ツクルバの社外取締役にLayerX代表福島氏、アトラエCFO鈴木氏が就任へ

リノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」などを展開するツクルバは9月13日、同日開催の取締役会においてグノシー創業者で現LayerX代表取締役社長の福島良典氏、アトラエ取締役CFOの鈴木秀和氏を新任の社外取締役候補者として内定したことを明らかにした。

本件は10月25日に開催する第8回定時株主総会における承認を経て、正式に決定される予定だという。

2011年設立のツクルバはcowcamoやコワーキングスペース「co-ba(コーバ)」など“場の発明・デザイン”に関する事業を複数展開するスタートアップ。今年7月31日には東証マザーズに新規上場を果たしたばかりだ。

今回新たに取締役を追加する背景について同社代表取締役CEOの村上浩輝氏に確認したところ、未上場時から多様な経験を持つメンバーに役員として参画してもらってきた中で、7月に上場企業になり多数の少数株主にも応援してもらう立場になったため「(主にコーポレートファイナンス、IR、技術活用の面で)新たに上場企業の経営という経験を持ち成長のための攻めのガバナンスを効かせてくれる方を探していた」という。

以前から福島氏は同社のエンジェル投資家として、鈴木氏は大和証券在籍時にツクルバの主担当として関わりがあったが、改めてこの2人を選任した理由について聞くと以下の回答が得られた。

「福島氏は東京大学大学院在籍時の専攻はコンピュータサイエンスおよび機械学習。在籍中に未踏のスーパークリエータ認定されたエンジニアであり、自ら在学中に起業した会社を20代で上場させ上場企業の経営も4年やっている。テクノロジーを用いた事業展開をする我々にとって必要な知見を持っていると考えている」

「鈴木氏は大和証券公開引受部に所属し、アトラエ、ラクスル、メルカリなどのIPOディールを主担当として成功させてきた実績を持ち、現在はアトラエの取締役CFOとして上場企業の経営を行っている。鈴木氏の大和証券在籍時にはツクルバの主担当を務めてもらっていた。IPO時のエクイティストーリーと上場後の財務戦略、IRが長きにわかって一貫していることが非常に重要だと考えており、我々にとって必要な知見を持っていると考えている」(村上氏)

また本件については福島氏からもコメントを得られたので、合わせて紹介する。

「ツクルバさんは、不動産領域において社会的に非常に重要な事業をやっており、その経営に携われるということに魅力を感じました。また私が現在経営しているLayerXは不動産証券化の事業をやっており、経営に携わることで得られる知見があるだろうという思いもあります。現在不動産領域はグローバルではPropTechと呼ばれ非常に投資が集まってる領域であります。日本の不動産領域にもテクノロジーが侵食していくことは確実でありその過程に携わりたいと思っています」(福島氏)

ブロックチェーンを活用した空間サービスのマーケットプレイス「Cryptorealty」にLayerX・ツクルバが参画

左から、LayerX代表取締役社長 福島良典氏、Property Access CEO風戸裕樹氏、ツクルバ代表取締役CEO村上浩輝氏

シンガポールを拠点とし日本と世界の不動産取引支援プラットフォームを構築するProperty Access Assetは8月30日、ブロックチェーンを活用したマーケットプレイスを創造するプロジェクト「Cryptorealty」を発表した。マーケットプレイスの対象となるのは、主に東南アジアの空間・サービスだ。

同プロジェクトにはGunosyとAnyPayの合弁会社として8月1日に設立されたばかりのブロックチェーン関連事業を行うLayerX、ならびにリノベーション住宅の流通プラットフォーム「cowcamo(カウカモ)」の運営などを手がけるツクルバがパートナーとして参画。LayerX代表取締役社長 福島良典氏はテクニカル・アドバイザー、ツクルバ代表取締役CEO村上浩輝氏はストラテジック・アドバイザーとして関与している。

以前にもお伝えしたとおり、Gunosyとツクルバは2018年5月よりブロックチェーン技術の不動産領域への活用にむけた共同研究を開始しており、LayerX設立以降、Gunosyのブロックチェーンチームは同社へ移行している。

Cryptorealtyへの関与はその共同研究の第一弾の成果になるのだと福島氏・村上氏は意気込んでいる。

Cryptorealtyは商業空間や空間を活用したサービスの創出・利用を、誰もが見える形で取引できるよう促すマーケットプレイス。空間・サービスを提供するオペレーターとプロジェクトを支援する支援者、そしてユーザーが空間およびサービスの利用権を販売や購入、レンタルをすることができる。

従来のREIT(不動産投資信託)やクラウドファンディングでは成しえなかった不動産領域での資金調達の課題の解決を目指す。

「REITでは非常に大規模なプロジェクトしかリスティングされず、かつ、例えば日本のJREITだと国内の投資家など限られた人しか買えなかったので、中小規模のデベロッパーにとってはファンディングの機会が非常に限られていた。クラウドファンディングでは、モノづくりのプロジェクトは相性が良いが、不動産のプロジェクトだと相性が非常に良くなかった。また、銀行からも資金を借りづらい。Cryptorealtyはそこを解決するようなプロジェクトだ」(村上氏)

Cryptorealty上ではオペレーターが自分たちの利用権をデジタルアセットとしてトークン化し、プラットフォームに登録する。サポーターやユーザーは利用権を買い、貸し出すことでリターンを得られたり低価格で高品質なサービスを利用できる。

Cryptorealtyの特徴は、ファンや応援者以外に、投資家の性質を持った支援者も集まりやすい点だ。福島氏は「従来のクラウドファンディングは基本的にファンが参加するもの、利用者が参加するものだったが、レンタルがあることによってユーザー以外のファンが参加できる」と説明する。

また、ブロックチェーンによる「トラストレス」な環境を整備することで、グローバルなオファーも期待できる。「ブロックチェーンを活用することで、利用権や所有権の移転や、それを“この時間で貸します”といったことが簡単にできる。ブロックチェーンは不動産領域と非常に相性が良い」(村上氏)

福島氏は「従来のプロジェクトは単純に仮想通貨で不動産が買える、というものが多かった。僕たちはもう少し踏み込み、トークンを絡めて今の世の中の不動産の課題を解決するものが作れないかと考えていた」と今回の参画について話していた。

ツクルバが新組織とコワーキングスペース、リノベ物件販売の「cowcamo」中心に開発を強化

左からツクルバ代表取締役CCO・クリエイティブディレクターの中村真広氏、代表取締役CEOの村上浩輝氏

リノベーション住宅など、中古住宅に特化した流通プラットフォーム「cowcamo」の運営などを手がけるツクルバ。同社が新たな組織となる「tsukuruba studios(ツクルバスタジオ)」を立ち上げた。また、オフィススペースの一部にコワーキングスペースを設置(12月に完成予定)。社内外のクリエイターによる共創の場を作るという。

2011年設立にツクルバは、不動産業・ウェブのビジネスを経験した代表取締役CEOの村上浩輝氏と建築学科出身・デザインに精通した代表取締役CCO・クリエイティブディレクターの中村真広氏による共同創業のスタートアップ。もともと東京・渋谷のコワーキングスペース「co-ba」の運営から事業を開始したが、その後は空間プロデュース(たとえ東京・六本木にあるメルカリのオフィスも彼らのデザインだ)やcowcamoのような自社サービス(11月24日にはcowcamoのアプリもリリースした)、グループ会社であるアプトによるリアルスペース運営(11月にアカツキが買収)などを手がけてきた。

「受託から自社事業の会社を目指す」とは以前の取材でも聞いていたが、空間デザインを中心にしたクライアントワークはメルカリのオフィスなど大きいものやコンセプチュアルなものに限定しているとのことで、すでに自社サービスのcowcamoがビジネスの中心になっているのだという。同サービスは月次流通額で二桁億円規模まで見えており、年次ベースでは三桁億円まで届く見込み。すでに事業部単位での黒字化も達成しているのだという。開発体制も強化しており、この1年で社員は25人から60人弱に拡大。その3分の1がデザイナーやアーキテクト、エンジニアといったクリエーター人材だ。

「『デザインの会社がとりあえずウェブサービスをやっているんでしょ?』といった文脈で捉えられることも多いが、リリースから2年を越えて、cowcamoは相当な成長をしている。6月頃にはティッピングポイントを超えたと思っている。サービス開始当初から、全体の体験や価値観にこだわってきたからこそで、それができたのは共同代表の中村がクリエーター出身ということも大きい」(村上氏)

今回新設するtsukuruba studiosは、そんな自社サービスに関わるクリエーター人材の拡大を狙っているようだ。これまで事業部ごとに紐付いていたクリエーターを新設のスタジオに集約。今後はプロジェクト単位でスタジオに所属するクリエーターが関わるような開発体制を採るという。またスタジオ立ち上げに際して、エンジニアを20人規模で採用することを目指す。加えてコワーキングスペースでは、社内クリエーターに加えて外部クリエーターがさまざまなプロジェクトに関わり、共創する環境を作るをことを狙うとしている。

tsukuruba studiosのメンバーら。立ち上げ準備中のコワーキングスペースにて