空き時間や余剰在庫を有効活用できるマケプレ運営のタイムバンクが総額39.5億円を調達

タイムバンクは1月8日、総額39.5億円の資金調達を実施することを発表した。第三者割当増資による調達で、引受先はLINE Ventures、ジャフコ、インキュベイトファンドなど。今回が同社初の外部からの資金調達となる。調達した資金は、認知度アップを目的として広告や事業者の開拓に投下される。

同社は、空き時間や余剰在庫を利用者に安価に提供するマーケットプレイスを運営する、2018年8月設立のスタートアップ。当初は専門家の空き時間を販売するスキルシェアサービスとして展開していたが、現在では店舗や施設などの時間貸しや飲食店やアパレル店などの余剰在庫を安価に手に入れらるマーケットプレイスを目指している。タイムバンクのサービスをテレビCMで知った読者も多いと思われるが、飲食店や各種販売店の製品や宿泊代などを、日程や条件付きで通常よりも少し安価で購入できる「ワケあり」オンラインショップに近い印象だ。

2019年11月末時点でタイムバンクを利用しているユーザーはIDベースで150万人。直近6カ月間で1000万円以上の売上を達成した事業者は30社を超え、中には5000万円以上を売り上げる事業者も複数存在するという。現在は一部の事業者に限定して情報を掲載しているが、今後は広くオンライン上から商品やサービスを掲載できるオープンなプラットフォームとして解放していく予定とのこと。

株式のようにコミュニティの価値を売買できる「fever」が3月オープン、事前登録ユーザーは3万人超える

2017年7月にサービスを発表したメタップスの「タイムバンク」は、人の時間を売買するサービスとして話題を集めた。株式のように自分の価値を売買できる「VALU」もある。それらのサービスに対し、3月よりリリースを予定しているAsobicaの「fever(フィーバー)」は、複数人で構成された“コミュニティ”の価値を売買できるサービスだ。

3名以上のメンバーが所属するコミュニティがfeverに“上場する”ことで、コミュニティの価値を表す「コミュニティコイン」を発行できる。コミュニティの活動に共感したり将来性を感じたりしたユーザーは、発行されたコインの購入を通してコミュニティへの金銭的な支援を行うことができる。

コインの購入に利用できるのは今のところ日本円のみだ。株式のように、1コインあたり〇〇円という価格で購入できる。コミュニティが発行できる総コイン数はAsobicaとコミュニティの運営側が協議の上、決定する。一方、コイン売り出し時の発行価格は、Asobicaがコミュニティの所属人数、SNSアカウントのフォロワーの人数などを参考に算出するという。

新規発行後のコインの価格は、株式と同じように取引所での需給関係で決まる。なので、将来性のあるコミュニティに“投資”をしておき、コインの価格が上がったところで売却したり、取引所で他のユーザーからコインを購入したりすることも可能だ。

また、コインは取引所で売買できるだけでなく、そのコミュニティが提供するサービスやプロダクトを意味する「チケット」と交換することもできる。例えば、コミュニティが何かしらのイベントを行うとすれば、その参加券やVIP席へのアップグレードがチケットで、その購入に利用できるのがコミュニティコインとなる。

ここまで聞くと、仮想通貨を発行することで広く資金を集める「ICO(イニシャルコインオファリング)」の仕組みと非常に似ているように感じる。こんなご時世でもあるから、気になるのはfeverで取引するコインは仮想通貨にあたるのかという点だ。

それについてAsobica代表取締役の今田考哉氏は、「コミュニティが発行するコインは、feverのサービス内でのみ売買できるものであり、不特定多数への売買を前提とした仮想通貨には当たらないと認識している」とコメントした。ただし、同社は将来的に、コインの決済手段として日本円だけでなくBitcoinなどの仮想通貨も受け入れていきたいとも考えており、そのために仮想通貨交換業者としての登録を現在準備中だとしている。

Asobicaは、2018年1月26日から2月9日にfeverへ上場するコミュニティの事前募集を行った。また、その事前募集したコミュニティの中からサービスリリース時点で上場できる5つのコミュニティを選ぶため、ユーザーによる投票を行うことも併せて発表した。

その結果、事前募集には計107のコミュニティが応募し、投票に参加した事前登録ユーザーの数は2万人以上となった。投票の後もユーザーの事前登録は受け付けており、現時点における事前登録ユーザーは約3万人だ。

ユーザー投票で選ばれた上位5つのコミュニティに加え、6位から20位のコミュニティから抽選で選ばれた2つのコミュニティがfeverの取引所へ上場することが決定している。

  • 黄桜すいプロジェクト: 秋田県由利本荘市の地域おこしを行う非営利民間団体
  • TOLAND: ビルを一棟単位でプロデュースし、カフェ、BAR、イベントスペースなどを運営
  • 日本ドローンレース協会(JDRA): オリンピック正式種目化を目指して活動するドローンレース団体
  • ぺーたーず: フリースペースの「ひみつきち」運営。昼はイベント、夜はカフェバーに変身
  • 箕輪編集室: 編集者の箕輪厚介氏が率いるクリエイティブチーム
  • イケハヤ経済圏:バーチャルブロガー「イケハヤ」を取り巻く経済圏
  • YBP PROJECT TEAM:日本初の世界基準BMXレースコース「YBP(Yuta’s Bike Park)」を運営

なお、各コミュニティの上場日や提供するチケットは、今後fever運営とのすり合わせの上で決定する予定だ。

今田氏は、2018年の終わりまでに数百のコミュニティを上場させたいと話す一方で、ユーザーが購入するコインの対価となるサービスやプロダクトを当該コミュニティが本当に持ち合わせているのかなど、コミュニティの質をチェックしながら徐々に数を増やしていきたいと語る。

Asobica代表取締役の今田考哉氏

今田氏は学生時代、出身地の福井県を盛り上げたいとの思いから、現地で野外音楽フェスティバルの運営活動を行っていた。その活動は徐々に規模を増し、福井県では「最大規模」とも呼べるほどに成長したという。しかし、今田氏は4回目の野外フェスティバル運営で失敗し、学生にして約50万円の借金を背負うことになった。

その時、「応援しているよ」という支援の“声”と、実際の金銭的な支援のあいだには大きなギャップがあることを改めて実感したと今田氏は話す。

「その経験で資金調達の仕組みに興味をもつようになった。その結果たどり着いたのが『クラウドファンディング』だったが、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる側は毎回ページを作り込む必要があるなど、ハードルが高い。一方で、支援する側には『応援はしたいけれど、その代わりに受け取る商品はいらない』という人もいる。支援の見返りとして受け取るコインを売買できるようにすれば、支援する人のモチベーションを高めることができるのではないかと考えた」(今田氏)

feverを運営するAsobicaは2017年9月の設立。これまで外部調達を行っていないが、同社初となる資金調達ラウンドに向けて準備を進めている最中だという。

専門家の“時間”を売買するメタップスの「タイムバンク」、iOSアプリを公開

7月にサービスを発表して注目を集めていたメタップスの「タイムバンク」。そのiOS向けアプリが9月11日に公開された。App Storeから無料でダウンロードできる。Android向けアプリも提供準備中だという。

アイドルからアスリート、経営者などの専門家が時間を売買

タイムバンクは「時間」を売買するマーケットだ。アイドルやアスリート、経営者、クリエーターといった専門家の時間を10秒単位でリアルタイムに売買できる。時間の売買は、株価のように日々の取引で変動する。また、時間の売買に加えて、専門家が設定する条件を満たすと「リワード」として購入した時間を使用できる。例えば時間を売りに出している専門家と出会う、講演してもらう、ランチやディナーを楽しむ、といった具合だ。

専門家のファンであれば時間を持ち続けて応援することもできるし、それを行使して専門家と出会ったり力を借りることもできるし、その専門家の時間を求める人へ、自身が保有する時間を売ることもできるというサービスになっている。なお、時間の売買や時間購入のための出入金時には、所定の手数料がかるとしている。

メタップスでは7月のサービス発表とあわせて、時間を発行する専門家の申請(SNSの影響力や信頼性、専門性をもとにスコアを算出、同スコアが57以上でないと申請に通過しないとしていた)を受け付けている。

現在アプリ上には、タイムバンクの運営アドバイザーでもあるキッズライン代表取締役社長の経沢香保子氏ら5人の時間について新規発行がアナウンスされている状況だ。金額を見てみると、例えば経沢氏の時間は1秒72.3円で売り出される世予定となっている。メタップスによると、当初は専門家が一度に売りに出せる時間は1000万円未満。また専門家とユーザーとのお金のやり取りは、同社が仲介に入ることで、安心して利用できる運営体制を構築するとしている。

審査は「かなり硬い」、今後は1日数人ペースで専門家を拡大

ただし、アナウンスされている時間の売買はいずれも9月13日から。なお申請通過後の審査に関してはかなり時間をかけているそうで、今後1日数人程度のペースで専門家の数を拡大していくとしている。

「基本的にはSNSスコアの審査に通った方に一人ずつご連絡して、時間の内容の調整から注意事項の確認など一件一件すり合わせてやっていってるかたちです。だいぶウェブっぽくないやり方ですが、決済事業を通して審査の重要性は身に染みているので泥臭いやり方でやっていこうと思ってます。経営陣の大半が金融出身者なのと、(自社が)公開企業なので、かなり硬い人達でやっています」(メタップス代表取締役CEOの佐藤航陽氏)