The New Paperは「真実最優先」のニュースダイジェストをメッセージングで配信

電子メールのニュースレターに登録するのはもううんざり?それなら、The New Paper(ザ・ニュー・ペーパー)を試してみてはどうだろう。毎日、大きな注目記事のダイジェストをメッセージングで送ってくれる。

インディアナポリスに拠点を置くこのスタートアップは、プライベートベータテストの終了を間もなく発表する。2019年に同社は、30万ドル(約3180万円)のプレシード投資を獲得したが、これにはインディアナ州のベンチャー投資企業であるElevate Ventures主催のピッチコンテストで獲得した8万ドル(約850万円)も含まれている。

創設者のMichael Aft(マイケル・アフト)氏とJohn Necef(ジョン・ニーセフ)氏が私に話したところによると、そもそもは、メールマガジンであるThe Hustle(ザ・ハッスル)で成長担当責任者を務めていたニーセフ氏の経験を活かして、電子メールによるニュースレターを開始するつもりでThe New Paperを立ち上げたという。だが、メッセージングのほうが適していると彼らは判断した。アフト氏は「日々の報道を正しく行う」と話している。

「私たちが毎日受け取る電子メールの量を考えてみてください」とアフト氏。「ストレスの元であり、やかましくて、しかもスパムやeコマースの宣伝も入ってくる環境です。メッセージングなら簡単で、クリーンで、ずば抜けて便利で身近です」。

事実、彼らが当初からの登録者から耳にした「よくある逸話」に、「よかれと思って」登録した電子メールのニューレターは、結局読まずにメールボックスに溜まっているというものがある。雑誌「New Yorker」を読まずに積み重ねたままにしてある、あのデジタルバージョンだと思えばいい。

もちろん、メッセージングはとても個人的な通信手段なので、実際に読みたいと思ったもの以外のメッセージに付きまとわれることは、まずあり得ない。しかしアフト氏は「登録したことを決して忘れない」という高いハードルを乗り越える挑戦に敢えて臨んだという。

画像クレジット:The New Paper

The New Paperは、テキストメッセージで配信するだけでなく有料サービスであるため、価値の高い情報を届ける必要がある。1週間の無料お試し期間を過ぎると、月5ドル(約530円)の料金がかかる。だがすでに、7000人を超える有料登録ユーザーがいる。

現在、そのダイジェストには6つの記事が掲載されている。それぞれに、各パブリッシャーへのリンクがある。さらに、株価動向の高度なスナップショットや新型コロナウイルス(COVID-19)の現在の感染状況など数々の情報を提供するThe Daily Dash(ザ・デイリー・ダッシュ)へのリンクもある。

アフト氏もニーセフ氏も、The New Paperのアプローチは「真実最優先」だと強調する。もちろん、客観性と正確性への献身を宣伝する報道機関は多く存在するが、2人には、政治的な立場が違っていても誰もが同意できる話の「共通の真実」を読者に提供したいという強いこだわりがある。

このアプローチの実例として、アフト氏はロシアによる選挙介入に関する米上院情報委員会の新しい報告書(The New York Times記事)の1件を挙げている。報告書に関する「二次的結論」、つまり記事の筆者や編集者の政治的信条に影響された結論を導き出すのではなく、The New Paperは議論の余地のない真実に焦点を当てるのだと、彼はいう。この場合は、委員会が報告書を出したという事実だ。

それを聞いた途端に、私は過去と現在の同僚編集者たちが髪を掻きむしる光景を想像した。彼らがリベラル派であり、トランプ政権が悪いように見せようと意図していたからではない。ロシアの諜報機関が選挙の介入を試み、トランプ陣営の構成員がそれを喜んで受け入れたという記者たちが掘り出した事実こそが本当のニュースであり、報告書が発表されたという単なる事実ではないからだ。

画像クレジット:The New Paper

言い換えれば、客観性と真実を強調するといえば聞こえはいいが、そこには重要な前後の脈絡や分析がおざなりにされる恐れがある。しかも、真実では人の心は動かない(The Washington Post記事)ことが、次第に明らかになってきている。

だが彼らのアプローチに難癖をつけながらも、それとは別に、先週のニュースのダイジェストを受け取れたことや日々のニュースを包括的にとりまとめ、詳しく知りたい人のためのリンクを付けるなど、かなり便利だと感じた点については喜んでお伝えしたい。

今は、アフト氏とニーセフ氏が自分たちでダイジェスト記事を書いているが、ランキングや並べ変えの大部分はアルゴリズムが行っている。ゆくゆくは、技術部門と編集部門に人材を増やしたいと考えている。さらに、電子メールや音声などの他のチャンネルへの拡大も計画している。

サブスクリプションのビジネスモデルを採用したのは、一般大衆を追いかける必要がないからかと私が尋ねると、アフト氏はこう答えた。「人々に共通の情報を届けることが、何よりも重要だと私たちは考えています。これを有効なビジネスモデルにするために1億人のユーザーが必要かといえば、当然違います。それが私たちが目指すゴールなのか?もちろんです。私たちはこの問題に情熱を燃やしているからです」。

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(翻訳:金井哲夫)

フェイスブックがユーザーアカウントと有料ニュースの購読登録を連携させるテストを実施中

Facebook(フェイスブック)は、ニュースパブリッシャーに有料購読登録をしているユーザーのソーシャルネットワークにおける利便性と有用性を高める新機能のテストを行っている。

仕組みはこうだ。フェイスブックはパートナーになっているパブリッシャーで有料購読登録をしているユーザーを特定すると、そのパブリッシャーのニュースアカウントをFacebookアカウントと連携することを促す招待をユーザーに送る。一度連携してしまえば、ユーザーがフェイスブック上でそのパブリッシャーの有料記事を発見したとき、ログインし直すなどの手間をかけずに読めるようになる。

また、パブリッシャーの購読者が自身のFacebookアカウントを連携させると、通常よりも多く、そのパブリッシャーの記事がフェイスブック上で提示されるようになる。同社は「今後、購読者の利便性向上のためのさらなる機能を開発し提供していく」とも話している。

The Atlanta Journal-Constitution(ジ・アトランタ・ジャーナル・コンステューション)、The Athletic(ジ・アスレティック)、 Winnipeg Free Press(ウィニペグ・フリー・プレス)は、すでにこの機能を試している。フェイスブックによれば、アカウントをリンクさせた購読者は、このテストに参加していないユーザーと比較して、平均して111%多く、記事をクリックするようになったという。さらに、これらの購読者のパブリッシャーのフォロー率は、34%から97%に増加した。

「Facebookアカウントとの連携は、The Athleticの購読者に、大好きなソーシャルメディアのプラットフォームで時を過ごしている最中でも我々の記事にアクセスできる便利で簡単な方法を提供してくれました」と、The Athleticの製品マーケティング担当副社長であるCharlotte Winthrop(シャーロット・ウィンスロップ)氏は声明の中で述べている。「これにより、弊紙購読者のエクスペリエンスは拡大し、The Athleticとの繋がりが保たれ、応援するチーム、リーグ、選手の最新情報が常に届けられるようになります」。

フェイスブックはこれまで、ニュースパブリッシャーと複雑な関係にあった。過去に、フェイスブックの方針転換に痛い目に遭わされたパブリッシャーも少なくない。

報道機関が、購読数を伸ばそうと外部のプラットフォームに依存する場合、一番の問題となるのは、購読者がどちらに帰属するかだ。その点、今回のフェイスブックのアプローチは、各パブリッシャーとの購読契約はこれまでと変わらず必要になるため、パブリッシャーにとってはだいぶ受け入れやすいものとなる(フェイスブックを通して購読するわけではないからだ)。

フェイスブックの現在のニュース戦略は、Facebook News(フェイスブック・ニュース)に重点を置いている。これは、Facebookアプリのメインの画面に表示されるジャーナリズム専用のタブで、最近になってグローバル展開が始まったばかり(未訳記事)のサービスだ。また同社は、限定的に無料でニュース記事を読めるようにするInstant Articles(インスタント・アーティクルズ)で、パブリッシャーの購読増進の応援(Facebookリリース)も行っている。また、ジャーナリズムへの資金援助の一環として、地方の報道機関が、フェイスブックを通していなくても購読者数が増やせるように援助するフェイスブックはLocal News Subscription Accelerator(ローカル・ニューズ・サブスクリプション・アクセラレーター)(未訳記事)も立ち上げている。

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(翻訳:金井哲夫)

Facebook、外部のファクトチェック協力者と偽ニュースの検出を開始

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Facebookが情報の真偽を裁定することなく、偽ニュースに対抗するため、Zuckerbergは以前6つの公約を発表した。今回そのうち4つを達成するため、Snopes、FactCheck.org、Politifact、ABC News、APの協力を得た。Facebookは偽ニュースの表示回数を減らし、ファクトチェッカーによりフィードに流れる偽ニュースに警告を付ける。また、偽記事を報告するのを簡単にし、スパマーが偽ニュースを作る金銭的なインセンティブを撤廃する。

「意見に関してグレーな部分を見るのではありません」とFacebookのニュースフィード部門のVPを務めるAdam Mosseriは言う。「この取り組みでは特に悪質な部分に注力します。多くはスパマーによるものですが、金銭的な利益のために意図的に偽ニュースをシェアする行為を阻止します」。

Facebookは、ユーザーやアルゴリズムがフラグした嘘の情報やバイラルに広がる偽ニュースに、PoynterのInternational Fact-Checking Networkにおけるファクトチェックの基本原則に基づいたファクトチェックサービスを通す。偏りがないこと、公平さ、情報源の透明性、資金源、修正への対応がチェック対象だ。Facebookはこの5項目から始めるが、これを十数項目まで増やし、記事の正確性においてコンセンサスを得られるようにしたい考えだ。

ファクトチェッカーが投稿を偽ニュースと判断した場合、ファクトチェッカーはFacebookが特別に用意した報告サイトから、偽ニュースであることを証明するリンクを貼って通知する。Facebookはその通知を元に、ニュースフィードでの表示回数を減らすという。ニュースフィードの記事には「(1人以上のファクトチェッカーにより)疑義がある内容」という警告と記事の誤りを証明する投稿のリンクを表示する。ユーザーが該当する投稿をシェアしようとする時も同様の表示が出る。Facebookは偽ニュースと判断された投稿を広告にすることも禁止する。

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Facebookは記事のチェック量が膨大な量にならないよう、偽ニュースの可能性があり、かつ人気の高いものをファクトチェックに送るという。もしパブリッシャー間で偽造かどうか意見が割れた場合、サードパーティーがチェックすることになる。MosseriはファクトチェックサービスにFacebookが対価を支払うことはないが、パブリッシャーにとっては偽造と証明するリンクを投稿することにより、トラフィックの増加とブランディングの向上にはつながるかもしれないと話す。

パブリッシャーが無料でファクトチェックの作業を行う理由についてMosseriは「多くの賛同の声がありました。私たちがやっていることや私たちが信じていることが、彼らのミッションと合致したのです」と説明する。パブリッシャーが多くの記事に偽物のラベルを乱用するリスクについてMosseriは「彼らの訴えは開示されるため、健全な監視が起きると思います。もしパブリッシャーがトラフィックを得るために他の記事が偽造であると主張した場合でも、ユーザーは彼らが意義を唱える内容を見て、問題があるなら指摘することができます。チェックやバランス機能はどちら側にもあると思います」という。

警告機能の他に、Facebookはユーザーが偽記事を報告しやすいよう、ニュースフィードの右上にあるドロップダウンメニューに機能を追加した。さらにFacebookは人々が記事を読んだ後にそれをシェアする回数を分析し、それが著しく低い場合は、投稿の価値が低いと判断し、ニュースフィードでの表示回数を減らすべきかどうかのシグナルにするという。

正当なパブリッシャーになりすますFacebookページ(例えばTechCrunch.comの偽物TechCrunch.coなど)の投稿の表示回数も減らす。また、Facebookは投稿に付いた「偽造」「嘘」といったユーザーのコメントを検知し、投稿の優先度を下げたり、ファクトチェックに送るようにするという。

最後の施策は、意図的に偽ニュースを広げる者の財布を狙うためのものだ。Facebookは、スパマーが正当なパブリッシャーへの誘導とみせかけて自社サイトに飛ばしているドメインなりすまし広告を締め出す。Facebookは疑わしいランディングページを確認し、主に広告のみのスパムサイトであるなら、彼らに対して厳しい措置を取ることも視野に入れているという。

Mosseriは「すべてが良い形になっていないというのは複数面で認識してますが、兼ね合いも必要です」と言論の自由を検閲することなく、誤った情報を阻止するためのバランスについて話す。「人々が発言できるということに意味があると思います。しかし一方でFacebookには偽ニュースの拡散を防ぐ責任もあります」。

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ZuckerbergがまだFacebookで取り組んでいるとした残り2つの施策は、自動で偽ニュースを検知するための分類機能を改良すること、そして投稿の下の「関連記事」に偽ニュースが表示されないようにすることだ。これらのアップデートはまずファクトチェッカーの多くがいるアメリカで展開を始めるが、「できる限り早く世界中で展開できるようにする」とMosseriは話す。

Zuckerbergは今日のアップデートに関して彼の考えを投稿している。

「Facebookはこれまであったものとは異なる新しいタイプのプラットフォームです。私はFacebookをテクノロジー企業だと考えていますが、私たちには単に情報が流れるテクノロジーを構築すること以上の責任があると認識しています。私たちはユーザーが読んだりシェアしたりするニュース記事を書いていません。しかし、私たちはニュースの配信者以上の存在であるとも認識しています。Facebookは対話がなされる新たなプラットフォームであり、人々が価値のあるコミュニケーションを行い、情報を得られる場所にするためにも私たちは新たな責任を引き受けなければならないことを示しています。」

Facebookはこうしたことをバックエンドで担うことになる。Mosseriは「アルゴリズムも、人もどちらも関っています」という。具体的には、Facebookの社員からは「少人数のチーム」が正当なパブリッシャーになりすましている偽ニュースサイトのチェックを手伝うという。「ただ、Facebookの社員で記事の真偽を判断する人はいません」。アルゴリズムは偽ニュース記事のシグナルを検知し、ファクトチェックを依頼する記事の優先順位をつけるという。

偽ニュースをディスラプトし、フィードから明らかな偽ニュースを消し去ることは、人々に正しい情報を伝える上で重要なことだろう。アメリカの成人の44%はFacebookでニュースを見ている上、Facebookに加入する18億人という規模がプラットフォーム上の偽ニュースの影響を拡大させている。Facebookは左に傾倒せず、こうした変更を実施しなければならないだろう。Facebookのリーダー層も社員もリベラルであるとされ、Facebookのトレンド機能は保守派の記事を抑圧しているという非難に油を注ぐことになりかねない。

Facebookのこの多角的な施策で、情報の真偽を高圧的に監視しない形で、偽ニュースの流布を抑えることができるなら、Facebookが今後インターネットの主要機能になるための障害を1つ消すことができるだろう。

[原文へ]

(翻訳:Nozomi Okuma /Website