AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIAが約16億円を調達

トロントに拠点を置く、AIを活用した製薬会社向け商業インサイトプラットフォームのODAIA(オダイア)は、Flint Capital(フリント・キャピタル)が主導するシリーズA資金調達で1380万ドル(約16億円)を調達した。このプラットフォームは、データ分析、プロセスマイニング、AIを組み合わせ、製薬およびライフサイエンスの商業チームに予測分析を提供するものだ。この資金調達ラウンドは、同社が過去1年間でチームの規模を倍増させたことを受けて行われた。

このスタートアップは、製薬会社のコマーシャルチームが彼らの処方者について何を知る必要があるか判断するのを手助けし、最適なチャネルを通じて正しいメッセージを伝え、最終的には、治療薬を必要とする患者に届けることができるようにすることを目的としている。同社は、プロセスマイニング、カスタマージャーニーマッピング、AIの分野における長年の研究開発の後、2018年にトロント大学で設立された。

「初期の研究作業のいくつかは、ペイシェントジャーニーを分析し、AIと機械学習を使ってそれらのジャーニーを最適化することを中心としていました」とODAIA共同創設者兼CEOのPhilip Poulidis(フィリップ・プーリディス)氏は、電子メールでTechCrunchに語った。「それは、処方者の取引、匿名化された患者の医療請求データ、人口統計学的および社会経済学的データ、匿名化されたラボデータなど、多くの異なるが関連するデータソースの分析を含むために、時間をかけて進化しました。MAPTUALは、上記のデータセットを分析し、予測的洞察を提供するSaaSプラットフォームで、標的治療薬の理想的な候補となる患者を治療している医師の優先順位付けと動的なセグメント化を行うもので、こうした研究・技術開発の積み重ねが、MAPTUALの誕生につながったのです」と述べる。

米国時間2月10日に発表された資金調達ラウンドには、Innospark Ventures(イノスパーク・ベンチャーズ)、Alumni Ventures(アルミナイ・ベンチャーズ)、Graphite Ventures(グラファイト・ベンチャーズ)の他、BDC Capital(BDCキャピタル)、MaRS IAF(マーズIAF)、StandUp Ventures(スタンドアップ・ベンチャーズ)、Panache Ventures(パナッシュ・ベンチャーズ)などODAIAの現在の投資家が参加している。同社によると、新たな資金調達は、プラットフォームの機能強化や、市場拡大をサポートするための営業、マーケティング、カスタマーサクセスチームの拡充に充てられるという。

画像クレジット:ODAIA

プーリディス氏は「今回の資金調達により、製品およびソフトウェアエンジニアリングチームの拡大、商業チームの拡大、プラットフォーム統合パートナーシップの拡大により、製品ロードマップの開発を加速させます」と述べている。

同社は、パンデミックによって顧客向け医薬品ビジネスが変化し、現在はDXが主な優先事項であると述べている。将来についてプーリディス氏は、同スタートアップの目標は、ライフサイエンスデータの多変量データ解析と予測的洞察を1つのプラットフォームで提供することであると述べている。このプラットフォームには、ライフサイエンス企業が処方者とペイシェント・ジャーニーをよりよく理解し、データとAIを活用してリアルタイムに対応できるような機能と能力が含まれると概説した。

同社のシリーズAラウンドは、2019年に発表された160万ドル(約1億8600万円)のシード投資に続くものだ。このラウンドは、Panache VenturesとStandUp Venturesが共同主導し、BDC CapitalのWomen in Technology Venture Fund(ウーマン・イン・テクノロジー・ベンチャー・ファンド)、Inovia Capital(イノヴィア・キャピタル)、MaRS IAFが参加した。この投資家グループは、Toronto Innovation Acceleration Partners(トロント・イノベーション・アクセレーション・パートナー)、トロント大学のUTEST(ユーテスト)、N49P、Ontario Centres of Excellence(オンタリオ・センター・オブ・エクセレンス、OCE)、Autonomic.ai(オートノミック・ドット・エーアイ、Fordが買収)の共同創業者であるAmar Varma(アマール・ヴァルマ)氏などのプレシード投資家に参加した。

画像クレジット:ODAIA

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

トロントのVFXスタートアップMARZが約5.9億円を調達し、AI技術ソリューションを開発へ

テクノロジーとビジュアルエフェクト(VFX)のスタートアップであるMonsters Aliens Robots Zombies(モンスター・エイリアン・ロボット・ゾンビ – MARZ)は、シリーズA資金として530万ドル(約5億9800万円)を調達した。この投資は、Round13 Captial(ラウンド13・キャピタル)が主導し、Rhino Ventures(ライノ・ベンチャーズ)とHarlo Equity Partners(ハーロ・エクイティ・パートナーズ)が参加した。MARZは今回の資金調達を、中核となるVFX事業の成長と、「 VFX用AI」技術ソリューションの開発を加速させるために使用する予定だ。

トロントを拠点とするこのスタジオは2018年に立ち上げられ、ストリーミング戦争に拍車をかけたVFXのキャパシティ不足や、それに伴うオンデマンドコンテンツの爆発的な増加、加入者数の増加を促進する上でのVFXの重要性など、エンターテインメント業界が直面するいくつかの課題に対処することを目的としたAIソリューションを開発している。

MARZの共同創業者兼共同社長のJonathan Bronfman(ジョナサン・ブロンフマン)氏は、TechCrunchにメールで「今回の資金は、現在開発中の2つのAI製品を含む 『VFX用AI』ソリューションの研究開発を加速するために使用します。これに伴い、資金はそれぞれ当社の研究、エンジニアリング、製品組織における主要な人材の採用に充てられます。また、この資金は、当社のハードウェア能力とインフラストラクチャの成長にも使用され、AIの研究開発を有意義に短縮するとともに、当社の両AI製品のキャパシティ効率を向上させるのに役立ちます」と述べている。

ブロンフマン氏は、資金の大半を独自のAIソリューションの開発に充てる一方で、従来のVFXサービス事業の成長を加速させるための資金でもあり、MARZのAI事業との相乗効果が期待できると述べている。

同社は、立ち上げから3年間で、Marvel(マーベル)の 『ワンダビジョン』、HBOの 『ウォッチメン』、Netflix(ネットフリックス)の『アンブレラ・アカデミー』、Apple TV+の 『インベージョン』など、88のプロジェクトを手がけてきた。MARZは、1年目に13件、2年目に21件、3年目に54件のプロジェクトを完了した。

MARZは、2019年に45人だった従業員が現在194人にまで増え、今後1年間でチームを300人にまで増やす予定だ。現在の従業員のうち、4分の1以上が機械学習や人工知能に注力している。MARZはトロントを拠点としているが、バンクーバー、ウィニペグ、モントリオール、マドリッド、ロサンゼルス、メルボルン、ロンドン、モスクワ、ムンバイ、メキシコシティなど、世界の各都市に拠点を置く分散型の従業員を擁するリモートファーストの企業だ。

「私たちの使命は、VFXを一般化させることであり、そうすることで、世界中のクリエイターが可能な限り野心的なビデオコンテンツを制作できるようにすることです。それが、ストリーミングサービスやハリウッドスタジオ、ゲームスタジオ、メタバース開発者、あるいはソーシャルメディアのコンテンツにVFXを統合したいと考えている才能ある新進気鋭のクリエイターであっても同様です」とブロンフマン氏は綴っている。

同社は、VFXとゲーム技術の両方に統合された、自動化されたAI駆動の製品群を作る予定だ。ハリウッドに対しては、MARZの製品でより野心的なコンテンツを作成できるようにすることを目指している。最終消費者のような他の市場について、MARZのソリューションは、VFXを史上初めてアクセス可能なものにすることを目指している、とブロンフマン氏は述べている。

Round13 CapitalのパートナーであるBrahm Klar(ブラーム・クリア)氏は、「MARZは、業界で最も急速に成長しているVFXスタジオのひとつであり、テクノロジーを活用して、最高の製品を記録的なタイムラインで提供することで定評があります。カナダで最も成功している投資家たちと一緒にMARZと提携することで、我々はチームと密接に協力して、これまでのような同社の並外れた成功を築くことができるのです。」と述べている。

画像クレジット:MARZ

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(文:Aisha Malik、翻訳:Akihito Mizukoshi)

企業の秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護する1Passwordが110億円調達、約2180億円の評価額に

左からDave Teare(デイブ・ティアー)氏、Jeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏、Sara Teare(サラ・ティアー)氏。

トロントを拠点とする1Password(ワンパスワード)は、高収益な上に財務状況を公開できるほど透明性が高いという稀有な企業の1つである。

そして2021年7月終わりに、同社はシリーズBラウンドで1億ドル(約110億円)の資金を調達し、同社の評価額を20億ドル(約2180億円)に倍増させたことを発表した。

かつては自力で運営していた1Passwordが2019年、初めて外部資本を調達したことはまだ記憶に新しい。Accel(アクセル)が主導した2億ドル(約220億円)のシリーズAは、同ベンチャー企業の35年の歴史の中で、単一の投資としては最大規模のものだった。2005年に設立された1Passwordは当時すでに、スタートアップとは言い難い存在だったのだが。

Accelが再度主導した今回のラウンドには、Ashton Kutcher(アシュトン・カッチャー)氏のSound Ventures(サウンド・ベンチャーズ)、Kim Jackson(キム・ジャクソン)氏のSkip Capital(スキップ・キャピタル)の他、Shopify(ショッピファイ)のCEOであるTobias Lütke(トバイアス・トビ・ルーク)氏、Shopifyの社長であるHarley Finkelstein(ハーレー・フィンケルシュタイン)氏、Slack(スラック)の共同創業者兼CEOであるStewart Butterfield(スチュワート・バターフィールド)氏、Squarespace(スクエアスペース)の創業者兼CEOであるAnthony Caselena(アンソニー・カセレナ)氏、Atlassian(アトラシアン)の共同CEOであるMike Cannon-Brookes(マイク・キャノン=ブルークス)氏とScott Farquhar(スコット・ファーカー)氏、Eventbrite(イベントブライト)の共同創業者兼会長のKevin Hartz(ケヴィン・ハーツ)氏などが名を連ねる。

CEOのJeff Shiner(ジェフ・シャイナー)氏によると、1Passwordは設立当初から利益を上げており、ARR(年間経常収益)は最近1億2000万ドル(約132億円)に達したという。Under Armour(アンダーアーマー)、Shopify、PGA、IBM、GitLab(ギットラブ)、Slack(スラック)、PagerDuty(ページャーデューティー)といった多数のビッグネームを含む9万以上の企業が、同社のSaaSプラットフォームを利用している。2019年11月の調達時の顧客5万社から、ここまでの増加である。

2組の創業者夫妻であるDave Teare(デイブ・ティアー)氏とSara Teare(サラ・ティアー)氏、Roustem Karimov(ルーステム・カリモフ)氏とNatalia Karimov(ナタリア・カリモフ)氏は、ウェブサイト構築の別の会社を成長させていく中で、パスワード管理に関する苦労に着目したことから1Passwordのアイデアを思いついた。

当初は消費者のみを対象としていたものの、その後パスワード管理サービスを企業にも提供するようになる。すでに成功を手にしていた同社は、これによりさらにレベルアップすることになる。

そして同社に目をつけたのが、ブートストラップ・ビジネスや収益性の高い企業に投資してきた実績のあるAccelだ。シリーズAラウンド、BラウンドともにAccelから投資の打診がきたのである。

AccelのパートナーであるArun Mathew(アラン・マシュー)氏は両ラウンドで1Passwordへの投資を推進しており「1Passwordは非常にユニークな企業プロフィールを持っています。このようなファンダメンタルズと指標を持ちながら、市場の追い風に乗っている企業を見るというのは本当に珍しいことです。今回のラウンドによって会社全体がこの市場を勝ち抜くためにさらにアグレッシブになれることを期待しています」と話している。

前回の増資以来1Passwordは進化し続けている。決して栄光に甘んじないという同社の精神を体現しているのだとシャイナー氏はいう。同社は174人いた従業員数を475人にまで増やしているが、その中には以前はなかったGo-to-Marketチームの結成も含まれている。

ここ数カ月の間に1Passwordはビジネスサービスを拡大しており、4月にはSecrets Automationを、さらに最近では「重要な」ビジネス情報を保護することを目的としたエンタープライズ向けサービスである1Password Eventsを発表。また、Linux Desktop Applicationや、SlackやRipplingとの統合も始動している。

画像クレジット:1Password

シャイナー氏によると、Secrets Automationにより企業のインフラの秘密を「マシン・ツー・マシン」で保護することができるという。

「パスワード管理は通常、人間と機械の間で行われます。そのためこれは私たちにとっては大きな勝利であり、今後はより広範なインフラに拡大することができます」と同氏。オランダのSecretHub(シークレットハブ)を買収したことで、Secrets Automationの立ち上げが実現したのである。

サイバーセキュリティ分野におけるスタートアップの数が、近年増え続けていることから、同社は新たな資本の一部をさらなる買収に充てようと計画している。

Accelのマシュー氏は「バランスシートが強化されたことで、想定内のリスクを取ることができるようになり、潜在的なM&Aや、機会があればさらに積極的な投資を行うことができるようになりました。この会社は約16年もの間、ビジネスにとっても消費者にとっても最高の秘宝の1つであり続けていると言えます」と話している。

新型コロナウイルス(COVID-19)によるパンデミックとそれにともなう在宅勤務の増加により、1Passwordのサービスに対する需要は高まる一方である。実際、1Passwordはビジネスアカウントごとに、各従業員が自宅で使用するためのファミリーアカウントを無料で提供しているという。

「仕事と家庭が混合するようになったため、これはユーザーにとって大きなメリットになるでしょう」とシャイナー氏。

この境界線の曖昧さこそが、Accelが1Passwordにさらなる可能性を見出している理由の1つである。AccelのパートナーであるEthan Choi(イーサン・チョイ)氏によると、同社のポートフォリオには24件のアクティブなセキュリティ投資があるという。

「今回の(1Passwordに対する)強化は、これが今日のセキュリティの最も重要な分野の1つであるという我々の信念を体現するものです。CIOやCISOは、従業員が生産性を高め、必要なアプリケーションにアクセスできるよう望んでいますが、同時にそれらが安全であることが大前提です」とチョイ氏。

1Passwordは16年前に設立されたにもかかわらず、まだ「表面をなぞっているに過ぎない」とシャイナー氏は考えている。

「我々の目前に広がっている莫大なチャンスに胸を躍らせています。急いで前進していかなければなりません」と同氏は話す。

多くの経験豊富な技術者の知見を得られたことも、より多くの資金を調達できた要因だとシャイナー氏はいう。

「Accelとはすでにすばらしい関係性を築いていますが、さらに多くの人材を迎え入れ、それによってもたらされる経験はこの上なく貴重なものです」。

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カテゴリー:ソフトウェア
タグ:1Password資金調達トロントAccel

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(文:Mary Ann Azevedo、翻訳:Dragonfly)