犯罪ライブ配信「Citizen」が地域ジャーナリズムに取って代わることはない

地元で起こった犯罪を撮影するアプリCitizenが、1時間あたり25ドル(約2760円)で極秘にジャーナリストを雇って、犯罪現場の映像をサードパーティのウェブサイト経由でアプリからライブ配信していることがわかった。やれやれ。

Citizenが2016年に初めてApp Storeに登録されたときはVigilanteという名前で、透明性によって不正と戦うプラットフォームと銘打ってマーケティングを展開していた。というと聞こえはよいが、実際には、犯罪現場を探し出すよう故意にユーザーを煽って、その現場を報告させるというものだった。Vigilanteは、Apple(アップル)のアプリ開発者レビューガイドラインの「アプリはその使用によって身体に害を及ぼすことがあってはならない」という条項に違反しているとしてApp Storeから削除された。

もちろん、これでこの悪質なアプリの芽は摘まれるはずだった。が、大災害の後のゴキブリのように、このアプリも生き残っていた。VigilanteはCitizenと名前を変えて、利用者は犯罪現場に介入しないものとするという免責条項を追加してApp Storeに再登録を果たし、引き続きVCから資金を調達している。このアプリは現在、App Storeの同アプリページによると、クラウドソース型事件記録簿ということになっており「警察が対応する前に発生中の犯罪を市民に知らせる」のだという。しかし、このような行き過ぎた自警行為は、市民に安心感をもたらすどころか、混乱に拍車をかける可能性がある。アプリユーザーによる犯罪報告は、単なる間違いで済めばよいが、下手をすると人種差別につながり兼ねないことはいうまでもない。このアプリは911番通報からデータを取得しているが、911番通報の情報はすべて確認されているわけではないため、誤通報の原因となる可能性がある。

Citizenの代表は、このアプリは不審人物の通報を禁止しており「未確認のコンテンツや利用者によって報告された犯罪」は訓練を受けた専門家のレビューを受け許可されるまで配信されないと主張している。しかし、ほんの数カ月前、CEOのAndrew Frame(アンドリュー・フレーム)氏はライブ動画で放火犯と疑われる人物を追跡したCitizenのユーザーに情報提供料として3万ドル(約330万円)を支払ったが、結局その人物は犯人ではなかったことが判明した。

Citizenは十分なユーザー数が確保されないと機能しないため、同社はこのアプリを使うよう一般市民を囲い込もうとますます躍起になっている。SensorTower(センサータワー)によると、Citizenは、Black Lives Matter抗議活動の拡大に乗じて、2020年6月に月間最高ダウンロード数を記録した(米国全体が警察の残忍な行為に抗議する中、67万7000人の市民が警察アプリをダウンロードした)。しかし、その翌月のダウンロード数は20万7000件に低下し、以降、2020年3月は29万2000件、2021年3月は28万3000件と、ダウンロード数は頭打ちになっている。

Daily Dot(デイリー・ドット)は6月「ランドン」とうい名前のユーザーが1日に複数の犯罪現場からライブ配信を行ったという記事を掲載した。こうした犯罪現場に偶然出くわす頻度からして、この人物は単なる熱狂的なアプリユーザーではないように思われた。昨日もニューヨークポストに、1日で6つの犯罪現場をCitizenでライブ配信した「クリス」という名前の別のユーザーの記事が掲載された。Citizenによると、ランドンもクリスも、Street Team(ストリートチーム)のメンバーとしてアプリでの犯罪通報を行っているという。

「Citizenではいくつかの都市にチームを配置しています。これらの都市では、Citizenプラットフォームの動作方法をデモし、まさに犯罪が発生しようとしている状況での責任のある配信行為の見本を示すためにアプリを利用できます。最終的には、これらのチームが、効果的、有用かつ安全に配信を行う方法をユーザーに示すことになると信じています」とCitizenの広報担当は語った。

Citizenはアプリの立ち上げ以来、ストリートチームを配置しており、その事実を隠そうとしたことはないと同社の広報担当はいう。しかし、このストリートチームの仕事はCitizenのウェブサイトでは求人されておらず、Flyover Entertainmentというサードパーティのリクルート業者がJournalismJobs掲示板でCitizenの名前を出さずに求人広告を出している。NYU Journalismのウェブサイトでも、同じような求人広告を掲載しているが、こちらにはCitizenという名前が明記されている。Citizenによると、これらはどちらも、Citizenのストリートチームの求人広告だという。報酬は、ロサンゼルスでは10時間のシフトで250ドル(約2万7000円) / 日、ニューヨークでは8時間のシフトで200ドル(約2万2000円) / 日(25ドル[約2700円] / 時)となっている。

「放送記者たちには安全に責任を持って放送してきた経験があります。これこそストリートチームのメンバーに必須の条件です」とCitizenの広報担当は語り、これらの求人広告がCitizenのウェブサイトではなくサードパーティの求人掲示板に掲載されている点については、Citizenは本職の記者を求めていたからだという点を強調した。ただ、自社のウェブサイトでも本職の記者を募集することはできたと思われる。

監視による自警主義に対する懸念はさておき、ローカルニュースは瀕死状態であるし、Citizenは個人ジャーナリズムに替わるものとして開発されたわけではない。もちろん、地域の新聞も犯罪を報道するわけだし、詳細を調べるために報道記者を犯罪現場に送るというCitizenのやり方も前例のないことではない。しかし、ニュース報道と、監視アプリを使った犯罪現場からのライブ配信とでは意味が違う。しかも、Citizenは本職の記者が配信したのか、それとも一般市民が配信したのかを質問されない限り明らかにしない。「透明性の向上」を謳い文句にしているアプリにしては、求人広告に自社名を明記しないというのは透明性が高いとは思えない。また、福利厚生も有給もないのに、しっかりとした放送スキルを要する不定期のフリーランスの仕事にしては、時給25ドルというのはかなり低い報酬と言わざるを得ない。

現在、Citizen’sは、成長を目指す最新の試みとして、月額19.99ドル(約2200円)のProtectと呼ばれる有料サービスを提供している。このサービスを利用すると、ユーザーは、自分のカメラからProtectエージェントに自分の居場所とライブストリームを送ることができる。Citizenによると、Protectエージェントには、前警察官や911オペレーターが在籍しており、緊急時には「緊急対応部隊」を派遣できる。これは、個人向けの911オペレーターに料金を支払っているようなものだ。今でさえお粗末な警察システムのお粗末な代替システムのような感じだ。ユーザーが犯罪を恐れるほど、自分たちの身を守ってくれると信じて月額サブスクリプションサービスに料金を支払う動機も高まる。ニューヨーク市議会議員のJustin Brannan(ジャスティン・ブラナン)氏は、次のように書いている。「自分の近辺で起こった犯罪を絶えず把握できれば、都市の犯罪発生率が現在歴史的低水準になっているとはいえ、ユーザーは多少は安心できます。ただし、脱走したトラが実はアライグマだったなどということもあります」。

おそらくシリコンバレー育ちのテック企業では、1世紀近くの長きに及ぶ米国の警察の残忍行為、人種プロファイリング、監視を抑えることはできないのかもしれない。犯罪を減らすには、すべての人が医療施設を利用でき仕事にありつけ手頃な価格の住宅を購入できるようにしたほうが、よほど効果的なのかもしれない。答えは誰にもわからない。

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カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:CitizenジャーナリズムマスコミアプリApp Store透明性犯罪

画像クレジット:Citizen

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(文:Amanda Silberling、翻訳:Dragonfly)

逮捕者を出したランサムウェア犯罪集団「Clop」が活動を再開

ウクライナ警察がランサムウェア犯罪集団「Clop(クロップ)」と関係があるとみられる6人の容疑者を逮捕してから数日後、この悪名高いランサムウェアの活動が再開されたようだ。

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先週、ウクライナ国家警察が韓国と米国の関係者とともに行った法執行活動により、ランサムウェア「Clop」に関係しているとみられる複数の容疑者が逮捕された。国家レベルの法執行機関による大規模なランサムウェアグループの逮捕は、これが初めてのことだと思われる。

ウクライナ警察は当時、同グループが使用していたサーバーインフラを停止させることに成功したとも主張していた。しかし、この作戦は完全に成功したわけではないようだ。

逮捕者が出た後、Clopは沈黙を守っていたが、今週になってから、新たな被害者である農機具小売業者と建築士事務所から盗んだとする機密データをダークサイトで公開した(TechCrunchはそれを目にしている)。

もしこれが本物であれば(被害者とされる両者ともTechCrunchのコメント要求に応じていない)、先週行われた史上初の法執行機関による逮捕にもかかわらず、ランサムウェア犯罪集団は依然として活動を続けていることになる。これはつまり、手錠をかけられた容疑者の中に、Clopの活動で重要な役割を果たしている者が含まれていなかったためと考えられる。サイバーセキュリティ企業のIntel 471(インテル471)は、先週の逮捕が活動のマネーロンダリング部分をターゲットとしており、犯罪集団の中核メンバーは捕らえられていなかったとの見解を示している

「Clopの背後にいる中核的な人物が逮捕されたとは思えません」と、Intel 471は述べている。「Clopに与えた全体的な影響は小さかったと思われます。しかし、今回の法執行機関による逮捕は、最近DarkSide(ダークサイド)やBabuk(バブク)のような他のランサムウェアグループで見られたように、Clopブランドが放棄される結果を導く可能性もあります」。

Clopはまだビジネスを続けているようだが、このグループがいつまで活動を続けるかはまだわからない。米国の捜査当局が最近、Colonial Pipeline(コロニアル パイプライン)を攻撃したハッカーに身代金として支払われたと主張される数百万の暗号資産を回収するなど、2021年に入ってから法執行機関の活動がランサムウェアグループに数々の打撃を与えているだけでなく、ロシアは今週、米国と協力してサイバー犯罪者の居場所を突き止める活動を開始することを認めた。

ロシアはこれまで、ハッカーへの対応に関しては傍観主義的な態度を続けていた。だが、Reuters(ロイター)が米国時間6月23日に報じたところによると、ロシア連邦保安庁(FSB)のAlexander Bortnikov(アレクサンドル・ボルトニコフ)局長は、今後のサイバーセキュリティ活動においては、米国の当局と協力していくと語ったという。

Intel 471は、先週の作戦でClopの主要メンバーが逮捕されたとは考えていないと述べていたが、それは「彼らはおそらくロシアに住んでいる」からであり、ロシアは長い間、行動を起こすことを拒否していたため、サイバー犯罪者にいわゆるセーフハーバー(安全港)を与えてきた。

Clopランサムウェアが2019年初頭に初めて発見されて以来、同グループは数々の注目を集めるサイバー攻撃に関与してきた。その中には、2020年4月に発生した米国の大手製薬会社ExecuPharm(エグゼキュファーマ)の侵入事件や、最近発生したAccellion(アクセリオン)のデータ流出事件が含まれる。この事件では、ハッカーがITプロバイダーのAccellionが使用するソフトウェアの欠陥を悪用して、コロラド大学やクラウドセキュリティベンダーのQualys(クオリス)など数十社におよぶ顧客のデータを盗み出した。

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タグ:逮捕警察ランサムウェアハッカー暗号資産犯罪サイバー攻撃

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(文:Carly Page、翻訳:Hirokazu Kusakabe)

ウクライナ警察がClopランサムウェアの容疑者6人を逮捕、米・韓国企業を攻撃

Clopランサムウェアのギャングにつながっているとされている複数の容疑者が、ウクライナ、韓国、米国の当局による合同捜査を経てウクライナで逮捕された。

ウクライナ国家警察のサイバー部門は、首都キエフと周辺で21カ所の家宅捜索を行い、6人を逮捕したことを明らかにした。容疑者らがランサムウェア一味の仲間なのか、あるいは中心的なデベロッパーなのかは明らかではないが「二重の脅迫」スキームを展開していた罪に問われている。このスキームでは、身代金の支払いを拒んだ被害者らはファイルが暗号化される前にネットワークから盗まれたデータを公開すると脅される。

関連記事:ランサムウェアの脅威を過大評価か、2021年5月の米企業へのサイバー攻撃に対する身代金を米司法省がほぼ回収

「被告6人は米国と韓国の企業のサーバーで『ランサムウェア』のような悪意あるソフトウェアの攻撃を実行したことが立証されました」とウクライナの国家警察は声明文で主張した。

疑わしいClopランサムウェアのギャングから機器を押収した警察は、金銭上の損害は約5億ドル(約554億円)弱になると述べた。押収したものはコンピューター備品、数台の車(TeslaとMercedes含む)、現金500万ウクライナグリブナ(約2046万円)などだ。当局はまた、ギャングのメンバーが攻撃するのにこれまで使っていたサーバーインフラをシャットダウンしたと主張した。

「法執行機関が協力して、なんとかウイルスを拡散するインフラをシャットダウンし、犯罪で得た暗号資産(仮想通貨)を合法化するためのチャンネルをブロックしました」と声明文にはある。

これらの攻撃は2019年2月に始まった。韓国企業4社を攻撃し、810もの内部サービスとパソコンを暗号化した。以来「Cl0p」と表記されることが多いClopは数多くの有名なランサムウェア攻撃に関与してきた。ここには2020年4月の米製薬大手ExecuPharmの情報流出、小売店舗のほぼ半分を閉鎖することを余儀なくされた同11月の韓国eコマース大手E-Landへの攻撃などが含まれる。

Clopはまた、Accellionのランサムウェア攻撃とデータ流出にも関与している。この件ではハッカーたちはITプロバイダーAccellionの何十もの顧客からデータを盗むのに、Accellionのファイル転送アプライアンス(FTA)の脆弱性を悪用した。情報流出の被害者にはシンガポールの通信会社Singtel、法律事務所Jones Day、スーパーチェーンのKroger、サイバーセキュリティ会社Qualysなどが含まれる。

この記事執筆時点で、Clopが盗んだデータを共有するのに使うダークウェブポータルはまだ稼働中だが、数週間アップデートされていないようだ。しかし、法執行当局は通常、取り締まりがうまくいったときはターゲットのウェブサイトをロゴに変えるため、ギャングのメンバーがまだアクティブかもしれないと思わせる。

「Clopオペレーションは通信、製薬、石油・ガス、航空宇宙、テクノロジーなどさまざまな分野の世界中の組織をディスラプトし、恐喝するのに使われてきました」とMandiantの脅威インテリジェンス部門で分析担当バイスプレジデントを務めるJohn Hultquist(ジョン・ハルトキスト)氏は話した。「攻撃グループ『FIN11』はランサムウェアや恐喝などのオペレーションに強く関係してきましたが、逮捕者の中にFIN11のメンバーや、オペレーションに関係している他の人物が含まれているかどうかは不明です」。

ハルトキスト氏は、ウクライナ警察の取り組みは「ウクライナがサイバー犯罪との戦いで米国の強固なパートナーであり、ウクライナの当局が犯罪者の非難港を否定しようと努力していることのリマインダーです」と述べた。

容疑者たちはコンピューター、自動化システム、コンピューターネットワーク、通信ネットワークでの不正な干渉と、犯罪的な手段で入手した資産のロンダリングの罪で懲役8年が科される可能性がある。

逮捕のニュースは、国際法執行機関がランサムウェアギャングを厳しく取り締まっている結果だ。先週、米司法省はColonial PipelineがDarkSideのメンバーに支払った身代金の大半を回収したと発表した。

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カテゴリー:セキュリティ
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画像クレジット:Cyber Police Department of the National Police of Ukraine / supplied

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(文:Carly Page、翻訳:Nariko Mizoguchi

受刑者の社会復帰を支援するUptrustは無駄な大量収監に浪費される数千億円の問題に取り組む

「technical violation(規則[法則]上の違反、厳密な法解釈による違反)」は、米国の現代刑事司法制度を象徴する、プロセスと手続きの不条理な泥沼を埋めるために米国政府が使用しているオーウェルの用語の1つだ。犯罪者が刑を執行した後、彼らはしばしば保護観察下に置かれ、どこに行くことができるか、誰に会うことができるかについての多数の規則をともなう。規則上の違反を犯した人は、仮釈放の審理に数分遅れるという単純な処置のために、何カ月あるいは何年も刑務所に戻されることが少なくない。

規則上の違反は、私たちすべてにとって高くつく。2021年初め、ニューヨークの首都地区の新聞Times Unionは、コロンビア大学およびIndependent Commission on New York City Criminal Justice and Incarceration Reform(ニューヨーク市刑事司法と収監の改革に関する独立委員会)の報告書に基づいて「ニューヨーク州は他のどの州よりも多くの人々を規則上の仮釈放違反で収監しており、その率は全国平均のほぼ3倍である」と報告し「これらの人々の再収監には、納税者の負担として少なくとも6億8300万ドル(約745億円)かかる」と伝えている。

オーウェル的であり、カフカ的でもある。そして公共資源の破滅的な浪費となっている。しかし、それは潜在的な解決策へとつながる問題でもあり、Uptrustはそこを改善しようとしている。

Uptrustは、社会復帰した人々を公選弁護人や裁判記録と結びつけるサービスを提供しており、規則上の違反を防ぐために必要なカレンダー、アポイントメント、ルール、手続きを確実に整備することで、彼らの通常の生活への復帰を促進するとともに、納税者の多大な費用を節約することを目指している。

同社は米国時間5月18日、Decaration FundLuminateStand Together Ventures Labという3つの主要投資家から200万ドル(約2億2000万円)のシード資金を調達したことを発表した。これは2020年TechCrunchが報じた130万ドル(約1億4000万円)のラウンドに続くものだ。

2015年に設立され、2016年に最初の製品をローンチした同社は、Jacob Sills(ジェイコブ・シルズ)氏とElijah Gwynn(イライジャ・グウィン)氏が共同設立し、刑事司法制度を改善する方法を模索していた。両氏は保釈保証金のような領域に目を向けながらも、基本的な問題に立ち返り続けた。「あまりに多くの人が制度から脱してません【略】そして彼らは再び戻ってしまいます」とシルズ氏はいう。

Uptrustは、テキストメッセージングや独自のアプリを通じてサービスを提供している。被告側の弁護士は刑事司法制度に関わる他のメンバーより依頼人に通じやすいことから、同社のサービスはおおむね公選弁護人とリンクしている。

Uptrustのアプリは、保護観察官との迅速なチェックインを可能にし、主要な予定表のアポイントメントをモニタリングする(画像クレジット:Uptrust)

シルズ氏によると、同社は何年も前からさまざまなプロダクトを試しながら成長を続けており、現在では28州で150サイトを展開し、18カ月前の30サイトから増加しているという。現在2カ所でサービスを利用しているバージニア州は、2021年末から2022年初めにかけて同サービスを州全域に拡大する予定だ。

同社は現在、サービスを利用する政府に対して料金を請求しており、その目的は、支払い資金が不足しがちなエンドユーザーの金銭的負担を抑えることにある。しかし長期的には、ユーザーが社会に再参入する際に、増加しているユーザーを新しいサービスにつなげるという大きな機会があると捉えている。「彼らの半数以上は、ヘルスケアへのアクセスに問題を抱えています」とシルズ氏は語り、ヘルスケア、金融、銀行、住宅など、さまざまな分野でアプリが将来的に役割を果たす可能性があるとの見方を示した。

それでも同氏は、これは多くの伝統的なベンチャーキャピタルにとって魅力的ではない「新規市場」であることを認識していた。そこで今回の資金調達で、シルズ氏とそのチームは刑事司法問題に深く染み込んだ資金をターゲットにすることを決断した。解決されようとしている問題、そしてUptrustが自身の使命を果たしながらビジネスとして成功する方法について、先見の明を示してくれることを期待してのことだ。

彼らはまた、シルズ氏のいう「思考における優れた多様性」を求めた。Decarcation Fundはまさにその言葉どおりに投資しており、進歩派のPam Omidyar(パム・オミダイア)氏とPierre Omidyar(ピエール・オミダイア)氏によって設立されたLuminateは、市民の関与に焦点を当てた慈善事業を行っている。一方、Stand Together Ventures Labは、Charles Koch(チャールズ・コッホ)氏が設立したStand Togetherによる資金提供を受けている。コッホ氏は、共和党や保守派の運動に広く資金を提供しているだけでなく、近年では、民間人に対する政府の力を最小化するための刑事司法改革への取り組みも強化している。

Decarceration Fundでマネージング・プリンシパルを務めるChris Bentley(クリス・ベントレー)氏は、Uptrustがこうした特殊な人々が何を必要としているかを正確に理解していると確信し、同社を最初の投資先に選んだ。「この分野には、善意の会社が意図せぬ結果をもたらしてきた重大な歴史があります」とベントレー氏は語る。同ファンドは、明確な目標を備え、ポジティブな結果をもたらすビジネスモデルを有する企業への投資に注力している。「私たちの投資委員会の半分は自らが創業者ですが、同時に、この制度に関する実際的な経験を持つ市民でもあります」と同氏は続けた。

Uptrustは現在、サンフランシスコを中心に15人の従業員を擁するまでに成長し、東海岸にも拠点を広げている。「営利企業が残した実績はあまり芳しくありません。そうした企業のほとんどは、刑事司法制度が望むものを作っているだけなのです」とシルズ氏は指摘した。「私たちは、収益、成果、そして実質上の影響力をもたらすことを実証しようとしています」。

【2021年5月18日更新】LuminateはOmidyar Networkの一部ではなく、パム・オミダイア氏とピエール・オミダイア氏が運営するThe Omidyar Groupから独立した資金を受けている。

関連記事:UCLAの研究者が大量投獄と警察に関するデジタルアーカイブを構築するために3.8億円の助成金を獲得

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:Uptrust資金調達アメリカ犯罪

画像クレジット:MARVIN RECINOS / Getty Images

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(文:Danny Crichton、翻訳:Dragonfly)

UCLAの研究者が大量投獄と警察に関するデジタルアーカイブを構築するために3.8億円の助成金を獲得

UCLAの研究者たちが、警察の活動や大量投獄(現在、米国は世界的に見ても際立って多い投獄者を抱えている)に関連する膨大な資料を収集し、文脈とともにデジタルアーカイブとして保存するために、365万ドル(約3億8000万円)の助成金を獲得した。それは歴史家や人類学者の役に立つものになるだろう、だがもっと根本的な意義は、多くの人が忘れてしまうような時代を、それが徹底的に文書化するということだ。

この「Archiving the Age of Mass incarceration(大量投獄時代をアーカイブする)」プロジェクトを率いるのは、UCLAのアフリカンアメリカン研究所であるBunche Center(バンチ・センター)のディレクターであり、ロサンゼルスにおける投獄の人的コストの文書化プロジェクトであるMillion Dollar Hoods(ミリオン・ダラー・フード)の創始者でもあるKelly Lytle Hernandez(ケリー・ライトル・ヘルナンデス)氏だ。助成金はAndrew W. Mellon(アンドリュー・W・メロン)財団から提供される。

ライトル・ヘルナンデス氏は、私に対して、波乱万丈だったが変革の可能性を見せた2020年を引き合いに出しながら「私たちは、米国の歴史の転換点にいるのでしょう。おそらく新しいものを構築している最中なのです」と語った。「もし私たちが何が起きたのかの記録を本気で残していきたいとするのなら、私たちがするべきことは、大量投獄の影響を受けた人たちの記録、記憶、体験そして可能ならばそのままでは破棄されてしまう国家の記録を残しておくことなのです」。

学生たちの多くがもうすぐ卒業します。そのうちの1人はハーバードのPhD課程に進学します。他の学生もロースクールに進学して研究員を続けます。全員が何かをなしとげてくれるでしょう。私たちは単に投獄の記録を行っているのではありません。リーダーを育成しているのです。

このコレクションの核となるのは、情報一般開示とコミュニケーションに関する2019年の合意の一部として、LAPD(ロサンゼルス市警察)がライトル・ヘルナンデス氏に開示した一連の文書である (合意が行われたのはヘルナンデス氏がMacArthur奨学金を得た直後だ)。彼女によれば、それは1980年代から2000年代初頭までの「麻薬戦争」、移民の取り締まり、その他多くのトピックを詳述した177箱分の紙の記録だという。また当局との合意に基づき、さらに多くの文書が提供される予定だ。

彼女がいうには、こうした公文書を、反対側からの文書や証言に対置することで「釣り合いをとる」ことがプロジェクトの目的だという。

「不釣り合いな罪で投獄されたり逮捕されたりしている人たちがいます。 私たちはしばしば立ち退きによって記録を失うことがあります、記録を保管していた場所の家賃を払うことができず、差し押さえられてしまう場合もあります。そして逮捕されたときにそうしたものが差し押さえられてしまうことなどもあります」と彼女は説明する。「何世代にもわたる損害を元に戻す必要があるとすれば、その損害はもともとどこで起こったのでしょうか?それは誰に起こったのでしょうか?私はこのアーカイブプロジェクトをそうした解明作業の一部だと思っています」。

今後数年間、ライトル・ヘルナンデス氏は、紙文書のスキャンや索引づけといった従来型の作業に加えて地域社会を訪問し、保釈金の領収書(司法制度との接触を記録した唯一の品かもしれない)のような収監関係のペラ紙ものや、個人的な話やメディアを収集するといった取り組みを、アーカイブの構築に向けて率いていく予定だ。

警察や州の機関から記録を取得することは困難であり、時には法的または政治的な緊張をともなうプロセスだ。できるだけ多くの情報を、できるだけ多くの情報源から、できるだけ迅速に入手することが重要だと彼女はいう。これまでの人種差別解消の歴史における大きな転換点は、怠慢もしくは故意の両方の理由から、十分に文書化されていない。

「もし国家が、口述歴史家やその学生の一群を送り出して、そうした記録を収集保存していたとしたら?想像してみて下さい。もし奴隷制を経験した人々と話をできていたとしたら、私たちは奴隷制とその犠牲について何を知ることができたのか、そしてそれがこの国を作る上で何を意味していたのかということを。そして過去の記録と取り組み、そこから離れて行くため役に立つ、どのようなアーカイブが残され得たのかということを想像してほしいのです」とライトル・ヘルナンデス氏は語る。「でも、私たちが十分な仕事をしていなかったために、奴隷制度の多くの記録は忘れ去られてしまいました。ネイティブアメリカンの強制移住問題、戦時中の抑留問題、移民問題も同じことです」。

現在、LAだけではなく全国各地に大量投獄の時代に対して行えることがあるのだと、彼女は注意深く指摘した。それだけではなく、たとえば公民権運動の時には不可能だったやり方で、現代の技術を駆使することができるのだ。

彼女はMillion Dollar Hoodでの経験から、偽のデータによって裏打ちされて来た人種差別主義者や階級主義者の政策によって、歴史的に差別されたり標的にされたりしてきた地域社会の中に、状況を逆転させることに対する真剣な関心があることを知っている。

「私たちが会議を開くと、データ分析やデータサイエンスを学びたい黒色や褐色の肌の学生たちが、部屋に詰めかけて廊下にまであふれているのです」と彼女はいう。「そのドアを開放することもこのプロジェクトの一部です。最も影響を受けた人をその会議室に連れてくると、学生たちのデータの見方が変わり、異なるストーリーを見るようになってくるのです」。

アーカイブは完全に公開される予定だが、どのような文書が含まれるのか、どのように分類され、記述されるのかなどに関する正確な範囲はまだ検討中だ。その詳細がどうであれ、このアーカイブは、ライトル・ヘルナンデス氏が期待する変化が始まるにつれて、今後数十年にわたって学生、研究者、そして好奇心旺盛な一般の人々にとってかけがえのない貴重なものとなることは間違いないだろう。

カテゴリー:パブリック / ダイバーシティ
タグ:UCLA犯罪

画像クレジット:Joseph C. Justice Jr.

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(文:Devin Coldewey、翻訳:sako)