に使用されるようにデザインされていますよね?

HD:その通りです。毎日最良の経験をしていただけるように、報酬の全てを利用していただきたいのです。そして、他のクレジットカードにはよく読むと「但し、この上限、制限、そして限度額内で使うことができます」といった脚注が書かれています。

GS:人びとが最適化しないようにしようとしていますね。

HD:はい。私たちは、とても変わったアプローチを採用しています。私たちは「ただ1つのクレジットカードを使う、優良顧客や利用者に対しては、こうした制限や限度を課すことで、不自由を強いることはしたくない」のです。

GS:Brexに特徴的なコンセプトは何ですか?

HD:コンセプトは、もしBrexがあなたの唯一のカードであれば、全ての報酬を制限なく受け取ることができるというものです。しかし、それがあなたの唯一のカードでないならば、その場合でもBrexは使うことができますが、報酬は制限されます。

GS:Amex、Chase、またはCapital Oneがそうした報酬プログラムを気にしないとは主張できないのでは?これはロボアドバイザーの初期段階に似ています。しかし、あなたがたが大きくなって、より広がり目障りになってきたときに、Chaseに多額の報酬を伴ったカードを投入させないための要素とは何でしょう。

HD:その1つは、彼らの従来の技術に及ぼす影響です。おそらく皆さんは「どうして彼らは単に、自分たちの技術を変えないの?」と言いたいですよね?実のところ、彼らに対しては「いや、全部のテクノロジーシステムを変えることはできない。なにしろ君たちが混乱したら、米国全体の金融システムが影響を受けてしまうからだ」といって止めに入る規制機関がいるのです。

GS:これがどのように展開していくかの具体例を挙げることができますか?

HD:信用限度額について考えてみましょう。こうした全ての企業は、現時点で設定される静的なカード限度額を提供するようになっています。そしてそれは2,3,6ヶ月…の間見直されることはありません。

私たちは、多額のお金を調達して、馬鹿げたことを始める、馬鹿げた企業にはなりたくありません。

GS:そうですね。しかしその話は、チャージカードとチャージカードを比較しているのですか、それともチャージカードとクレジットカードを比較しているのでしょうか?

HD:Brexはチャージカードですが、ここで説明しているコンセプトには影響しません、なぜなら私のポイントは、リアルタイムデータに基いて毎日限度額を見直す技術と、彼らが現在使っているシステムの対比だからです。リアルタイムシステムを実装することは、彼らにとって本質的な転換となります。

GS:伝統的なカードに比べて10倍のクレジット限度額を与えるというアイデアについてはどうでしょう。それは素晴らしいことですが、あなた方は多くの分析やデータにアクセスできるので、実際にそれほど大きなリスクを受けることはないと思いますが。

HD:そのとおりですね。そのおかげで今日(today)の損失はゼロです。

GS:今日(today)?

HD:これまでのところ(to date)ですね。

GS:素晴らしい。それではVisaネットワークにアクセスするために必要な、イシュア銀行であるSutton Bankについてお話ししましょう。もし他のイシュア銀行が「あなた方のしていることを気に入りました、私たちもイシュア銀行として使ってもらえませんか?」とアプローチしてきた場合はどうなさいますか?

HD:そうなれば検討することになるでしょう。しかしそれは現段階で私たちが集中したいものではありません。私たちは発行(イシュー)のために彼らのライセンスを利用していますが、基本的に全てを行っています。私たちは融資引受を行い、技術も、その他全ても行います。

GS:スタートアップの世界からさらに広い世界へと成長したいとお考えであることは、よく知られています。次はどうなさるのですか?

HD:従来型のビジネスをより多く相手にしたいと思っています。もう少し成熟していてテクノロジーの外側にある世界へ。それはおそらく来年の間には取り組むことになると思いますが、私たちの引受モデルとプロダクトを適応させなければなりません。

GS:報酬プログラムもですよね?私にはAWSのクレジット提供を気にするような、従来型のビジネスはあまり思いつかないのですが。

HD:そうした企業にとっては、関心のあるものはキャッシュバック以外にはありません。私たちがそれを適応するのは、彼らがもっと気にしているものだからです。

GS:ブリッツスケーリング(劇的成長)の精神をどう考えますか?

HD:私はその本を実際に今読んでいますが、まだ結論を下していません。この本に挙げられているすべての例は、多くのネットワーク効果と、勝者総取りの、2極化した市場のように見えます。それは私たちの目指すものではありません。

GS:モデルにかかわらず、あなた方は騒ぎは起きるに任せてそれを無視するという…私はそれが2018年のフィンテックもしくはファイナンシャルサービスの世界で通用するのかどうかはわかりません。

HD:はい、フィンテックにはまた別の側面があるのです。なぜならそれは人びとのお金を扱うからです。買い手に損をさせるわけにはいきません。しかし、私はそれには他の側面があると思っています。私たちは成功のための計画に向かうのでしょうか、それとも失敗に備えるのでしょうか?私たちは、よりはやく雇用するのでしょうか、それともよりゆっくりと雇用するのでしょうか?

GS:あなた方のように多くな資金調達を行った人たちはみな、採用モードになります。その若さ故に、採用の苦労に遭遇しましたか?

HD:米国ではありませんが、ブラジルでは感じました。とても若い人たちによって創業された、成功企業の例はたくさんあります。まあ、私たちは本当に凄いことをした他の人よりも、1歳くらい若いかもしれませんけどね。

GS:あなたの名刺のインクはある意味まだ濡れていて(まだ組織が若いという比喩)、多くの人たちを急速に雇っている最中ですが、共通の文化を構築するという考えはどうでしょう?

HD:どのような文化を作りたいかという課題については、沢山考えています。GoogleやAirbnbのような文化の企業もあります、つまり「ヘイ、私たちは家族だね」という具合。よりプロフェッショナルなスポーツチームのようにみえる、NetflixやAppleのような企業もあります。私たちは、明らかにGoogleやAirbnbよりも、NetflixやAppleのほうに向かっていますね。

100億〜200億ドルのビジネスを構築することは難しいです。本当に、本当に難しいです。

GS:「よりプロフェッショナル」とはどういう意味ですか?

HD:より仕事中心で、特権的なものを与えないということです。また、シリコンバレーの多くの人たちが株式を信じていないので、株の提供は抑えて、より高い給与を支払うことが好きです。私たちは「はい、もっと多くの現金を支払います」と言って来ました、そしてもっとも交渉上手の人ではなく、歳月を経てもっとも良い働きをした人のために株はとってあります。

GS:あなたの考えは?

HD:一般に、リスクに与えられるスーパープレミアムがありますよね?それは私たちが何者でもなく、私たちを信じる人が誰もいなかったときに、私たちに加わってくれた人たちに与えられるものです。しかしそうしたプレミアムは、この先長期にわたってこの会社で働いてくれるひとに与えられるものに比べると大きすぎると考えています。より多くのプレミアムが、この先6年、7年、8年とこの会社で成長を支えてくれる人たちに渡るべきだと思います。

GS:ではそうした人たちをどこに置くつもりなのかについてお聞きしましょう。ブラジルですか?それともアトランタの”Transaction Alley”(トランザクション通り)でしょうか?

HD:それについては考えている最中ですが、個人的にはバンクーバーが主要な候補地だと思っています。

GS:どうしてバンクーバーなのですか?

HD:ビザを本当に迅速に取得できるからです。

GS:スピードへの要求を考えれば、迅速な成長を狙いながらも支出のコントロールに不安を感じたりしませんか?

HD:正直なところ、私たちは逆の問題を抱えています。Pagar.meが30万ドルで立ち上げられたことを考えてみて下さい。調達された資金はそれだけでした。

GS:本当ですか?

HD:はい。私たちにとっては、お金を使わないことがデフォルトなのです。それなのに今、私たちにはたくさんのお金があって、速く成長するために投資する必要があるのです。そこで私たちは常に、より多くのお金を使う方法を積極的に考えています。

GS:その点では苦労しているようですね。

私たちは、多額のお金を調達して、馬鹿げたことを始める、馬鹿げた企業にはなりたくありません。しかし、私たちはまた、より速く成長するために投資する必要があるので、そのバランスを見つけることが…

GS:…顧客獲得には費用がかかる可能性があります。

HD:はい、しかし私たちにとってはあまり問題にはなりません。私たちの市場はとてもニッチなので、Googleに数十万ドルを使うことはできないのです。私たちはとてもニッチなので、単にそうできないのです。

GS:そうですね。

HS: しかし、私たちは確かに、どのように資金を投じればよいのか、そしてどのように投じないようにすればよいのかについての課題を抱えています。

GS:まあ、もっと多くの広告媒体に広告を掲載することはできると思いますよ。

HS:実際のところそれは安いんですよ!それについての記事がありましたが、私たちはサンフランシスコ全域で3ヶ月のうちに30万ドルを使いました。

GS:最後に、ベイエリアで一番ホットな若いスタートアップになることが何を意味するのかを話し合ってみたいのですが。そしていつかは、景気後退が来るという事実について。まず最初の話題ですが、最近の注目度の上昇を受けて、皆に見られているせいで、失敗を人目から隠すことができないことが気になりますか?

HD:はい。もちろんそのプレッシャーを感じています。しかし、私たちが知っている市場ですし、これをやるのは2度目ですから、ある程度の自信は持っています。それに私は幹部チームが本当に好きです。さらに、Pagar.meの経験を通して、マネジメントやカルチャー、そしてスケール問題がどのようなものかも、かなり習得しています。

景気後退にどう対処すれば良いかを知っている人がいたとしたら、それは間違いだと思っています。

GS:それでも、あなた方の会社の評価額とそれに伴う期待を考えると、それは大きなプレッシャーでしょう。

HD:そうですね。その責任の重さを考えると、本当に恐ろしくなります。そして私は投資家の皆さんに10から20倍のリターンをお返しできなければ、Brexが成功したとは思えないのです。100億〜200億ドルのビジネスを構築することは難しいことです。本当に、本当に難しいです。

GS:あなた方は次のStripeにならなければなりませんからね…ではビジネスサイクルを話すことで終わりましょう。多くのCEOの方々と話をすると、よく聞かされるのが「実際は、景気後退の中で私たちは偉大な存在になるだろう。景気後退のときのほうがむしろ良くなるのだ」という言い回しです。まあこれが真実の場合もありますが、ほとんどの場合は間違っていますよね。

HD:はい。

GS:ビジネスサイクルが変わったときには何が起きるのでしょう、VCの活動があまりなくなって、それでも成長の方法を見出さなければならないのですよ?

HD:景気後退にどう対処すれば良いかを知っている人がいたとしたら、それは間違いだと思っています。なぜならそれぞれの景気後退は、お互いに非常に異なっているからです。2008年は2001年とは完全に異なっていました。それらが互いにとても異なっているのですから、すべてに対処できる方法を知っている1人の人間はいません。

GS:そうですね。

HD:私たちにできることは、大きな構想の下に動くことだけです。1つ目は必要額以上の資金を調達すること、これはできました。そして2つ目はすぐにカットできる支出方法を持つことです。

GS:おそらくあなたのブラジルの血筋が役に立つのはこういうときでしょうね。なにしろ経済的に不安定な国で育ったのですから。

HD:全くその通りです。

GS:朝と夕方では店頭で物の値段が変わるのですよね。

HD:私たちはその時は生まれていませんでしたが、両親がそれについて話すのを聞いたことがあります。

GS:ああそうですね。うっかりしました。

HD:私たちがそこから最も学んだことは、何事も成し遂げ終わるまでは、成し遂げられたことにはならないということです。ブラジルから来て、この事実指向の文化は私たちの体に染み込みました。実際に資金が振り込まれるまで、ラウンドの終了を祝うことさえしませんでした。

GS:最後の質問です。最終的にあなた方の分野で正面からぶつかる競争相手がいるとしたら、それは第2のHenriqueとPedroなのでしょうか?それとも、もっと大きな企業が立ちふさがるのでしょうか?

HD:このプロダクトに続くとしたらフィンテック企業でしょうね。私は、それがAmexやChaseだとは思いません。おそらくPayPal、Square、Adyen、Cyber​​Sourceのような企業がやってくるのではないでしょうか。彼らはレガシー企業ではないので、銀行が抱えているような問題を持っていません。

GS:了解です。

HD:しかし正直なところ、第2のHenriqueとPedroが登場するとは思っていません。なので…

GS:そうですね、おふたりの幸運を祈りましょう。

このインタビューは、内容、長さ、および明快さのために編集されている。

(訳注:米国におけるチャージカードとは、クレジットカードの一種だが、分割支払機能がなく一括払いのみが許されるカードのこと)

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(翻訳:sako)

毎週2〜4社のスタートアップが倒産―、企業清算の専門家が語る業界の現状

Marty Pichinsonと彼が共同設立したSherwood Partnersは、事業に失敗したスタートアップの資産売却や、彼らが順を追って倒産の手続きを踏めるように資金をやりくりして猶予期間を伸ばす手助けを、25年間にわたって主要事業として行ってきた。その結果、彼はターミネーターや葬儀屋といった死に関連した様々なニックネームで呼ばれている。

しかし、セールスマン魂と同じくらい気の強さで有名なイリノイ生まれのPichisonは、Sherwood Partnersの事業がうまく行く限り、そんなニックネームのことを気にかけることもない。

そんなPichisonに先週インタビューを行い、現在のスタートアップ業界に関する話を聞いてきたので、この記事ではその様子をお伝えしたい。

TC:株式市場のトレンドが上向いてきて、スタートアップの資金調達状況も順調なように見えますが、企業倒産の状況はいかがでしょうか?

MP:毎週2〜4社が清算していて、これは今まで見たことがないようなスピードです。個人的には、もしもうまく行かなければすぐに投資をやめて他の企業に目を向けるというSequoia Capitalのアプローチをとる(投資家が)増えているのではないかと考えています。

TC:投資家はこれまでもそうしていたんじゃないですか?

MP:その速度が上がってきているんですよ。MicrosoftやIntel、Facebook、Google、Appleといった企業は自分たちのテリトリーを築いていて、そこから動くことはありません。そのため、ちょっと捻りを加えた類似事業を行う企業が生き残るのが段々難しくなってきています。他の企業が新しい機能やツールを開発しても、大手企業はこれ幸いと、次のバージョンでその機能を(自分たちのプロダクトに)追加してしまうんです。

TC:ここ何年かの間は、お話を聞くたびに仕事が忙しいと仰っていましたが、たまには落ち着くこともありますよね?

MP:Sherwoodは設立時(1992年)からほぼ継続的に成長してきましたが、確かに2014年には理由も分からないまま仕事が減ったことがありました。まぁ当時のVCは、(スタートアップが資金調達する前に自分たちの投資利回りを上げるために)投資先企業をギリギリまで追い込んでいたので、2015年中には(VCが投資をストップしたため)四半期の成績としては最高額を記録しましたけどね。

TC:上場の動きが現在広がっているように見えますが、IPOを行う企業が増えるとどんな影響が生まれるのでしょうか?

MP:IPOは特に関係ありません。IPOの数が増えたというのは、各業界の勝者が決まったというだけで、それ以外の企業は成功をおさめた企業の後塵を拝するだけです。ソーシャルネットワーク業界でFacebookが勝利をおさめたときと何ら変わりありません。

その一方で、この業界へは引き続きお金が流れ込んでいて、スタートアップの株式は本当の意味でひとつのアセットクラスへと成長しました。レストランや歯医者、ショッピングモールなんかの統合を行っていたプライベート・エクイティを含め、誰もがこの業界に入り込みたいと思っているんです。これ以上ショッピングモールが増えるとも思えませんしね。このようにテック企業には注目が集まっていますが、彼らの投資先の企業全てが成功するとは限りません。

TC:もっと具体的な話として、例えばシリーズBの段階にある企業の清算を担当することが多いといった傾向はありますか?どのくらい早い段階で投資家は身をひくことが多いのでしょうか?

MP:特にこれと言った傾向はなく、シリーズBからシリーズEの段階にある企業まで担当する企業の種類は様々です。3社か4社くらいユニコーン企業をたたむ手伝いをしたこともあります。全体に関して言えば、必要以上の負債を抱えているスタートアップが多いなと感じています。まずVCからの期待があって、在庫や売掛金が加わって、さらに負債が積み上がってくるとなると、その会社は投資家だけなく債権者のことも気にしなければいけなくなります。債権者はとても具体的なものを企業から求めていますしね。

TC:特にスタートアップの割合が多いと感じる業界はありますか?

MP:ストリーミングからハードウェア、ソフトウェア、ファッションまで、業界ごとの偏りは特にありません。ただ私たちが問題視しているのは、プロダクトのコンセプトや恐らく顧客の満足度に関しても似たような企業が、それぞれ全く違うアプローチをとっているので、複数のスタートアップを統合して1つの有力企業をつくるのが難しいということです。企業統合にかかるコストが高すぎるんです。

TC:何年も前に、Sherwoodが知的財産の売却を始めたという話をされていて、当時マウンテンビューに知的財産のオークションを行うAgency IPという会社まで新設されましたよね。今でも企業を清算するときは知的財産に1番注目されていますか?

MP:Sherwoodが売却してきた特許の数は、恐らく他のどの企業よりも多いと思います。通常の場合、(債権者の)ローンを返済するためには、特許を売却するくらいしか手立てが残っていないので、企業の本当の価値に比べれば売却額は少なくなってしまいます。それでも担保付ローンを返済するのに十分なくらいの金額にはなることが多いですよ。

TC:あなたに頼ってくるVCには何とお話されていますか?投資先企業を絞るということ以外に、何か彼らに対するアドバイスはありますか?

MP:私はここ何年間もVCに対して、もっと早く私たちにコンタクトするように言っています。中には、投資先のスタートアップがランウェイの終わりを迎える1年くらい前に連絡してくるVCもあります。しかし(うまくやれば)、そこそこの企業が優良企業に勝つのは難しいことではありません。顧客が優良企業のことを知る前に、目的のターゲットに自分のプロダクトを使ってもらうことが重要なんです。

他にも、あるひとつのアイディアに固執しているスタートアップを見かけますが、そんなとき私たちは「それはアイディアでも何でもないですよ。この全体の10%にあたる事業で最近売上が出始めていますよね?他のことはやめて、この事業に集中してください」といった感じのことを伝えています。

TC:最近ロサンゼルスに拠点を移されたようですが、その理由を教えてもらえますか?

MP:ロサンゼルスには18ヶ月前に引っ越してきました。シリコンビーチは本当に素晴らしいところですね。決して安くはありませんが、まだまだ新たな建物を建てるだけの土地もありますし。これからはコンテンツとテクノロジーの融合が次々に起きると思います。AmazonとNetflixがアカデミー賞を受賞して、どの企業も他の領域に進出しようとしていますが、ひとつの企業で全てを賄うことはできません。

TC:企業の清算や再建といった観点ではどうですか?シリコンバレーの方がそういった点では良さそうに見えますが。

MP:まだシリコンバレーには大きなオフィスを持っていますよ。ニューヨークのオフィスには4人置いていて、ロサンゼルスのチームは2人から10人に増えました。

ロサンゼルスの人気が今後もっと高まっていく中で、私たちは現在なかなかいいポジションにいると思っています。家で朝食をとってからロサンゼルスに飛んで、投資先企業とランチをして、良いホテルに泊まって、次の日にまた別の会社とランチをとって、夕食までには(ベイエリアの)自宅に戻ってくる、という方がVCにとっては効率がいいですからね。街によって仕組みが全く違うので、他の街ではこうはいかないだろうな、となんとなく思っています。ボストンではロボットと医療が盛り上がっていて、ニューヨークは少し落ち着いていますが、移動が楽ということもあって、VCはロサンゼルスに来ることの方が多いです。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter

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