“アクション促す動画”で動画マーケに変革を、インタラクティブ動画編集SaaSのMILが1.3億円を調達

SaaS型のインタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を提供するMILは10月15日、SMBCベンチャーキャピタル、マイナビ、フォーイットを引受先とした第三者割当増資により、約1.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社にとっては昨年8月に融資も含めて総額8000万円を調達して以来、約1年2ヶ月振り。今回集めた資金を活用してプロダクトの機能強化や新アプリの開発、アドネットワークなど配信面の拡張を進めるとともに、人員体制の強化に取り組む。

動画をインタラクティブにすることで一歩進んだ視聴体験を

MILはPRやマーケティングに活用する動画を簡単に“インタラクティブな動画”へと変換できる編集ツールだ。大雑把に言うと「動画内にタグを埋め込むことで、視聴者に何らかのアクションを促す」動画を簡単に作れる。

たとえば動画に映っているコスメや服をクリックすると商品詳細がポップアップ形式で表示されるようにしたり(購入ページへ誘導することもできる)、採用PR用の動画にでてくる社員をクリックするとその人にフォーカスした別の紹介動画に遷移するような仕掛けを作ったり。一般的な動画のようにただ再生してもらうだけではなく、視聴者に行動を促すことで一歩進んだ体験を提供できる点が特徴だ。

Webメディアの記事中にインタラクティブ動画を差し込んだ事例。動画内で子どもが着ている服にタグを付けておき、視聴者がクリックすると商品の概要がポップアップで表示されるようにしている。「詳しく見る」をクリックするとECサイトの商品ページへ遷移する

使い方としては、まずベースとなる素材動画を用意した上でMILの管理画面からタグを付けたい場面と該当箇所を選択し、ポップアップの作成など視聴者が実際にクリック(タップ)した際に起こる変化を設定していく。

用途はポップアップで詳細を表示するだけにとどまらない。ユーザーの選択によってその後のストーリーが異なる「ストーリー分岐」の仕掛けを取り入れることもできるし、動画内にアンケートや応募フォームを設置したり、電話番号をタップすればそのまま電話できる「電話リンク」を埋め込むことも可能だ。

レシピ動画×ストーリー分岐の事例。「豚肉」「鶏肉」「牛肉」の3つの選択肢が提示され、ユーザーが何を選ぶかで次に表示されるレシピが変わる

動画マーケティングで効果的なPDCAを回せる仕組みを確立

純粋な動画をインタラクティブ動画にすることで何が変わるのか。MIL代表取締役の光岡敦氏は「動画マーケティングにおいて効果的にPDCAを回せるようになることで、コンバージョン(CV)の増加が期待できる」と言う。

動画をインタラクティブ化することで視聴数や視聴完了率といったデータはもちろん、視聴者がどのリンクをクリックしたのか、最終的にCVに至った視聴者はどんな行動をとっていたのか(どの導線がCVに貢献したのか)といった数値も浮かび上がってくる。

現在MILでは動画アドネットワークとの連携を通じて、自社サイトだけでなく「外部の面」にインタラクティブ動画を配信できるような動きを強化しているところ。これによって媒体ごとに「このメディアのユーザーは積極的にアクションしている」といった結果もわかるという。

インタラクティブ動画の場合、改善の仕方は大きく2パターン。元となる動画クリエイティブ自体を変えるほか、同じ動画を基にMILを使ってタップできる場所を増やしたり、表示される内容を調整することで「WebサイトのABテスト」のような感覚で効果検証を重ねることができる。

「動画は取得できる数値がかなり限られているため、これまで振り返りが難しく結果的に納品ゴールになりがちだった。MILを使うことでちゃんと振り返りができて次の施策に活かせたり、施策を試している中でレポートの結果をみながらスピーディーにアウトプットを変えたりもできる。この点はこれまでの動画マーケティングでは実現できなかったことであり、顧客からも評判がいい」(光岡氏)

光岡氏によると、これまでは採用や商品のPR(動画コマースの文脈)での利用が特に多いそう。2017年12月のリリースから2年弱、2019年9月末時点で登録アカウント社数は433社、インタラクティブ化された動画は累計1200本を超える。

現在は月額3万円からの定額モデルで提供。8月からは1000視聴まで無料で外部公開ができるトライアルプランも始めた。

今後は今回新たに株主になったマイナビとは採用領域を中心に、フォーイットとはアフィリエイト領域で連携しながら事業を強化する計画。「(この市場では)ある程度リソースをかければ伸びることがわかってきているので、インタラクティブ動画の市場を一緒に作っていきたい」(光岡氏)という。

そのほかプロダクトの機能強化に加えてコンシューマー向けのアプリ(広く一般層向けにというよりは、インフルエンサーやアフィリエイター向けとのこと)の開発なども進める予定。中朝的にはMAツールを始め外部サービスとの連携などにも取り組むことで、MILをハブにインタラクティブ動画を通じて実現できることを広げていく方針だ。