広告費詐欺防止サービス提供のCheqが約17億円調達

アドフラウド(広告費を騙し取る詐欺)防止と安全な環境での広告掲載のサービスを展開しているスタートアップCheqがシリーズBで1600万ドル(約17億円)を調達した。

同社が昨年シリーズAで500万ドル(約5億円)を調達したとき、CEOのGuy Tytunovich(ガイ・ティテゥノビッチ)氏は、広告掲載後の詐欺やその他の問題について語るのではなく、彼が言うところの「広告認証のための第1世代のソリューション」とCheqのアプローチを比較した。そして「Cheqはよりプロアクティブであり、リアルタイムに展開されている広告をブロックできる」と話した。

私が11月20日にティテゥノビッチ氏と話をしたときに彼は「このアプローチはCheqの強みとして残っている」と語った。同時に彼は「返金、リベート、補償」により広告主たちが過去にさかのぼって対策を講じることができるようになっていると話した。なので彼はCheqの精度に以前にも増して注力している。

「単なるキーワードに頼らず、Cheqは1200件もの異なるファクターを調べて、例外を見つけ出したり、詐欺を働く側がどこで悪事を働いているのかを探す」とティテゥノビッチ氏は語った。単なるキーワードというのは、例えば「(バスケットボール選手の)LeBron Jamesが(レブロン・ジェームズ)、昨夜ゲームを決めた」といった、どちらかというと無害な記事に広告を掲載するのは適切でないといった内容を指す。

また「私たちはJavaScriptにおけるあらゆる痕跡を調べる。誤った正誤につながることがないよう極めて慎重に判断している」とも付け加えた。

そしてティテゥノビッチ氏は、広告主が今年230億ドル(約2兆5000億円)もの詐欺被害にあったとするCheqの最近レポートを引き合いに出しながら、この問題に多くの企業が取り組んでいるにもかかわらず詐欺は増え続けていると指摘した。

「日々、賢くなる必要がある。私たちは明らかにアドフラウドという問題を抱えている。洗練されたさまざまなタイプのフラウドだけでなく、時間が経つにつれ組織犯罪的なアドフラウドが増えてきている。詐欺を行う側からすれば素晴らしい手法だが、よく考えると恐ろしいことだ」と彼は語る。

今回の資金調達はシリーズAも主導したBattery VenturesとMizMaa Venturesがリードした。MizMaa Venturesはイスラエルの企業で、投資する前から「かなりサポートしてくれた」とティテゥノビッチ氏は語る。Cheqはまた、コネクテッドTVやコンソールゲーミングのような新エリアにも守備範囲を広げつつある。

究極的には、Cheqが「インターネットの免疫システム」になることをティテゥノビッチ氏は願っている。これはアドフラウドを検知するだけでなく、フェイクニュースやフェイクニュースに広告がいかに関わるかなど、デジタル広告を悩ます全てのものに対するソリューションとなることを意味している。

画像クレジット:Bryce Durbin / TechCrunch

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(翻訳:Mizoguchi)

“広告詐欺”なくし業界の健全化へ、アドフラウド対策ツールのPhybbitが3.2億円を調達

アドフラウド対策ツール「SpiderAF」を提供するPhybbitは11月21日、三菱UFJキャピタル、日本ベンチャーキャピタル、アコード・ベンチャーズ、Darwin Venturesの4社と個人投資家で元マイクロソフトの中島聡氏を引受先とした第三者割当増資により総額3.2億円を調達したことを明らかにした。

同社にとっては昨年4月に6500万を調達して以来となるシリーズAラウンドでの資金調達となり、さらなる事業拡大に向けた人材採用と新規顧客獲得のためのマーケティング強化を進めていくという。

Phybbitが開発するSpiderAFは、不正な手法によって広告のインプレッションやクリック、コンバージョンを水増しして広告報酬を詐取するアドフラウド(広告詐欺)の対策ツールだ。自力でやるには膨大なリソースと知見が必要とされる業務を自動化することで、誰でも簡単にアドフラウド対策を実施できることを目指している。

一口にアドフラウドと言っても、複数の端末を用意した上でボットを使って大量のクリックやCVを人為的に作ったり、オーガニックユーザーのクリックやCVの成果を奪ったり(オーガニック喰い)などその手法は幅広い。

近年は手口の高度化も進み、インターネット広告市場の拡大と共に被害もさらに深刻化している状況。2022年までにグローバルでのアドフラウドの被害額が4.4兆円になると予測するような調査レポートもある。

広告を配信する事業者にとっては本来もっと有効に使えたはずの広告費が知らないうちに無駄になってしまっている(だまし取られている)ので早急に解決したい課題ではあるが、そのためにはアドフラウドへの深い理解や大量のデータを解析するスキルとリソースが必要になり自力でやるのは大変だ。

前回紹介した通り、SpiderAF自体もそんな課題に直面するアドテク事業者の声から生まれた。かつてPhybbitがデータ解析や開発の受託事業をやっていた際に、複数のアドテク企業から「月々数10~100TBを超える広告データのクレンジングや分析に膨大な時間がかかる」「不正アカウントを排除できても、別アカウントから再度攻撃されるのでいたちごっこになる」という悩みを聞いたのが開発のきっかけだ。

SpiderAFでは、広告ログを解析してその中から異常なものを抽出し、広告出稿先のサイトを目視でチェックするという“従来担当者が属人的に行なっていた一連の作業”を自動化。アドフラウド対策の負担を減らすとともに、検知の精度を上げる。

利用企業は普段使っているアプリ計測ツールと連携させておけばOK(アプリでなくweb広告主の場合はサイトにタグを設置する)。後はSpiderAFに搭載されているAIが自動で広告ログの収集、クレンジング、分析を行った上でメディアごとにアドフラウドの疑わしさをスコアリングして見える化する。

ダッシュボード上では総合的なフラウドスコアだけでなく、デバイスやOS、言語設定など細かいカテゴリーごとのスコアも算出。そのスコアになった判断基準もチェックすることが可能だ。

Phybbit代表取締役の大月聡子氏によると、たとえばアドフラウド判定の1つに類似性のチェックがあり、似た振る舞いのサイトを全て抽出するといったことも自動で対応できる。SpiderAFではルールベースで抽出するスコアだけでなく、機械学習によるMLスコアも開発中。これについてはまだ精度が十分ではないので現段階では一部のユーザーのみに試験的に提供している段階とのことだった。

この領域ではIntegral Ad ScienceやMomentumなど国内外で複数の事業者がサービスを展開しているが、有力なプレイヤーはナショナルクライアントなど広告予算の大きな企業にフォーカスしているものが多いというのが大月氏の見解。もう少しライトに活用できるアドフラウド対策ツールのポジションは空いているという。

SpiderAFの場合はリアルタイムのデータ解析に対応していないため事後対策の色が強くなるものの、その分金額を抑えるとともに高い精度も期待できる。

たとえば国内向けのサービスなのに言語設定が外国語になっていたり、そもそも海外でしか販売されていないデバイスからクリックやインストールが発生している場合、単発ではありえても頻繁に行われていればアドフラウドの可能性が高い。

これらはリアルタイムに逐一分析するのではなく、ある程度まとまった情報を事後的に分析することで検知しやすくなる。上述した類似性の分析も含めて、検知率の高さと透明性の高さ(判断基準の見える化による)がSpiderAFの特徴だ。

また大きなアップデートとして昨年12月から国内の大手ネットワーク各社が自社で収集したアドフラウドリストを共有する「SHARED BLACKLIST」をスタート。参画する企業がそれぞれのブラックリストをシェアすることで、1社だけでは把握しきれないアドフラウドにも事前に対策できる仕組みを作った。

現在は上述した機能などをミニマム月額9万円からのSaaSプロダクトとして、アドネットワーク事業者や広告主となる事業者など約50社へ提供。MRR(月間経常収益)も1年半前の前回調達時に比べて10倍近くになっているそうだ。

公式サイトで詳しく紹介されているが、一例としては「広告出稿費の約55%となるおよそ600万円分をアドフラウドとして一ヶ月で検知した事例」や「半年間で約19%となるおよそ1100万円をアドフラウドとして検知した事例」などがあるそう。

これらはそれぞれ請求から除外されているので実際にその金額分の被害にあってるわけではないが「それらのお金をもっと効果のいい広告にふることができて、当初の期待以上のユーザー獲得ができた」という点に価値を感じてもらえているという。

Phybbitでは今回調達した資金も活用して、引き続きプロダクトのアップデートを実施していくとともにセールスやマーケティングにも投資を行い事業を拡大していく方針。まずは広告業界の健全化を目指してアドフラウド領域に注力するが、ゆくゆくはサイバーセキュリティ分野のスタートアップとしてラインナップの拡充なども計画しているようだ。

アドフラウド対策ツール提供のPhybbitが6500万円を調達、検出を自動化し担当者の負担を削減

クリックやインストールを不正な方法で作り出し、広告収益を得るアドフラウド。人工的ないしbotを使って広告費を搾取するこの手法は「広告詐欺」などとも呼ばれ、広告主や広告配信事業者を悩ませている。

そのアドフラウド検出における業務を自動化・可視化することで、アドフラウド対策の敷居を下げる「SpiderAF」。同サービスを提供するPhybbitは4月17日、大和企業投資フリービットインベストメント、川田尚吾氏、佐伯嘉信氏を引受先とする第三者割当増資資により6500万円を調達したことを明らかにした。

調達した資金をもとにSpiderAFの営業やサポート体制の強化、マーケティングの強化を進める方針だ。

多様化するアドフラウド、近年はアプリ広告がターゲットに

冒頭でも触れたように、ネット広告の課題としてアドフラウドが取り上げられるシーンが増えてきた。Phybbit代表取締役の大月聡子氏によると、近年ではアプリ広告に対する不正行為が目立つという。

「アドフラウドの手法もどんどん多様化している。アプリ広告ではインストール単価が1000円を超えるものなどもあり高額。その一方で新しい手法ということもあり対策が十分に進んでいない」

「ばらつきはあるが、平均して(配信した広告のコンバージョンの)1〜2割はアドフラウド。条件によっても大分変わるが、海外でも2割くらいになっている」(大月氏)

広告配信事業者としては、月々数10~100TBを超える広告データを担当者が逐一分析するというのは難しい。加えて巧妙なアドフラウドに対応するには、相応のノウハウも必要になる。仮に不正なアカウントを発見できたとしても、アカウントを変えて再び不正を受ければ毎回同じ作業を続けなければならない。

このように担当者がアドフラウドに人力で対応するには、かなりの時間とナレッジが必要になりハードルが高かった。

アドフラウドの検出を自動化し対策にかかる負担を削減

SpiderAFはそんな業務を自動化し、非エンジニアでもアドフラウド対策をできるようにサポートするサービスだ。配信された広告のログを自動で収集、解析するとともに広告が配信されたサイトのコンテンツを監視する。これらを不審なIPなど独自のブラックリストと照合し、広告出稿先ごとにスコアを付与。この数値が高くなるほどアドフラウドの可能性が高くなる。

現在PhybbitではWeb広告用の「SpiderAF for web」とアプリ広告向けの「SpiderAF for app」を提供。たとえばSpiderAF for appではスコアの他にインストール件数、データセンター経由の有無、端末の種類なども確認できる。

「一定数のインストールがあっても、それが全てデータセンターからきていれば人間がインストールしていないことがわかる。ほかにも日本国内で販売されていない端末がインストールの大半を占めている場合、国内向けのアプリなのに言語設定が英語になっていたり文字化けしていたりする場合はアドフラウドのケースが多い」(大月氏)

この広告枠から発生しているインストールの端末言語設定では、多くが文字化けと英語で、日本語は1件だけ。これは海外のクリックファームによる不正の可能性がある。

SpiderAFではこれらの作業を自動化しつつ、スコアリングのブラッシュアップにはAIも活用。スコアが低い場合などは人間が目視で確認、フィードバックを重ねていくことで学習し、スコアリングの精度を向上させていく。

競合プロダクトにはリアルタイムでデータを解析するものもあるが、SpiderAFでは、蓄積されたデータを用いてアドフラウドを判定している。もちろんリアルタイムにアドフラウドを検出できるに越したことはない。だが、一定期間のデータをまとめて解析しないと検出しにくいアドフラウドがあるからだという。また、コスト面でもリアルタイム検出に比較して安価に提供できるとしている。

「広告をクリックしてからアプリストアに接続後、インストールして起動する。その間がわずか10秒しかかかっていない場合などもあるが、これは明らかにおかしい。最近では夜は寝ているかのように偽装したりなど、不正の手口が高度化していて判別が難しくなってきている。ただ1ヶ月など一定のスパンで解析してみると、実は5秒おきにクリックしていることがわかるなど、怪しい挙動を判別できる」(大月氏)

この広告枠の例では、6秒ごとにクリックが発生しているのを確認できる。このような周期的なパターンは、ボットなどによる不正なクリックだと考えられるという。

2018年内に50社、2019年内に200社の導入を目指す

今後の方向性としては特にSpiderAF for appの拡大に力を入れていく方針。これまでは広告配信事業者向けに提供を進めてきたが、これからは広告主向けのサービス展開も強化する。

Phybbitは2011年の設立。大学院で原子物理学の研究をしていた大月氏が卒業後に仲間とともに立ち上げたスタートアップだ。当初は受託開発に取り組んでいたが、アドテク企業のデータ解析や開発を引き受けていた際に、アドフラウドの課題を知ったそうだ。

それまで属人的に行っていた広告ログの解析、異常値の抽出作業をシステム化したところ、反響があったために製品化。2017年6月にSpiderAF(現在のSpiderAF for web)を、2018年2月にSpiderAF for appをリリースしている。Phybbitでは引き続きプロダクトの改良を重ねながら2018年内に50社、2019年内に200社の導入を目指すという。

広告価値の価値を下げる「アドフラウド」検知スタートアップのMomentum、Syn.ホールディングス傘下に——評価額は約10億円

Momentum 代表取締役社長の高頭博志氏(左)、Syn.ホールディングス 事業戦略本部 グループ事業戦略室 室長の野本遼平氏(右)

ネット広告において、実際に人がその広告を見るのではなく、ボットなどを利用してインプレッションやクリックを発生させ、広告本来の価値を毀損する「アドフラウド(不正広告)」。

このアドフラウドの検知・排除ソリューションを提供するスタートアップのMomentumがKDDIにグループ入りした。KDDIグループのSyn.ホールディングス(Syn.)は7月25日、Momentumの株式を取得し連結子会社としたと発表した。Momentumは2015年5月にSMBC ベンチャーキャピタル、みずほキャピタル、VOYAGE VENTURES、GMOベンチャー通信スタートアップ支援などから資金を調達したのち、2016年7月にVOYAGE GROUPの連結子会社となっていた。VOYAGE GROUPはMomentumの3156株(20.45%)を所有。2億1200万円でSyn.に譲渡している。この数字をもとにした評価額は約10億3667万円となる。

Momentumは、アドフラウドソリューション「BlackHeron」、ブランドセーフティーソリューション「BlackSwan」を提供するスタートアップ。以前も紹介したとおりだが、Black Heronは、IPやブラウザの特徴など約90種類の判断基準でアドフラウドをスコア化。これをアドネットワークに提供することで、不正な広告出稿を防ぐ。またBlack Swanは、アダルトサイトやネガティブな内容のサイトなど、ブランドの価値毀損が起こる可能性のあるサイトへの出稿を防ぐという。

Syn.ホールディングスの中核会社となるSupershipでは、ネット広告事業を展開しているが、今後Momentumをグループ傘下とし、自社サービスと連携させることで、広告主の課題解決を実現するとしている。