ユーザーデータをもとにフレッシュなイベント企画を創案するFeverに楽天などが投資

独自のアルゴリズムで企業のイベント企画立案を助けるFeverは米国時間8月3日、日本の大手インターネット企業楽天の投資部門である楽天キャピタルがリードするラウンドで3500万ドル(約37億2000億円)を調達した、と発表した。参加したそのほかの投資家は、Atresmedia、Accel、およびかつてAlibaba Groupへの米国からの投資をリードしたMichael Zeisser(マイケル・ツァイザー)氏だ。これでFeverの調達総額は7000万ドルになる。なおツァイザー氏は、Feverの取締役会に加わる。

マドリードとロンドンにオフィスのあるFeverのアプリは、ユーザーのために個人化されたイベントリストを作り、それを同社のSecret Media Networkに送る。そのネットワークは、企業のソーシャルメディアチャネルからもユーザーデータを集める。匿名化されたそれらのデータはFeverのアルゴリズムで分析され、企業のイベント立案を助ける。過去の例としてハリウッドの「The Alice in Wonderland MaddHatter G&T」や、ハロウィーンをテーマとするロサンゼルスの「House of Spirits」、若者向けのクラシック音楽コンサート「Candlelight Concerts」などがある。

現在同社の月間ユニークユーザーは、およそ2500万人がロンドンやニューヨーク、パリ、マドリードなどにいる。今度の新しい資金で、対象都市をもっと増やす予定だ。

FeverのCEOであるIgnacio Bachiller(イグナシオ・バチェラー)氏によると、次の拡張対象都市はシカゴとバルセロナだ。昨年はパリとロサンゼルスとリスボンとマンチェスターでローンチした。今後は2カ月に1都市のペースで主に米国とヨーロッパの都市に新市場を開拓したい。そして来年はアジアも狙う。イベント発見プラットホームはFeverのほかにもあるが、バチェラー氏によると同社の差別化要因は、「ユーザーの行動データを直接利用して需要を予測し、彼らのためにどんな新しい体験を作ってやればよいかを企業顧客に知らせること。体験のNetflix(既存再利用作品)というものは存在しないから、毎回新しい創造性がすべてだ」、という。

そしてバチェラー氏によれば、今後は楽天のそのほかのポートフォリオ企業とも協力して、中小企業が彼らの顧客の参加性を増やせるような企画を打っていきたい。

画像クレジット: Fever

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(翻訳:iwatani、a.k.a. hiwa

株式のようにコミュニティの価値を売買できる「fever」が3月オープン、事前登録ユーザーは3万人超える

2017年7月にサービスを発表したメタップスの「タイムバンク」は、人の時間を売買するサービスとして話題を集めた。株式のように自分の価値を売買できる「VALU」もある。それらのサービスに対し、3月よりリリースを予定しているAsobicaの「fever(フィーバー)」は、複数人で構成された“コミュニティ”の価値を売買できるサービスだ。

3名以上のメンバーが所属するコミュニティがfeverに“上場する”ことで、コミュニティの価値を表す「コミュニティコイン」を発行できる。コミュニティの活動に共感したり将来性を感じたりしたユーザーは、発行されたコインの購入を通してコミュニティへの金銭的な支援を行うことができる。

コインの購入に利用できるのは今のところ日本円のみだ。株式のように、1コインあたり〇〇円という価格で購入できる。コミュニティが発行できる総コイン数はAsobicaとコミュニティの運営側が協議の上、決定する。一方、コイン売り出し時の発行価格は、Asobicaがコミュニティの所属人数、SNSアカウントのフォロワーの人数などを参考に算出するという。

新規発行後のコインの価格は、株式と同じように取引所での需給関係で決まる。なので、将来性のあるコミュニティに“投資”をしておき、コインの価格が上がったところで売却したり、取引所で他のユーザーからコインを購入したりすることも可能だ。

また、コインは取引所で売買できるだけでなく、そのコミュニティが提供するサービスやプロダクトを意味する「チケット」と交換することもできる。例えば、コミュニティが何かしらのイベントを行うとすれば、その参加券やVIP席へのアップグレードがチケットで、その購入に利用できるのがコミュニティコインとなる。

ここまで聞くと、仮想通貨を発行することで広く資金を集める「ICO(イニシャルコインオファリング)」の仕組みと非常に似ているように感じる。こんなご時世でもあるから、気になるのはfeverで取引するコインは仮想通貨にあたるのかという点だ。

それについてAsobica代表取締役の今田考哉氏は、「コミュニティが発行するコインは、feverのサービス内でのみ売買できるものであり、不特定多数への売買を前提とした仮想通貨には当たらないと認識している」とコメントした。ただし、同社は将来的に、コインの決済手段として日本円だけでなくBitcoinなどの仮想通貨も受け入れていきたいとも考えており、そのために仮想通貨交換業者としての登録を現在準備中だとしている。

Asobicaは、2018年1月26日から2月9日にfeverへ上場するコミュニティの事前募集を行った。また、その事前募集したコミュニティの中からサービスリリース時点で上場できる5つのコミュニティを選ぶため、ユーザーによる投票を行うことも併せて発表した。

その結果、事前募集には計107のコミュニティが応募し、投票に参加した事前登録ユーザーの数は2万人以上となった。投票の後もユーザーの事前登録は受け付けており、現時点における事前登録ユーザーは約3万人だ。

ユーザー投票で選ばれた上位5つのコミュニティに加え、6位から20位のコミュニティから抽選で選ばれた2つのコミュニティがfeverの取引所へ上場することが決定している。

  • 黄桜すいプロジェクト: 秋田県由利本荘市の地域おこしを行う非営利民間団体
  • TOLAND: ビルを一棟単位でプロデュースし、カフェ、BAR、イベントスペースなどを運営
  • 日本ドローンレース協会(JDRA): オリンピック正式種目化を目指して活動するドローンレース団体
  • ぺーたーず: フリースペースの「ひみつきち」運営。昼はイベント、夜はカフェバーに変身
  • 箕輪編集室: 編集者の箕輪厚介氏が率いるクリエイティブチーム
  • イケハヤ経済圏:バーチャルブロガー「イケハヤ」を取り巻く経済圏
  • YBP PROJECT TEAM:日本初の世界基準BMXレースコース「YBP(Yuta’s Bike Park)」を運営

なお、各コミュニティの上場日や提供するチケットは、今後fever運営とのすり合わせの上で決定する予定だ。

今田氏は、2018年の終わりまでに数百のコミュニティを上場させたいと話す一方で、ユーザーが購入するコインの対価となるサービスやプロダクトを当該コミュニティが本当に持ち合わせているのかなど、コミュニティの質をチェックしながら徐々に数を増やしていきたいと語る。

Asobica代表取締役の今田考哉氏

今田氏は学生時代、出身地の福井県を盛り上げたいとの思いから、現地で野外音楽フェスティバルの運営活動を行っていた。その活動は徐々に規模を増し、福井県では「最大規模」とも呼べるほどに成長したという。しかし、今田氏は4回目の野外フェスティバル運営で失敗し、学生にして約50万円の借金を背負うことになった。

その時、「応援しているよ」という支援の“声”と、実際の金銭的な支援のあいだには大きなギャップがあることを改めて実感したと今田氏は話す。

「その経験で資金調達の仕組みに興味をもつようになった。その結果たどり着いたのが『クラウドファンディング』だったが、クラウドファンディングでプロジェクトを立ち上げる側は毎回ページを作り込む必要があるなど、ハードルが高い。一方で、支援する側には『応援はしたいけれど、その代わりに受け取る商品はいらない』という人もいる。支援の見返りとして受け取るコインを売買できるようにすれば、支援する人のモチベーションを高めることができるのではないかと考えた」(今田氏)

feverを運営するAsobicaは2017年9月の設立。これまで外部調達を行っていないが、同社初となる資金調達ラウンドに向けて準備を進めている最中だという。