不動産テックのライナフが伊藤忠テクノロジーベンチャーズなど5社から3.2億円を資金調達

スマートロックなどのIoTデバイスを切り口に不動産サービスを展開する、不動産テックのスタートアップ企業ライナフは1月25日、伊藤忠テクノロジーベンチャーズをリード投資家として、長谷工アネシス住友商事、FFGベンチャービジネスパートナーズ、既存投資家である三井住友海上キャピタルを引受先とした、総額3.2億円の第三者割当増資の実施を発表した。

今回の資金調達は、三井住友海上キャピタルおよび三菱地所が出資に参加した2016年2月、三菱地所、DGインキュベーション、西武しんきんキャピタル他が参加した2016年11月に続くもので、シリーズBラウンドにあたる。

ライナフでは、スマートロックの「NinjaLock(ニンジャロック)」、オートロック付きの共有エントランス向け開錠システム「NinjaEntrance(ニンジャエントランス)」をIoTハードウェアとして提供。また、これらのハードと連動して、不動産オーナーや管理会社向けに「スマート内覧」「スマート会議室」「スマート物確」といったサービスを提供してきた。

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏は「今回の調達は資本・業務提携としての目的が強い」と話している。「これまでの株主構成では、どうしても既存株主のための事業展開と見えてしまう。不動産各社へのサービス提供も進めているが、サービスの単なる“運用”から“拡大”へと進むために、一社に限らず、さまざまな不動産プレイヤーからの応援をいただいているという形にしたかった」(滝沢氏)

大手不動産プレイヤーとして新たに株主に加わった長谷工アネシスは、長谷工グループのサービス事業を行う企業で、マンション販売や賃貸マンションの管理事業などに加え、スマートマンション事業や保険サービスなども手がける。ライナフでは今後同社と、マンション建設や不動産事業、住宅関連サービスへのICT活用について検討していく予定だ。

また住友商事とは、同社が保有する不動産や販売するマンションへのサービス導入を検討してもらうほか、商社として、海外展開への支援をライナフとしては期待しているという。

福岡銀行グループのVCであるFFGベンチャービジネスパートナーズについては、銀行と地元不動産会社との金融機関としてのつながりを生かし、九州地域への進出で協業する予定で、滝沢氏は「これを機に関東以外への進出も強化していく」としている。

今回の調達資金は、営業体制強化のための人材採用のほか、「カスタマー・サクセス」部門の強化にも充てる。滝沢氏は「現在提供しているサブスクリプション型のサービスで、投資の回収を完了して収益を上げるためには、顧客に2年目以降も継続していただくことが重要。新規顧客の開拓はもちろんだが、既存顧客への定期訪問などでより多くの物件へのサービス導入をお勧めし、さらにその顧客がまだ利用していない新サービスも使ってもらえるような体制づくりを行っていく」と説明している。

なお、ライナフでは既存の空室向けサービスのほかに「住生活領域についても、日本初となる新しい取り組みを予定している」として、1月30日に新サービスを発表するそうだ。滝沢氏の話では、どうやらそれは、2017年3月のLIXILとの提携の際にTechCrunchが取材で聞いた、スマートホームならぬ「スマートドア」構想と関係しているらしい。

このスマートドア、あるいは「サービスが入ってくる家」と滝沢氏が呼ぶ構想は、米Amazonが2017年11月から開始した、不在時でも家の中に荷物を届けてくれるサービス「Amazon Key」と似ている。

2017年3月の取材当時の滝沢氏の話では、スマートロック付きのドアが家の外側と内側の2カ所に設置され、不在でもドアとドアの間で荷物の受け取りやクリーニングなどの宅配サービスが受けられ、内側のドアが開けられるキーを発行すれば家事代行サービスも受けられる、というサービスが想定されていた。どのようなサービスになるのか、発表の内容も追って記事にする予定だ。

不動産テックのイタンジ、ビットコインによる不動産売買サービス「ヘヤジンコイン」を提供開始

不動産テックのスタートアップ、イタンジは1月10日、仮想通貨で不動産売買ができるサービス「HEYAZINE COIN(ヘヤジンコイン)」を公開した。

ヘヤジンコインでは、物件の売買代金のほか、仲介手数料や諸経費もビットコインで決済し、物件を購入できる不動産購入プラットフォームを提供。売り主には、仮想通貨相場と不動産市場のデータから構築したアルゴリズムを使って、不動産の売却査定機能を提供し、物件価格や決済タイミングの提案を行う。

10日現在、ヘヤジンコインには9件の物件が掲載され、それぞれ日本円での価格と併記して、ビットコインの時価が表示されている。ビットコイン価格の方は刻々と変わっていくので、手持ちのビットコインがある人なら眺めているのも楽しいかもしれない。イタンジでは、2018年9月までに物件掲載数1000件、取引数300件を目指すとしている。

ヘヤジンコインの物件紹介ページには、ビットコイン価格が日本円価格と併記されている。

イタンジは2012年の設立。これまでに、不動産仲介会社向けの業務支援サービス「ノマドクラウド」や「Cloud ChintAI(クラウドチンタイ)」など、仲介会社、管理会社といった不動産業界の法人向けITサービスを主に提供してきた。また、個人向けには賃貸マンションの検索・情報ポータルサイト「HEYAZINE(ヘヤジン)」を公開。人工知能を活用した不動産投資家向け情報サービス「VALUE」なども提供している。

不動産テックのライナフがアットホームと業務提携——AI音声認識で仲介会社に物件情報を提供

スマートロックと、それに連動する不動産管理ソリューションを展開するライナフ。これまでにも、オンラインで物件の内覧を予約し、セルフ内覧ができる「スマート内覧」や、貸し会議室の予約、スマホや電話での入室が可能な「スマート会議室」といったサービスを提供してきた。そのライナフが新たに提供し始めたのが、AIによる音声認識で物件確認の電話に自動応答するサービス「スマート物確」だ。ライナフは9月15日、不動産情報サービスのアットホームとの業務提携を発表。スマート物確をアットホームの加盟・利用不動産店に対して、9月27日より提供開始する。

ライナフ代表取締役の滝沢潔氏によれば、準大手の不動産管理会社の場合、仲介会社から物件の成約状況や紹介可否を確認する電話は、1日600件ほどかかってくるという。現状では管理会社では、問い合わせのたびにExcel表などを確認しながら回答することになるのだが、この業務の負荷を自動音声応答で軽減しようというのが、スマート物確の狙いだ。

「物件名にしか反応しない」独自の音声認識システム

スマート物確では、仲介会社が物件確認専用の番号に電話をかけると自動アナウンスが流れ、物件名を声に出すとAIが音声認識によって物件を特定し、その物件の情報を自動で応答する。

物件確認の自動応答システムでは、すでにイタンジが提供する「ぶっかくん」があるが、滝沢氏は「ぶっかくんでは、電話をかけると、物件名ではなく賃料や部屋番号、専有面積をプッシュ入力することで物件を絞り込んで特定し、物件情報を答える仕組みになっている。スマート物確は、より人の会話に近い形を目指した」と既存サービスとの違いを説明する。「音声で物件名(建物名)を言うと、対象が1室であればその部屋の情報をすぐにアナウンスする。複数の空き物件がある場合は、そこで部屋番号を入力する仕組みだ」(滝沢氏)

物件名を検索の基準とするスマート物確では、賃料などの条件変更があり、仲介会社が把握する賃料と自動応答システムのデータベースの賃料との間に相違がある場合でも、物件を特定することが可能となっている。

実際に、スマート物確の自動音声対応が聞けるデモ番号に電話をかけて、試してみた。アナウンスに従って、サンプルの物件名を声で話すと物件の検索が始まり、約10秒ぐらいで物件を確認する音声が返ってくる。音声でも思った以上にスムーズに検索ができる印象だ。

スマート物確の音声認識システムは、物件名だけを認識する不動産専用のものだという。滝沢氏は「いろいろな音声認識APIを使ってみたのだが、これまでのGoogleなどの音声認識システムでは、日常会話には強いが、固有名詞の認識で弱いことが分かった。そこでオープンソースの音声認識プログラムに手を加え、エンジンを自社開発した」と説明する。

管理会社はスマート物確で、物件ごとに読み上げる回答項目を設定、追加できる。また、営業時間の案内なども設定することが可能だ。

応答項目設定画面

さらにどの物件に、いつ、どの仲介会社から電話がかかってきたかを確認できる受信履歴画面や、問い合わせの多い物件が把握できる、受電ランキングなどの機能も備わっていて、物件の分析やマーケティングに活用することもできる。

物件ランキング画面

スマート物確では、自動音声案内だけではなく、仲介会社がオペレーターと直接話したいという場合には、通話を切り替えることもできる。滝沢氏によると、今回の本格リリースの前にベータ版を実際の業者で使ってもらった例では、半数以上の問い合わせが物件情報の自動音声案内のみで完了しているケースもあるそうだ。ベータ版の不動産会社による導入も進んでおり、9月15日現在の管理物件数は既に10万室を超えたという。

「電話は重要なチャネル」「他社連携さらに進める」

ライナフでは、不動産業界での問い合わせや予約で、いまだに電話は重要なチャネルだと捉えている。「宅配便の再配達や飲食店の予約でも、やはりネットよりも“確実に申し込みできた”という印象が強いのが電話。今後、スマート物確を内覧予約システムのスマート内覧ともつなぎ込み、年内にもリリースする予定だ。これにより、物件の空き状況の確認から内覧予約、現地の開錠と内覧までを、ネット経由に加えて電話でも行えるようになる。さらにスマホへの普及率が9割を超える、LINEとの連動も進めていく」(滝沢氏)

ライナフはスマートロック「NinjaLock」を切り口としてはいるが、以前から滝沢氏が取材で述べているように、“不動産管理”を軸にした不動産テックサービスを提供する姿勢を貫いている。その過程の中で、不動産の物件情報、予約情報、鍵情報を集め、一元的に管理するデータベースを構築してきた。滝沢氏は「これまでの物件内覧、貸し会議室などのサービスに加えて、他社への情報提供も視野に入れている。ホテル業界での予約・在庫管理ASPのようなサービス提供を、不動産の分野で目指している」と話している。また賃貸物件だけでなく、Airbnbやスペースマーケットなどが扱っているような短期の空きスペースの物件、時間、鍵の情報についても、他社へ一括で提供できる仕組みを検討しているそうだ。

今回のアットホームとの提携も、そうした他社への情報提供やサービス連携の一環だと滝沢氏は言う。「アットホームは5万4000店舗の販売網を持ち、また元々ファクトシート(物件情報の図面)の印刷・配布では最大手の企業。不動産情報のネットワーク化を進め、不動産業務の支援サイトも提供しているアットホームとの情報、システム連動を進めることで、業務の効率化、データ化も進み、不動産業界自体が一歩先へ進むと考えている」(滝沢氏)