アメリカの恥ずべきインフラ事情

私は今日、米国に飛行機で戻ってきた。家に帰るというのはいいものだ。しかしインフラの熱烈なファンとして、私は落胆をひどく恐れている。私はシンガポールとタイで2週間を過ごしたばかりで、昨年は香港と深センを訪れた。そうしたモダンなアジアに比べると、米国のインフラの多くは今やまったく情けないもので、見るに耐えない。

米国は国民1人当たりではタイよりも9倍裕福だ。しかし私は最近のニューヨーク市の地下鉄よりも、バンコクのSkyTrainに乗りたいと思う。また、敵対的で悪夢のようなLAX(ロサンゼルス国際空港)よりもバンコクの古い第2の空港であるドンムアン空港(実際、国内線や格安航空会社のフライトを扱うようになる前は何年も閉鎖されていた)を利用したい。

ピカピカに磨かれていて、メトロノームのように信頼のおける地下鉄や電車、空港を抱える豊かなアジアの国々からアメリカに行くことがどんなものか想像してみてほしい。そうした比較がいかに米国にとって密かな恥となっているかを米国人が理解しているとは、私には到底思えない。もし理解していたら、米国の(そして米国民の)高いプライドが、「何とかしなければ」と突き動かしていただろう。そのかわり、米国の最近のインフラの多くについては、どうしようもなさが浸透している。どうしようもないというのは、より良いものを追い求めるのは非現実的である、という間違った確信だ。

バンコクとロサンゼルスだけではない。たとえば、ボストンの地下鉄と台北を比べてほしい。あるいは、サンフランシスコのごたまぜでメチャクチャな市営鉄道Muni(私はこの鉄道のT-Thirdラインで45分待たされたことがある)、週末は90分おきにしか走らないCalTrain、使い物にならない白いゾウのようなミルブレー駅に何百万ドルも浪費したBARTを、深センと比べてほしい。これは建設された年の問題だけではない。パリの地下鉄は1900年に供用が始まったが、メンテナンスが行き渡ったシステムで運用されていて、絶えず拡大している。

米国人はいまだに、自分たちが他国のお手本だと考える傾向にある。笑ってしまう。過去数年間、誰もソウルや台北、東京、シンガポール、香港、深センなどからニューアーク空港に飛んだことがないのだろう。ニューアーク空港からAirTrainでニュージャージー・トランジット駅に行き、ガタガタ揺れる古い電車で市内に入る。不快感すら与える醜いペン駅を通って地下鉄に行く。頻発傾向にある遅延で待たされ、目的地まで散々な目にあい、ようやくニューヨーク(この国一番の都市だ!)の街中に出られる。それでも米国人は、米国は反例以外のもの、訓話以外の何かだと考えている。

これは交通インフラだけの話ではない。アジアの空港の安全策はより賢明だ。支払いは加速度的に非接触型に、そしてより良いものになっている。多くの場所で、クレジットカード(中国ではなんとか概念として残っている)はゆっくりと消えつつあり、Alipayや、それよりは規模が小さいWeChat Payに取って代わられている(これは特に、旅行者の中で最近急激に増えているのは西洋人ではなく中国人だからだ)。

これは確かにリープフロッグ型発展の例だろう。ただ、それでも米国のインフラは明るい面を持っている。米国の道路はだいたいにおいてまだ素晴らしいものだ。LyftやUberは東南アジアの同業Grabよりも優れている。私は最近の旅行でGrabを利用してみたが、悪名高いタイのタクシーマフィアはいなかったにもかかわらず、いつも通常のタクシーより(三輪タクシーはのぞく)ゆっくりで料金も高かった。少なくとも私のようにT-Mobileを使っていれば、海外でのモバイル接続は素晴らしく、ユーザーフレンドリーで、リーズナブルな価格設定だ。そして追加ボーナスとして、性質上モバイルデータローミングは中国のファイヤーウォールを回避する。

しかし、そうしたことは米国のインフラのほとんどがあきれるようなものであるという事実を変えるものではない。まして、机上では米国ほど豊かでない国と比較した時ですらそうなのだ。他の国々が都市部のインフラに費やしている金は、米国ではインフラではなくどこか別のものに吸い取られている。これは、世界中で最も豊かな国である米国を死につつある帝国のようにしている。ゆっくりと内側から崩壊していて、ひびが目に見えるものになり始めている。

今後、米国はどうなるのだろう。一連の移民政策の失敗。将来への投資の失敗。麻痺した、あるいはイデオロギー的に見識に欠けた、または単に間抜けなガバナンス。そしておそらく一番はコスト病だ(米国で地下鉄1マイルを建設するコストは、パリやソウルの4倍超もする。時としてそれ以上になることもある)。これに対し何ができるのか。米国人にとって最初のステップは、何かができるはずだ、と考えることだと思う。明らかに、何かができるはずなのだ。太平洋の向こうを見てみるといい。

原文へ 翻訳:Mizoguchi)

世界初のスマートハイウエイが中国に建設されるであろう理由

[著者:Hugh Harsono]
元金融アナリストであり現在はアメリカ陸軍士官。

中国は、急速な成長によって、既存のインフラに新技術を統合させるという意味において、世界でもっとも高度な柔軟性を持つ国となりつつある。機関や組織が比較的新しいため、中国では現在の、または将来実現する可能性のある技術を容易に受け入れることができるのだ。自律走行車両とそのための基準が現実化し始め、その技術を支えるためのインフラを、どのようにしたら適切に整備できるのかが考えられるようになった。そこに中国の成功のチャンスがある。変化に強いメカニズムを持ち、こうした新技術を大規模に組み入れる能力があるからだ。そこで、全世界の未来のインフラ計画の基準となるスマートハイウエイやスマート道路が確立されるのだ。

スマートハイウエイとは何か? なぜそれが必要なのか?

「スマートハイウエイ」という言葉の定義は定まっていないが、一般的には、交通用に使われている現在の道路に新しい技術を組み込むものと理解されている。たとえば、統合される技術の一部を挙げるなら、ソーラーパネルから電力を得る機能や、自律走行車両、センサー、構造物保全のための監視システムだ。スマートハイウエイは、各国々における輸送システムの屋台骨としてひとつの機能を提供しているハイウエイを、電力供給、安全のための機能、ドライバーと交通行政の双方に重要なデータを提供するといった付加価値をもたらすインフラに進化させる可能性がある。

Teslaの「オートパイロット」モードで事故を起こし人が亡くなった事件や、Uberの自律走行車両の試験運転中に歩行者を死なせてしまった事件があったが、スマートハイウエイなら安全性を高めるメカニズムを備えられる。自律走行車両とスマートハイウエイのセンサーとソフトウエアが組み合わされたなら、問題を特定して対策することができるはずだ。リアルタイムでフィードバックを送り、安全機能が働いて事故を予防する。少なくとも、ドライバーの怪我を軽減させることが可能だ。ドライバーに単純なコマンドを出すといった程度のことではない。それではヒューマンエラーを誘発しかねない恐れが残る。スマートハイウエイなら、スマートな車両と、センサーや路上に設備された技術を結びつけることで、ドライバーが運転困難な状況に陥った場合でも、完全に安全に対処するさまざまな手段を講じることが可能になる。

自律走行車が世界中に登場しだすと
スマートハイウエイの構想が世界中に広がった

自律走行車が世界中に登場しだすと、スマートハイウエイの構想が世界中に広がった。それに加えて、世界の電力消費量は拡大しており、2040年には電力需要は25パーセント以上高まると予想されている。同時に、化石燃料の消費量は減少し、再生可能エネルギー源の需要が高まる。その点、スマートハイウエイなら、地球上に張り巡らされた長大な道路を無駄なく利用できる。その広大な土地を二重に活用すれば、道路設備だけでなく、周辺の街や都市や、発電所にまでも電力を供給できる可能性がある。スマートハイウエイは持続可能なエネルギーの成長の機会を代表するものだ。重要な設備に電力を供給するだけでなく、その上を走る電気自動車の充電も可能になるだろう。

スマートハイウエイから集められたデータは、都市計画のための統計データとして大いに役立つ。交通の効率化や車両による環境汚染の低減などに寄与するだろう。スマートハイウエイがもたらす恩恵の一例として、車線の合流や高速道路の出入り口といった特異な場所における車の流れのリアルタイム分析が考えられる。それは、交通のボトルネックにおいて車両の停時間をできる限り短縮する、道路を最適化の研究に役立つ。

自律走行車両やその他のスマート技術が登場し、そうしたイノベーションを十分に統合して活用しようと思えば、スマートハイウエイが必然であることは単純な理屈だ。これは人の命を救うツールであり、ドライバーや歩行者の安全を守り、クリーンエネルギーの消費を増やし、持続可能性を高めるものだ。さらに、都市計画、道路計画、交通計画にも貢献する。

スマートハイウエイに使える製品は存在するのか?

スマートハイウエイの部材開発の試みは、数多く行われている。とくに、ソーラー道路やスマート交通インフラに特化した技術研究が多い。その多くは、良い結果と悪い結果の両方を生み出しており、さまざまな問題に直面している。その問題の代表は、実質的な発電効率とコストだ。

2014年10月、オランダはSolaRoad実験プロジェクトを立ち上げ、70メートルの自転車専用道路を建設した。このプロジェクトでは、最初の年で1万キロワット毎時に近い驚くべき発電量を記録した。そこからいくつものプロジェクトが派生し、2019年には交通量の多い道路での実験も予定されている。しかし、このプロジェクトはあくまでもソーラー道路に的を絞ったものであり、周辺地域に再生可能エネルギーを供給するといった、総合的なソーラーハイウエイを目指すものではない。

2016年9月、アイダホ州に本社を置くSolar Roadwaysは、アイダホ州サンディーポイントに14平方メートル近い道路を建設した。ところが、同社から米運輸省への報告書によると、「発電した電力の3分の1が、埋め込まれたLEDの点灯に使われた」とのことだった。これは発電効率に多大な影響を与え、6カ月間の発電量はわずか52.39キロワット毎時という結果を招いた。これがアメリカ国内の他のソーラー道路計画に波紋を広げ、ミズーリ州は、2017年にコンウェイ近くで予定していた計画を中止した。Solar Roadwaysが訴えていた「数々の複雑な行政手続の問題」も原因している。このプロジェクトは、エネルギー生産という点において、コストが高く発電効率は比較的低いという印象を多くの人たちに植え付けてしまった。

2016年12月、Hannah Solarとジョージア州交通省の出資によるWattwayを利用した50平方メートルのソーラーロードを建設し、The Rayが設立された。The Rayは、ジョージア州トループ郡を通る州間高速道路85号線の30キロメートルにのぼる部分をスマートハイウエイ化した。そこには電気自動車の充電ステーション、タイヤの安全確認ステーション、そしてもちろんソーラーロードを備えられ、現在もっとも充実したスマートハイウエイになっている。

さらに、2016年12月、フランスは、Colasというフランスの企業と合同で、およそ1キロメートルのソーラー道路をオープンした。しかし残念ながら、期待に応えることはできなかった。当初の見積もりでは1日あたり1万7963キロワット毎時の電力を生むはずだったのだが、実際には409キロワット毎時しか発電できなかったのだ。この建設と維持のためにフランス政府は数百万ユーロを費やしており、すでにソーラーパネルの5パーセントが破損して交換が必要な状態になっているという。

このように、世界中で行われているスマートハイウエイの試みには、限定的な成功しか収められないものもある。費用、官僚的な行政手続き、実質発電量、持続可能性など、こうしたプロジェクトの成功と失敗を分ける要素は、数多く存在する。

なぜ中国なのか:
インフラ建設の実績、施工の早さ、安定した製造能力

先進国に仲間入りしたい発展途上国である中国ならではの事情により、スマート技術には多大なる導入の好機が与えられている。「モバイル第一」の考え方が、デスクトップ型パソコンを持たない何億もの人々のインターネット利用を推進している中国は、新技術をいち早く、比較的効率的に実用化する能力を示している。そのため、本格的なスマートハイウエイを世界でもっとも早く建設できる国が中国である可能性は非常に高い。しかも中国は、独自のインフラ環境を持ち、新技術の導入に関しては行政手続が比較的柔軟であり、製造とサプライチェーンの基盤が強固で洗練されている。

中国東部の山東省にPavenergyQilu Transportationが建設し、2017年12月にオープンしたソーラー道路は、5875平方メートルという規模で、現在、世界でもっとも長い。今回の場合、中国の道路は固いコンクリート舗装なので、薄いソーラーセルを敷き詰めるのに都合がよかった。アスファルト舗装を採用しているアメリカのハイウエイと異なる点だ。この中国特有のインフラ環境は、ソーラー技術の比較的容易な施工を可能にしている。

さらに中国人は、昔から道路建設に長け、経験も豊富だ。中国国内の長大なハイウエイ網のみならず、中南米アフリカでも数多くの道路建設を行なっている。そこに、インフラ建設の仕事が早いという評判も加わる。57階建の高層ビルを19日間で建てた建設会社の記録もあれば、わずか9時間で鉄道の駅を作ったという記録もある。こうした他に類を見ないインフラ建設技術を考えると、世界初の本格的スマートハイウエイを建設するには、中国が理想的な場所と言える。

スマートハイウエイの建設においては
中国の製造業の力も成功の鍵となる

新技術の導入とイノベーションに関しては比較的柔軟な中国の行政手続も、中国が世界で初めてのスマートハイウエイを作る議論を後押しするだろう。中国では、モバイル第一の考え方が根付いている。2017年のモバイル端末によるインターネットの契約数は11億件だった(同時期のアメリカの契約件数のほぼ2倍)。中国人消費者は、コンピューターでよりも、携帯電話で買い物をすることが多いのも事実だ。中国政府も、モバイル第一技術のインフラ整備に積極的な役割を果たしている

ドローンの場合も、中国の民間航空局は、ドローン使用に関する明確なガイドラインと規制内容を2016年に発表している。西欧諸国のドローン利用に関するルールがまったく統一されていないのと対照的だ。国、州、郡、市などに独自のルールがあり、混乱するばかりか矛盾することすらある。この2つの事例から、いかにして中国が、新技術を国中に急速に普及させているかがわかる。しかも中国政府には、先を読み、新技術をいち早く取り入れる力がある。

スマートハイウエイの建設においては、中国の製造業の力も成功の鍵となる。その強力な製造能力は、一般向けの製品からiPhoneのような高級品の組み立て、そして今や、安価で発電効率の高いソーラーパネルの開発にいたるまで、数多くの成功を招いてきた。中国のサプライチェーンも驚くほど洗練されている。中国の工場は、製品の最初の部品を、わずか数キロ離れた工場から取り寄せたり、毎日数百万単位のパケケージを出荷したりと、最初から最後までが最適化されている。この圧倒的な効率化により、スマートハイウエイの鍵となる部品は中国の主要産業に成長した。現在、すべてのソーラーパネルのおよそ70パーセントが中国製だ。

さらに、中国はソーラー発電量でも世界をリードしている。2018年の最初の月だけで、新規のソーラー発電能力として34.5ギガワットが追加された。これは2017年の中国全体のソーラー発電量の53パーセントにあたり、2016年の全世界のソーラー発電量の50パーセントを上回る数値だ。中国でのソーラーパネルの大量生産能力は、中国のソーラー道路の大きな支えになっており、地方で素早く生産されたソーラーパネルが即座に地元の道路に、やがてはスマートハイウエイに設置できる形を作っている。群を抜く製造能力と発達したサプライチェーンを持つ中国こそ、世界初の本格的スマートハイウエイの建設場所になる可能性が高い。

しかし中国は、世界初のスマートハイウエイ建設のもっとも可能性が高いというだけではない。独特なインフラ環境、新技術をいち早く導入できる仕組み、世界に君臨する製造力とサプライチェーンを有するという、環境的にも最高の条件を整えている。

結論

自律走行車両の登場によりスマートハイウエイの構想が世界に広がり、より安全で効率的なドライブ環境を整備するためのセンサー、ソーラーパネル、ソフトウエアなど、あらゆる技術が投入されるようになった。ドバイでは、新技術の開発と既存のスマート技術を現在の交通システムに統合する計画を発表した。中国は、世界初ではないが、世界初のなかのひとつとして、浙江省の東部に161キロメートルのスマート道路を建設する計画を発表した。センサーと「車両のインターネット」とソーラーパネルを活用して、自律走行トラックのための安全機能を整えるという。

中国では、スマートハイウエイの主要部材であるソーラーパネルのイノベーションも進行しており、有機薄膜太陽電池で変換効率17.3パーセントを記録している。そのようなわけで、世界初の本格的スマートハイウエイは、スマート技術と既存の交通インフラをフルに統合する道を先導する形で、中国に建設されると結論づけることができる。

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(翻訳:金井哲夫)