Meta、Horizon Worldsでアバターがお互いに約1.2m近づけない機能をオンオフ切り替え可能に

Meta(メタ)の新しいVR空間であるHorizon Worlds(ホライゾンワールド)とVenues(ヴェニュー)で、すでに女性が体を触られたりセクハラを受けたりしているという報告を受け、Facebook(フェイスブック)として知られていた会社は2022年2月、各アバターの周りに半径約60cmの泡を作る新しい「Personal Boundary(パーソナルバウンダリー)」機能を展開した。この機能により、アバターが互いに約1.2m以内に近づくことができなくなった。米国時間3月14日、Metaはこの機能をカスタマイズし、ユーザーがオプションでこの設定をオフにしたり、有効にするタイミングを制御できるようにした。

Horizon Worldsのすべての体験でバウンダリーをデフォルトでオンにする代わりに、すべてのインタラクションでこの設定を有効にするかどうかをユーザーが選択できるようにすると、Metaは発表した。これにより、VRユーザーは、この機能が開始される前の標準的な設定であったように、約1.2mのパーソナルバウンダリーをオフにすることができるようになる。望まないインタラクションを防ぐための小さなパーソナルバウンダリーはまだ存在すると、同社は言っているが、それは、過去にMetaの仮想世界で悪質な業者がレイプのシミュレーションを行うのを防ぐには、十分ではなかったことに注意するべきだ。

またユーザーは、友達以外に対してパーソナルバウンダリーを有効にすることができる。この場合、初対面の人と一緒にいるときは安全機能を有効にし、フレンドリストに載っている人とバーチャルに遊んでいるときはオフにすることができる。また、これまでと同じように、すべての体験でパーソナルバウンダリーを有効にすることもできる。

しかし、Metaによると、友達以外にだけパーソナルバウンダリーをオンにするよう初期設定を調整しており、このことは安全機能を少し後退させていることになる。Horizon Worldsが新しいソーシャルネットワークであることを考えると、人々は、仮想空間で出会った後、現実には知らない他のユーザーと友達になるかもしれない。つまり、ユーザーの友達リストは、そのユーザーが明確に信頼する人のリストとはまったく違うかもしれないのだ。というわけで、ここでも多少の注意が必要だ。

画像クレジット:Meta

Metaは、2月にパーソナルバウンダリー機能を展開した後、コミュニティからのフィードバックに基づいてこの変更を行ったと主張している。同社は、この新しいオプションにより、Horizon Worldsで他のアバターとハイタッチ、ガッツポーズ、自撮りをより簡単に行えるようになると考えている。

また、Metaによると、パーソナルバウンダリーは、2人が初めて会ったときに、より制限の多い設定にデフォルトで変更される。例えば、1人のパーソナルバウンダリーがオフで、もう1人のパーソナルバウンダリーがオンに設定されている場合、プラットフォームは2人の間に1.2mの空間を設定する。そして、ライブイベントのVR体験「Horizon Venues」に参加するすべての人のパーソナルバウンダリーは、およそ1.2mでデフォルトがオンになるようになったという。

この変更についての発表の中で、Metaは、VRのための開発が「もはや固定視点と従来のフラットスクリーンデバイスに制限されない今、我々がコンピューティングの世代で取り組んだ最も難しい挑戦の一部である」ことを代表していると認めている。

この声明は、同社のVR空間における女性を守ることができなかった以前の失敗の責任を、VR世界のための構築は新しいものであり、したがって、いくつかの試行錯誤が含まれるという事に責任逃れしているだけのようにみえる。そもそもMetaがより多くの女性エンジニアやゲーマーの意見を求めていれば、この話題が出なかったとは考えにくい。結局のところ、仮想空間における性的暴行は、他の仮想現実ゲームや、Second Life(セカンドライフ)のようなVRの先駆け、さらにはRoblox(ロブロックス)の子ども向け仮想ゲームでも繰り返し起こっていることなのだ。Metaが新しいVR環境を設計する際に、ビルトインの保護機能を考慮しなかったとは信じられない。また、成長や規模を第一に考え、ユーザーの安全を第二に考えるというFacebookの傾向は、Horizon Worldsのような新しいプロジェクトにも受け継がれていることがわかる。

同社は、パーソナルバウンダリーがVR体験に与える影響についてより多くのことを学びながら、改善を続けていくとしている。

画像クレジット:Meta

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(文:Sarah Perez、翻訳:Yuta Kaminishi)

マイクロソフト、7.8兆円でゲーム大手Activision Blizzardを買収へ

ゲーム大手のActivision Blizzard(アクティビジョン・ブリザード)は、セクハラ問題や経営陣の混乱で投資家から非難を浴びていたが、脱出カプセルのスイッチを押した。Microsoft(マイクロソフト)による687億ドル(約7兆8200億円)での現金買収に合意したのだ。

Activision BlizzardのCEOであるBobby Kotick(ボビー・コティック)氏は、1万人近い従業員を抱える同社でSECの調査やセクハラスキャンダルが続く中で、退任が噂されていた(2021年、現・元社員の2000人以上が、差別訴訟に対する同社の対応を「忌まわしく侮辱的だ」とする書面に署名、さらに最近、1000人以上の社員がコティック氏の退任を求める署名を行っている)。Wall Street Journalは、コティック氏が自社でのセクハラやレイプ疑惑について何年も前から知っていたにもかかわらず、行動を起こさなかったと報じている。だがMicrosoftは、今回の買収でコティック氏がCEOにとどまると述べている。この先Activision Blizzardは、全体としてはMicrosoft Gaming(マイクロソフト・ゲーミング)のCEOでXbox(エックスボックス)の責任者であるPhil Spencer(フィル・スペンサー)氏に報告することになる。

スペンサー氏は米国時間1月18日のブログで「Microsoftは企業として、社員とプレイヤーの双方を含め、ゲームのあらゆる側面でのインクルージョンを目指すことを約束します」と書き、暗にActivision Blizzardで進行中の騒動に言及しました。「また、創造的な成功や自律性は、すべての人に尊厳と敬意をもって接することと密接に関係していると考えています。私たちはこのコミットメントを、すべてのチームとすべてのリーダーに対して課しています。私たちは、積極的なインクルージョンの文化を、Activision Blizzardのすばらしいチームへと広げていきたいと考えています」。

もしコティック氏がトップの座にとどまるのなら、この買収のニュースが従業員たちの懸念を和らげることはなさそうだ。Activision Blizzardの従業員は、現在進行中の性的不祥事だけでなく「Call of Duty(コール オブ デューティ)」の品質保証担当者の解雇に抗議して、数回のデモを行っている。シニアテストアナリストのJessica Gonzalez(ジェシカ・ゴンザレス)氏は、ABetterABK労働者同盟のリーダーとして登場し、会社の変革を求める最も大きな社内の声の1人として名を馳せていたが、2021年11月末に辞任を表明していた。

ゴンザレス氏がActivision Blizzardの社内Slack(スラック)に投稿し、Twitter(ツイッター)でも公開された辞任メッセージには「あなたの無策と説明責任の拒否が、優れた人材を追い出し、あなたがCEOの地位から解任されるまで、製品は苦労を強いられることになるでしょう」と書かれている。「厳しいことをいうようですが、あなたには文化を修正するための猶予が何年もあったはずです。それなのに現在の会社の状況を見てください」。

11月にスペンサー氏は、Xboxのスタッフに宛てた電子メールの中で、同社に対する疑惑を踏まえ「Activision Blizzardとの関係をあらゆる側面から評価し、継続的に積極的な調整を行っています」と述べている。Activision Blizzard買収のニュースがまだ知られていなかった先週、スペンサー氏はNew York Timesの取材で、汚名を着せられたゲーム大手と自社の関係について質問された。

「私たちXboxにとってこの件は、他社をどうこういうための材料にはなりません」とスペンサー氏は述べている。「Xboxの歴史もまっさらなものではないからです」。2016年のゲーム開発者会議におけるMicrosoftのパーティーで、同社は女子学生ダンサーを雇ったことで、ゲーム業界全体の女性との間に多くの問題を起こしている同じ「男子学生」ノリ文化を露呈したことがあるのだ。スペンサー氏は「あれはXboxの歴史の中でも痛恨の極みでした」と付け加えた。

プレスリリースによれば、この取引によりMicrosoftは、Tencent(テンセント)、Sony(ソニー)に続き、売上高で世界第3位のゲーム会社となる。Activision Blizzardは「World of Warcraft」「Call of Duty(コール オブ デューティ)」「Candy Crush(キャンディクラッシュ)」などのメガタイトルを擁し、Microsoft GamingはXboxコンソールを製造している。Microsoftは、先日2500万人の加入者を達成したクラウドゲーム配信サービスGame Passに、Activision Blizzardのゲームを含めることを発表した。一方、Activisionのゲームは、4億人近い月間アクティブユーザーを誇っている。

Microsoftの数十億ドル(数千億円)を超える規模の買収は、この買収だけではない。2020年末に、Microsoftは、「Edler Scrolls」「Doom」「Fallout 」などの人気ゲームを制作したBethesda(ベセスダ)ゲームスタジオなどの親会社であるZeniMax Media(ゼニマックスメディア)を買収する計画を発表していた。そのため、Activision Blizzardの買収に対しては、Microsoftによる独占への懸念が司法省から示される可能性がある。例えば、Meta(メタ)は現在、成長中のVR事業に関する独占禁止法違反の訴訟を起こされている。しかし皮肉なことに、この買収によって、Metaにとってはバーチャルリアリティの分野での競争が少し激しくなるかもしれない。

Microsoft会長でCEOのSatya Nadella(サティア・ナデラ)氏は「エンターテインメントの世界の中で、現在ゲームはすべてのプラットフォームに対して最もダイナミックでエキサイティングなカテゴリーです。そしてメタバースプラットフォームの発展において重要な役割を果たすことになるでしょう」と述べている。

MicrosoftとActivision Blizzard両社の取締役会は、この買収を承認しているが、買収そのものは、Activision Blizzardの1株当たりの価値を時価を上回る95ドル(約1万1000円)で、2023年に完了する予定だ。

画像クレジット:Troy Harvey/Bloomberg/Getty Images

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(文:Amanda Silberling、翻訳:sako)

さらに6人の女性がテスラを職場のセクハラで訴える

2021年11月のJessica Barraza(ジェシカ・バラザ)氏の訴訟に続き、さらに6人の現在および過去の女性従業員が立ち上がり、カリフォルニアのフリーモント工場での放恣なセクシャルハラスメントの文化を助長しているとしてTesla(テスラ)を非難した。米国時間12月14日にアラメダ郡の高等裁判所に個別に提出された訴状で女性たちは、仕事中に絶えず、冷やかしの口笛や迷惑なナンパ行為、体への接触そして差別があったと述べている。

Teslaを訴えた女性の1人であるJessica Brooks(ジェシカ・ブルックス)氏は、同社でのオリエンテーション初日にセクハラされたと申し立てている。彼女の主張によると、上司は彼の男の部下に「あの新しい女の子に気をつけろ」といったという。ブルックス氏によると、そのハラスメントはとても頻繁で最後に彼女は自分のワークステーションの周りに箱を積み上げて、同僚たちが彼女に口笛を鳴らさないようにした。ブルックス氏はまた、Tesla人事部に状況を訴えた、と述べている。会社側の申し立てによると、同社は状況に直接対応せず、ブルックス氏を別に移動させることで応じた。

Bブルックス氏は、ワシントン・ポストに対して次のように述べている。「私への望まない関心や私を見つめる男性たちにうんざりして、自分の周りにバリヤーを作り始めました。自分の仕事をするためにはそれが必要だと感じました」。

ジェシカ・ブルックス氏が11月にTeslaを訴えた際、彼女は同社のフリーモント工場で「悪夢」のような労働条件に置かれたと述べた。バラザ氏の訴えは「粗野で古臭い建築現場か男子寮」のような工場の床と述べ、米国の最も高度なEVメーカーの生産拠点とはとても思えないという。Teslaを訴えた7人の女性の多くは、彼女たちが経験した虐待を、CEOのElon Musk(イーロン・マスク)氏に結びつけている。原告の1人は「彼は性交の体位やマリファナをジョークのネタにしたため、技術者たちはさらにひどくなった」という。

訴状が提出されたその同じ日に、Space Xの元社員たちがマスク氏の他企業を、セクハラを止めさせるために何もしなかったとして告発した。TechCrunchはTeslaに、コメントを求めている。この自動車メーカーにはPR部門がない。同じくフリーモント工場で、人種差別に遭ったとする黒人労働者に、1億3700万ドル(約155億8000万円)の支払いが連邦裁判所より命じられたとき同社は「従業員の懸念に対する対応は、今後も継続的に充実させ改善していく。私たちはときどき間違えることもあるが、それが起きたときには説明責任を果たさなければならない」と述べている。

編集部注:本記事の初出はEngadget

画像クレジット:Bloomberg/Contributor/Getty Images

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(文:Igor Bonifacic、翻訳:Hiroshi Iwatani)

Blue Originの安全性に関わる重大な懸念とセクハラ文化を現役ならびに元社員が提起

Jeff Bezos(ジェフ・ベゾス)氏は、労働問題から逃れることができない。悩める億万長者のベゾス氏は、かつて率いていたAmazon(アマゾン)では、過剰労働環境をめぐり度重なる根強い批判にさらされていたが、今度は自身が経営する宇宙開発企業Blue Origin(ブルーオリジン)での敵対的な労働環境への申し立てに直面している。

関連記事:アマゾンの倉庫労働者が組合結成へ向け郵便投票を開始

明らかになった21人の現役ならびに元社員が共同で綴ったエッセイには、Blue Originの職場環境でセクハラが横行していることや、専門家としての意見の相違が封じられ、環境問題が放置され、人間の安全よりも素早い実行が優先されるものであることが、鮮明に描かれている。

このエッセイで唯一名前を明かしている著者は、Alexandra Abrams(アレクサンドラ・エイブラムス)氏で、彼女のLinkedIn(リンクトイン)のプロフィールによると、Blue Originでは2年6カ月の間働いていたという。エイブラムス氏は、同社在職中に従業員コミュニケーションの責任者となった。彼女は米国時間9月30日のCBSモーニングのインタビューで「私がジェフに言いたいのは、本当に願っていたのは、彼が私たちが思っていたような人物であればよかった、そしてBlue Originが私たちが思っていたような会社になればよかったということなのです」と語った。

Blue Originの元従業員コミュニケーション責任者だったアレクサンドラ・エイブラムス氏が、@LaurieSegallに会社に対する苦言を呈している。

「安全の文化と恐怖の文化を同時に生み出すことはできません。それらは相容れないものです」

Blue Originの広報担当者は、TechCrunchへの声明の中で、エイブラムス氏は「連邦輸出管理規制に関わる問題で繰り返し警告を受け、2年前にそれが理由で解雇された」と述べている。

さらに広報担当者は「Blue Originは、いかなる種類の差別やハラスメントも容認しない」と付け加えている。「当社は、24時間365日の匿名ホットラインを含む多くのチャネルを従業員に提供しており、新たな不正行為の申し立てがあった場合には、速やかに調査を行う」。

連邦輸出管理規制により、特定の商品や技術の米国外への輸出が制限されているが、Blue Originは本稿執筆時点で、エイブラムス氏の退社に関する詳細を明らかにしていない。

現在Blue Originは、NASAがSpaceX(スペースエックス)に月着陸船を単独で発注したことをめぐって、NASAとの間の訴訟に巻き込まれているため、今回のエッセイはBlue Originにとって最悪のタイミングで公表されたものといえるだろう。自身も入札を行っていたBlue Originは、入札以降、ソーシャルメディア上で契約について異議を唱え、米国会計検査院(GAO)に対して強い抗議を行ってきたが、会計検査院はBlue Originの訴えを退けている

関連記事:連邦政府はSpaceXがNASAの月着陸船建造を受注したことに対するBlue OriginとDyneticsの異議を退ける

このエッセイは、この夏にVirgin Galactic(ヴァージン・ギャラクティック)のRichard Branson(リチャード・ブランソン)氏とベゾス氏自身が軌道に乗ったことで注目を集めた、いわゆる「億万長者宇宙競争」のために、安全性が後回しにされたと主張している。さらにこのエッセイでは、会社の幹部たちがBO(Blue Origin)のNew Shepard(ニュー・シェパード)宇宙船を年間40回以上打ち上げるという目標を表明していたが、それは危険極まりないペースであり、利用可能なスタッフやリソースがまったく足りていなかったと述べている。

「このエッセイに参加してくれたあるエンジニアは『Blue Originがこれまで何も起こさなかったことは幸運だった』という意見です」とエッセイの中には書かれている。「このエッセイの著者の多くが、Blue Originの宇宙船には乗らないと言っています」。

また、このエッセイに記載されている一連の告発の中には、多くの上級管理職の間に性差別の文化があったことも主張されている。その中には、Bob Smith(ボブ・スミス)CEOの「忠実な側近」と呼ばれる人物も含まれていて、この人物はセクシャル・ハラスメントで何度も人事部に報告されたことが書かれている。

このエッセイによると、女性社員の交際相手を詮索したり、女性社員を「sweetheart(スイートハート)」とか「baby girl(ベイビーガール)」などの表現で呼ぶといった、また別の上級管理職の不適切な行動について、会社の女性たちが新入社員の女性に警告していたという。

「彼はベゾス氏との親密な個人的関係によって守られているように見えましたが、女性の部下の体を実際に触ったことで、ようやく追放されたのです」とエッセイには書かれている。

このエッセイがBlue Originの業績に影響を与えないとは考えられない。8月にベゾス氏ら3人が、11分間のフライトで宇宙に行ったNew Shepardの打ち上げを成功させた後、同社はより多くの有料乗客を迎えることを計画している。

関連記事:Blue Origin初の有人飛行成功、ベゾス氏ら4人が宇宙を体験

エッセイの書き手の大半が匿名を選んだのは、2019年に従業員が署名を求められた「非誹謗中傷条項」を含む息苦しい新しい契約書によって、少なくとも部分的には説明できるとこのエッセイには書かれている。

この手紙は米連邦航空局(FAA)の目に留まったようで、同局はTechCrunchに対して「FAAはすべての安全性に関する申し立てを真剣に受け止めており、同局は情報を検討しています」と述べている。

TechCrunchは、手紙に書かれた他の疑惑についてBlue Originに問い合わせを行っており、回答があれば記事を更新する。

画像クレジット:MANDEL NGAN / AFP / Getty Images

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(文:Aria Alamalhodaei、翻訳:sako)