ノーコードで営業やマーケティングのためのデモが作れるWalnut、4カ月で700%の成長を遂げ約40億円調達

ヨアヴ・ビルナー氏とダニー・フリードランド氏(画像クレジット:Walnut)

企業の営業やマーケティングのためにノーコードでデモを作ることができるサービスWalnutが、8月の1500万ドル(約17億2000万円)のシリーズAに続き、シリーズBの3500万ドル(約40億円)の資金調達ラウンドを発表した。

Walnutのノーコードプラットフォームは、カスタマイズされた製品デモを迅速に作成し、営業やマーケティングのプロセスに統合することができ、さらにデモから洞察を得ることができる。

共同創業者でCEOのYoav Vilner(ヨアヴ・ビルナー)氏によると、シリーズA以降同社は、年間経常収益が700%という驚異的な成長を示した。同社は現在、Adobe、Dell、Medallia、NetApp、Treasure Data、Funnel、People AI、ContractBookといった100近いSaaSの顧客と提携している。

「発表直後から、多くの投資家が関心を寄せてくれた。当初の予定では、もっと後に資金調達するつもりだったが、このペースを維持していることから、今がチャンスだと思いました。ラウンドの間隔が3カ月というのは珍しいことですが、私たちが作っているものは、間違いなくもっと資金が必要な状態だったのです」とビルナー氏はいう。

最前のラウンドをリードしたFelicis Venturesは、これまでの累積で同社に5600万ドル(約64億1000万円)を与えている。ビルナー氏によると、Felicisという社名は彼がこれまで何度も耳にした名前であり、共同創業者のDanni Friedland(ダニー・フリードランド)氏もFelicisのSaaSとソフトウェアを対象とする投資に関心を示し、Walnutに合ってると感じた。

Felicisに加わったのは既存の投資家NFXとEight Roads Ventures、そしてA Capital、および戦略的エンジェル投資家のグループ、すなわちSalesforceの社長でCMOのSarah Franklin(サラ・フランクリン)氏、Oktaの共同創業者Frederic Kerrest(フレデリック・ケレスト)氏、TripActionsの共同創業者でCEOのAriel Cohe(アリエル・コーエ)氏、Papaya Globalの共同創業者でCEOのEynat Guez(アイナット・ゲズ)氏だ。

この新たな資金でWalnutは、米国とヨーロッパとイスラエルのチームを現在の55名から合わせて100名近くに増員できるとビルナー氏はいう。またもちろん、技術と製品開発にも注力する。

「ようやく需要を満たし、国を越えて人材を増やし、さまざまな接点での販売を促進するためのより広いプラットフォームを構築できるようになる。まだ名前すらない新しいカテゴリーを作っていますが、私たちの目標は販売スペースに革命を起こすことです。」と彼は付け加えた。

FelicisのゼネラルパートナーViviana Faga(ビビアナ・ファガ)氏と副社長のJake Storm(ジェイク・ストーム)氏はこのラウンドのリード投資家で、Walnutが行っていることを「sales experience」と呼び、同社は市場開拓のチームが顧客と対話できるようにしているという。ただしパンデミックである現在、誰も営業に会いたいとは思わないため困難な仕事だとファガ氏はいう。

それでもファガ氏は、Walnutのようなツールにとって今は好機だという。企業は、デモにますます力を入れようとしているからだ。また、営業チームだけが利用するのではなく、マーケティングやカスタマーサクセスチームもこの技術を採用するようになっている。ストーム氏によると、その結果、現在のWalnutはより効率的な販売の実現とボトムアップの成長に向けた取り組みという2つの波に乗っているという。

「ヨアヴ(・ビルナー)とダニー(・フリードランド)に会った時、私たちは彼らが巨大なチームを作ることを知っていたし、Walnutを使いたいと願うユーザーのウェイトリストを見て、私たちはそれが世界で必要な解決策であることを知りました」とファガ氏は付け加えた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Hiroshi Iwatani)

手軽にインタラクティブなデモを体験できる動画作成ツールArcadeが約2.88億円調達

Arcadeのチーム。左から、Charlie McGeorge(チャーリー・マックジョージ)氏、キャロライン・クラーク氏、リッチ・マナラン氏(画像クレジット:Arcade)

試してみたいアプリやツールはたくさんある。大半の企業は試用したい人に対して標準的なフォームへの入力、その後にユーザー名とパスワードの作成を求める。手続きをすべてした後で、そのアプリは評判通りではないことがわかったりする。

Arcadeはこの状況を変えようとしている。米国時間1月11日に正式に発表されたこのインタラクティブデモの会社は、企業が「アーケード」と呼ばれるデモビデオを簡単に作成してツールの動作を紹介できるようにする。

以前にAtlassianの同僚だったCaroline Clark(キャロライン・クラーク)氏とRich Manalang(リッチ・マナラン)氏が創業した同社は、シードラウンドで250万ドル(約2億8800万円)を調達したことも発表した。このラウンドを主導したのはUpfront Venturesで、SequoiaとBondの他Mathilde Collin(マチルデ・コリン)氏、Laura Behrens Wu(ローラ・ベーレンス・ウー)氏、Jaren Glover(ジャレン・グラバー)氏、Eric Wittman(エリック・ウィットマン)氏、Jonathan Widawski(ジョナサン・ウィダウスキー)氏、Lenny Rachitsky(レニー・ラチツキー)氏などのエンジェル投資家も参加した。

クラーク氏とマナラン氏は2021年前半にArcadeを創業し、2021年7月にプライベートベータ版を公開した。これまでに約300社が順番待ちに登録した。そのうち90社は無料版の使用を開始し、125以上のアーケードが制作された。

Arcadeではクリックする場所を記録したデモを作り、それをプロダクトのスニペットとしてウェブサイトやブログ、ツイートに埋め込むことができる。このようにして、プロダクトを使ったことのない人が試用版を申し込む前に動作を見ることができる。

マーケティング畑のクラーク氏はTechCrunchに対し、プロダクト・レッド・グロースというコンセプトの先駆者であるAtlassianに同氏とマナラン氏が在籍していたときに、顧客の多くはウェブサイト以外のところでAtlassianのプロダクトを発見していることに気づいた。問題は、そうした発見をより良いものにするための解決策がわからないことだった。

クラーク氏は「プロダクトから何を得られるかを明確に示し、人々が簡単に楽しく発見できるようにしたいと考えました」と述べた。

顧客は購入するプロダクトやツールに常に期待を持っているが、クラーク氏によれば、やみくもにサインアップすることはもうしたくないというようにここ数年で考え方が変化しているという。

これまで販売はデモの背後に隠れて関与し、企業は誰かの情報を獲得すると「やった!」と喜んでいた。クラーク氏の説明によれば、Arcadeの顧客の1つであるClockworkは財務の専門家と関わる企業で、見込み客に対して請求書をClockworkのプロダクトと関連づければClockworkの動作を確認できると説明することが多かったが、これはハードルが高い。Arcadeを利用することでClockworkは見込み客に対して請求書のデータをアップロードすることなくプラットフォームの動作を見てもらえるようになった。CartaもArcadeを利用している企業の1つで、アーケードを自社のさまざまなソーシャルメディアで展開しているとクラーク氏は述べた。

Arcadeは新たに調達した資金でプロダクトとウェブサイトを構築し、エンジニアリングとプロダクトデザイナーも増員する。クラーク氏は、3人のチームで90社をサポートしてきたが2022年中にはスタッフを倍増したいと語る。

同社は今後、マーケティング、機能、展開に力を入れていく。

クラーク氏は「自社のデータを実際に使う前に動作がわかるようにしていきます。プロダクトのアップデート、他のプロパティとの統合、顧客がさらにパワフルなツールを作れる機能に投資する予定です」と述べた。

Upfront VenturesのパートナーであるAditi Maliwal(アディティ・マニワル)氏はメールで、クラーク氏とは数年来の友人で「5年から、長くて10年のジャーニーをともにすることを大変うれしく思っています」と記した。

マリワル氏はさらに次のように述べた。「クラーク氏はバリュードリブンで、知的で誠実な創業者です。私は力のある創業者に投資をします。ファウンダーマーケットフィットで本物のビジョンを作れる創業者です。私は極めて早い段階で、キャロライン(・クラーク氏)が何を作っているにしても投資したいと思っていました。PLG(プロダクト・レッド・グロース)の市場も成長が早く、また現在の私たちの世界はほとんどバーチャルになっています。ベンダーのプロダクトを試すために営業担当者とZoomや電話をするという考え方は、ユーザーのニーズやフローに混乱をもたらすと思います。ユーザーにとっては、ベンダーのランディングページで自分のデータの実例をシンプルに見ることができればもっとずっと手軽であるはずです。Arcadeによってクリエイターは魅力的なエクスペリエンスを作り、自分の仕事に誇りを感じられるようになります」。

Arcadeを創業した2人は顧客になる可能性のあるデザインパートナーを見つけようとしていたと、マリワル氏は最初から考えている。Atlassianで仕事をしていたころ、創業者の2人はプロダクトを見込み客や顧客に見せる効果を実際に体験していた。

マリワル氏は「2人はペインポイントを極めて早い段階で理解していました。2人は、差別化は結局デザインの楽しさであり、マーケッターとエンドユーザーにとってできるだけシンプルにすることであると認識しています。キャロラインとリッチ(・マナラン氏)は強力な会社を作ることに努めていて、まずデザインに優れたプロダクトと優秀なチームを作ることからスタートしました」と述べた。

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(文:Christine Hall、翻訳:Kaori Koyama)