Banditがニューヨークに「モバイル専用」コーヒーショップをオープン

ニューヨークのミッドタウンにあるBandit (バンディット)コーヒーショップでは、ただカウンターに行って何かを注文するということができない。その代わりに、モバイルアプリをダウンロードする必要がある。

私も昨日の午後、自分自身でそれを体験してみた。他の客にまざって携帯電話を取り出し、Banditアプリをダウンロードしてプロファイルを作成し、注文と支払いを行った。数分後、バリスタがカウンターで私の名前を呼びコーヒーを手渡してくれた。とてもおいしいコーヒーだった。

別の言い方をするなら、スターバックスがモバイルによる注文と支払いの実験を行っている一方で、Banditは共同創業者兼CEOのMax Crowley(マックス・クロウリー)氏が言うように「モバイル専用」ストアと呼ばれるものに賭けている。

もちろん、このモデルは初回にもたつく可能性がある。特に事情を知らないフリー客が入ってきたときにはなおさらだ。とはいえ、親切なBanditスタッフが控えているし、クロウリー氏(以前はUber for Businessのゼネラルマネージャーだった)は、このモデルは「まったく新しいタイプの体験」を生み出す機会を提供すると語っている。

彼は中国のLuckkin Coffeeの急速な成長をインスピレーションとして指摘し、最終的にBanditは、顧客のコーヒーへの渇望を満足させる最も便利な方法(どこにいてもアプリを立ち上げて飲みたいドリンクを注文できる)を提供するはずだと語る。注文後アプリは、いつ準備が整うか、どこでそれを受け取れるかを顧客に伝える。

今の所Banditは、1店舗しか存在しないため、そこまでの利便性を提供することはまだできない。しかし、クロウリー氏は、コーヒーショップモデルの他の側面も再考したと語る。

その例の1つとして、この最初のBanditストアは、基本的に特別な施工をされていない小売スペースに置かれているという点が挙げられる。クロウリー氏によれば、彼のチームはその中ですべてのコーヒー準備を行うことができる11×11フィート(3.35×3.35m)のカウンタースペースを用意したという。他の場所で組み立てることもでき、単に電源を引き込むだけで使うことができるため、大げさな工事は不要だ。

「(新しい場所を)数時間で立ち上げることができますし、従来の店舗の約10分の1のコストでそれを実現することがでます」と彼は言う。

このため、今後数か月でさらにニューヨーク市内に4つまたは5つの店舗を立ち上げ、2020年の第1四半期の終わりまでにはニューヨークを超えて拡大する計画だ。

クロウリー氏は、コストを抑えることでBanditがコーヒーを手頃な価格に保つこともできると付け加えた。「アイスラテが6ドルや7ドル(約650円〜760円)である必要はないと思っています(例えば、昨日私が飲んだコーヒーは2ドルだった)。私たちの目標は、スターバックスよりも安く提供することです」。また、他の価格モデルの実験も行っていて、手始めに毎月20ドル払えば1杯1ドルで無制限にコーヒーを飲めるプログラムを始めた。

そして、この携帯電話を使ってて商品をポンと受け取るだけのやり取りが、事務的でおそらくはやや気持ちがこもっていないような気がするとしたら、私が実際に行った店ではそんな感じはまったく受けなかったということを指摘しておきたい。場所は多少むき出しのままだが、目を引く外見で、コーンホール(トウモロコシの粒などが入った袋を、斜めに置かれた穴に投げ入れる対戦型ゲーム)のようないくつかの遊具が顧客のために置かれていた。最も重要なことは、人びとは単にコーヒーを急いでとりに来ているのではなく、実際にその辺でくつろいでいたということだ。

「コーヒーショップの場所に関する基本的な調査を行っていとき私たちが観察したのは、お客さんの80%がコーヒーを受け取ってすぐに去っていく姿でした」とクロウリー氏は言う。「その層は、間違いなく私たちが中心的に狙っている層です。1分以内に飲み物の注文を完了して、受け取って店を出るまでを本当に簡単なものにしたいのです。将来的には、さまざまな場所で、さまざまな体験に対して、このようなものを提供したいと思っています」。

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(翻訳:sako)

近所のコーヒー店にスタバ並みのモバイル注文体験を提供するCloosiv

米国ではスターバックスのモバイル注文アプリが、かなりの人気を集めている。昨年の実績では、Apple PayやGoogle Payなどよりも多くのユーザーを獲得したとされているほど。確かにうっとりするほど便利だ。仕事に遅れそうで食事をする暇もないときなど、ちょこちょこっとタップして飲み物とサンドイッチをオーダーしておけば、店の前を通るころには受け取る準備ができている。まるで魔法のようだ。

小さなコーヒーショップは、どうすればそれに対抗できるのか?独自のアプリを開発して運用するのは、かなりの大仕事だ。そもそも、顧客にそんなアプリをわざわざインストールしてもらえるのかどうかも問題だ。

Cloosiv(クローシブ)が、そうした悩みをシンプルに解決してくれる。タップするだけのモバイル注文システムの運営を一手に引き受け、ローカルなコーヒーショップに提供するのだ。ユーザーの近くにあるコーヒーショップを紹介するのもサービスの一部。その店のメニューを提示し、実際に注文を入れる前に、好みに合わせてドリンクをカスタマイズすることもできる。チップの支払いもアプリ内で完結する。いちど店を訪れた人がリピーターになってくれるのを促す特典システムも備えている。

Cloosivのネットワークに加盟しているコーヒーショップは、まだそれほど多くない。現在ではサンフランシスコにも数店あるだけだ。アプリ内のマップで確認しても、米国内で200店に満たないほどしかない。しかし、その数が増えるほどそのコンセプトの意味も光ってくる。そうなれば、巨人対その他大勢といった構図になってくるだろう。

スターバックスのモバイル注文アプリと同様、Cloosivもアプリにお金をチャージしておくことをユーザーに勧めている。あらかじめ、ある程度の額を入金しておくことで、クレジットカードで支払う回数を減らす。それによってカード会社の手数料を節約することを狙っている。ただし、スタバのアプリとは異なり、あらかじめチャージしておかなくても、毎回カードから支払うことも可能だ。ただし、その場合には毎回40セント(約43円)の手数料が加算される。どちらを選ぶかはユーザー次第。

私も先週、サンフランシスコでこのアプリを試してみた。もちろん能書きどおりに機能した。まず私はBARTの駅の近くのコーヒーショップ(Coffee Mission)を見つけた。電車の到着を待つ間に注文を済ませ、目的地で電車を降りて駅から出ると、すでにコーヒーの準備はできていた。

Cloosiv for Merchantsアプリ

多くの(ほとんど?)のコーヒーショップでは、タブレットをPOS端末代わりに使っているだろう。Cloosivは、すでにそこのあるものを利用することに注力している。注文が入ると、バナーが表示されると同時に通知音が鳴る。コーヒーショップの従業員がそのバナーをタップすると、Cloosiv for Merchantsアプリの画面が開く。そこで注文の内容を確認したり、完了したらマークしたりすることができる。

Cloosivは、次のステップとして、コーヒーショップがすでに利用しているレジアプリに、自らの機能を直接組み込むことを狙っている。まず考えているのがSquareだが、ゆくゆくはCloverやMicrosなどにも組み込めるよう計画している。

Cloosivは、注文ごとに手数料をショップに請求する。手数料の割合は、注文数が増えるほど低くなる。月ごとの計算で、最初の50件の注文には12%の手数料がかかる。たとえば、注文数が150を超えれば、手数料は8%に下がる。

Cloosivの創立者であるTim Griffin(ティム・グリフィン)氏によれば、これまでに3万5000件以上の注文を処理し、それに対するコーヒーショップの収入は、25万ドル(約2700万円)を超えているという。また注文数と総売上は、いずれも毎月約40%ずつ増加すると見込んでいる。同社は最近、Lachy Groom(氏(元Stripeの発行部門責任者)、Laura Behrens Wu氏(ShippoのCEO)など、何人かの投資家から、少額の投資を受けた。また、Y CombinatorのSummer 2019クラスに参加している。

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(翻訳:Fumihiko Shibata)