ウェザーニューズが台風など荒天時の商品需要を予測する在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジンを発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズは8月3日、今夏の台風シーズンに備え、小売・製造事業者向けに荒天時における商品の急激な需要変化を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」(パスカル)を独自開発したと発表した。8月21日からスーパーマーケット「いなげや」で試験導入を開始する。

PASCALは、台風・大雪など荒天時の消費者行動を予測する在庫最適化エンジン。小売・製造事業者が保有する販売数や購買客数のデータと、ウェザーニューズの日々の気象や体感、荒天時のデータを基に構築されており、荒天時の来客数や、商品需要をカテゴリー・品目ごとに予測可能。日々の気温・体感の変化に伴う商品需要も予測でき、平常時から利用できるとしている。

また、8月からPASCALを搭載した商品発注支援サービスの提供を開始する。同サービスは、台風接近など荒天時の消費者行動を加味した7日先までの商品需要と来客数を「特需」「増加」「並」「減少」「特減」の5段階で判定。これにより、事前の備えによる食料品や防災品の「特需」や、台風接近時の来客数の「特減」を事前に把握することが可能になるという。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

さらに8月21日から、いなげやに商品発注支援サービスを提供する。いなげやでは、台風や大雪などの気象ニュースをもとに商品を送り込む場合、実際の影響が異なる場合があることや、影響を受ける店舗を把握できるタイミングが直前になり、メーカーとの調整が間に合わないことが課題となっていたという。同サービスの試験導入により、まずは実験店舗にて荒天時の来店客数や商品需要予測を活用し、店舗への最適な送り込みや、食品の廃棄ロス・発注のチャンスロスの軽減を狙う。

ウェザーニューズが荒天時の商品需要を予測する日本初の在庫最適化エンジン「PASCAL」を発表、「いなげや」に試験導入

ウェザーニューズはPASCALをプロモーションや荒天時の計画配送、計画生産など製造、小売業に向けのシステムに搭載し、様々なサービスに展開していくほか、自動発注システムとの連携も計画。小売・製造事業者が有するビジネスデータや既存システムと気象データを連携させることで、サプライチェーンにおける収益の最大化、廃棄ロスの最小化、気候変動リスクへの適応を目指す。

ANAやLINE Fukuokaがドローン配送実験、玄界島からアワビとサザエ運ぶ

LINE Fukuokaは8月1日、ANAホールディングスと協業によるドローンを利用した海産物輸送の実証実験を報道関係者に公開した。

福岡市西区の玄界島と糸島半島の東側に位置する釣り船茶屋ざうお本店までの片道6.4kmの距離、玄界島と能古島キャンプ村までの片道10.3kmの距離を、完全自律・自動操縦のドローンを複数使って、アワビとサザエを運ぶという内容だ。代表事業者はANAホールディングス。

ドローンは、自動制御システム研究所(ACSL)が開発した「PF-1」と呼ばれる機体を使用。PF-1は、建物・インフラ点検用の「PF1-Vision」、計量・測量用の「PF1-Survey」、防災・災害用の「PF1-Protection」、物流・宅配用の「PF1-Delivery」の4モデルがある。今回の実証実験で使われたのはPF-1をベースにカスタマイズしたもので、通常はオプションのLTE通信機能を搭載している。なお、PF-1自体のペイロード(積載可能重量)は3kgだが、今回の機体は0.9kgとなっている。

LTE通信にはNTTドコモの回線を使用。ドコモでは今回の実証実験のため、上空のLTEの電波状況などのデータを提供し、飛行ルート作成に協力したそうだ。またウェザーニュースが、気象情報やドクターヘリなどの有人航空機の飛行位置データなどを提供している。もちろん実証実験エリアを提供しているのは福岡市だ。

LINE Fukuokaでは、LINEアプリ内に実装したモバイルオーダー機能を提供。BBQ会場でスマートフォンから海産物をオーダーすることで、そのオーダーが玄界島に届き、海産物がドローンで運ばれてくるという流れだ。なお、ドローンの離着陸時には30m以上に離れなければならないという規制があるため、実際にはスマートフォンで注文後にBBQ会場まで運ばれるわけではなく、ドローンの着地点に取りに行く必要がある。とはいえ、この取り組みが実用化すれば、いけすなどの貯蔵施設を持たない飲食店に新鮮な海産物をすぐに届けられるという大きなメリットが生まれる。

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今回のドローン制御はすべてANAホールディングスが担当。同社は現地での人間の監視が不要の完全自立・自動操縦技術を確立しており、今回の実験は3回目(初回のみ人間の監視付き)。位置制御には基本的にGPSなどを利用しているが、GPSなどでの位置捕捉では数mの誤差が生じる。そのため、着陸地点には専用のマーカーを用意し、このマーカーをドローン内蔵のカメラが認識して誤差50cmのレベルで位置を捕捉する。このマーカーを認識して位置情報を補正する処理を担っているのは、英ラズベリー財団が開発するワンボードマイコンのRaspberry Pi 3。ちなみに、RF-1の建物・インフラ点検モデルであるPF1-Visionには、エヌビディア社のJETSON TX2を搭載しており、PF-1の柔軟性が伺える。今回の実証実験では便宜上、ざうお本店2階に制御ルームが設けられていたが、制御ルームをドローン着地点近くに設置する必要はなく、天神や博多はもちろん、東京からの制御も可能だ。

現在のところ規制や住民の合意が得られるかという問題があるため、ドローンは無人地帯での飛行に限られているが、ANAホールディングスでは将来的に有人地帯での完全自立・自動操縦を進めたいという意向だ。

今回の実証実験ではランニングコストは明らかにされなかった。今回の実証実験を踏まえて2020年の導入を目指すとしているが、完全自立・自動制御が実現できたとしても、30m以内に人が侵入できない離着陸場所の確保、ドローンのバッテリーの取り替え作業、ペイロードの増量など課題は山積している。特に離着陸場所やバッテリーの交換にはどうしても人員が必要となるので、そのぶんのランニングコストをBBQのメニューの価格に転嫁するのは現実的ではない。

建物の屋上など人が立ち入れない場所に離着陸場所を設け、着陸した際に自動的にバッテリーを充電できるシステムなどが考案されないと、本格導入はまだまだ先だと感じた。今回の実証実験の最大高度150mなので飛行に関してはそれほどの騒音にはならないため、都市部であっても近隣住民の理解は得られやすいかもしれない。しかし、看板は電柱などの障害物も多いので着陸地点の詳細なマッピングや万が一の衝突回避機能なども実装する必要があるだろう。

当面は、浜辺やリゾート地など人口や建物が密集していない場所間での輸送が現実的だが、スマートフォンでオーダーした食材がドローンで届くという未来は、すぐそこにある。