フィアット・クライスラー・オートモビルズ(FCA)は、ルノーとの事業統合を提案した。もしこれが受け入れられたなら、年間自動車販売台数870万台の世界第三位の自動車メーカーとなる。
FCAは、月曜、法的拘束力のない書簡をルノーの役員会に渡し、50対50の対等な事業統合を提案した。FCAの提案からは、規制強化の圧力、売り上げの減少、自律走行車両技術などの次世代技術にかかるコストの上昇といった環境の中で、経営の強化や提携関係を望む自動車メーカーの事情が伺える。
この提案では、事業はFCAとルノーとの間で株式が当分される。役員会は双方からの11名が参加することになるとFCAは話している。大多数は無所属の役員となる。FCAとルノーは、それぞれ4名ずつ同数の役員を参加させ、日産からも1名が推薦される。その親会社は、ミラノのBorsa Italiana、パリのEuronext、ニューヨーク証券取引所で上場する予定だ。
フランスの自動車メーカー、ルノーは、日産自動車と提携している。この2社は、ルノー日産アライアンスの元CEOカルロス・ゴーンの逮捕とそれに続く主導権争いで関係がぎくしゃくしているが、自動車部品の共有や技術協力などを行っている。ルノーは日産の株式の43.4パーセントを、日産はルノーの株式の15パーセントを保有する。
フィアット・クライスラーは、ジープや、トラックのラムといったブランドを通じて米国で最もよく知られている自動車メーカーだ。しかし、その事業規模はずっと大きい。市場価値が200億ドル(約2兆2000億円)というフィアットは、イタリアでもっとも古い自動車メーカーのひとつであり、アルファロメオ、フィアット、ランチア、マセラティといったブランドを有する。
2009年、フィアットはクライスラーの株式を取得。現在一般に知られている、20万人近い従業員数を誇るFCAは、双方の企業が合併した2014年に誕生した。
提案された事業統合は、コストの削減につながる。しかし、工場を閉鎖して節約するのではないとFCAは主張している。今回の統合によって閉鎖される工場はひとつもないと、FCAは提案の中で明言した。提案について説明した広報資料で、FCAは次のように述べている。
提案の取り引きによる利益は、工場の閉鎖を前提としたものではなく、共通のグローバルな車両プラットフォーム、アーキテクチャ、パワートレーン、技術に、効率的に資本を投資することで得られます。
統合が実現すれば、製品の生産や、とくに新技術の開発や商品展開といった特定の分野で協力することにより、年間ランレートで50億ユーロ(約6140億円)の節約が達成できると見込まれている。FCAによると、この分野には、通信ネットワークへの接続性、電動化、自律運転が含まれる。
FCAは、「必死に努力する文化でもってOEMを統合し、ひとつの目的に専念する強力なリーダーと組織を築き上げることに成功した」歴史があると訴えている。
こうしたコスト削減策は、売り上げが低迷したとき、双方にとっての命綱になる。だがこれは、もしもの話ではない。GMやフォードなど他の自動車メーカーは、すでに売り上げ低迷に備え始めている。またコスト削減は、運転支援システムや自律運転車両といった高度な技術の研究も可能にしてくれる。
46箇所の研究開発センターを運営するFCAは、高度な運転支援システムに投資をしている。マセラティに搭載されている高速道路での支援機能はそのひとつだ。また、同社は自律運転技術を持つウェイモなどの企業との提携にも依存している。
昨年、同社はウェイモとの提携を拡大すると発表した。これにより、6万2000台のクライスラーのミニバン、パシフィカが、ウェイモの自律運転車両軍団に追加される。両社はさらに、ウェイモの自律運転車両技術を一般消費者の車にも展開できるよう、ライセンス化に取り組んでいる。
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(翻訳:金井哲夫)