エンタープライズ・ソフトという言葉は「新スタートレック」起源

1993年ごろにシリコンバレーにいたか訪問したことがあれば現在「エンタープライズ・ソフトウェア」と呼ばれている同じものが「インフォメーションシステム・ソフトウェア」と呼ばれていたことを覚えているだろう。この変化はいつ、どのようにして起きたかご存知だろうか?

読者の同僚にトレッキーがいれば大いに満足するだろうが、答えは「新スタートレック」(Star Trek: The Next Generation)だ。意外かもしれないが間違いない事実だ。

この時期にBoole & Babbage(現在のBMC)は精力的なマーケティング・キャンペーンを打ち、自身を「システム・ソフトウェア」企業から「エンタープライズ・ソフトウェア」企業にイメージチェンジさせた。

もちろん1993年よりずっと前から「エンタープライズ」はなんであれ複雑なシステムを表わす単語として使われていた。しかしBoole &Babbageが全米ネットワーク番組として当時最高の視聴率を誇った「新スタートレック」をプロデュースしたパラマウントと2年のライセンス契約を結んでからすべてが変わった。

スタートレックのファンはこのクレイジーなマーケティング契約について何年も語り草にした。詳しいことが知りたければファンサイトのTrekCoreで読むことができる。しかしいかにコアなトレッキーでさえ、このキャンペーンがテクノロジー業界にどれほど大きな長期的影響を与えることになるかは予想できなかった。Boole&Babbageはパラマウントと結んだライセンス契約でスター・トレック関連のコンテンツをほぼ無制限に制作、配信する権利を得ていた。BooleはVHSテープ(!)を顧客に郵送し、雑誌に広告を掲載し、カンファレンスでは社員に連邦宇宙軍のコスプレをさせた。このキャンペーンでBooleは「エンタープライズ・オートメーション」を提供する会社というイメージを確立した。

上のインフォマーシャルには副長のライカー中佐が登場し、「エンタープライズ号の指揮を取る機能が艦橋に集中しているように、Booleのソフトウェアは今日の企業が必要とする複雑な情報システムを一元化するのだ」と説明している。他の会社にはそうした機能を提供する力がないという印象を巧みに与えるような仕上がりだった。

Booleのキャンペーンに対抗意識をかきたてられたIBMは、1994年にスタートレックのワープ航法をヒントにOS/2をOS/2 Warpというブランド名に変えた。さらにエンタープライズ号のピカード艦長役のパトリック・スチュワートをプロダクト発表のホストに起用しようと試みた。残念ながらパラマウントはこの話に乗らず、IBMは代わりにスタートレック ヴォイジャーでジェインウェイ艦長を演じたケイト・マルグルーを起用.した。Booleの独占ライセンスはあったものの、IBMはイベントの最初に流す5分間のイントロにスタートレックのミスター・スポック(レナード・ニモイ)を使うことができた。

1994年のIBMの新製品発表を眺めるとOS/2以外でも13件もの「エンタープライズ」プロジェクトを数えることができる。大手ソフトウェア企業は「エンタープライズ」という用語が自社ブランドのイメージを高めるために効果があると認めるようになり、ブランドやプロダクトの名称に利用するようになった。SAPやBaan(現在はInfor)などの企業向けソフトウェアベンダーは1993年以降、そろって「エンタープライズ」という言葉を使い始めた。1995年にLotusは「エンタープライズ・ソフトウェア企業」だと名乗るようになった。

1996年にIBMがLotusを買収した後、すべての企業向け製品をエンタープライズと分類したことで、「エンタープライズ」は公式に業界で最もクールな新語となった。 GartnerがWileyから出版したERP: A Vision of the Next-Generation MRP II(ERP、次世代MRP IIのビジョン)はEnterprise Resource Planning(統合基幹業務)ソフトウェアというテクノロジーの誕生を告げた論文だが、1990年に発表されたにも関わらず、ライカー中佐がインフォマーシャルで「今日の企業が必要とする複雑な情報システムを一元化するのだ」と言うまでほとんど注目を集めなかった。Googleが提供している書籍の中に特定の単語が現れる頻度を示すサービス、n-gram Viewerは大変興味深いが、ご覧のように「enterprise software」(青線)と「enterprise resource plannning」(赤線)やという言葉がポピュラーになるのは1994年後半からだ。

それから30年。我々はあらゆるビジネスが「エンタープライズ・ソフトウェア」で実行される世界に住んでいる。ソフトウェア・ビジネスの企画書がデスクに届き、その中に「エンタープライズ」という言葉が現れるたびに私はライカー副長の貢献にもっと光が当てられてもいいと思うのだ。

【編集部注】この記事はベンチャーキャピタルのMercury Fundでマネージング・ディレクターを務めるAziz Gilani(アジズ・ギラニ)氏の寄稿だ。同氏はMercuryでSaaS、クラウド、データサイエンスなどのスタートアップへの投資を手掛けている。

【Japan編集部追記】トップ写真のジョナサン・フレイクスはCBS AllAccess配信の新スタートレック・シリーズにもライカー副長としてゲスト出演している。

画像:Greg Doherty/Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

Ubisoft、今秋VRゲーム版「スタートレック」を発売

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ファンにとっては、一番楽しみなVRゲームランキングの頂点に立ちそうなタイトルが明らかになった。E3を前にした大規模な記者会見で、Ubisoftは今年の秋にOculus Rift、HTC Vive、PlayStation VRでそれぞれ発売予定の新規タイトル「Star Trek: Bridge Crew」を発表した。

同作のトレイラー映像では、「スタートレック」シリーズの出演者、レヴァー・バートン、ジェリー・ライアン、カール・アーバンの面々がクルーメンバーとして一緒にゲームをプレイしているが、全員が協力して行うゲームの操作性に好印象を得ている様子が伺えた。中でもバートンは、ホスト役を務めたアイシャ・タイラーと共にゲームについて興奮気味に語っている。

ゲーム内容としては、最大4人のプレイヤーが船長や操舵手など、それぞれ異なる役割を担い、各々が任せられた責任を果たしながらミッションを遂行するというものだ。また、コンピューターにクルーを任せて自分が船長を務めるソロプレイも可能だ。

見たところ、画面上の操作が多く、宇宙空間での冒険というよりは飛行シミュレーションに近い。また、トレイラーからは最先端の映像を用いているようには見えない。

それでも、レナード・ニモイが初めてゴム製の耳をつけてMr.スポックを演じたときから、スターフリートの宇宙艦を操縦していたいと夢見てきた人にとっては、明らかに夢の実現への第一歩だろう。今週後半には、TechCrunchでも実際にデモを体験する予定だ。ラフォージ中尉(レヴァー・バートンの役名)のように楽しめることを願っている。

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(翻訳:Nakabayashi)