VTuberになれるアプリ「ホロライブ」提供元が2億円を調達、今後はVTuber版「SHOWROOM」の開発も

バーチャルYouTuber(VTuber)向け配信サービス「ホロライブ」を提供するカバーは6月8日、グリーベンチャーズ、オー・エル・エム・ベンチャーズ、みずほキャピタル、個人投資家の千葉功太郎氏を引受先とした第三者割当増資により総額約2億円を調達したことを明らかにした。

同社では調達した資金をもとに専属VTuberのマネージメント体制の強化、ホロライブの開発強化を進める方針。なお今回のリード投資家であるグリーベンチャーズの堤達生氏がカバーの社外取締役に就任する。

もともとホロライブはVRデバイスを用いて3Dキャラクターを自由に操作し、インタラクティブな番組を配信できるライブ配信サービスとして2017年12月にリリースされたサービス。当時TechCrunchでも紹介している。

カバー代表取締役の谷郷元昭氏も「(サービスローンチ前は)VTuberの流れがまだできていなかったので、サービスの説明をしてもIT業界の人はポカーンとしていた」と話すように、2017年末から2018年にかけて日本国内でVTuberがトレンドに。

カバーでは当初LINE LIVEや17 Liveでのライブ配信をメインにしていたが、徐々に録画したコンテンツをYouTubeに配信するなどしながら事業を拡大してきた。

ホロライブのアプリ自体もスマホやPC、HTC Viveを使ってキャラクター(Live2Dと3Dに対応)になりきり、動画やライブを配信できるVTuber向け配信サービスとしてアップデートしている。

「ブログが普及して『出版革命』が起き、一般の人でも自分の文章やコンテンツを発信できるようになった。同じようにこれまで3DCGのアニメーションを作るのは難しかったが、それが簡単になり誰でもキャラクターになりきって動画やライブ配信ができるようになってきている」(谷郷氏)

またカバーではホロライブの開発に加えて、専属のVTuberをマネージメントする「VTuber事務所」のような機能も持つ。現在は約15万人のチャンネル登録者をかかえる「ときのそら」や「ロボ子さん」を展開するほか、6月1日には6人の専属バーチャルYouTuber「ホロライブ一期生」がデビューしている。

引き続き配信プラットフォームであるホロライブと専属VTuberのマネージメントがカバーの軸となるが、VTuberとして活動したい個人を支援するプラットフォームとして、今後は自社でコンテンツの視聴までできる仕組みも作っていきたいという。

「それこそVTuber版の『SHOWROOM』のようなプラットフォームを作れないかなと考えている。(カバーでは)今まで配信する仕組みだけを作っていたので、視聴まで完結できるような環境を整えたい」(谷郷氏)

カバーは2016年6月の設立。これまでも2017年8月にみずほキャピタル、TLMおよび個人投資家数人を引き受け先とした総額約3000万円の資金調達を実施している。

VRデバイスでキャラクターを操作してライブ配信、カバーが3000万円の資金調達

VR/AR向けソーシャルサービスを開発するカバーは8月1日、みずほキャピタル、TLMおよび個人投資家数人を引き受け先とした総額約3000万円の資金調達を実施したことを明らかにした。

カバーは2016年6月設立のスタートアップ。代表取締役の谷郷元昭氏は、地域情報サイトの「30min.(サンゼロミニッツ)」の開発・運営を手がけた(現在はイードに譲渡)サンゼロミニッツの創業者でもある。カバーにはアエリア元取締役でエンジェル投資やスタートアップ支援を行う須田仁之氏、アジャイルメディア・ネットワーク元CTOの福田一行氏が参画している。同社はVR特化のインキュベーションプログラム「Tokyo VR Startups」の2期生に採択されている。

創業当初はVRデバイスを使って楽しめる卓球ゲームを開発していたカバーだが、今年に入ってピボット。3Dキャラクターを自由に操作し、インタラクティブな番組を配信できる、AR対応のバーチャル版ライブ配信サービスを9月にも提供する予定だという。サービスについては言葉で説明するよりも、まずはこの動画を見て頂いたほうが理解しやすいだろう(複数の動画が)。

この動画内で動いている女性の3Dキャラクターは、VRデバイス(テスト環境ではHTC Viveを使用していた)で操作しており、リアルタイムにその動きが表示されている(顔や手の向きだけでなく、ボタン操作で表情や指の動きを変えたり、マイクで認識した音をもとに、唇を動かしたりもできる)。3D空間上では写真や動画の再生をしたり、3Dペイント機能を使って立体的なお絵かきをしたりもできる。デモには音声が入っていないが、もちろん音声会話も可能だ。

以前に比べれば楽になったとは言え、モーションキャプチャーをし、そのデータを使ったリアルタイムなアニメーションを配信するには設備もコストもかかる。それをVRデバイスだけでまかっているというわけだ。同社はこのキャラクターによるライブ配信プラットフォームを開発。まずは自社やパートナー企業のキャラクターによる番組を制作・配信していくという。キャラクターを持たない企業に対しては、3Dモデルの制作も支援する。

サービスのイメージ

カバーではiOS11のARKitに対応したAR機能も準備中だ。ライブ配信時に、ARモードでキャラクターだけを自分がいる場所に呼び出して、表示することも可能になる。そのほか、ライブ配信とは別に「撮影モード」を用意しており、ARでキャラクターの動画・写真撮影もできる。

AR動画の撮影イメージ

8月中にもアルファ版のサービスとして、この配信環境で制作した番組をYouTubeやニコニコ生放送で配信する予定。そして9月をめどに視聴者向けのアプリを提供するとしている。アプリでは、ライブ配信にコメントしたり、ギフトを送ったりする機能や前述の撮影モードを搭載する。

「もともとはゲーム会社の出身。IPには一番労力を割いていたので、『キャラクターもの』の事業はやりたかった。VRとキャラクターの相性がいいのは分かっていたが、それが実際にできるのか? ニーズはあるのか? と考えていた。そんな中で最初は卓球ゲームを作ってみた」

「だが(VRゲームの)市場はまだ広がっていないし、モバイルのようなカジュアルな市場があるかと言えば、なかった。しっかりしたコンシューマーゲーム会社でないと作れない。このプロジェクトは今年の2月くらいから始めていたが、Tokyo VR Startupsのデモデーまでの1カ月で、ほぼ突貫で作っていった」(谷郷氏)

同社が狙うのは、アニメの市場だという。「(アニメに関する)ライブやVRのシアターもできている。3Dモデルさえあれば、アニメを作ることはできる。VRやARといった『空間』をディスプレイにできる場所に、キャラクターやコンテンツを提供していく」(谷郷氏)。ライブまでの実現したボーカロイドの「初音ミク」から、人気アイドルグループを手がける秋元康氏がアニメキャラクターによるアイドルユニットの「ナナンブンノニジュウニ」をプロデュースしたり、バーチャルYouTuberの「Kizuna AI」が70万人以上のファンを集めているような状況だ。バーチャルキャラクターによるファンビジネスの時代は眼前にまで来ているのかも知れない。

同社は今後プラットフォームや視聴、配信用のアプリケーションの開発に注力する。「まずは自前での番組も配信するし、権利者のコンテンツも載せていく。このプラットフォームはただの『美少女・イロモノ』には見られたくない。IPのマーケティングに使えるものにしていきたい」(谷郷氏)