SoftBankとアブダビMubadala、新ファンド組成でさらに関係緊密化

日本のテクノロジー・コングロマリット、SoftBankとアブダビの国営ファンド、Mubadalaの関係は以前から密接かつ入り組んだものだったが、これがさらに強化されるようだ。

Financial Timesによれば、 Mubadalaがヨーロッパのスタートアップを支援するために立ち上げた4億ドルのファンドの半額についてSoftBankが出資にコミットしたという。

ベンチャーに投資に関心を持つ読者なら2017年にSoftBankが組成した巨大なVision FundにMubadalaが150億ドルの出資をコミットしたことを思い出すかもしれない。その直後、 Mubadalaはサンフランシスコにオフィスを開設し、同時に初期段階のスタートアップに投資する目的の4億ドルのファンドを組成した。SoftBankはこのファンドにも出資している。

この協力関係は合理的と見られていた。少なくとも理論的には、MubadalaのファンドはSoftBankが通常気付くくより早くシリコンバレーのスタートアップ業界で何が起きているかについて知り、その情報をSoftBankに提供できるはずだ。この動きはまた、MubadalaがVision Fundに投資した資金の動きを監視するにも好都合だ。

しかし今回の欧州向け新ファンドはいくつかの懸念を招いている。Finacial Timesは新ファンドが組成されたタイミングを「異例」と書いている。これはSoftBankの負債が1540億ドルに上る現状を指している。またFTの情報源は新ファンドは「SoftBankのテクノロジー投資が増大することによってMubadalaのVision Fundへの影響力も増大する仕組みであることをはっきりさせた」と述べている。

そうではあってもSoftBankにはアブダビとの関係をますます深める以外選択肢はなかったようだ。SoftBankの孫正義CEOは、今月これに先立って、「Vision Fundは990億ドルの資金のうち500億ドルをすでに投資している」と述べた。現在までの投資ペースからすると(先週には10億ドルをたった1社に投じている)、残る資金は2020年末までもたないことになる。

一方その一方で、Vision Fundに450億ドルをコミットして最大の投資家となっているサウジアラビアとSoftBankとの関係がかつてのように良好なものであるかどうかは明らかでない。SoftBankはVison Fund 2においてもサウジに最大の投資家となることを期待していた

昨年の10月3日にBloombergの記者がサウジのモハメド・ビン・サルマン皇太子(通称MBS)にインタビューしたとき、MBSは「Vision Fundにさらに450億ドルをコミットする用意がある」と述べていた。しかしインタビューの5日前にサウジ国籍の反体制派活動家、ジャマル・カショーギがイスタンブールのサウジ領事館に入ったのを最後に消息を断っていた。この後、カショーギの失踪とMBSの関与に国際的な注目が集中することになる。ビジネスリーダーの多くはサウジが10月中旬にリヤドで開催を予定していたカンファレンスへの参加をキャンセルした。孫正義CEOもその1人だったが、ファンドへの影響を考えたのか、イベンドの前日にリヤドを訪問して密かにMBSと会談している。

このキャンセルがMBSを怒らせたかどうかは不明だ。 その後CIAがカショーギの殺害を命じたのがMBSだと結論したこと、またこれに伴って国際的な非難がサウジに向けられたこと、などがSoftBankの資金集めにどんな影響を与えたかも分かっていない。

孫CEOは「さらにサウジから資金を得るつもりがあるかどうか?」という問題に答えることを避けた

その頃、SoftBankはMubadalaと協力してヨーロッパのスタートアップに500万ドルから3000万ドルの投資をするためのファンドを組成しようとしていると報じられた。

前述のサンフランシスコ・チームの役割と同様、新ファンドはVision Fundの資金をヨーロッパに流すパイプの役割を果たし、Mubadalaのチームが有望なポートフォリオを発見することが期待されている。

Mubadalaのヨーロッパ・ファンドはロンドン・オフィスをベースとして運営されるはずだ。Vision Fundは現在ロンドンに本社を置いておりサンフランシスコにもオフィスがある。近く上海、北京、香港にもおフォスをオープンさせる予定だ。

原文へ

滑川海彦@Facebook Google+

Hyperloop One、湾岸諸国で120億ドルの運輸市場を狙う

今日(米国時間3/28)、アブダビで開催されたGMIS (Global Manufacturing and Industrialisation Summit)でHyperloop Oneは中東における同社のビジネスモデルについて詳しい説明を行った。このプレゼンによれば、同社は湾岸諸国で年間350億ドルの市場がある貨物輸送のうち120億ドル分を代替できると考えている。これには70億ドルの航空貨物ビジネスのすべてが含まれている。

120億ドルというHyperloop Oneのターゲットの内訳は、航空運輸の100%の70億ドル、陸上運輸の22%の30億ドル、海上運輸の13%の20億ドルだ。

このサミット・カンファレンスの一環としてHyperloop Oneは新しいHyperloop Oneパートナー・プログラムを発表した。このプログラムは政策決定、技術革新、市場動向、コンサルティングなど各分野からさまざまな企業や人材をパートナーに加えて運輸事業における専門的な知見や助言を得ることができる仕組だという。

最初の商用Hyperloop路線、アブダビ=ドバイ線は依然として検討中の段階だが、約束どおりに事業が進展するのであれば、湾岸諸国に足場を築いたことは有望な一歩といえるだろう。今日Hyperloop
Oneが描いたビジョンが実現し巨大な新マーケットが現れる可能性にとって追い風となったにちがいない。

[原文へ]

(翻訳:滑川海彦@Facebook Google+