VCを真に21世紀らしい姿へと導く方法

TechCrunchは過去の記事で、真に多様性のあるベンチャー業界を築くためには、VCに投資資本を出資するリミテッドパートナー(大学や病院などの機関)自体に多様性の義務を徹底する必要があるということに言及した。あるベンチャーファームがテキサス大学からの投資を確保したいとする。この場合、資本の一定割合を、女性や人種的マイノリティなどの過小評価グループによって設立されたスタートアップに投入するということに、あらかじめ書面にて同意を得ることが求められる。

機関投資の世界がいかに細分化されているかを考えると、この考えは非現実的に聞こえるかもしれない。しかし、シリコンバレーで少数派ながら増え続けている黒人VCの1人であるLo Toney(ロー・トニー)氏は、これが必然となる可能性は十分にあると提唱している。例えば、カリフォルニア州職員退職年金基金は160万人の職員の資産を管理しているが、この160万人の多くが「私のような見た目の人々」だとトニー氏は言う。こうした職員たちが、彼らの資産を誰が管理しているのか知ろうとするとどうなるだろうか。

トニー氏はこの進展をただ待っているわけではない。その必要がないのだ。Comcast Ventures、GVでパートナーを歴任したトニー氏は、ベンチャーチームへの資金提供とスタートアップへの直接投資を実施してきた自身の投資会社であるPlexo Capitalのアンカー投資家として、Alphabetを確保している。

そして、スタートアップ業界全体において有色人種が少ないという事実が新たに関心を集めている今、LPらは再びPlexoに関心を寄せ始めている。Plexoの2つ目のファンドでは、ファンドマネージャーをサポートするだけでなく、彼ら自身のベンチャーファームを形成する有色人種の投資家を支援することも計画に含まれている。

これはすでに行っている事業の延長線上にある。Ford Foundation、Intel、Cisco Systems、Royal Bank of Canada、HamptonUniversityなどから2018年に4250万ドル(約46億円)のデビューファンドを調達してクローズしたPlexoは、Precursor VenturesIngressive CapitalKindred VenturesEqual VenturesBoldstart VenturesWork-Benchなどすでに20のファンドに出資している。

出資先のほとんどが、完全または部分的に有色人種によって運営されているものだ。「ハーバードやマッキンゼーによる研究でも、すべてのレベルで多様性がいかに重要であるかが証明されています。多様な取締役会を持つ企業や多様な経営チームを持つ上場企業など、マネジメント層が多様な組織の方が優れたパフォーマンスを発揮しているのです」とトニー氏は説明する。

2つ目のファンドでは、さらに多様性を重視した方向へ進みたいと同氏は考えている。具体的に言うと、Plexoは「優れた投資家」を「優れたファンドマネージャー」に変える、「ある種のYコンビネーターの開発」を目指していると言う。

そのアイデアの一環は、マネージャーがマーケティング資料の準備をするのを手伝い、富裕層や機関などに戦略を売り込み、投資家の基盤が整った後にLPとのコミュニケーションを管理するという、Plexoがすでに臨時的に行っている作業を制度化することだ。そしてこの3点はPlexoが手助けすることのできるほんの一部であると同氏は言う。

Plexoはまた「ファンドを開始するためには平均して100万ドル(約1億7000万円)かかるという事実を前提に、若いGPの多くを運転資金の面で支援し、必要な費用を負担できるようするための戦略を検討している」という。これは、資金調達プロセス中の無給期間、旅費、サービスプロバイダー、GPが通常資金に投入しなければならない金額など、すべてを考慮した上でのことだ。

これは個々の企業に投資するよりも、この方法の方が物事を迅速に進めることができるだろうと考えるPlexoのビジネスモデルである。しかしこれはPlexo単体で実現できるものではない。Bessemer Venture PartnersのElliott Robinson(エリオット・ロビンソン)氏、Storm VenturesのFrederik Groce(フレデリック・グロース)氏、小売スタートアップであるDolls KillのSydney Sykes(シドニー・サイクス)氏など、黒人ベンチャー投資家を結び付け、前進させることを目的としたBLCK VCと呼ばれる若い組織を率いるPlexoの友人や協力者においても同様のことが言える。

トニー氏は特に大規模で後期ステージにあるベンチャーファームにいる少数の有色人種に関して懸念し続けている。スタートアップが成熟するにつれ、黒人の起業家をサポートするためのネットワークとノウハウを保有しているであろう投資家たちである。

これは当然の懸念である。デジタルメディアThe Informationの2018年の報告によると、運用資産2億5000万ドル(約270億円)以上のベンチャーファーム102社において、黒人の意思決定者はわずか7名しか存在せず、この数字は現在もほぼ変わっていない。女性の黒人投資家にとってはより深刻なものである。

この業界も時間の経過とともに徐々に、過小評価グループをより受け入れて行くことになるだろう。しかし、連邦政府の資金を得ている機関や公務員の資産を管理している機関がこの問題により注力することを決めれば、はるかに早く解決へと向かうはずだ。実際に、こういった機関の構成要素(年金基金拠出を通じての援助資金供与者や職員を含む)が最終的にはそれを主張するはずである。

「団体として資産クラス内で実際に変化をもたらすような力と影響力を実現している例はあまり見られません。私自身はいかなる取り組みにも参加していませんし、想像でしかありませんが、今後より多くの年金基金が明確な姿勢を示し、職員から発生するボトムアップによるシフトが訪れると思います」とトニー氏は言う。

ことが進むまでにはそれほど時間がかからないかもしれない。「例えば『黒人のパートナーは何人いますか?』『女性は何人?』『ポートフォリオの構成はどういったものですか?』など、単に質問するだけでも私たちの業界に圧力をかけることができるでしょう。」

「最初のステップとして、こういった質問をするだけでも状況を変えるよう影響を与えることができます。なぜなら、このような質問に答えるときには誰も悪者になりたくないからです」とトニー氏は語る。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 インタビュー

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(翻訳:Dragonfly)

テック企業よ、今こそ黒人の命が本当に重要だと示すときだ

編集部注:本稿を執筆したCatherine Bracy(キャサリン・ブレイシー)氏はTechEquity Collaborativeの共同創業者だ。

不当な黒人の殺害に対する抗議運動を受け、テック企業は人種的差別撤廃を求める団体に対し数千万ドルの支援を公約している。

こうした公約は、抗議運動の道徳的な重さを示す強力なメッセージとなり、このような団体が変化を推進する上で重要な支えとなるのは間違いない。ただ、テクノロジー業界をより公平な場所にするために自分のキャリアをささげている、バイレイシャルの黒人女性として、私はこうした公約の真意はどこにあるのかと皮肉な目で見てしまう。

4年前にTechEquity(テックエクイティ)を創設したとき、支援活動を通じてテックコミュニティに関与し、制度化された不平等を解決することを目指した。テクノロジー業界ではさまざまな機会が与えられるというより、不平等が促されていた部分があるのだ。テック業界で働く技術者たちがそれぞれの特権を使ってその目標を推進するという点では、想像を上回る成功を収めてきた。たとえば去年、彼らは自らの市民としての力を用いて、アメリカにおけるテナント保護を最大限拡張する法案を通すことができたのだ

だが、テック企業にさらに力を入れるよう説得することは容易ではない。ほとんどが傍観者にとどまることを選んだのだ。そうした例をいくつか挙げてみよう。

固定資産税の改正

TechEquity(テックエクイティ)では2年以上、法人が固定資産税の支払いを免れるカリフォルニア州税法の大きな抜け穴を失くすために連携してきた。この抜け穴によって、カリフォルニア州の学校制度と地方自治体は、過去40年間に渡って多額の資金不足に悩まされ、結果として公教育の質や社会事業が急激に落ち込み、黒人や有色人種のコミュニティが過度の影響を受けているのだ。また古くから存在している企業に税務上のメリットが与えられることで、テクノロジー業界などにおける先進的な新企業は不利な立場に置かれてしまっている。

この抜け穴をふさぐための住民投票を支持することは、テクノロジー業界にとっては非常に簡単なことに思えた。私はこれがなぜテクノロジー業界に関わる問題であるのか、その理由を明確にした論説まで書いた。だが現時点で支持を表明したテック企業は、Postmates(ポストメイツ)だけでなのである。

住居におけるうわべだけの約束

昨年、Google(グーグル)、 Apple(アップル)、Facebook(フェイスブック)は、合わせて45憶ドル(約4817憶円)をベイエリアの住居問題の解決に充てると大々的に発表した。細則を読むと、寄付のほとんどは、住宅建設区域に分類されていない土地であることが分かった。カリフォルニア州の住居について少し見識がある人なら、市街化調整区域法を変更することはもちろん、その法律で認められた土地に住居を建てることがどんなに大変かは知っている。都市計画法を変更する政治戦略に補完的な投資をしないのであれば、この多額の寄付のほとんどは実質的に意味がない。

しかし、自宅を追われ路上生活を強いられる人は後を絶たず、とりわけ黒人社会にその傾向が偏っている中、こうした企業は、住居問題を実際に解決するために必要な政治活動や権限の確立活動への投資には消極的だ。45憶ドル(約4817憶円)もの大金を必要としないというのに。Stripe(ストライプ)は、住居建設を支援する団体California YIMBY(カリフォルニアYIMBY)に100万ドル(約1億700万円)を寄付したが、これが住宅政策支援活動における唯一の財源となっているのだ。

ホームレス向けの住宅とサービスに対する継続可能な財政支援

2018年、サンフランシスコの有権者は、ホームレス向けのサービスと低価格の住宅のために、市内に拠点を置く高収益の企業の税金を上げる政策を承認した。先ほど話した固定資産税の抜け穴を作り出したものと同じ、難解な法律のため、裁判が結審するまで、市は収集したお金が使えない。これは最大で7年間かかる可能性がある。

その間、悪化し続けるホームレスの問題を解決するために、すでに支払済みの税金を市が使えるよう企業が許可を与えられるようになっている。Salesforce(セールスフォース)とPostmates(ポストメイツ)の2社は、市がその資金を活用できるように許可を与えているが、他の多くは後に続くことを選んでいない。

これらはいくつかの例に過ぎない。私はテック企業における慢性的な多様性の欠如や、この件について業界が本腰を入れて解決する気がない点についてはまだ触れてもいない。

提唱者が、不平等の問題において目立った変化を起こすことをテック企業に提案しても、大抵の場合は参加を拒否されてしまう。企業は政治に関与するのは適切でないためという理由で。ネガティブな注目を集めてしまうかもしれないことを恐れているのだ。企業はそのスタンスに異を唱える政策立案者や有権者を敵に回したくはないのである。関与しないことは簡単だ。

だが、黙っているのは共謀していることになる。私がこの5年間で学んだのは、テック企業が行うほとんどすべては、否が応でも政治がらみであるということだ。現実を直視し、その力を使って本当の人種的平等や経済的平等を支援するときだと思う。

テック企業はこんなことをしてみてはどうだろうか:

その地位を利用して衡平法を支援する

私たちは、平等を実現するための政策に対する支援を、テック業界で働く技術者たちが行動で示すことがどんなにパワフルなものかを目の当たりにした。テック企業は、十分な資金のないコミュニティの経済的弾力性を改善する法律への支持を公言し、それが可決されるかどうかに影響を及ぼすことができる。

支援活動の資金援助をする

変化の推進に尽力する組織の多くは、資金調達における制限によって支援活動を行うのが困難なため、思うように活動できていない。その点テック企業には、他の多くの制度化した慈善団体とは違って支援活動の金銭的支援を縛る法規制がない。テック企業は、金銭的支援を受ける者が、政策による権利擁護を通じて構造変革を進めるためにお金を使うようにできるし、またそうすべきだ。

重役レベルにおける多様性に重点を当ててみよう。テック企業を代表して意思決定を行う者は、重役室にいるわけだが、圧倒的に白人が多い。重役レベルに多様なバックグラウンドを持つ人を入れることで、さまざまな見方ができるようになり、平等問題でより有意義な取り組みが行えるようになる。また政治的な姿勢を取る企業の前提条件として、重役のバイイン(送り込み)があることが分かっている。

重役チームに多様性があれば、こうした問題について企業として取るべき態度を明確にできるようになるだろう。人種的平等に投資するためテック企業ができることについてはっきりさせるときがきている。そして企業がこれを行わない場合には、釈明の義務を持たせるときが来ているのである。

関連記事:ビデオゲームにおける人種的偏見に立ち向かう

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

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(翻訳:Dragonfly)

ビデオゲームにおける人種的偏見に立ち向かう

黒人系アメリカ人に対する警察の暴力と系統的な人種差別に対する米国全域での抗議は、Electronic Arts(エレクトロニック・アーツ)、Epic Games(エピックゲームズ)、Sony Interactive Entertainment/PlayStation(ソニー・インタラクティブエンタテインメント/プレイステーション)などのゲーム会社が、サポート声明を発表し関連する擁護団体に寄付をするきっかけとなった。

これらは前向きな動きではあるものの、ゲーム会社ができる最も影響力ある取り組みは、内部で実際に行動を起こすということである。人種的偏見はゲームを開発する人々によって通常無意識的にゲームに組み込まれている。その結果、偏見に満ちた黒人やラテン系のキャラクターが繰り返し使用されたり、その逆にこれらの人種のキャラクターが全く存在しなかったりと、不健全で屈辱的な事態が起きている。

世界には25億人のゲーマーが存在し、このグループにはあらゆる人種と年齢の消費者が含まれている。特にモバイルゲームは最大の市場セグメントである。ニュースサイトのQuartzによると「米国における6歳から29歳までのビデオゲームプレーヤーの57%が、今後10年未満で有色人種になる」とのことだ。モバイルゲームとコンソールゲームの両方において、米国の黒人とラテン系の若者は白人の若者よりも平均して多くの時間をゲームに費やしている。同業界の急速な成長を特に牽引しているこのような層がいる中、世界中の数十億人のゲーマーのために用意されたゲームの中に、彼らのような人種が主要キャラクターとなっているゲームはほとんど用意されていない。これは、絶好のビジネスチャンスを逃しているということにもなる。

「こういった話は人々が思うほどニッチなものではありません。マーベル・スタジオ製作の映画、ブラックパンサーが良い例です」とBrass Lion Entertainment(ブラスライオン・エンターテイメント)の共同創設者兼最高クリエイティブ責任者のRashad Redic(ラシァド・レディック)氏は説明する。「コンテンツが面白いか否かのみが重要なのです。」

キャラクターの肌の色を超えて、ゲーム開発には不公平性や誤りにつながる微妙な側面がある。著者がこの記事のためにインタビューしたゲーム会社の幹部とリサーチャーにおける一貫した見解は、主要なゲーム会社の従業員の多様性の欠如であり、その結果、上層部がこの問題に対して無関心のままであるという点である。

こういった単純な批判の提起がいつも歓迎されるわけではない。例えばゲーム業界のジャーナリスト、Gita Jackson(ジータ・ジャクソン)氏はゲーム内のキャラクターの人種について言及するたびに彼女が受ける批判について説明している。「有色人種の女性キャラクターがゲームにもっと登場したら良いと思います。これは物議を醸す発言とみなされるべきではありませんし、私は自分が良いと思ったことを述べ、自分に関わることを発言しただけなのです。しかし読者は、私がまるで足の小指を切断するべきだと提案したかのような反応を見せるのです」。

キャラクターの描写

ゲームの人種的描写に関する最も広範な研究の1つとして、150の人気タイトルを分析した2009年の研究が挙げられる。全体における黒人のキャラクターは10.7%と、アメリカ人の12.3%が黒人であるという当時最新の国勢調査データとほぼ比例した結果に。一方でわずか2.7%がラテン系(米国の人口の12.5%に相当)となっていた。しかし南カリフォルニア大学の教授であり、この研究の筆頭著者でもあるDmitri Williams(ディミトリー・ウィリアムズ)氏によると、主人公だけを見ると黒人の描写率はさらに低くなり、いずれの場合も「黒人キャラクターが登場するのは、ほとんどの場合スポーツゲームのアスリートとしてである」とのことだ。

イリノイ大学シカゴ校の教授であるKishonna Gray(キショナ・グレイ)氏は、ゲームに登場する黒人キャラクターの数を追跡するだけでは、それらがどのように表現されているかという点を見落としていると強調。「歴史的に映画の世界では、黒人の登場人物は3つの役割を果たしてきました。暴力的な黒人、相棒としての黒人、助っ人としての黒人です。ビデオゲームの世界でも同様のことが起きています。」

さらに「スポーツゲームに関しては、現実の世界の実際の選手をそのまま登場させているだけなので、これらの分析から削除する必要がある」とグレイ氏。ほとんどのゲームスタジオにおいて、クリエイティブなプロセスから黒人キャラクターが誕生する確率がどれほどまでに低いかを示す統計が、スポーツゲームによって包み隠されていると述べている。

どのようなメディアにおいても、特定の人種が起用されることによってその人種に対する現実の世界での消費者の認識が大きな影響を受けることとなる。少なくとも1つの学術研究によると、白人の参加者らが黒人キャラクターとして暴力的なビデオゲームをプレイした後の方が、白人キャラクターとしてプレイした後よりも、黒人の顔を否定的な言葉に関連付ける可能性が高いことが分かっている。

ファンタジーの世界をゲームで体験するためには、白人キャラクターとして体験するしか選択肢がないとなると、こういったファンタジーの世界が有色人種のためにデザインされたものではないということが多くのゲーマーに内面化されてしまう。「ゲームの世界では何でも可能なのです」とグレイ氏は業界に対する彼女の情熱を込めて続ける。「しかし、何でも可能なのは白人のキャラクターのみで、黒人がゲームに追加されると、現実の内容に基づいたものにしかなりません…。黒人がドラゴンに乗ることができないのは何故なのでしょうか?」

ゲーム開発者の人種層

ゲーム内のさまざまな人種の存在比率がゲーム開発コミュニティの人種的構成と相関していることがデータによって明らかになっている。ウィリアムズ氏によると「ほぼ同じ割合になっています」とのことだ。

国際ゲーム開発者協会(IGDA)の2019年版年次調査によると、世界中のゲーム開発者の:

  • 81%が白人/ヨーロッパ系と認識している
  • 7%がヒスパニック/ラテン系と認識している
  • 2%が黒人/アフリカ系アメリカ人/アフリカ人/アフリカ系カリブ人と認識している

「人々は自身の経験からインスピレーションを得ています」とグレイ氏は説明する。「そのため描写に問題が生じるのです。」レディック氏はBethesda(ベセスダ・ソフトワークス)やCrytek(クライテック)などのトップゲーム会社での経験を含むキャリアの中で、同氏がほとんどの場合「企業にいる何百人ものゲーム開発者の中で唯一、または非常に少数の黒人」であったと伝えている。

非営利団体I Need Diverse Games(アイニードダイバースゲームズ)の創設者であるTanya DePass(ターニャ・デパス)氏は、コンテンツの多様性を改善したいと望む企業にとって「最も重要なことは職員の多様性、そして管理職レベルのリーダーたちの多様性」だと指摘する。さらに、ゲームスタジオの開発計画をレビューし、特定の民族グループを偏見的な見方で描いたコンテンツに対してフィードバックを提供できる外部の専門家を雇うことが賢明であると述べている。「発売の1か月前ではなく、始めからダイバーシティコンサルタントを雇い、それを真剣にとらえるべきです。」

「Pokémon GO」や「ハリー・ポッター:魔法同盟」を手がけるスタジオNiantic(ナイアンティック)は、コンサルタントを起用している唯一の企業である。同社のダイバーシティ&インクルージョン部門長のTrinidad Hermida(トリニダード・エルミダ)氏によると、同社はまた「ゲームのコンセプト、プリプロダクション、ポストプロダクション段階におけるダイバーシティ&インクルージョンチェック」も実施しているとのことだ。「このチェックではキャラクターデザインから、作品に取り組んでいる社内チームの多様性まで、あらゆる項目を網羅しています。弊社が発表するすべての新ゲームはこのプロセスを経なければなりません。」

善良な意図、遅い進歩

IGDAが2019年に実施した調査でも、ゲーム開発者の87%がゲームコンテンツの多様性は「非常に重要」または「やや重要」であると回答している。ゲーム開発者は抽象的な方法ではなく、実際に出来上がるゲームに直接的に多様性を反映させることができるため、描写の改善の観点からするとこの回答は前向きなものである。

ゲームコミュニティの人口構成が多様化するペースと比較すると、進歩のスピードは非常に遅れているものの、人気ゲーム全体における黒人やラテン系のキャラクターの数は確かに増加し続けている。これは、Moby Games(モビー・ゲームズ)が発表している2017年までの黒人キャラクターリストや、ウィキペディアにある黒人のビデオゲームキャラクターリストなどで確認することができる。

あらゆる見た目のアバターにカスタムできるというオプションをユーザーに提供することで、さまざまな人種のゲーマーに安心感を与え、ゲームに愛着を持ってもらえるようになる。このオプションはより一般的になってきているものの、黒人のアバターはそれでも限られている。例えば自然なヘアスタイルを選択できないことなどが挙げられる。デパス氏によると「ゲーマーが自分自身のアバターを作りたいと感じる場合もあるということをゲーム開発者たちは忘れがちです」。忘れていない場合でも、多様性に欠けた制作チームの性質のせいでありがちな過ちを犯すと言う。例えば「黒人のヘアスタイルの選択肢があったとしてもブレイズの間が5インチほどあいていたり、アフロヘアがたわしのようになっていたりと、最悪な見た目です。彼らは黒人に会った事や、黒人のヘアスタイルの写真を見た事がないのでしょうか?」とデパス氏。

ネットいじめ

ネットいじめはゲーム、特にMMOにおいて大きな問題となっている。女性や黒人、ラテン系ゲーマーが特にいじめの標的にされており、しばしば中傷的で人種差別的なジョークが用いられているという事実を、この問題に打ち勝つためにゲーム会社は認識すべきである。

開発者ができるわずかながらも重要なステップとして、他のユーザーに対して苦情をつける際の理由として人種差別的な行動であるという選択肢を選べるようにするべきだとグレイ氏は説明する。多くのゲームではすでに性差別に関する苦情を知らせる機能があるものの、人種差別に関する同様のオプションがないため、ゲームスタジオはプラットフォームで人種差別が発生する頻度について分からないままとなっている。問題に関するデータを収集することで、その問題をより詳細に測定し、それに対処するためのより効果的なアクションを実行できるようになる。

見過ごされた市場への取り組み

デパス氏が我々との通話中に述べたとおり「黒人のゲームクリエイターは少ないものの、黒人のゲーム購入者は大勢いる。」見過ごされがちなゲーマーコミュニティのセグメントを魅了するコンテンツの制作は、大きなビジネスチャンスと言えるだろう。

黒人やラテン系のキャラクターを中心とした物語のゲームを制作することが魅力的なビジネスチャンスにつながるのであれば、なぜそれがすでに採用されていないのか?HBOのドラマ「Insecure」のIPを利用してモバイルゲームを開発するGlow Up Games(グローアップゲームズ)のCEO、Mitu Khandaker(ミツ・カンダカー)氏によると、実績をもつゲーム会社のリーダーたちは「誰がゲーマーであり、誰がそうでないかという勝手な感覚を持っています。非常に古風な考え方です。」とのことだ。

同様に、このアイデアと共に起業家が自身のスタジオを創設しても、彼らの主要な資金源(パブリッシャーやベンチャーキャピタリスト)のチームが多様性に欠けた人種構成であるため、こういったゲームがニッチなものとして見なされてしまうとカンダカー氏は説明する。

その結果、黒人やラテン系ゲーマーに向けたゲーム制作に注力するゲーム開発者らは、AAAタイトルを開発するための資金や業界での信頼性が欠け、インディーゲームという領域に追いやられてしまう。

ゲーム業界に入り、業界で主導的な役割を担う黒人のソフトウェアエンジニアの人数は極端に少なく、これには多くの社会的原因がある。幼稚園から高校までの質の高いSTEM教育へのアクセスの欠如、歴史的黒人大学の学位を正しく評価しない雇用主白人らしい名前を持つ個人の方がはるかに多くの面接機会を与えられるという事実などが原因として挙げられる。

カンダカー氏は、黒人の起用やロールモデルの欠如は、ゲーム業界を目指している黒人エンジニアにとってこの分野を避ける原因となってしまい、また業界に入ったとしても不満を抱えてしまうことになると指摘する。

責任を持った行動

我々との最近の電話でウィリアムズ氏は、ゲームエグゼクティブ向けのDICEカンファレンスで、ゲームにおける人種的偏見についてパネルで話し合った際の事を話してくれた。「前セッションと私のパネルの間の数分間で、オーディエンスの約90%が席を立ちました」。

私がこの記事のためにインタビューした人々が繰り返し訴えた言葉は、問題は悪意を持ったゲームエグゼクティブではなく、多様性に関する問題を個人的に時間を割くべきものとしてとらえていない無関心さであるというものだ。カンファレンスでもそれ以外でも、多様性に関する議論は政治的正しさを目的としたトピックとして扱われることが多く、解決しなければならない差し迫ったビジネスの問題として扱われていないのが現状だ。

現在ニュースを賑わせている話題が、企業のこの姿勢や業界の流れを変えるための活性剤となっているのであれば、彼らが取るべき最も影響力のある行動は、PR的な行動ではなく、多様性を取り入れた製品開発に実際に取り組むという事である。

関連記事:VC業界のダイバーシティ推進は不況に負けてしまうのか

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ

タグ:差別 コラム

Image Credits: Igor Karimov / Unsplash

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(5)ーートンネルの出口に見える光

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トンネルの出口に見える光

大手テック企業が抱える問題はあまりにも根が深いが、スタートアップにはまだ望みがある。社員数がある一定数に達すると、根本的な変化を起こすことは難しい。しかし、創業初日から始めれば、首尾よく遂行できる可能性は十分にある。

パオ氏、クライン氏、Baker(ベイカー)氏、Tracy Chou(トレイシー・チョウ)氏が中心となって設立したプロジェクト・インクルードは、一度に数社と連携して、インクルーシブで包括的、かつ説明責任を果たせる方法でダイバーシティを推進する支援を提供している。

「より進歩的で成功を収める人が十分な数に達すれば、テック業界の本質が変わる可能性がある」とパオ氏は言う。

非営利団体であるプロジェクト・インクルードは、テック業界でダイバーシティとインクルージョンを実現しようとする人たちにとって頼りになる存在だ。このプロジェクトは小~中規模のスタートアップを対象としている。社員数にして25~1000人の規模だ。

「プロジェクト・インクルードを通して、本当に変わろうとしているスタートアップを何社か見てきたが、この新しい世代のスタートアップには、会社をインクルーシブにすることに全力を注いでいるCEOが何人もいると思う。彼らは、将来のことを真剣に考えていて、世界が変わりつつあり、従業員も本当に多種多様であることに気づいている。白人男性社員だけに目を向けていると、残りの4分の3の社員を失うこともわかっており、それが持続可能ではないこと、そのような状況を許せば自分が極めて不利な立場に置かれることを理解していると思う」とパオ氏は語る。

「Asana(アサナ)のDustin Moskovitz(ダスティン・モスコビツ)CEOやTwilio(トゥイリオ)のJeff Lawson(ジェフ・ローソン)CEOなど、ダイバーシティとインクルージョンを会社にとって必須の課題として扱おうとしている人たちを見ると安心する」とパオ氏は言う。

「彼らがこの問題に全力で時間とエネルギーを注いでいるのを見ると心強い。偏見のないインクルーシブな文化を持つ企業は業績も良好であることが数字にも表れている。変化は確かに起きている。ゼロから始める人たちは変わることができる」」とパオ氏は語る。

米国では今、白人多数の時代が終わりつつある。

ケイパー・クライン氏によると、「人口動態の変化は止まらない」という。

アメリカ国勢調査によると、米国では、2044年までには白人が全人口の半分を下回り、マイノリティーの合計が過半数を占める国になると思われる。

こうして人口動態がシフトしてクリティカルマスに達すれば、労働力の多様化は避けて通れない。

「クリティカルマスは社会科学では昔からある概念だが、最近その真実さを身にしみて感じるようになってきた。我々は皆、クリティカルマスを感じたことがある。自分と同じ意見を持つ人が部屋の中に誰もいない場合、自分ひとりだけで意見を言うことには不安を感じる。しかし、自分と同じ考えの人が(それが誰であれ)十分にいれば随分と楽に声を上げることができる、ということは誰もが理解できると思う」ケイパー・クライン氏は語る。

クリティカルマスは、人によって解釈が異なるが、おおむね10~30%の範囲だと思われる。これをテック業界に当てはめると、ダイバーシティとインクルージョンが自律的に実践されるようになるには、業界の30%が多様化している必要があるということになる。

「クリティカルマスに達すると、それが部門内のチームであれ、特に会社内あるいはエコシステム内のチームであれ、文化のシフトが急速に進む。そこに達成するまでの長い道のりを、一歩ずつ前に進んでいると信じたい。ときに希望に満ち、ときに失望させられることもあるが、クリティカルマスに至るまで確実に前進し続けたいと思う」とケイパー・クライン氏は語る。

目の前の課題

クリティカルマスへと歩みを進める一方で、緊急に取り組むべき課題もある。具体的には次のとおりだ。

  • 多様性を反映させたレプリゼンテーションとインクルージョンに関する明確な目標を設定し、それを実現するための包括的なアプローチを実施する
  • 有色人種および女性の創業者への出資を増やす
  • 従業員はテック企業による差別に対し、組織的な方法で非難の声を上げ続ける
  • 会社を超えて経営陣が協力し合う

極めて明解な課題だが、取り組むには意思、組織的な取り組み、実務的な努力が必要だ。

「簡単に実現できることはすべてやり切ってしまい、ここからはすべてが困難な作業になるのではないかと思う。なぜかというと、特定のプログラムを支援するとか、実習プログラムを用意するとか、パイプラインの対象とする人のタイプを増やすとかいう問題ではないからだ。これは、他人が提示する価値が自分の意向と一致しない場合もあることを理解できるよう従業員を変革するという、難しい仕事だからだ。ハードルを下げるとか、文化を保持したいとか、従業員が思い込みで発する言葉にじっくり耳を傾けて検討する必要がある。彼らは便秘でもしているかのように古いものにしがみついている。私には理解できない」とマイリー氏は語った。

(完)

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(4)ーー1歩進んで、2歩下がる

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1歩進んで、2歩下がる

テック業界におけるD&Iの問題は、多少改善されてきてはいるが、後退した部分もあることは否めない。改善された点として、人々は何が起きているのかをよく理解するようになり、進んで発言するようにもなった。また、人口動態から見たレプリゼンテーションという点でもいくらか進展はあった。

「こうした変化のペースは本当にゆっくりだが、性別、人種、民族性の点で改善が見られている組織があることは確かだ」とParadigm(パラダイム)のJoelle Emerson(ジョエル・エマーソン)CEOは言う。

「もう1つ変わったのは、ある種のニュアンスが会話に加味されるようになったことだ。単に前年と比較するのではなく、従業員のライフサイクルの段階ごとに明確な目標を設定する企業が増えている。こうした企業は、給与、採用、昇進、社員の感情について、より具体的な細かい質問をしている」とエマーソン氏は語る。

ここ数年、スラックやピンタレストなどのテック企業で、ダイバーシティ・インクルージョン関連の職に就いていたエマーソン氏は、こんなことは4年前には見られなかった、と話す。同氏によると、4年前は、エンゲージメント、帰属意識、意見の表明、リソースの利用などについて従業員が実際にどう感じているかを比較検討することはなかったという。

「今ここにいるのはどんな人間なのかという点ばかりに注目して、そこに至るまでの過程について考えることはなかった。社員の内面を見ていなかった」とエマーソン氏は語る。

「3つ目は、ダイバーシティとインクルージョンのニュアンスを加味した会話が行われるようになった点だ。注目すべきグループ、交差性、年齢、障害、経済状態などに関する会話が行われるようになった。非常に率直で遠慮のない会話さえ行われている。そうしたことの多くを推進しているのは、従業員アクティビズムだ」とエマーソン氏はいう。

Photo by AP Photo/Bebeto Matthews

従業員アクティビズムは、会社が間違った方向に歩を進めることでさらに活発化する。2019年11月、セクハラ疑惑で告発されていた2人の幹部に会社が1億500万ドル(約112億2000万円)を支払ったことに抗議するために2万人のグーグル社員がストライキを行った。社員たちは5つの要求を出したが、グーグルが対応したのはそのうち1つだけだった。

2019年2月、グーグルは、差別に関するいかなる事案についても社員に仲裁を強制することをやめるという決定を下した。これで厳密には社員側が勝利したのだが、この取り決めはグーグルの一時契約社員には適用されなかった。一方、グーグルは他の4つの要求には応じなかった。具体的には、給与や機会の不平等の撤廃の確約、セクシャルハラスメントに関する事実に即したレポートの公開、匿名で性的不品行を報告するためのプロセスの策定、ダイバーシティ最高責任者をCEO直属とすることの4つだ。

しかしその後、事態は悪化する一方だった。グーグルの社員は5月に再び決起せざを得なかった。今度は、社員が上司から受けたとされる職場報復に座り込みで抗議した。

2019年5月、ストライキを計画したために職場で報復を受けたとして2人のグーグル社員が会社を告訴した。グーグルのオープンリサーチ部門のリーダーでストライキ主催者の1人であるMeredith Whittaker(メレディス・ウィテカー)氏は、自分の役職が大きく変わったと話している。同じくストライキ主催者であるClaire Stapleton(クレア・ステープルトン)氏は上司から、降格処分と、部下を半分に減らすことを言い渡されたという。

当時、グーグルの広報担当者は次のように語った。

「グーグルは職場での報復を禁止し、明確なポリシーを公開する。申し立てられた苦情が無視されることのないよう、匿名で行う場合も含め、社員が懸念事項を会社に報告する経路を複数用意し、報復があったというすべての申し立てを調査する。」

その後、グーグルの社員はAlphabet(アルファベット)のLarry Page(ラリー・ペイジ)CEOの介入と、グーグル側が社員の要求に応じることを強く要請した。

しかしマイリー氏は、グーグルが当時からほとんど変わっていないことに驚いていない。社員の約20%がストライキに参加したが、もし50~60%の社員が参加していたらもっと強いインパクトがあっただろうとマイリー氏は考えている。

「ストライキとその目的には賛同する。社員たちが提示した問題と彼らの要求も支持する。ただ、やり方が間違っていたと思う」とマイリー氏はいう。

マイリー氏が言っているのは、ストライキ主催者がストライキの計画を事前に公表してしまったことだ。

「私だったら、ただストライキを決行し、会社に戻ってこちらの要求を突きつける。グーグルが正しいことをしたいと思っていると信じたいのだろうが、そうはいかない。グーグルも企業だ。企業は社員の力を制限する方法を知っている」とマイリー氏は語る。

ハラスメントが報告された後に社内で混乱が発生したのは何もグーグルだけではない。Riot Games(ライアットゲームズ)でも2019年5月に、やはりハラスメント問題をめぐって社員がストライキを起こしている

ハラスメントで問題なのは、残念なことだが、告発された側には、非を認めた後でも復帰する道があるという点だ。さらに、数百万ドルもの退職金が支払われることもある。こうしたことはすべてオールド・ボーイズ・クラブと関係している。

オールド・ボーイズ・クラブに属する多くの人たちは、自分が犯した過ちの報いを受けるということがほとんどない、とパオ氏は言う。Dave McClure(デイブ・マクルーア)氏は、後に自身でも認めた性的不品行の後、500 Startups(500スタートアップス)の経営から身を引いたものの、のちに新しいファンドの設立に向けて資金を集めている。本記事の執筆にあたりマクルーア氏にコメントを求めたが回答はなかった。

「我々は、こうした人たちが問題を起こしたコミュニティに復帰するのを許している。そのまま居続けるのを許すことさえあり、復帰するためにいったん身を引く必要すらない」とパオ氏はいう。

SoFi(ソーフィ)の前CEO、Mike Cagney(マイク・キャグニー)氏は、性的不祥事のために会社を追われたが、新たに会社を設立しようと動き始め、2018年にはそのために5000万ドル(約53億4000万円)を調達した。キャグニー氏は2019年初めに、さらに6500万ドル(約69億5000万円)を集めている。

「ハリウッドでMe Tooハッシュタグ問題が起き、ベンチャーキャピタルやテック企業でも同様の事件が起きたのに、ハラスメント事件は相変わらず後を絶たない。ハラスメント加害者は、被害者よりも簡単に窮地を脱してしまう。それが大きな問題だ」とケイパー・クライン氏はいう。

ケイパー・クライン氏は例として、Chris Sacca(クリス・サッカ)氏、Steve Jurvetson(スティーブ・ジャーベンソン)氏、Justin Caldbeck(ジャスティン・カルドベック)氏といった投資家の名前を挙げた。

「いくらでも白人の名前を挙げることができる」と同氏は言う。

ジャーベンソン氏とカルドベック氏は、本記事へのコメントを拒否した。サッカ氏にもコメントを求めたが回答はなかった。

このようなセクシャルハラスメント事件と、その後に加害者が復帰するという現状について考えると、人が本当に変化して名誉を回復することは可能なのか、という疑問にぶち当たる。最も大きな疑問は、こうした人たちがテック業界に残ることを許すべきなのか、それとも永久にブラックリストに載せるべきなのかという点だ。

「私は、人は変わることができると信じている。ただし、半年とか1年半で変わるとは思えない。彼らの新しい雇用契約にそうした条項が記載されたという話を聞いたことがない。ぜひそうすべきだと思う」とケイパー・クライン氏は語る。

2018年以降はっきりしてきたのは、労働者はもうだまっていないということだ。多くの労働者が、自分たちの力で会社は収益を出すことができるのだから、自分たちは会社に対して大きな影響力を行使できることに気づいている。ただし、本当の変化を起こすにはもっと組織的な取り組みが必要だとマイリー氏は指摘する。

「ごくわずかな人が握る並外れた影響力に対抗できるだけの組織的な構造、支持体制および機動力がなければ、変化は起こらないと思う。従業員が一致団結することが必要になるだろう。現行の体制から恩恵を受けている人たちが、それを変えようとするはずがないことは明らかなのだから」とマイリー氏は語る。

>>「最終部:トンネルの出口に見える光」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(3)ーー多様な人材に投資する

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多様な人材に投資する

テック業界全般でダイバーシティが欠如しているもう1つの原因として、レプリゼンテーションが不足している創業者に提供される資金の不足という問題がある。2018年、米国のベンチャーキャピタル資金のうち女性の創業者に提供されたのはわずか2.2%にすぎない。米国のVC企業の意思決定者のうち女性が占める割合は10%に満たないことは、何の説明にもならない。

「資金が不足しているだけではない。女性は扱いが異なることも問題なのだという点も指摘しておきたい」とWomen Who Tech(ウィメン・フー・テック)の創業者Allyson Kapin(アリソン・カピン)氏はTechCrunchに語っている。

カピン氏は、ウィメン・フー・テックが2017年に実施したアンケート調査で、嫌がらせを受けたと報告した44%の女性のうち、77%が創業者としてセクシャルハラスメントを経験したと答えた、という事実を指摘する。さらに、そのうちの65%が出資の見返りとして性的な誘いを受けたと回答したという。

「公平な競争の場は存在すらしていない。他の創業者は驚くほどの注目を集められるかもしれないが、女性創業者によるスタートアップは、さまざまな批判を受けるという点で障害に直面している。そして今は、まったく別次元の性差別、性的嫌がらせ、出資の見返りとしてのあからさまな性的誘いにも直面している」とカピン氏は言う。

残念なことに、黒人女性創業者にとって、現実はさらに厳しい。100万ドル(約1億734万円)を超える資金調達を達成した黒人女性の数は、増えているとはいえ依然として少ない。digitalundivided(デジタルアンディバイディッド)の新しいProjectDianeレポートによると、2015年に100万ドルを超える資金を集めた黒人女性はわずか12人だったという。ちなみに2017年は34人だった。

それでも、黒人女性が調達した資金の平均額は0ドルだと言える。なぜなら、黒人女性によって創業されたスタートアップの大半はまったく資金を調達できていないからだ。ファンドから調達した資金が100万ドル(約1億734万円)未満だった黒人女性の平均調達額は4万2000ドル(約450万円)である。デジタルアンディバイディッドによると、2009年に黒人女性が調達した出資額は、同年にテック企業が調達したベンチャー出資合計額のうち、わずか0.0006%にすぎなかった。

「黒人創業者はVCに見切りをつけ始めている。何度もトライし、頼み込み、丁重に出資をお願いしたのにVCは乗ってこない。私はまだやる気が残っていて、このような機関投資家やLPの扉を叩き続ける気持ちがあるが、まもなく彼らに見切りをつけるだろう。そうしたら彼らは天を仰いで『なぜこの投資話に入れてくれなかったんだ』などというのだろう。私は4年前も、『黒人も起業するんですよ』と叫んでいたが、今も同じことをすることになるだろう。もうたくさんだ」と、Backstage Capital Founding(バックステージ・キャピタル・ファンディング)のパートナーArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏はTechCrunchに語る。

(カリフォルニア州サンフランシスコ-2018年9月5日、カリフォルニア州サンフランシスコで開催されたTechCrunch Disrupt SF 2018の初日に登壇したBackstage Capital(バックステージ・キャピタル)の創業者でマネージングパートナーのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏。(画像クレジット:Kimberly White/Getty Images for TechCrunch))

黒人創業者限定で出資するために設立されたバックステージ・キャピタルは、2016年末頃に500万ドル(約5億3000万円)の初回資金調達を完了した。ハミルトン氏は現在、有色人種への投資を続けるために3600万ドル(約38億5000万円)の第2回資金調達を完了しようとしている。同氏は有色人種への投資をあきらめたという報道もあったが、それは誤報だったようだ。

「資金の調達を止めたことは一度もない。止めようと考えたことも一度もない。今でも資金を募っている真っ最中だ。思ったよりも時間がかかっている。問題は、大海の一滴のようなわずかな資金を調達するのになぜこんなに時間がかかるのかという点だ。なぜ皆、あきらめてしまうのか。なぜ進歩しようとしないのか」とハミルトン氏は言う。

バックステージ・キャピタルは創業当時から、過小評価されている創業者が率いるスタートアップに投資してきた。その数は60社を超える。同氏を最初に駆り立てたのは、「ばかげた理由で見過ごされている人たちがいる。他の人が見過ごしているところにこそビジネスチャンスがある」という事実だった。

「何か破壊的な力がなくては、このようなやり方を続けていくことはできなかったと思う。そして実際に破壊が起きた。良い意味での破壊、いわば良き破壊だ。黒や茶色の肌の創業者や性的マイノリティーの人たちがこれまでの通例を覆したというニュースを毎日のように目にする」と同氏は言う。

ハミルトン氏は例として、自分の会社Partpic(パートピック)アマゾンに売却したJewel Burks(ジュエル・バークス)氏や、客観的に見ても非常に成功しているメディア企業Blavity(ブラビティ)の創業者Morgan DeBaun(モーガン・デボーン)氏などのサクセスストーリーを挙げる。

「まさに論より証拠で、こうした事例は私の直感が正しいこと、私の言ったことが現実になっていることを示している。ここ数年の出来事を見れば、私が今言っていることが今後もある程度は現実になると信じざるを得ないだろう」とハミルトン氏と語る。

ハミルトン氏は、バックステージ・キャピタルのポートフォリオの中から、今後18か月ほどの間に驚くべき収益を達成し、巨額の資金調達に成功する創業者が出てくるだろう、と予測する。機関投資家からの支援がなくても、ハミルトン氏が成功を大いに期待できる理由はたくさんある。

National Venture Capital Association(全米ベンチャーキャピタル協会)によると、黒人とラテン系の投資家は非常に少ない。VC企業の投資チームのメンバーのうち、黒人はわずか2%、ラテン系は1%にすぎない。

しかし、黒人や有色人種の女性が運営するファンドがいくつか登場している、とハミルトン氏は言う。また、GVでパートナーだったことがあるLo Toney(ロー・トニー)氏は最近、Plexo Capital(プレクソ・キャピタル)を介して多様な投資家に出資するために3500万ドル(約37億4000万円)を調達した

それでも、業界には多様なバックグランドを持つ人たちに必ず出資する投資家がまだまだ不足している。

「機関投資家(VC)がこの点で迅速に行動するとは思えない」とハミルトン氏は言う。

また、これには生まれつき持つ経済的特権も関わっている。民族間の貧富の格差は巨大で、それが起業を目指す有色人種の創業者に確実に影響を与えている。Institute for Policy Studies(政策研究所)によると、米国の白人中流世帯が持つ財産は、黒人中流世帯の41倍、ラテン系中流世帯の22倍にもなる。

白人の創業者は、創業初期に裕福な両親や祖父母から支援を受けることが可能だが、有色人種の創業者は同じ方法で親を当てにできるとは限らない。それでも、望みはある。米大統領選の民主党候補指名争いに名を連ねるElizabeth Warren(エリザベス・ウォーレン)上院議員だ。ウォーレン氏は2019年6月、多様な人種の創業者を破綻させたとしてベンチャーキャピタルを非難し、有色人種の創業者を支援する計画を発表した。

この計画は、白人の創業者のように親や祖父母の財産を当てにできない有色人種の創業者に資金を提供するというものだ。

>>「第四部:1歩進んで、2歩下がる」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(2)ーー口先だけのリップサービス

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口先だけのリップサービス

Google(グーグル)が2014年、業界初のダイバーシティレポートを発表したとき、テック業界におけるダイバーシティ・インクルージョン戦略が勢いよく始まったが、それが実践をともなって定着することはなかった。現在、多くの人が、あの現象はリップサービスだったと考えている。話しはするが実行がともなわないからだ。

2014年のグーグルのレポートでは、同社の従業員に占める白人の割合は61.3%、男性は69.4%だった。記事執筆現在の割合は、白人54.4%、男性68.4%だ。数年たっても数字はほとんど変わっていない。FAANG(Facebook(フェイスブック)、Amazon(アマゾン)、Apple(アップル)、Netflix(ネットフリックス)、Google(グーグル))とA-PLUS(Airbnb(エアービーアンドビー)、Pinterest(ピンタレスト)、Lyft(リフト)、Uber(ウーバー)、Slack(スラック))の各社でも、テック系社員は依然として白人とアジア系が圧倒的多数を占めている。

フェイスブック全体の社員構成を見ると、少数派人種が占める割合はほとんど変わっていない。これに対し、フェイスブックのCDO(チーフ・ダイバーシティ・オフィサー)Maxine Williams(マクシン・ウィリアムズ)氏は、個々のグループ内では大きな変化があったと指摘する。例えば、この5年間で、黒人女性の数は25倍、黒人男性の数は10倍になっていると同氏はいう。

「大きな変化があった。ただ、望みどおりの十分な変化だったかといえば、決してそうではない。当社はD&Iの問題に本格的に取り組み始めた時期が遅く、慎重になりすぎて取り組みのスピードも遅かったことは私も認識している。当社は当時すでに創業9年で、数千人の社員が働いていた。この経験から学んだ最大の教訓は、取り組みを始めるのが遅くなるほど実行が難しくなるということだ」とウィリアムズ氏はいう。

これはテック業界全体に当てはまる。前述のテック企業の社員構成は多少改善されてきているものの、十分というにはほど遠い。

「ダイバーシティレポートがあることでテック企業がある程度の説明責任を意識するようになっていると思う。前回のレポートから後退すれば会社のイメージダウンになるからだ。それを避けるために、テック企業はダイバーシティに関する数字を社内で検討するようになる。その意味で、レポートは重要な役割を果たしている。しかし残念なのは、社内に目を向けるのではなく、マスコミの反応に目を向けて自社の戦略や課題吟味のかじ取りをしている点だ」とパオ氏は指摘する。

パオ氏によると、米国の人種構成を考えると、テック企業の人種構成は本来、黒人社員が13%、ラテン系社員が17%になるべきだという

パオ氏は、プロジェクト・インクルードでスタートアップを支援する際には「10-10-5-45」という構成を目標にするようアドバイスするという。最初の2つの数字は、黒人社員10%、ラテン系社員10%を目指すという意味だ。それを達成した後、最終的に黒人社員13%、ラテン系社員17%を目標とする。

「この目標に近い数字を達成している企業は存在しない。つまり、あるべき姿を実現しているスタートアップは存在せず、すべてのスタートアップはダイバーシティの問題を抱えているということだ」とパオ氏は指摘する。

アップルとアマゾンの数字は、小売店舗と倉庫の社員数も含まれているため実際より多くカウントされており、割り引いて考える必要がある(この点について両社にコメントを求めたが回答はなかった)。そうなると、黒人社員とラテン系社員の構成割合の最終目標に最も近いのはリフトだ。リフトのダイバーシティレポート2018年版によると、ラテン系社員が9%、黒人社員が10.2%となっている。

性別は男女どちらかの二択ではないので、少なくとも全社員の5%がノンバイナリーで、残りの45%を女性としてカウントする必要がある、とパオ氏はいう。

ダイバーシティに関するスキャンダルが次々に発覚しているという事実は、いくつかのことを証明している。1つは、レプリゼンテーション(自分が社会の構成員として認識されている状態や感覚)が依然として十分に得られていないということ。2つ目は、構造的な問題が残っており、そのためにインクルーシブではない職場環境が構築され、それがインポスター症候群を増やす原因となっているという点だ。このような構造的な問題の結果として、一貫性のない業績評価プロセス、不明確で恣意的な昇進、不正行為を報告するための不明瞭なプロセス、バックチャネリングとして知られる秘密の会話などが生じている。こうしたプライベートなバックチャネルによって排他的な環境が作られ、オープンで生産的な会話が阻害される。

このような状況で役に立つのがインクルージョンの取り組みだ。CEOの支持を得て行うのが理想的である。本当の意味でインクルージョンが実現されていなければ、ダイバーシティを目指すどんな取り組みも長続きしない。

「ダイバーシティを目指して多様な人材を採用したとしても、インクルージョンと文化の問題を是正しなければ何の進歩も遂げることはできない」とケイパー・クライン氏はいう。

一部の企業では無意識の偏見をなくすトレーニングを実施しているが、こうした活動だけで、偏見や不公正の発生率の減少や定着率の増加などの点で統計的に顕著な改善を実現することはできないとケイパー・クライン氏はいう。

(ミネソタ州デトロイト-5月5日:2015年5月5日にミシガン州デトロイトの Max Fischer Music Centerで開催された第17回Annual Ford Freedom Awardsでスピーチする、Lotus 1-2-3の開発者で受賞者のMitchell Kapor(ミッチェル・ケイパー)氏と、同氏の妻でCenter for Social Impact(センター・フォー・ソーシャル・インパクト)の創業者およびKapor Capital(ケイパー・キャピタル)のパートナーでもあるFreada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏。(画像クレジット: Monica Morgan/WireImage))

「最近増えてきた本格的な研究では、無意識の偏見をなくすトレーニング、とりわけ1回限りのトレーニングは、効果がないだけでなく、逆効果であることが指摘されている。そのようなトレーニングを受講した人は『トレーニング内容は理解した。無意識の偏見をなくす1時間のトレーニングを修了したから、これまで29年間毎日見聞きしてきた偏見を自分の中から取り除くことができたはずだ』と考える。何が非効果的かという点だけでなく、どんな反動が生じたり、何が逆効果になったりするのか、といった点も考慮する必要があると思う」とケイパー・クライン氏は語る。

理論上はここでダイバーシティとインクルージョン(D&I)責任者が登場する。しかし、このような役職がうまく機能できるような環境が組織内で必ずしも整えられているわけではなく、企業のリップサービスのための手段に終わることもある。

「D&I責任者としてCEO直下に配置され、他の幹部がダイバーシティとインクルージョンに関してひどい決定を下すのを阻止する権限を与えられて、本当に影響力のあるやり方でD&I責任者の職を全うできた人の話を聞いたことがない。D&I責任者は人事部または法務部の直属となることが多い。D&I責任者には強い権限はなく、チームも決裁権も与えられない。また、D&Iに取り組むよう社員を促したり、社員に説明責任を負わせたりするための基準もない。D&I責任者と呼ばれるこの奇妙な役職の大半はお飾りにすぎない」とパオ氏は指摘する。

例えばグーグルでは、今のダイバーシティ責任者は2016年から数えて3人目になるが、グーグルの文化にうんざりして率直にモノをいう社員が増えている。

ツイッター、グーグル、アップルで技術管理者を務めたことがあるLeslie Miley(レスリー・マイリー)氏は「ズバリ言おう。グーグルでD&I責任者を長く続けることは不可能だ」とTechCrunchに語った。

2019年4月にグーグルのチーフ・ダイバーシティ・オフィサーDanielle Brown(ダニエル・ブラウン)氏が辞職し、給与・福利厚生スタートアップのGusto(ガスト)に移った。グーグルは、2016年に辞職したNancy Lee(ナンシー・リー)氏の後任者としてブラウン氏を迎え入れた。当時、リー氏は退職するものと思われていたが、その後、電気スクータースタートアップLime(ライム)に最高人事責任者として入社した。「当時、本当に退職するかどうかは自分でも決めていなかった」とリー氏は話している。

「割に合わない仕事だよ。どの会社でもそうだと思う。ダニエル・ブラウン氏が良い例だ。十分に取り組んでいないと非難されたかと思うと、今度はやり過ぎだと非難される。人事と説明責任をめぐる争いに常にさらされる。性別、民族性、性的指向のぶつかる場所にいると、ほとんどの人は心底、不快な気分になる。精神的に消耗していく仕事なんだ」とマイリー氏は語る。

D&I責任者のもう1つの問題は、CEOの直属ではなく、人事部直属になることが多い点だ。人事部は、会社が負う法的責任を制限することがD&I責任者の役目だと考えている、とマイリー氏はいう。D&I責任者がそのような部門の直下で働くのであれば、社員の利益に資するような変化をもたらすのは困難だ。

現在、人事部で働くリー氏は、「人事部直属のダイバーシティ責任者が効果的に機能するかどうかは、人事部と他の経営陣との関係によって決まる」という。

「ただし、ダイバーシティが大きく欠如している会社では、CEO直属のD&I責任者が必要になるだろう」とリー氏は付け加える。

リフトのダイバーシティ・インクルージョン責任者に新しく任命されたMonica Poindexter(モニカ・ポインデクスター)氏は、人材・インクルージョン担当副社長の直属だが、リフトの共同創業者John Zimmer(ジョン・ジマー)氏とLogan Green(ローガン・グリーン)氏からも全面的なサポートが得られているという。ポインデクスター氏は、リフトや他のいくつかの企業によるダイバーシティとインクルージョン問題への取り組み方は正しいものだと確信してるが、各社がさまざまな異なる方法でこの問題に取り組もうとしているという事実には首をかしげる。

「1つか2つの優れた取り組みをテック業界全体で一斉に実行できれば、業界全体に大きな影響を及ぼすことができるだろう。テック企業の面接プロセスを改革し、採用プロセスを吟味するにはそのような取り組みが必要だ。そうすれば、多様な人種に対してより良い進路を創り出す方法と、それを実行するより的確なタイミングを見きわめることができる」とポインデクスター氏はTechCrunchに語った。

ここ数年の間にD&I責任者の団体が結成されたが、どれも長続きしていない。

「正直にいうと、D&I責任者を取り巻く環境は頻繁に変化する。ある時点でいくらかの推進力を得るかもしれないが、それもそのD&I責任者がどれだけのサポートを得られるかにかかっている。各社のD&I責任者が集まって互いに協力するというアイデアはすでに実行に移されている。しかし、本当に大きな影響を及ぼしたいなら、テック企業のトップが集まってこの難題について話し合うべきだ」とポインデクスター氏はいう。

ピンタレストのD&I責任者Candice Morgan(キャンディス・モーガン)氏は、すべてのテック企業の中でD&I部門の在職期間が最も長い人物の1人だ。同氏は、2016年1月から現職に就いている。「テック業界の在職期間としても、D&I部門の在職期間としてもかなり長いほうだろう」とモーガン氏はTechCrunchに語った。

「ここ3年間で、テック業界の中でもより広い範囲でいくつか大きな変化があり、当社のアプローチにも同じように大きな変化があった」とモーガン氏はいう。

2016年はピンタレストが最初に公式採用者数を設定した年であり、当時は採用活動に力を入れていた、とモーガン氏は語る。翌年、同社はインクルージョンにさらに注力し、インクルージョン専門職を採用した。また、従業員リソースグループの数も増やし、従業員エンゲージメントスコアに基づいてマネージャを評価するようになった。

「インクルーシブ(包含的)な考え方が特に強いマネージャに注目した。その一方で、インクルージョンに関して平均的なスコアを出しているマネージャにも目を向けた。そして、インクルーシブな考え方のマネージャが他のマネージャとどう違うのかを観察してみた。インクルーシブな考え方を持つマネージャは、成長へのポテンシャルに注目するマインドセットを持ち、どちらかといえば謙虚で、ためらいなくミスを認め、失敗を成長の機会と捉えていたことがわかった」とモーガン氏はいう。

この観察結果を基に、ピンタレストはインクルーシブ型マネジメントハンドブックを作成し、トレーニングを開発した。そして2017年には、無意識な偏見をなくすトレーニングを自社のオリエンテーションに組み込んだ。

一般に、D&I責任者は主体性に乏しいと言われるが、モーガン氏は他のD&I責任者に比べて強い影響力を持っているように見える。モーガン氏によると、それは彼女がピンタレストでの在職中に構築した人間関係のおかげだという。例えば、ピンタレストは2019年1月、同社のプラットフォームのビューティー関連検索に、よりインクルーシブな機能を追加した。公開時のピンタレストの説明によると、この機能は同社の技術チームとD&Iチームのコラボレーションの結果であるという。

「社員全員がD&Iの仕事に携わっている。「当社のD&I部門はさまざまな方法で影響力を獲得している。リーダーのコーチングを常に行っているので、彼らとの関係が構築できるようになると、まさにビジネスパートナーとして彼らに影響を与えることができる。インクルーシブなビューティー検索のスキントーン(肌の色合い)に関する仕事も、会合を重ねることが必要だった別の案件が発端になって実現したものだ」とモーガン氏はいう。

モーガン氏によると、今年はマイクロアグレッション、すなわち、排除されていると感じさせる何気ない言動に特に注目しているという。マイクロアグレッションは、黒人の髪型への言及から性差別的言語の使用まで多岐にわたる。また、ウーバーのエンジニアだったSusan Fowler Rigetti(スーザン・ファウラー・リゲッティ)氏がウーバーに関する彼女の投稿で指摘したように、展示会などで配布する景品を男性サイズでしか準備しないことも、マイクロアグレッションの一例だという。

モーガン氏はこのテーマに取り組む中で、「途中で阻止してマイクロアファメーションを作り出すことができる行為」を発見している。マイクロアファメーションとはちょっとしたインクルーシブな行為で、「励まされた、理解してもらえた」という感情を相手に与えるものだ。

「私はインクルージョン・プログラム・スペシャリストのクラスで教える際、マイクロアグレッションに注目し、何気ない行為が人の気持ちに与える影響に対する意識を高めることを心がけている。会社でも個人でも自画自賛する傾向があるが、実はそうすることで、誰かが微妙に疎外感を持ったり仲間意識を感じたりする。私はリーダーたちが集まってこのようなことを考える機会を作るのに多くの時間を費やしてきた」とモーガン氏は語る。

例えば、モーガン氏はピンタレストの技術部長および軽視されていると感じているエンジニアと話し合い、技術チームにおける帰属意識とはどのようなものかについて議論した。すべての上級エンジニアに、こうしたセッションを経験してもらっている、と同氏はいう。

もちろん、D&I責任者を設置することで効果が得られる場合もある。D&I責任者に変化をもたらす能力があり、なおかつ上級職(できればCEO)と直接協力できる場合は、最も高い効果が期待できるだろう。しかし、単独で変化をもたらすことができるD&Iイニシアチブは2つだけだとケイパー・クライン氏はいう。すなわち、ダイバーシティに関する具体的な目標を設定すること、および多様な人材の縁故紹介に対する特別ボーナスの支給だ。

「私が素晴らしいと思うのは、この2つのイシニアチブにはCEOのサポートと事情に通じた上級管理職のサポートが必要だということだ。どちらのイニシアチブも反感を買うのは必至だからだ。

どちらのイニシアチブも、成果を出すには問題のニュアンスを理解していて、エンジニアリング担当のCTOやVPが『ちょっと待ってくれ。それは逆差別だ』とか『フェアじゃない』とか言ってきたときに反論できる賢明な上級管理チームが必要である。公平な競争の場を作り上げることの意味について話をするには、ある程度の知識を備え、問題のニュアンスを理解しているCEOが必要だ」とケイパー・クライン氏はいう。

「どれだけいろいろな仕組みを用意周到に導入したとしても、トップの明確なコミットメントに代わるものはない。話し合いの席についた者は誰であれ、ビジネス上の問題について話すときはダイバーシティというレンズを通して物事を見る必要がある」とケイパー・クライン氏は続けた。

それでも、主要なイニシアチブを5つ導入すれば、大きな変化が生まれる可能性がある、とケイパー・クライン氏は言う。そのため、ケイパー・クライン氏は、10年以上前に自身が「Giving Notice」で初めて概説した包括的なアプローチを採用するようになった。

>>「第三部:多様な人材に投資する」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界におけるダイバーシティの未来(1)ーー白人版オールド・ボーイズ・クラブ

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シリコンバレーでは、テック業界におけるダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包含性)を推進する活動が新たな局面を迎えている。Code2040(コード2040)のKarla Monterroso(カーラ・モンテローソ)CEOがTechCrunchに語ったところによると、この活動の支持者の中には、この局面を「初期段階の終わり」と呼んでいる人もいるという。

支持者たちは当初、テック系コンファレンスでダイバーシティの欠如を声高に非難することや、ダイバーシティ関連のデータを公開するよう企業に要求すること、また、パイプライン問題が偽りであることを暴くことに集中していた。その後、ダイバーシティ担当職の設置や無意識の偏見をなくすトレーニングの実施へと論点がシフトしていった(これについてはTechCrunchの「Diversityand inclusion playbook(未訳:ダイバーシティとインクルージョンに関する戦略)」を参照していただきたい。ただし、こうした戦略だけで結果が出るわけではないことは指摘しておきたい)。

「うわべだけを飾る段階は過ぎ、今は、説明責任、結果、昇進、定着率について議論すべきときだ。つまり、テック業界から反感や敵意を排除するためにどのアクションから実行すべきか、その優先順位を決めるべきときである」モンテローソ氏はいう。

ダイバーシティとインクルージョンを推進する動きは、ここ数年である程度の成果を上げてきたが、同時に著しく後退した部分もある。テック系社員は、自分たちが声を上げて組織的に何かに取り組むことが非常に大きな影響力を持つことを知っているが、セクシャルハラスメントや不適切な行為の加害者になっても相応の責任を取らされることはほとんどない。一方、有色人種や女性がベンチャーキャピタルから出資を受けられるケースは今でも非常に少なく、テック業界におけるダイバーシティとインクルージョンの推進は、まるで氷河のように、遅々として進んでいない。

Kapor Capital(ケイパー・キャピタル)とKapor Center for Social Impact(ケイパー・センター・フォー・ソーシャル・インパクト)の共同創業者Freada Kapor Klein(フリーダ・ケイパー・クライン)氏は「現在の状態に至るまでの10年間で、大きく前進したこともあれば、少し遠回りしたり、後退したりした部分もある。ポジティブな方向に進んだかと思うと、必ずネガティブな方向への反動がある。同様に、非難の声を上げるようなときでも必ず、誰かが望みはあると唱える」とTechCrunchに語った。

テック業界におけるダイバーシティとインクルージョン(D&I)に関する問題についてはこれまで多くの記事が執筆されてきた。D&Iの問題を是正しようと数々の誠実な取り組みが行われているが、この問題が全面的に是正されることは決してないだろう。なぜならテック業界というのは、社会と、社会が抱える人種、性別、階層、能力、年齢、性的指向に関するすべての問題を反映する鏡だからだ。

だからといって、希望がないわけではない。テック業界の未来は、そこで日々働くテック系社員、新しくスタートアップを始める創業者や新鮮な視点を持つ投資家の手にかかっている。そして、痛切に思い知らされたのは、経営幹部がこの問題に真剣に取り組む以外に方法はないということだ。

トンネルの出口に見える光にたどり着くには、今日のような状況に至った経緯をテック業界が理解して受け入れる必要がある。そして、D&I責任者を置く、無意識な偏見をなくす単発のトレーニングを取り入れるといった一時的な方法がいかに非効率であるか、また、本来の目的を達成するには何が必要なのかを認識する必要がある。

白人版オールド・ボーイズ・クラブ

シリコンバレーは圧倒的に白人男性優位の世界であり、さまざまな背景を持つ人たちを歓迎することが本当に不得手な業界であることはよく知られている。このオールド・ボーイズ・クラブは、業界の初期の頃から有色人種や女性を不利な立場に置いてきたし、それは今でも変わっていない。

ダイバーシティとインクルージョンを求める現在の動きが始まったのは10年以上前だ。当時、テック系のコンファレンスやオールド・ボーイズ・クラブでも女性の発言権の弱さについて議論されることはあった。

現在はGlitch(グリッチ)のCEOで、当時はThinkUp(シンクアップ)の共同創業者だったAnil Dash(アニール・ダッシュ) 氏は、2007年に発表したエッセイ「The Old Boys Club is for Losers(仮訳:敗者たちのオールド・ボーイズ・クラブ)」で、テック業界で白人男性優位の現状を擁護している人たちは、実は失敗の文化を擁護している、と書いた。「自分のコミュニティ内のすべてのメンバーに手を差し伸べて平等な機会を与え、新しいアイデアや声に耳を傾ける人たちは、単に勝利するだけでなく、勝利し続ける。白人男性以外お断り、という文化を擁護して成功できるかもしれない。しかしそれは、自分自身をお払い箱にしてしまうことと同じだ」とダッシュ氏はいう。

2019年なら多くの人がダッシュ氏の考えを歓迎しただろう。だが、2007年当時のテック業界人の大半はダイバーシティについて今とはまったく異なる考えを持っていた。そのあまりの違いにダッシュ氏は、「記事を公開したらもうテック業界にはいられなくなると確信していた」とTechCrunchに語った。

「私には幸運にもプラットフォームがあり、自分の主張を発表できるだけの経歴もあった。しかし私は、あのエッセイで自分のキャリアが終わったと確信した。『もうどうでもいい、これで終わりだ。どうせサンフランシスコを離れるんだから、この業界に戻れなくてもかまわないさ』と思っていた。今考えると笑える話だ。シリコンバレーにはオールド・ボーイズ・クラブがあるんだと誰もが言ったと思う。それは非常に排他的なものであり、それこそまさに我々が取り組むべき問題だ」とダッシュ氏はいう。

ダッシュ氏は、上記のエッセイを投稿したときに自分がどこに座っていたかをはっきりと覚えているという。なぜなら、もう誰も自分が業界に戻ることを許してはくれないと思ったからだ。

「幸運にも、そうはならなかった。オーバートンの窓が興味深く有意義な方向に少しシフトしていたのだと思う。しかし、問題はそのままだった。問題について話せるようにはなったものの、問題を解決しているわけではなかった」とダッシュ氏は指摘する。

Project Include(プロジェクト・インクルード)の共同創業者でKleiner Perkins Caufield & Byer(クライナー・パーキンス・コーフィールド・アンド・バイヤー)に対する訴訟で注目を浴びたEllen Pao(エレン・パオ)氏も、ダッシュ氏の言葉に同意する。2012年、パオ氏は、職場で性差別と報復があったとして、当時の雇用主を訴えた。2015年、陪審は、差別があったというパオ氏の主張を退けた。

「私が訴訟を起こした当時、まったく正気じゃないと言われ、嘘つきのような扱いを受けた。あの訴訟は、こうした差別が明るみに出た最初のケースだったので、人々もどう反応してよいかわからなかったのだと思う。今は、多くの人たちが自らの差別体験を語り、この問題に関心を持つよう呼び掛けているので、人々も差別が問題であることを認めるようになっている」とパオ氏はTechCrunchに話してくれた。

今と当時の違いは、問題に対する態度が「見ぬふりをしよう」ではなく「どうにかしよう」に変わったことだ、パオ氏はいう。

(マサチューセッツ州ボストン-12月10日:起業家、投資家で作家でもあるエレン・パオ氏が、2015年12月10日、マサチューセッツ州ボストンのBoston Convention & Exhibition Centerで開催されたMassachusetts Conference For Womenで登壇している。(画像クレジット:Marla Aufmuth/Getty Images for Massachusetts Conference for Women))

パオ氏はまた、「問題は、ほとんど何も対応策がとられなかったことだ。企業はこの問題を、会社イメージの低下とそれに対応するための広報戦略という観点で捉えている。経営上の死活問題だと考えてはいないため、大きな変化が生まれることはない。だから何度でも同じ問題が起きる」と語る。

Uber(ウーバー)では、エンジニアのSusan Fowler(スーザン・ファウラー)氏が同社のセクシャルハラスメント疑惑について同社に極めて不利な主張をした後、共同創業者のTravis Kalanick(トラヴィス・カラニック)氏がCEOの座を追われたが、パオ氏はこの件に関して、新しいCEO(Dara Khosrowshahi(ダラ・コスロシャヒ)氏)に変わったところで大きな変化は望めないと考えている。

「前と同じようなひどい問題は起こらないとしても、ダイバーシティが同社で全面的に実践されているわけではない」とパオ氏は語った。

そしてTesla(テスラ)問題である。パオ氏はこの問題を「ごみ箱の火事」と呼んでいる。

2018年、テスラの黒人工場労働者が、同社のカリフォルニア州Fremont(フレモント)工場における人種的偏見と差別の文化について口を開いたのだ。

「やるべきことはまだ山ほどあると思う。人々の態度が変わったこと、差別の経験談に人々が反応するようになったことは確かに大きな変化だが、十分というにはほど遠い」とパオ氏はいう。

>>「第二部:口先だけのリップサービス」を読む

日本版編集部注:本稿は米国版TechCrunchが2019年6月に公開した記事を翻訳・再構成したものです。

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(翻訳:Dragonfly)

VC業界のダイバーシティ推進は不況に負けてしまうのか

ベンチャーキャピタル(VC)企業による投資パートナーの採用は、本質的に排他的なものである。投資家がパートナーとしてファンドに参加するには自分の資本を投資することが法律で定められており、その額は数十万ドルのこともあれば、数億ドルのこともある。つまり、シニアパートナーになるには通常、それなりの額の個人資産が必要ということだ。投資業界の男女比は極めて偏っており、シニア投資家の84.6%が男性だというデータがある。VC業界も投資業界と非常に似ていて、Harvard(ハーバード大)やStanford(スタンフォード大)などの有名大学を卒業した特権階級の出身者が圧倒的多数を占める。そして、図らずも彼らは皆、白人だ

ここ数年は、VC企業に入る女性や自らVCを立ち上げる女性が増えたため、男女比の偏りは改善してきた。女性起業家の支援団体All Raise(オール・レイズ)が2月に発表したデータによると、2019年に米国企業が新たに採用した女性のパートナーまたはジェネラルパートナーの数は52人だった。ちなみに前年度は38人だった。有色人種の採用も徐々に増えてきているが、まだ十分ではない、という声が多い。Equal Venture(イコール・ベンチャー)のパートナーであるRichard Kerby(リチャード・カービー)氏によると、VCパートナー総数に占める黒人の割合はわずか2%だという。

最近、数々のVCが投資見込み企業のダイバーシティを向上させようとBlack Lives Matter(ブラック・ライヴス・マター)運動に寄付したり他の方法で参加したりして、ダイバーシティを推進する動きが再び活発になっている。非黒人VCがダイバーシティを向上させるには、黒人パートナーを雇用する、あるいは黒人創業者に投資するなどの方法があることを訴える、「Make the hire. Send the wire.(もっと雇用を。もっと投資を。)」というフレーズが生まれ、スローガンとして広く使われるようになっている。

しかし、新型コロナウイルスのパンデミックによって引き起こされる恐れがある経済不況のせいで、女性や黒人、過小評価されている他のグループのVC業界における地位向上を推進する動きが、ただでさえ遅々としていたのに、さらに鈍化する危険がある。ここ数年で遂げた進歩を台無しにせずにさらに発展させていくには、VC業界全体が意識的かつ意欲的に黒人の雇用を進めていく必要がある。

新世代VCが直面する新たな課題

設立して間もないVC企業は、ダイバーシティの面では名の通ったVCよりも進んでいる。VC企業に入るために「生涯資本家」である必要はない、とKleiner Perkins(クライナー・パーキンス)に入ったばかりの投資家Monica Desai Weiss(モニカ・デサイ・ワイス)氏はいう。デサイ・ワイス氏のように前職がオペレーターでも、場合によってはジャーナリストでもVCパートナーになることは可能だ。

しかし、長引く不景気のせいで、ベンチャー業界は比較的新しいVCが数多く失われるリスクに直面している。有名VCとは異なり、新しいVCには知識や勘を裏付けできる数十年にわたる実績がない。また、機関投資家との関係も確立されていない。機関投資家は密な関係を築くが同じような背景を持つ者どうしで固まることが多い。つまり、多様性を持つ企業に投資するために設立されたVCをはじめ、ここ10年ほどの間に出現してきた、より優れたダイバーシティを持つ新世代のVCが、やっとの思いで参入したVC業界というエコシステムから消滅する危機に瀕しているのだ。

ボストンを拠点とするAccomplice(アコンプリス)の元パートナーであるChris Lynch(クリス・リンチ)氏は、景気が早い時期に持ち直さなければVC業界内の「権力交代」は進まないと懸念し、「新しいボスも前のボスと何も変わらないことになる」という。

ベンチャー投資家として何らかの形で投資先を現金化し優れた手腕を持つことを証明するには8年から10年かかるため、新しいVCは難しい状況に直面する、とリンチ氏は指摘する。もし市場が今より保守的になったら、リミテッドパートナー(LP)は実績のない新しいファンドよりも、名の知れた老舗ファンドに戻っていくからだ。

そのような投資家(年金基金、大学、同族経営事業などの資産を運用している場合が多く、どの投資家や企業が資金を調達できるかは彼らによって決まる)はすでに、現在の景気では新しいファンドマネージャーに出資する可能性は通常より低くなると警告している。初心者プレーヤーに運用を任せずに、老舗VCなど、確実なリターン実績を持つVCに運用を託すことで資産を守ろうとしているのである。

そのようなリミテッドパートナーにとって、今のところダイバーシティはそれほど喫緊の問題ではないかもしれない。その理由の1つは、筆者の同僚であるConnie Loizos(コニー・ロイゾス)が最近指摘したように、公的資金を運用するLPには、出資金のうち一定の割合を多様性のあるスタートアップに投資するよう出資先のベンチャーマネージャーに要請する法的義務が課されているためだ。

そのような法的義務がなければ、LPが経済不況の中で革新的に動くことはないのではないか、とアコンプリスの元パートナーであるリンチ氏は考えている。「LPが運用するのは、従来型の組織から委託された資産だ。これまでの出資ポートフォリオが体に染みついている。そして変化を嫌う」とリンチ氏は語る。

テック業界のCEOやVC企業向けの人材を長年ヘッドハンティングしてきたJon Holman(ジョン・ホルマン)氏も、もし不景気が長引けば、新興ベンチャー投資家は苦闘を強いられることになり、VC業界への社会経済的な影響が最低でも5年間は続いた2000年の不況のときと同じような状況になると懸念している。

2000年の不況時、リミテッドパートナー(機関、年金基金、大学、生命保険会社)は、VCは投資リターンが少な過ぎて運用先の選択肢にはならないと考えていた。そのため、運用資金はVCから引き揚げられて不動産や金相場などに再投資された、とホルマン氏は回顧する。

「その頃、設立したばかりで足場が固まっていないベンチャーファンドで、まだリターンを出したことがないとなれば、2回目の資金調達は不可能だった。ベンチャー資本家の人数が劇的に減少した」とホルマン氏は語る。

そのため、もし不景気あるいは不況が長引いて米国経済が打撃を受けたら、ベンチャー企業による雇用そのものが停止する可能性がある。停止して動かないということは、前に進むこともできないということだ。

「Sequoia(セコイア)が、Accel(アクセル)が、あるいはAndreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)が廃業することはない」とホルマン氏はいう。

最悪の場合、黒人や過小評価されている人材に確実に投資しつつ、自社の人材のダイバーシティ化も継続するという責任がすべて有名VCの肩に置かれてしまう。VC企業はこれを言い訳にすることはできない。仮に強者だけが生き残るのであれば、その強者こそが使命を確実に果たすことを決意すべきだ。

Human Utility(ヒューマン・ユーティリティ)の創業者兼エグセクティブディレクターであるTiffani Ashley Bell(ティファニ・アシュリ・ベル)氏は6月5日にMediumに投稿した「It’s Time We Dealt With White Supremacy in Tech(仮訳:今こそテック業界から白人至上主義をなくすとき)」と題する記事の中で、VCが黒人投資家をサポートするためのさまざまな方法を紹介している。

「もしあなたが経営するVC企業に黒人のパートナーがいないのなら、2022年までに最低でも1人の黒人パートナーを必ず採用することを決意するだろうか。もし決意しないのなら、それはなぜだろうか。黒人パートナーは、あなたの知らない場所や分野に眠っている投資チャンスを発掘してくることだろう。ちょっと立ち止まって考えてみてほしい。VC企業に現在在籍しているパートナーは、白人であれアジア系であれ、はじめからずば抜けた運用能力を持っていただろうか、あるいはエグジットさせる能力をはじめから持っていただろうか。高い即戦力の有無は採用しない理由にはならない。もしあなたが非黒人投資家で、よりよい経営を続けていくことを決意しているのであれば、同僚たちにも説明責任を求めるだろうか。言うだけで行動がともなっていない同僚たちに、そのことを指摘できるだろうか。」

ベル氏はまた、黒人が経営するVCファンドのリミテッドパートナーになるよう投資家たちに勧めた。GVからスピンアウトしたPlexo Capital(プレクソ・キャピタル)は、多様な投資家が経営する企業とアーリーステージの創業者の両方に投資するハイブリッド型のVC企業として、この課題に取り組んでいる。

Cleo Capital(クレオ・キャピタル)の創立パートナーであるSarah Kunst(サラ・クンスト)氏は、「黒人の人材に投資することは、難しい問題でも、解決不能な問題でもない。ファンド側に、この問題を解決したいという意志が必要なだけだ」と指摘する。

「テック業界で黒人の人材を発掘し、雇用し、出資する方法は、他のグループの人材を発掘し、雇用し、出資する方法と何ら変わらない。そのグループに属する人たちと関係を築き、コミュニティの中でそれぞれの分野の第一人者を探し、そこから学んでいく。『このファンドには、これこれの分野の専門知識が足りない』と雇用担当チームと投資担当チームに話して、その足りない部分を埋めるだけだ」とクンスト氏は続けた。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ 

タグ:差別 コラム

画像クレジット: ALEX WONG/GETTY IMAGES / GETTY IMAGES

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(翻訳:Dragonfly)

テック業界はジョージ・フロイドの死をどう受け止めたのか

ミネソタ州ミネアポリスで丸腰の黒人男性George Floyd(ジョージ・フロイド)氏が警察による残忍な仕打ちによって殺された事件は、現代史の中でも最大規模のデモ活動へと発展した。フロイド氏が死亡してからこれまで数週間、ダイバーシティ(多様性)とインクルージョン(包括性)に関する議論や、テック業界が白人至上主義擁護の一端を担ってきた実態に関する議論が再発し、大きな注目を集めている。

しかし、大切なのは言葉ではなく、行動である。テック業界を真の意味で変えるには行動あるのみだ。そうでなければ、テック業界の企業や経営者によって表明された幾百もの声明は何の意味も持たなくなる。これから数週間、数か月、あるいは数年後に社会の注目が別のものに移ったら、今発せられている言葉は忘れ去られることだろう。だからこそ、テック業界はフロイド氏の痛ましい死を統計の中に埋没させるのではなく、テック業界において人種構成のシフト、ひいては力関係のシフトを実現するための推進力とすることが重要だ。

この悲劇をうけて、多くのテック企業やその経営者たちが人種差別に抗議する声明を発表した。例えば、LinkedIn(リンクトイン)は「私たちの同僚と黒人コミュニティを支持する」、Salesforce(セールスフォース)は「私たちは黒人コミュニティと共に人種差別、暴力、憎しみと戦う」といったコメントを発表している。Facebook(フェイスブック)も「変化を起こす責任は私たちすべてにある」とコメントしたが、同社は実際には、デモ鎮圧のために派遣された米税関国境警備局と契約していたり、ドナルド・トランプ大統領が暴力をあおる投稿をしてもそれを放置したりと、社員が人種差別を擁護する環境を助長している。これらは数多くの声明のうちの一部にすぎないが、どれにも共通しているのが「自分も共犯だという罪悪感」だ。

リンクトインのRyan Roslansky(ライアン・ロスランスキー)CEOは前述のコメントを発表した後、社員との対話集会の際に、人種差別を擁護する社員が参加する中で次のように語った。

「私たちが愛し、高い基準を守ろうと努力しているこの会社でも、本当の意味で人種差別のない文化を創るには、自分自身も同僚たちも努力すべきことがまだたくさんあるという現実を認めることが最も難しいと感じた人が多いと思う。しかし、私たちはそれを必ず成し遂げる」(ロスランスキー氏)。

共犯感情とは別に、多様性、包括性、平等性の領域で長年問題視されてきたのは、口先だけで行動が伴わないリップサービスだ。考えてみてほしい。テック企業の経営者たちは以前にも、丸腰の黒人が警察によって殺された事件について声明を出したことがある。それでも、テック業界の従業員数に占める黒人および有色人種の割合は相変わらず低いし、人々をインターネット上での人種差別その他のハラスメントから守るためのポリシー策定状況もほとんど変化していない。

例えば、Thumbtack(サムタック)は、同社が黒人たちの声に寄り添いD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)プログラムを成功させるために投資する意向であることを説明した記事の中で、ダイバーシティ&インクルージョン推進担当者を新たに雇用することを発表した。というのも、同社はつい最近、ダイバーシティ&インクルージョン推進担当者を4年間務めたAlex Lahmeyer(アレックス・ラーマイヤー)氏を4月に解雇したばかりだったからだ。ラーマイヤー氏のLinkedInによると、同氏は新型コロナウイルスによるパンデミックの影響で250人のチームメイトとともに解雇されたという

ラーマイヤー氏はLinkedInへの投稿の中で、「驚きはしなかったが、サムタックがDEI(ダイバーシティ(多様性)・インクルージョン(包括性)・エクイティ(平等性))プログラムをPR戦略として使っていただけで、この部署をまるで重荷であるかのように切り捨てたことに腹が立った。確かに、財政的に困難な状況に直面している会社もあるが、過小評価されている従業員に注意を向けてその声を聴く部署を廃止するのにこれ以上悪いタイミングはなかったと思う」と書いた。

サムタックはTechCrunchに対し、「ビジネスが新型コロナウイルスの影響から持ち直した」、そして現在はもっぱら新しいDEI推進担当者の求人を行っている、と回答した。

サムタックの広報担当者によると、「当社はDEI推進担当者の採用を最優先にすることで、より優れた多様性、平等性、包括性を備えたチームを築きたいと考えている」とのことだ。

ラーマイヤー氏はその後、テッククランチに対し、サムタックがDEI推進担当者を探していることは知っているが「戻るつもりはない」と語った。

Google(グーグル)も同じく、ここ数年間にダイバーシティを推進する数々の取り組みを廃止したことが報道されているAlphabet(アルファベット)のSundar Pichai(スンダル・ピチャイ)CEOはフロイド氏の死亡事件をうけて、一致団結を求めるコメントを発表し、GoogleとYouTubeのホームページを、人種間平等を訴える仕様に変えた。しかし、重要なのは言葉より行動だ。

長年にわたりこの点で何も行動を起こさず後退していたテック業界だが、今こそ一歩踏み出して、人種間平等を実現するために意義ある変化を遂げることができるかもしれない。しかし、テック企業が今こそ変化を遂げるには、ダイバーシティ・インクルージョン推進の取り組みを縮小するのではなく、強化する必要がある。つまり、黒人やブラウン人種の社員を増やし、平等で一貫性のある人事考課プロセスを導入し、性別だけでなく人種に関係する賃金格差もなくして、昇給や昇進に関する明確な制度を設けることだ。繰り返すが、重要なのは行動である。

フロイド氏死亡事件をうけて、すでにいくつかのテック企業は今後の発展につながりそうな第一歩を踏み出した。例えば、投資家のJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏は、6月は黒人の創業者との面談だけを受け付ける意向だ。また、Andreessen Horowitz(アンドリーセン・ホロウィッツ)は、テック業界の黒人創業者やその他の過小評価されている創業者に対する財政支援を行う新しいプログラムを用意している。

Backstage Capital(バックステージ・キャピタル)の創業者兼マネージングパートナーのArlan Hamilton(アーラン・ハミルトン)氏は、筆者がCommonwealth Club(コモンウェルス・クラブ)で行ったインタビューの中で、「完璧な方法というものはありませんが、他よりも優れた方法でこの課題に取り組んでいる人々が確かに存在すると思います。そして、一部の人によるうんざりするほどの沈黙は、それだけで何を考えているかわかります」と語った。

投資家ができる最善のことは、投資家としての仕事を全うすることだとハミルトン氏はいう。

「多様性を持つ創業者に注目することが投資家の仕事です。これまでは上司が見回ってなかったので、陰に隠れて仕事をしないでいることができました。でも今は、すべての出資者が目を光らせています。ふさわしい投資候補先が見つからないからといって簡単にあきらめないでください」(ハミルトン氏)。

現時点で最も思い切った行動は、Reddit(レディット)の創業者Alexis Ohanian(アレクシス・オハニアン)氏が取締役から退いたことだろう。長い間、人種差別や性差別をはじめとする問題あるコンテンツがあふれていたレディットのプラットフォームはオハニアン氏が2005年に立ち上げたものだ。そのオハニアン氏が今、自分が創業した会社に対して、後任の取締役には黒人を選任するように求めている。加えて、同氏は自身が所有するレディットの株式から今後得られる利益を黒人コミュニティに投資することも明らかにした。

テック企業の取締役会にはこれまで長い間、黒人役員が非常に少なかった。これこそJesse Jackson(ジェシー・ジャクソン)牧師が少なくとも2014年から求めてきたことであり、Congressional Black Caucus(連邦議会黒人幹部会、CBC)が2015年から要求してきたことである。テック企業はこの点で、何年もかけて多少の進歩を遂げた。例えば、2015年にCBCが取締役会の多様化向上を提唱してからわずか数か月後に、Apple(アップル)は取締役として、Boeing(ボーイング)の前CFO兼プレジデントのJames Bell(ジェームズ・ベル)氏を選任した。また、2018年には、Airbnb(エアービーアンドビー)、フェイスブック、Slack(スラック)をはじめとする一部のテック企業が黒人の取締役を選任した。しかしテック企業の取締役は依然として白人男性が圧倒的に多い。

だからこそオハニアン氏の取締役退任と黒人選任の要求に重要な意味がある。事実上、自分を権力の座から外し、自分の代わりに黒人取締役がその座に就けるようにしているからだ。オハニアン氏は現在、取締役会に推薦するために後任の最終候補者を絞っているところだという

The Human Utility(ザ・ヒューマン・ユティリティ)の創業者Tiffani Ashley Bell(ティファニー・アシュリー・ベル)氏は、オハニアン氏の後任取締役に立候補している人の1人だ。ベル氏は自身がTwitterでつぶやいているように「文字通り、白人至上主義を取り除くためのソースコードをテック業界全体に(読者からのメッセージによると他の業界にも)公開した」という。

そのソースコードとは、この記事のことだ。秀逸な記事なのでぜひ一読してみてほしい。この記事の中でベル氏は、白人至上主義を排除できるかどうかは詰まるところ各人の意欲の問題だとし、内省を促して、白人至上主義を擁護しているかどうか吟味するために考案された質問をいくつか紹介している。そしてベル氏もまた、行動が重要であることを強調している。

以下、記事の一部を引用する:

黒人社員のために進んで場所を確保するだろうか。現在のチームに、特にリーダー的なポジションに、黒人の社員がいるだろうか。もしいないなら黒人社員の採用を他の成長戦略と同じように重要だとみなして、それをやり遂げるだろうか。歴史的黒人大学(HBCU)の学生を、歴史的白人大学の学生と同じほど熱心に採用するだろうか。あなたの会社は全米黒人技術者会の就職フェアに出展したことがあるだろうか。

前述したように、黒人への残忍な暴行殺人事件についてテック業界が声をあげるのはこれが初めてではない。しかし、今回はこれまでとは何かが違うと感じる。ハミルトン氏によると、それはほとんどの人が新型コロナウイルス感染症の影響で長期にわたり在宅しているせいではないか、という。

「今、世界も米国も一日中、黒人が直面している現実をまるで目の前で起きている出来事のように目撃して理解し、感情移入しているんです。これまでも、人々はそのような出来事の一部を確かに見てはいましたが、それでもやはり私たちが何となく保護フィルターをかけてしまっていたように思います。全部を見せてはいなかった。それが今は、新型コロナウイルスの影響で、米国民はあたかもVRデバイスをかぶせられたかのように、現実を目の前で直視せざるを得ない状況に置かれているんです」と、ハミルトン氏は筆者に語った。

どれが単なるパフォーマンス行為で、どれが実質的な変化につながる行為なのかを、現時点で判断することは難しい。テック業界のCEOや投資家が今回の事件をうけて発した耳当たりのよい言葉の数々の中で(あるとすれば)どれが本当に行動を伴って具体的な成果をあげるのか、テッククランチは今後も注目していく。

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タグ:コラム 差別

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(翻訳:Dragonfly)

シリコンバレーは黒人の起業家と投資家を応援している

警察による残虐行為と体系的人種差別から生じる経済的不平等への抗議行動が米国で続くなか、テクノロジー業界がこの大義への支持を表明しており、ベンチャーキャピタル企業もこの輪に加わっている。

テクノロジー企業の経営陣や彼らを支持する投資家たちは、この抗議運動とBlack Lives Matter(黒人の命の大切さを訴える)運動を支持する声明を発表している。Benchmark(ベンチマーク)、Sequoia(セコイア)、Bessemer(ベッセマー)、 Eniac Ventures(エニアックベンチャーズ)、Work-Bench(ワークベンチ)といった企業、そして SaaSTR Fund(SaaSTRファンド)の起業家であるJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏などがこの大義を支持し、ベンチャーキャピタル業界での人種的偏りを改善する手立てを講じるとツイートした。

しかし、一部の黒人起業家および投資家は、テクノロジーおよびベンチャーキャピタル業界が歴史的不平等に対しこれまで何らのアクションも起こしてこなかった事実を踏まえ、これらの企業の動機に疑問を呈している

「テクノロジー業界で黒人を見出し、雇用し、資金を融資するのは、他のグループを見出し、雇用し、資金を融資するプロセスと同じです。まずそのグループに属する人々と関係を築き、そのコミュニティーのオピニオンリーダーを探し、彼らから学んだ上で、採用チームや投資チームに対し融資の専門知識に欠けた部分があることを伝え、それを埋めるのです。一人の人物に形ばかりの関与をしたり、一度きりの取り組みに資金を提供したり、情報ルートの問題として処理するのは正しいやり方とは言えません」と、Cleo Capital(クレオキャピタル)のマネージングパートナーであるSarah Kunst(サラ・クンスト)氏はメール上でTechCrunchに語る。「これらのファンドが持つ有り余るスキルやリソースを使って学び、関係を構築し、資本を展開する。これこそが重要な点です」。

「採用し、資金を提供する」

投資家の取るべきステップは主に2つに絞り込まれるという。人々を採用し、投資するというアクションだ。

Mediumへの投稿で、ニューヨークを拠点とする投資会社Work-Benchは黒人起業家や投資家への支援を確実に行うための詳細な手順を示した。

同社は、Equal Justice Initiative(イコールジャスティスイニシアチブ)Southern Poverty Law Center(サザンポバティローセンター)Color of Change(カラーオブチェンジ)といった組織への経済的支援に加え、 自社の事業が黒人起業家や投資家支援につながることを保証する新しいステップを導入中である。

同社は、「関心のある場合」に取るその他数々のステップについても詳しく述べている。そのステップには、他のエンタープライズVCのためにエンタープライズスタートアップに取り組んでいる黒人起業家の公開データベースを照合したり、HBCUvc(VCやテクノロジー産業でのキャリアのために黒人を訓練する非営利組織)や黒人が関与するその他のVC企業と協力したりするといったことが含まれている。

一部の企業は、HBCU(歴史的黒人大学)から発生した企業に独占的に焦点を当てる専門プレシード投資ファンドを創設するなど、さらに一歩進んだ手段を講じている。

これらのイニシアチブは始まったばかりの初期段階にあり、投資家たちは彼らの取るステップについて明らかにする準備が整っていないが、彼らは独占的ファンドの枠を大きく拡大している。投資家たちはHBCUやランドグラント大学での採用活動を強化し、多様な候補に目を向けポートフォリオ企業内での社内トレーニングに力点を置き、広範囲かつ強力な社内起業家プログラムを通じて新世代のマイノリティ起業家を生み出そうとしている。

またこういった企業らは、進捗状況を監視し、企業内やポートフォリオの足りない部分を見出すためにベンチマークを設けることや社内調査を実施することを検討している。これを開始するには、まず企業が今まで何人の黒人起業家に投資したかを年次フォローアップとともに透明性と説明責任をもって公開するとよいだろう。

投資家たちはこれらのデータに内々でアクセスできるが、こういった統計を一般公開している企業は稀だ。Initialized Capital(イニシャライズドキャピタル)は月曜日、 最新のファンドのうち、黒人の起業家に率いられている企業は7%であることを発表した

Backstage Capital(バックステージキャピタル)の起業家Arlan Hamilton(アラン・ハミルトン)氏が我々へ送ってくれたメッセージの中で書いていたように、多様性の問題はファンド自体にも及んでいる。

「どこへ行っても投資家たちは、自分たちに何ができるだろうかと私に尋ねてきました。なにも複雑なことではありません。黒人の起業家に投資してください。『すべての』黒人起業家に投資する必要はありません。日頃のセオリーや、いわゆる『基準』を維持して、投資する黒人起業家を何人か見つければよいのです。必要とあらば私のところに130社のポートフォリオ企業がありますし、さらに雇用をおすすめできる数十人の黒人投資家をまとめた厳選リストを紹介することもできます。私のメールアドレスは、ARLAN@BackstageCapital.comです。もうこれで言い訳はできないでしょう」。

VCパートナーを採用する内部活動は、本質的に偏りのあるものだ。これをドミノ効果として考えていただきたい。LPが白人のGPだけに融資する場合、白人のGPは採用すべき他のパートナーを既存のネットワークの中で探すことになる。多様性に欠けるVC企業が、採用担当者または過小評価グループに属する起業家を通じて既存のネットワークを打ち破らない限り、このドミノ効果は今後も続いていくだろう。

「小切手を切りたい」

ベンチャー企業のパートナーたちは、黒人起業家のコミュニティを今後より強くサポートしていくことを約束している。

「私は一年の内そうたくさんの投資をする方ではありませんが(私はじっくり型の静かな投資家です)、あなたの会社の説明資料をメールしてください。6月は黒人起業家とだけ会う、またはZoomミーティングをするつもりです」とJason Lemkin(ジェイソン・レムキン)氏はTwitterに投稿した

ニーヨークを拠点とするEniac Ventures(エニアックベンチャーズ)の起業家Nihal Mehta(ニハル・メタ)氏はTwitterで、一対一のビデオ通話サービスを提供するSuperpeerを使用して、黒人起業家から無料でアポイントメントを受け付けると発表した。メタ氏のツイートから24時間以内に夏の間の予約がすべて埋まった。彼は黒人起業家と103回のミーティングを今後行う。

「これは相当な需要があり、黒人起業家とテックコミュニティーの間に埋めなければならない大きなギャップがあることを意味します」とメタ氏は言う。

Eniac Venturesチームは全社で、黒人起業家と話し投資を行うための無料の専用Superpeerコンサルティングスロットを設けている。

Spero Ventures(スペロベンチャーズ)のパートナー、Ha Nguyen(ハ・グエン)氏は金曜日に黒人起業家向けの朝食会とAMA昼食会を主催している。また、グエン氏は黒人起業家に対し、資金調達プロセス、会社説明、次のチェックのための紹介文について支援が必要なときには連絡を取るように提案した。「そして私は小切手を切りたいと思っています」とグエン氏はLinkedInに投稿している

Hustle Fund(ハッスルファンド)のElizabeth Yin(エリザベス・イン)氏は同社のポートフォリオ企業の15%がネットワーク外の企業であると述べ、起業家に対し同社に今後も完全なインバウンドピッチを送るよう促している。

またイン氏は、Score 3で働いている同社のベンチャーアソシエイトインターンJasmin Johnson(ジャスミン・ジョンソン)氏、あるいはBackstageの元プリンシパルであり、自身の投資家マッチングプログラムを立ち上げたLolita Taub(ロリータ・タウブ)氏のような、多様なネットワークを持つ起業家と非公式な取引フロー関係を築こうとしているところであると伝えた。

タウブ氏は、固定ツイートGoogleフォームを掲載し、そこでスタートアップからの投稿をレビューしている。その企業が彼女のお眼鏡にかなう場合には彼女から連絡し、他の投資家(Backstage Capital、Harlem Capital、Hustle Fund、WXR Fund)にふさわしいようなら、タウブ氏は両者を引き合わせる。

タウブ氏はテック業界とベンチャーキャピタル業界において華麗な実績を持っているため彼女のネットワークは広範囲に渡る。しかし彼女の投資プログラム自体はシンプルだ。これは多様なネットワークを持つバレーのスーパーコネクターなら、誰にでも再現可能な手法だ。

「才能はいつも身近にあった」

投資コミュニティーが黒人コミュニティーへのサポートを先を争って表明する中、黒人投資家やスタートアップ起業家はそうした動きに疑問を投げかけている。

抗議運動が長引き、数え切れないほどの黒人男性や黒人女性が警察の手によって命を失って後、やっと投資家がこの業界、そして国全体が直面する問題について行動を始めたという点にこの問題の深さが表れている。

黒人投資家が率いる企業、Precursor(プリカーサー)は日曜日次のような声明を発表した。

MaC Venture Capital(マックベンチャーキャピタル)のMarlon Nichols(マーロン・ニコラス)氏、Upfront Ventures(アップフロントベンチャーズ)の Kobie Fuller(コビー・フラー)氏といった投資家は、自らの投資活動とアフリカ系アメリカ人の人材ネットワークであるValence(ヴァレンス)のようなスタートアップの創設を通じて、優先事項として多様な起業家グループの育成を行ってきた

ニコラス氏が本日の投稿で指摘したように、業界における不平等を示すデータは驚異的である:

  • 黒人はスタートアップの幹部ランクにおいて82%過小評価されている
  • 調達された全ラウンドの75%以上が白人の融資チームに渡っている
  • 人種的に多様性のある創設チームおよび経営陣チームは、全員が白人の創設チームおよび経営陣チームよりも、買収とIPOにおいて高い実現倍数(RM)を生み出している(それぞれ3.3倍対2.5倍、および3.3倍対2倍)

ですから、心から人種差別に反対であるなら、今すぐに始めることができるのは、黒人男性や黒人女性が率いるスタートアップやファンドに投資しない理由についてあれこれ言い訳するのをやめることです。そのかわりに投資し、ネットワークを広げ、我々をリーダーシップ/意思決定ポジションで雇用し、白人が率いるスタートアップやファンドに適用している基準を我々にも適用してください。

改善への道のりは長く、投資家が現状を変えるためにできることは山程ある。

「あらゆるトップMBAプログラムには黒人の学生組織があり、あらゆるトップテック企業には黒人ERGがいます。まずはこの集団に対し採用活動を行ってください。黒人テックリーダーが率いるUlu(ウル)、Precursor、そして私自身のファンドCleo Capitalなど、とても有力なファンドがあります。 Chris Lyons(クリス・ライオンズ)、Ken Chenault(ケン・シュノー)、Adrian Fenty(エイドリアン・フェンティ)、そしてMegan Maloney(ミーガン・マロニー)といった非常に優秀な投資家もいます」とクンスト氏は書いている。

「私たちは皆、テック分野の黒人を見出しサポートするためどういったところで時間を費やしているか、熱心に発言しています。私たちはCulture Shifting WeekendやBlack Women Talk Techといったイベントで話し、Code2040やHBCUVC、Blck VCといった団体をサポートしています。簡潔に言うと、私たちは活動に尽力してきましたし、人材は常にそこあったのです。あとは何が残っているかというと、大規模ファンドがこの流れに乗って黒人のVCを雇用したり黒人の起業家に融資をするために真摯な取り組みを行ったりし、また彼らのポートフォリオ企業に対し、リーダーシップポジションに黒人を採用するよう促すことです」。

大規模なベンチャーキャピタル企業が過去数日間で発表した取り組みにより、過小評価グループに属する起業家がベンチャーキャピタル資金や意思決定者にアクセスする機会が拡大し、それが小切手につながるかもしれない。しかし、カレンダー上のアポやメールだけでは人種差別の問題は解決しない。黒人起業家に限定し、1ヶ月間独占的なミーティングを行っても、ベンチャーキャピタル業界に体系的に巣食った問題を解決するには至らない。

それゆえ、ベンチャーコミュニティーはより強固なアクションを取る必要がある。なぜなら言葉だけの声明は、小切手を切ったり採用を行うことほどの力を持たないからである。

関連記事:シリコンバレーは黒人が経営する企業の支援で組織的人種差別と戦うことができる

Category:パブリック / ダイバーシティ

Tag:差別 アメリカ

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(翻訳:Dragonfly)

マイクロソフトは警察には顔認証技術を売らないと公言

Microsoft(マイクロソフト)は、IBMAmazon(アマゾン)との協議を通じて、少なくともより厳しい規制が設けられるまでは、顔認証技術を警察が利用することに反対する立場を固めた。

今朝、ワシントンポストのライブイベントで行われたリモートインタビューで、マイクロソフト社長のBrad Smith(ブラッド・スミス)氏は、同社のテクノロジーを適切に使用するための「原則的立場」を、同社はすでに取っていると話した。

「私たちが導入した原則に従い、私たちは顔認証技術を、現在の米国の警察署には売らないことにしました」とスミス氏。「しかしこれは、もっとよく知り、もっとよく学び、もっと行動せよと私たちが呼び掛けられている時期なのだと、私は強く思っています。それを受けて私たちは、人権に基づいてこの技術を管理できる国法が制定されるまで、米国の警察署には顔認証技術を販売しないことを決断しました」。

さらにスミス氏は、この技術を「他のシナリオ」で使用する場合の管理に用いる新しい「審査要素」を追加するとも話していた。

ワシントンポスト・ライブ:マイクロソフト社長ブラッド・スミス氏は「人権に基づく」国法が制定されるまで、同社は顔認証技術を今の米国の警察署には売らないと語った。

George Floyd(ジョージ・フロイド)氏殺害を受けて発せられたこうしたコメントは、米全国、そして全世界での抗議活動を招き、人種間の平等や法執行に関する幅広い議論を促す結果となった。

マイクロソフトの立場は、より厳重な規制が施行されたときにこの問題を再検討することを示唆したアマゾンの立場に似ている(ただし、どちらの企業も民主党議員が提出した「警察の正義」法案が警察署によるこの技術の使用を制限できるかに関して、明言は避けている)。双方とも、顔認証技術の販売を全面的に取り止めると発表したIBMほど踏み込んではいない。

ACLU(アメリカ自由人権協会)北カリフォルニア支部のテクノロジーおよび人権担当弁護士Matt Cagle(マット・ケイグル)氏は、このニュースに対して次の声明を発表をした(以下は抜粋)。

「顔認証の開発企業ですら、危険だとの理由でその監視技術の販売を拒否した今、政治家はもう、それによる私たちの権利と自由への脅威を否定できなくなりました。全国の議会と規制当局は、警察の顔認証の使用を速やかに禁止しなければなりません。そしてマイクロソフトなどの企業は、人権コミュニティーと(敵対するのではなく)協力して、それを実現させるべきです。これには、警察の顔認証の使用を合法化し全国の州に広めるための法律の制定を推進する取り組みを中止することも含まれます」。

「これらの企業が、ほんのわずかにせよ、またずいぶん時間がかかったにせよ、ようやく行動に出たことを私たちは歓迎します。私たちはまた、これらの企業に、黒人や有色人種のコミュニティーに不条理な危害を加える監視技術を含む、彼らを過剰に監視する卑劣なアメリカの歴史に永遠に幕を閉じるための努力を強く求めます」。

一方、アムネスティー・インターナショナルは、大量監視のために警察が顔認証技術を使うことを全面禁止するよう訴えている。

関連記事:アマゾンが顔認識技術を地方警察には1年間提供しないと表明、FBIへの提供についてノーコメント

画像クレジット:Riccardo Savi / Getty Images

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(翻訳:金井哲夫)

シリコンバレーは黒人所有企業を支援して構造的人種差別と戦うべきだ

米国で警察の暴力に対する大規模な抗議活動が第2週目に突入する今、この国の人種格差には短期的、長期的に思い切った対応が必要であることは火を見るよりも明らかだ。しかし、こうした変化を求める声の大半は、シリコンバレーが人種格差の改善に果たせる、果たすべき役割を軽視している。

たった今、活動家たちは国が2つの重要な手段を講じることを正当に要求している。州と地方自治体のリーダーを投票によって辞職させること、そして黒人所有の企業を支援することだ。どちらも必要な措置だが、後者の重要性はほとんど注目されてこなかった。リーダーは政策を変えることはできるが、米国における構造的人種間格差の大部分は経済的問題だ。黒人労働者が農業、家事、サービス業などの低賃金職に就いている割合は著しく高い。

彼らは失業する率もはるかに高い(平常の経済状態でも。パンデミック下では特に)。スタンフォード大学の研究によると、黒人が所有する企業のうち、最初の年に融資を受けたのはわずか1%だった。これは、白人所有企業の7分の1だ。

つまるところ、新法を制定して古い法律を廃止したとしても、何十年も続く投資判断の偏見はすぐには変わらない。ソーシャルメディアで黒人企業製品の購入を促進する草の根運動が広まっているのはそれが理由だ。WeBuyBlackeatOkraなどのアプリは、商店やレストランを集めた中央データベースを作り、Bank Blackなどの組織は、黒人所有のファンドや黒人所有企業への投資を働きかけている。

しかし、ハッシュタグがトレンドから外れ、抗議デモに人が集まらなくなり、Twitter(ツイッター)のフィードが有名人のゴシップやリアリティショーへのリアクションに戻った時に何が起きるのか?

多くの組織が心配しているのは、ジョージ・フロイド事件の抗議がメディアに採り上げられなくなったら、構造的人種差別を改善することへの関心が消えてしまうことだ。アプリは黒人企業のてこ入れには役立つかもしれないが、企業は顧客の購入・消費習慣が根本的に変わることに頼っている。新型コロナウイルス(COVID-19)とフロイド氏の死亡が重なった最悪の状態の中、消費者行動に大規模な変化が表れる可能性がある。しかし、それは自然に起きるものではなく、仮に起きたとしても十分ではない。

黒人企業に対する投資不足を構造的に修正するためには、巨大テック企業が立ち上がる必要がある。今すぐに。

中でも、Facebook(フェイスブック)やGoogle(グーグル)のアルゴリズムが暗黙的に人種差別するのを防ぐ「アルゴリズムによる偏見」に関する議論が最近、数多く交わされる一方で、「アルゴリズムによる平等」を積極的に要求する議論は十分とはいえない。もし、例えばテック企業が自社システムに内在する偏見を取り除くことに集中するだけでなく、黒人企業や黒人投資家や黒人の声を積極的に「引き上げる」ようにアルゴリズムを再構築したとしたらどうだろうか。

この変化は必然的に、黒人の作った製品やレストランがAmazon(アマゾン)やGrubhubなどのランディングページに掲載される割合を増加させる可能性がある。少々地味だが、SEOの仕組みに手を入れて、ユーザーの人種や地域の違いを取り込むよう改善することもできる。 Pandaのようなアップデートの背景にあるアルゴリズム構造を流用して、黒人に関係するコンテンツ消費を体系的に推進することができれば、黒人の声や黒人の企業が米国消費者の間にもっと広まるだろう。

ちなみに、こうした変更がユーザー体験を損なうと考える正当な理由はない。最近のBrookingsの研究によると、マイノリティーが所有する店舗は白人所有の店舗と比べてYelp(イェルプ)で同じレベルの評価を受けている。しかし、マイノリティーの店は白人の店と比べて成長が遅く、集客も良くない。その結果、年間39億ドル(約4300億円)の損失が黒人企業全体で生まれている。この明白な(そして不必要な)不均衡を解決するために、Yelpは優れた実績のある黒人所有企業を強化するようにアルゴリズムを変更すればいい。そうすれば優れた黒人起業家の年間収入が著しく増えるだけでなく、黒人経営の中小企業に対する投資の可能性も高まる。

最低でも、テイクアウトとデリバリーサービスでマイノリティー企業に短期的なアルゴリズム優位性を与えることで、新型コロナウイルスが引き起こした巨大な経済的打撃を軽減し,パンデミックのために閉店した40%のマイノリティー所有店舗を救うことができるはずだ。

George Floyd(ジョージ・フロイド)氏、Breonna Taylor(ブリオナ・テイラー)氏、Ahmaud Arbery(アマッド・アーバリー)氏、その他この国の破綻したシステムによって不当に命を落とした多数の黒人を取り戻すためにできることは何もない。我々に今できるのは、説明責任と行動を要求することだ。この国の政治指導者たちにも、Eコマースを作っているシリコンバレーのCEOたちにも。

思いやりのある、データに基づく改変によって、オンラインプラットフォームは黒人の起業家、クリエイターたちに競争の機会を与えることができる。それはあまりにも長い間否定されてきた平等だ。

【編集部注】筆者のWill Walkerはハーバード・ロー・スクールのJD候補であり「Incomprehensible!: A Study of How Our Legal System Encourages Incomprehensibility, Why It Matters and What We Can Do About It」の著者のひとりでもある。

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(翻訳:Nob Takahashi / facebook