食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが20億円で組成完了

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地の投資子会社Future Food Fundが運営するフードイノベーション領域特化CVC(コーポレートベンチャーキャピタル)ファンド「Future Food Fund 1号投資事業有限責任組合」(FFF1号)は12月14日、食品業界以外の業界からの応募を含め総額20億円に到達、2020年12月をもって組成完了したと発表した。

FFF1号は、日本の食文化や食品業界の発展への貢献を視野に入れ、食領域に特化したスタートアップ企業を中心に投資する目的をもって設立。新たに西松建設、コメダホールディングス、国分グループ本社、オレンジページ、セブン&アイ・ホールディングスより出資を受け、募集を完了した。

FFF1号は、食領域に特化したファンドとしては日本国内で初の設立であること、リミテッドパートナー(LP)が14社加入したことから、多種多様な業界が食領域への関心を高く持っている結果と考えているという。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

投資先の企業に対しては、LPとして参加する事業会社のプラットフォームを最大限に活用し、継続的な幅広い実行支援により、エコシステムを構築。スタートアップの持つ新技術や新サービスをより早く実用化・事業化していくことを目指す。

ファンド立ち上げからの実績としては、投資先企業の商品の販売やマーケティングサポートなどをすでに数社へ実施。投資先企業には、サブスクリプションで離乳食販売事業をしているMiL、畜産業にAI技術を用いているFarmnote、素材や製法にこだわったクラフトアイスクリーム製造事業をしているHiOLIなどがある。

これらの企業は、食領域における社会課題に取り組む事業を展開しているスタートアップ企業が中心。投資以外にも、企業間の連携や販売サポートなど様々な形での連携に取り組んでいく。

食領域特化のCVC「Future Food Fund」1号ファンドが総額20億円で組成完了

オイシックス・ラ・大地は、有機・特別栽培野菜、添加物を極力使わない加工食品など安心・安全に配慮した食品の宅配サービスを「Oisix」(おいしっくす)、「らでぃっしゅぼーや」「大地を守る会」の3ブランドで展開。

Oisixでは2013年7月に、必要量の食材とレシピがセットになった、主菜と副菜の2品が20分で完成するミールキット「Kit Oisix」を販売。2020年10月時点で、シリーズ累計出荷数は6500万食を突破した。

同社は「これからの食卓、これからの畑」を理念に掲げ、食に関する社会課題をビジネスの手法で解決する事業を推進していくとしている。

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安定志向だった私が共同創業者に、ヘルスケア×フードテックの可能性

カテゴリー:VC / エンジェル
タグ:食品(用語)農業(用語)ファームノートFuture Food FundMiL日本(国・地域)

安定志向だった私が共同創業者に、ヘルスケア×フードテックの可能性

D2Cベビーフード「the kindest」の販売・製造、ヘルスケアに特化した創作レストラン「 西麻布」の運営を手掛けているMiL自分らしい人生を食から実現するをミッションに2018年、夫婦の杉岡侑也氏、杉岡千草氏、シェフの3名で創業したフードテック企業だ。

the kindest20194月の販売開始以降、20203月末までに販売実績14万食を突破し、累計約3.3億円の資金調達を実施。現在、新商品の開発も進んでいる。保育士兼介護士のキャリアを経て経営の世界に飛び込んだ杉岡千草氏に、フードテックで起業した経緯や夫婦経営のメリットについて話を聞いた。

介護・保育現場から見えてきた「食の課題」

杉岡千草氏は幼稚園教諭・保育士資格・介護福祉士・食育アドバイザーなど複数の資格を保持。保育士兼介護士として7年弱、障害を持つ子供の世話に携わってきた。

「起業のきっかけは、障害を持つ子供のいる家庭に食事による健康課題が多くあること。例えば、知的障がいがあり白い食べ物しか口にできなかったり、脳に障がいがあり運動することができず栄養バランスが崩れてしまっている子がいるんです。さらに、そのような子供に食生活を合わせている家庭は、家族もきちんと栄養を摂れていないことも課題になっていました。

「この状況を改善できないか」と考えていたときに友人に誘われて参加した料理教室で、油や砂糖などの調味料を一切使用せず野菜本来の素材だけで調理する料理法に出合いました」。

食品添加物を使わず無添加の素材にこだわった食事を提供できれば、障がいのある子供だけでなく、家族も心身ともに健康を手に入れられるのでは。そう考え、同じく食に興味を持っていた夫の杉岡侑也氏とシェフとともに起業。ヘルスケアに特化したレストランをオープンすることに。

夫婦経営は「お互いの作業量が見えるので精神的なフォローをしやすい」

夫の杉岡侑也氏は20代ながら2社の起業経験がある。経営の先輩としての頼もしさはあるが、仕事とプライベートとの線引きがあいまいになることに不安はなかったのだろうか。

「私は安定志向で起業するタイプではなかったんです。でも彼の行動力と決断力があればなんとかなるかもしれないと思い、一緒に創業する道を選びました。お互いに収入がわかっているのでヘソクリではできないけれど(笑)、どれくらい忙しいか目に見えてわかるので、精神的なケアがしやすいのは夫婦経営で良かった点ですね。

それに彼自身、上下関係を作りたくないという考えなので、夫婦ではなく「1メンバーとして言い合える関係を築いています。彼の思想や常に一緒にいる環境も相まって、事業に関する意思決定スピードは速いように感じます。昔も家族で商売をしてる時代があったので、今の時代に夫婦経営や家族経営があっても不思議ではないと思います

レストランで提供していたメニューをもとにベビーフードを開発

まずは自分たちの技術を認めてもらうための「体験できる場」として、ヘルスケア創作レストラン「倭 西麻布」を2018年にオープン。

「メニューにもこだわりたかったので、開発に時間を要しました。野菜・魚・肉、それぞれで調理法を変えたりと、どのようにおいしさと健康を両立させるかをシェフと趣向を凝らす日々。起業準備からクラウドファンディングで開業資金を募るまでに1年くらいかかりました」。

レストランが軌道に乗り始めた2018年末、メニューとして出していたにんじんのピューレを食べたお客様から「子供のにんじん嫌いが治った」という声を聞き、ベビーフードとしてプロダクト開発することに。

the kindestは、小児科医、管理栄養士、シェフ監修のもと、子供が取りづらい鉄分や亜鉛、ビタミンDなどの栄養素が入ったベビーフード。

そのまま食べることも、アレンジすることも可能。味は23種類あり、「にんじんのピューレ」「シラスと白いんげんの和え物」「鶏ささみと野菜のあんかけ」などバリエーションが多く月齢に合わせていたりと、飽きないようにしているのもポイントだ。サブスクリクション型でも販売しており、金額は月11980円で20食。販売実数は20203月末時点で14万食を突破している。

「ユーザー獲得はマス向けに展開しており、フォロワー12000人のインスタグラムと登録者約8000人のLINE@がメイン。さらにテレビや雑誌などでありがたいことに露出が増え、『孫に送りたい』というおじいちゃん・おばあちゃん層からのギフトニーズも増えています」。

一家に1つ、MiLの商品が食卓に

518日には初の子供向けおやつであるソフトクッキーの販売も開始。今後の事業展開を聞いた。

「『倭 西麻布』は現在、新型コロナウイルス感染拡大による自粛で予約人数を減らしたり、デリバリーやテイクアウトがメイン(2020611日現在)。店舗経営とプロダクト開発の両立が理想ですが、今は後者に力を入れています。

商品ラインはベビーフードとおやつがメインですが、今後は1歳以降のお子さま向けやこれからママになる人に向けた商品も開発していきたい。家庭に1つはMiLの商品があるという世界を目指しています」。

“アクション促す動画”で動画マーケに変革を、インタラクティブ動画編集SaaSのMILが1.3億円を調達

SaaS型のインタラクティブ動画編集プラットフォーム「MIL」を提供するMILは10月15日、SMBCベンチャーキャピタル、マイナビ、フォーイットを引受先とした第三者割当増資により、約1.3億円の資金調達を実施したことを明らかにした。

同社にとっては昨年8月に融資も含めて総額8000万円を調達して以来、約1年2ヶ月振り。今回集めた資金を活用してプロダクトの機能強化や新アプリの開発、アドネットワークなど配信面の拡張を進めるとともに、人員体制の強化に取り組む。

動画をインタラクティブにすることで一歩進んだ視聴体験を

MILはPRやマーケティングに活用する動画を簡単に“インタラクティブな動画”へと変換できる編集ツールだ。大雑把に言うと「動画内にタグを埋め込むことで、視聴者に何らかのアクションを促す」動画を簡単に作れる。

たとえば動画に映っているコスメや服をクリックすると商品詳細がポップアップ形式で表示されるようにしたり(購入ページへ誘導することもできる)、採用PR用の動画にでてくる社員をクリックするとその人にフォーカスした別の紹介動画に遷移するような仕掛けを作ったり。一般的な動画のようにただ再生してもらうだけではなく、視聴者に行動を促すことで一歩進んだ体験を提供できる点が特徴だ。

Webメディアの記事中にインタラクティブ動画を差し込んだ事例。動画内で子どもが着ている服にタグを付けておき、視聴者がクリックすると商品の概要がポップアップで表示されるようにしている。「詳しく見る」をクリックするとECサイトの商品ページへ遷移する

使い方としては、まずベースとなる素材動画を用意した上でMILの管理画面からタグを付けたい場面と該当箇所を選択し、ポップアップの作成など視聴者が実際にクリック(タップ)した際に起こる変化を設定していく。

用途はポップアップで詳細を表示するだけにとどまらない。ユーザーの選択によってその後のストーリーが異なる「ストーリー分岐」の仕掛けを取り入れることもできるし、動画内にアンケートや応募フォームを設置したり、電話番号をタップすればそのまま電話できる「電話リンク」を埋め込むことも可能だ。

レシピ動画×ストーリー分岐の事例。「豚肉」「鶏肉」「牛肉」の3つの選択肢が提示され、ユーザーが何を選ぶかで次に表示されるレシピが変わる

動画マーケティングで効果的なPDCAを回せる仕組みを確立

純粋な動画をインタラクティブ動画にすることで何が変わるのか。MIL代表取締役の光岡敦氏は「動画マーケティングにおいて効果的にPDCAを回せるようになることで、コンバージョン(CV)の増加が期待できる」と言う。

動画をインタラクティブ化することで視聴数や視聴完了率といったデータはもちろん、視聴者がどのリンクをクリックしたのか、最終的にCVに至った視聴者はどんな行動をとっていたのか(どの導線がCVに貢献したのか)といった数値も浮かび上がってくる。

現在MILでは動画アドネットワークとの連携を通じて、自社サイトだけでなく「外部の面」にインタラクティブ動画を配信できるような動きを強化しているところ。これによって媒体ごとに「このメディアのユーザーは積極的にアクションしている」といった結果もわかるという。

インタラクティブ動画の場合、改善の仕方は大きく2パターン。元となる動画クリエイティブ自体を変えるほか、同じ動画を基にMILを使ってタップできる場所を増やしたり、表示される内容を調整することで「WebサイトのABテスト」のような感覚で効果検証を重ねることができる。

「動画は取得できる数値がかなり限られているため、これまで振り返りが難しく結果的に納品ゴールになりがちだった。MILを使うことでちゃんと振り返りができて次の施策に活かせたり、施策を試している中でレポートの結果をみながらスピーディーにアウトプットを変えたりもできる。この点はこれまでの動画マーケティングでは実現できなかったことであり、顧客からも評判がいい」(光岡氏)

光岡氏によると、これまでは採用や商品のPR(動画コマースの文脈)での利用が特に多いそう。2017年12月のリリースから2年弱、2019年9月末時点で登録アカウント社数は433社、インタラクティブ化された動画は累計1200本を超える。

現在は月額3万円からの定額モデルで提供。8月からは1000視聴まで無料で外部公開ができるトライアルプランも始めた。

今後は今回新たに株主になったマイナビとは採用領域を中心に、フォーイットとはアフィリエイト領域で連携しながら事業を強化する計画。「(この市場では)ある程度リソースをかければ伸びることがわかってきているので、インタラクティブ動画の市場を一緒に作っていきたい」(光岡氏)という。

そのほかプロダクトの機能強化に加えてコンシューマー向けのアプリ(広く一般層向けにというよりは、インフルエンサーやアフィリエイター向けとのこと)の開発なども進める予定。中朝的にはMAツールを始め外部サービスとの連携などにも取り組むことで、MILをハブにインタラクティブ動画を通じて実現できることを広げていく方針だ。

動画にクリック可能なタグを埋め込み行動促す、インタラクティブ動画のMILが資金調達

インタラクティブ動画の編集ツール「MIL(ミル)」を提供するMILは8月1日、Reality Acceleratorとクリエーティブエージェンシーのトリクルから5000万円を調達したと発表した。同社は日本政策金融公庫から3000万円の借り入れも行なっており、それを含めた調達総額は8000万円となる。

MILが提供するのは、動画のなかに映る人物やモノにタグをつけることでインタラクティブ性をもたせた動画を編集するためのツールだ。ユーザーは動画上に配置されたボタンなどをクリックすることで、例えば動画に映るモノの商品ページに飛ぶことなどが可能になる。

同業他社の編集ツールには広告代理店をメインユーザーとして捉えているものが多いが、MILは例えばスタートアップなどの一般企業でも簡単に使えるようなUI/UXを追求し、価格についてもスタートアップ用プランであれば月額1万円からと安く設定しているという。ユースケースとしては、自社で制作した採用動画にインタラクティブ性を持たせて採用ページに誘導したり、その動画に映る社員をクリックすることで“社員インタビュー”動画を重ねて再生するなどが考えられるだろう。

僕が個人的に面白いと思ったのがこの動画。採用を目的として作成した動画なのだけれど、古き良き時代のアドベンチャーゲームのようなちょっとしたゲーム性も持たせている。ユーザーに3つの選択肢を与え、その答えによってその後の動画が変化する。これを見て、だれか全編動画で制作した本格アドベンチャーゲームを作ってくれないかなと期待してしまった。

インタラクティブ動画がもつメリットについて、MIL代表取締役の光岡敦氏は、「現状では動画広告を通して取れるデータが少なく、それが実際に売上に繋がっているのかが分かりづらいという課題がある。商品ページに遷移させる、クーポンを発行するなど、ユーザーの行動を促すことができるインタラクティブ動画では、売上向上を目的とした動画運用がしやすい」と話す。

2017年12月にリリースのMILはこれまでに150社を超える企業に導入されている。同社は今回調達した資金を利用して、MILの機能拡張や自社アドネットワークによる配信の強化など、重点分野への投資を行うとしている。