Harley-Davidsonは電動バイクを作り続けるべきだ

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は電動バイクを作り続けるべきである。これが同社のLiveWire(ライブワイヤー)を3週間かけて試乗した後の私の結論だ。

著者は2019年にこのバイクを試乗コースで試乗したことがあるが、それではこの105馬力のLiveWireの実力を十分に知ることができなかった。1か月近くかけて1000マイル(約1610km)の距離を走った今回、このバイクはHarley-Davidsonがこれまでに生産してきた中で最も革新的なバイクと言っても過言ではないと感じている。

無論、このバイクが完璧という意味ではない(特に価格面)。しかし、クロームとスチールを愛する同社の主要市場である団塊の世代の高齢化と売上の減少を受け、同社は新たな方向へ向かう必要があったのである。

同社初のEV

同社は当初LiveWireを1つのコンセプトとして誕生させ、その後メーカー初の量産EVへと発展させ、2019年後半にリリースを実現した。電圧駆動の同2輪車は同社が誇る内燃式クルーザーを補完するものであり、置き換えるためのものではない。

1903年にミルウォーキーで創業したHarley-Davidsonは、将来的にオートバイから自転車、スクーターにいたるまで電動車のラインナップを増やしていく計画を立てるべく、2018年にシリコンバレーにオフィスを開設した。2万9799ドル(約314万円)のLiveWireがその第一号だ。しかし、収益の衰退と新型コロナがもたらした不況により、同社の電動化計画は疑問視されている。

主なスペックをご説明しよう。Livewireは3秒で60mph(約90キロメートル毎時)を達成。最高速度110 mph(約177キロメートル毎時)で、DC急速充電器を使用してわずか40分で充電を80%完了させることが可能だ。15.5kWhバッテリーとマグネットモーターが86フィートポンドのトルクを発生させる。

Image Credits: Harley-Davidson

548ポンド(約250kg)のLiveWireは146マイル(約235km)の航続距離をうたっている(市街地とハイウェイを合わせた場合は95マイル(約153km))。この電動ハーレーはまた、IoTとアプリ互換性のある車両であり、パワー、トルク、回生ブレーキの異なるコンボが設定できるプリセットのライディングモードを備えるほか、カスタムモードを作成することも可能だ。
同社はまたLiveWireにキーフォブ操作や盗難防止コントロールシステム、バイクの鼓動のような振動などを含むプレミアム機能を追加した。

これは停止時に無音になるLiveWireがまだランモードであることをライダーに思い出させるのに便利な機能である。このバイクは走行中は基本的に静かだが、内燃機関のごう音で有名なHarley-Davidsonは車両の機械的な動きから発生する特徴的な電気音を加えている。これはかろうじて聞こえる程度のものだが、電動ハーレーとして他とは一線を画すものとなっている。

乗り心地

LiveWireは、バッテリーという1つの場所に非常に多くの質量が集中している電動バイクの二輪車でありながら、非常にバランスが取れたものとなっている。

LiveWireは500ポンド(約227kg)以上と同社のクルーザーの基準としては決して重くはないが、ネイキッドスポーツバイクとしてはずいぶん重く感じられる。ガレージ周辺でEVを押すと確かにその重さを感じるが、幸いなことに巧みなフレームエンジニアリングのおかげで、動きだせばその重さは見事に消えていく。

2019年にLiveWireをコースで試乗した際、私はわずかなノイズ、巨大なトルク力、稲妻のような瞬時の加速力など、電動バイクに期待すべきこと全てが備わっていると言う感想を述べている。

しかし今回、LiveWireとさらに多くの時間を共にしてライディングコンディションを経験したことで、その評価はさらに上がることになる。私はハドソン川渓谷を下ってマンハッタンへと向かうI-95で3桁までスピードを上げ、そしてグリニッジ周辺の曲がりくねった裏道へと向かった。LiveWireは見た目も性能も一流の電動バイクの域に達しているだけでなく、多くの点でピストン式のものよりもさらに刺激的な乗り心地となっている。

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内燃式のモデルと比べてLiveWire最大の魅力はトルク力と加速力である。ガソリン式バイクよりも機械の可動パーツが少なくクラッチやシフトがないため、内燃機関よりも強力で安定したパワーデリバリーを実現している。単純にひねるだけで出発だ。

他の高性能電動バイクと同様、LiveWireの回生ブレーキ(モーターがバッテリーを充電し、スロットルから後輪を減速させるもの)も性能の向上に一役買っている。回生ブレーキの調整は手動または電動ハーレーのライディングモードで行うことが可能だ。

これには多少のスキルが必要だが、慣れれば機械的なブレーキをほとんど使わずにスロットルを操作するだけで、ガソリン式のバイクよりもスムーズにコーナーを駆け抜けることができるようになる。これに加えて横方向のハンドリングが加わり、ターンではTron(トロン)のライトサイクル並みに正確にラインを保持することが可能になる(少なくともそんな感覚に陥る)。

こういった全ての要因により、ガタつきのないスムーズな走りが実現した。また、EVとハーレーの両方にふさわしい美しいラインとスタイリングで、このバイクの見た目も最高峰の出来となっている。

市場

LiveWireのデビューにより、Harley-Davidsonは米国で初めて公道用電動モーターサイクルを製造する大手ガソリン車メーカーとなる。

米国のほとんどのモーターサイクル業界と同様に売上が数年下降しており、若年層の顧客への販売において不調が続いている同社にとって、この動きが必要不可欠なものであったということは間違いない。

同社はホンダやカワサキなどの伝統的なモーターサイクルメーカーに先手を打ったが、電動二輪車業界に競合は山のようにいる。

ガソリン車ユーザーを電動製品へと転向させ、若い世代を引き付けようと試みる電動モーターサイクルのスタートアップが複数存在するEV産業へHarley-Davidsonは参入したというわけだ。

この業界を率いる企業の1社は、世界中に200のディーラーを抱えるカリフォルニアのスタートアップ、Zero Motorcycles(ゼロ・モーターサイクル)だ。イタリアのEnergica(エネルジカ)は、米国で高性能電動モーターサイクルの販売を拡大中だ。

またカナダ発のスタートアップDamon Motors(デーモンモーターズ)は今年、最高速度200mph(約322キロメートル毎時)のHypersport(ハイパースポート)を2万4000ドル(約260万円)でリリースした。独自の安全性とエルゴノミクス技術を用いて調整可能なライディングポジションと死角検出を実現している。

無論、特に新型コロナの影響による世界的な不況を考えるとこれら新モデルに対する需要があるか否かは確かでない。

市場におけるLiveWireの成功(または失敗)については、同社の報告にLiveWire専用の販売データが含まれていないため評価が難しい。私やその他の人々が批判的だったのは、このバイクの価格が2万9000ドル(約305万円)だと言う事実である。Tesla(テスラ)モデル3よりも数千ドル安いだけのこの価格帯は、プレミアムバイクとはいえ高すぎだ。これは非常に重要な欠点ではあるものの、この価格を別にすると、LiveWireは様々な点で成功であると私は考えている。Harley-Davidsonは同社らしさを失うことなく、世間のEVに対する関心を集めながら正真正銘の電動モーターサイクルメーカーとしての地位を確立したのだ。

今後の動き

ローンチの成功の利点を最大限に活かすには、人々がより手に入れやすい次なる製品を開発する必要がある。Harley-Davidsonは7月にJochen Zeitz(ヨッヘン・ツァイツ)氏を新たなCEOとして任命し、売上の減少に対応し会社を未来に導くための、Rewire(リワイヤー)と名付けられた5年計画を発表した。この戦略には大規模なリストラの他、同社のガスエンジン車であるBronx(ブロンクス)モデルなど以前に発表されたプログラムの休止や中止などが含まれている。
LiveWireや新型EVの生産がHarley-Davidsonの将来の選択肢として残っているかどうかについて、ツァイツ氏は最近の声明投資家への発表の中で具体的に語っていない。

Image Credits: Jake Bright

この象徴的なアメリカ企業はEV製品を今後も作り続けるべきだ、というのが同社の電動バイクのデビュー作を事細かく精査し、市場を評価した後の私の意見である。オンデマンド機能と魅力を盛り込み、より多くの人が手にすることのできるLivewireの進化版を提供すべきである。
都会でも活躍するスクーターや、幅広い市場に受け入れられるより手頃な電動モーターサイクルなど、同社の次のEV製品のリリースを著者は心待ちにしている。

著者が考える同社の次の電動モーターサイクルは、549ポンド(約250kg)のLiveWireよりも軽く、初心者ライダーにとっても乗りやすく、クラウドとアプリに接続可能、価格は約1万ドル(約105万円)で航続距離は少なくとも100マイル(約160km)、充電時間は30〜40分といったところだ。いくつかオフロード機能も備えた、Harley-Davidsonのフラットトラックレーサーを思わせるトラッカースタイルのEVも良いかもしれない。

Image Credits: Jake Bright

画像クレジット:Jake Bright

新型コロナの影響を受けた経済環境において、モーターサイクルなどの製品に対する購入意欲は当面の間より保守的になるため、的確なスペック、スタイル、価格設定は一層重要になってくる。

しかし、Harley-Davidsonが若い市場を開拓し、21世紀のモビリティの世界にふさわしい存在であり続けるためには、EV生産へのコミットメントを継続することが最善の策であることに変わりない。同社のRewire計画には間違いなくより多くのLiveWireが含まれているべきである。

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カテゴリー:モビリティ
タグ:ハーレーダビッドソン 電動バイク レビュー

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(翻訳:Dragonfly)

ハーレーダビッドソンが電動自転車ビジネスへ参入、新会社Serial 1 Cycle Company設立

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)が、電動自転車に特化した新しい会社を設立し、2021年春には最初の製品ラインを市場に投入する予定だ。

「Serial 1 Cycle Company(シリアル・ワン・サイクル・カンパニー)」という名のこの新会社は、ハーレーダビッドソンの製品開発センター内のプロジェクトとしてスタートした。名称は、ハーレーダビッドソンで最も古いオートバイの愛称だった「Serial Number One(シリアルナンバーワン)」に由来する。

新型コロナウイルスのパンデミックをきっかけに、急成長する電動自転車業界の中で、このペダルアシスト電動自転車会社が立ち上げられた。ハーレーダビッドソンによれば、世界の電動自転車市場は2019年に150億ドル(約1兆5600億円)を超えると見積もられ、2020年から2025年にかけては年率6%以上の成長をすると予測されている。

新しいハーレーダビッドソンのブランド「Serial 1」は、その電動自転車製品の性能の詳細やその他の仕様を公開していない。それでも同社は、その最初のモデルの写真を何枚か公表した。

画像クレジット:Harley-Davidson

またこの新事業の立ち上げは、ミルウォーキーに拠点を置くオートバイメーカーの同社にとって重要な時期に行われたものだ。近年主要な顧客層が加齢によってオートバイを卒業していくことにより、販売が徐々に落ち込んでいたのだ。

2020年7月にハーレーダビッドソンは、「The Rewire(ザ・リワイヤ)」という名の社内ブランド再編計画の一環として、グローバル事業から700人の従業員を削減している。ハーレーダビッドソンの会長、社長、CEOであるJochen Zeitz(ヨッヘン・ツァイツ)氏が、4月の第1四半期決算報告会で初めて語ったこの計画の発表は、同社初の量産型電動オートバイ「Livewire」のローンチに続いて行われた。

「Serial 1の設立によって、ハーレーダビッドソンが現在のモビリティ革命において重要な役割を果たすことができます。同時に、Serial 1は電動自転車の顧客のみに集中し、自由と冒険に根ざした比類のないライド体験を提供することができるのです」と声明で語るのは、新会社のブランドディレクターであるAaron Frank(アーロン・フランク)氏である。

ハーレーダビッドソンによれば、Jason Huntsman(ジェイソン・ハンツマン)氏がSerial 1 Cycleの社長に就任するということだ。その他の経営幹部としては、製品開発担当副社長であるBen Lund(ベン・ルンド)氏と、リードブランドマーケティングスペシャリストであるHannah Altenburg(ハンナ・アルテンバーグ)氏の名前も挙げられている。

カテゴリー:モビリティ
タグ:Harley-DavidsonSerial 1 Cycle Company電動自転車

画像クレジット:Harley-Davidson

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(翻訳:sako)

苦戦中のハーレーダビッドソンが構造改革推進で700人削減

苦戦しているミルウォーキー拠点のHarley-Davidson(ハーレーダビッドソン)は2019年に、売上の回復と若年層へのアピールを狙って初の電動バイクを立ち上げたが、いまグローバルで700人を削減しようとしている。約500人が年内に解雇される、と同社は米国時間7月9日に明らかにした。

同社のCFOであるJohn Olin(ジョン・オリン)氏もまた社を去る。退職は即日だ。財務担当の副社長であるDarrell Thomas(ダレル・トマス)氏が、次のCFOが指名されるまで暫定CFOを務める。「大きな変化が必要だ。そして我々は新たな方向へと進まなければならない」とハーレーダビッドソンの会長兼CEOのJochen Zeitz(ヨッヘン・ツァイツ)氏は声明で述べた(Harley-Davidsonリリース)。

ハーレーダビッドソンは人員削減と構造改革の計画に「The Rewire」という名称を付けた。ツァイツ氏が2020年4月に第1四半期の決算会見で明らかにした。当時、ツァイツ氏はハーレーダビッドソンが「More Roads」という戦略計画をまだ進めていると話していた。この計画はマーケティングやディーラーシップイニシアチブ、アジア市場向けの小型バイクやLiveWireで始めるEVなどを含む一連の新プロダクトを通じて、ハーレーダビッドソンをアクセスしやすいグローバルのブランドにすることが目的だ。

しかしツァイツ氏は4月に、変革の時だと宣言した。

「観察と評価の結果、持続性のある利益や長期的成長のために我々は大胆なアクションを取り、優先順位や実行、オペレーティングモデル、戦略という点で刷新する必要があるという結論に至った」と同氏は4月に述べている。「我々はこれを『The Rewire』と呼ぶ。これは今後数カ月のためのシナリオであり、新たな5カ年戦略計画につながるものだ。戦略計画は将来の見通しが戻ってきたときに共有する」。

将来の見通しは明らかに戻った。そしてハーレーダビッドソンはコストを削減し、基幹プロダクトに戻る時だと考えている。初のRewireアクションは2020年第2四半期の約4200万ドル(約45億円)のコストの構造改革となる見込みだと同社は7月9日の声明で述べた。第2四半期の決算を発表するときに、追加コストや予想される節約幅を含めたThe Rewireの概要を明らかにする計画だ。The Rewireは、第4四半期に発表される見込みの2021〜2025年新戦略計画の基礎となる。

ハーレーダビッドソンの主要顧客であるベービーブーマー世代が年を取るにつれ、同社にとって最大のマーケットである米国では近年販売が不振だった。新型コロナウイルス(COVID-19)パンデミックは販売をさらに下押しし、同社は生産を縮小した。その結果、ウィスコンシンとペンシルバニアの工場で先月数十人を解雇した。EVとアジア諸国向けプロダクトの推進は、新マーケット拡大とハーレーダビッドソンの復活を目的としていた。

「The Rewire」が同社のEV推進にどのように影響するかは不透明だ。2019年秋にローンチされたLiveWireは、同社が計画したバイクや自転車、スクーターを含む未来のEVラインナップにつながるはずだった。ハーレーダビッドソンにコメントを求めたが返事はなかった。反応があり次第、記事をアップデートする。

同社の声明では、EVについて特に言及されていない。ただ構造改革計画の主要素は、中核となる強みやバランスのとれた新分野への進出の推進、重要マーケットの優先、リセットプロダクトの立ち上げ、アクセサリー・小売事業の構築だと述べている。

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(翻訳:Mizoguchi

ハーレーダビッドソンの電動バイクに対し断定的評価を下すのが難しい理由

Harley-Davidson(ハーレーダビッドソン)が電動化を果たして1年を迎えるにあたり、我々はまだ同社のEV転換をどう評価すべきか思案に暮れている。

ガソリン、クローム、スチールからなるアメリカンシンボルのHarley-Davidsonは、昨年秋に同社初となる量産用電動バイク「LiveWire」をリリースした。2万9799ドル(約319万円)の電動バイクは、同社が将来的に製造を計画しているモーターサイクル、自転車、スクーターなどのEVラインアップの先陣を切るものとなった。

LiveWireのディーラーへの出荷は9月27日から始まっている。同製品はHarley-Davidsonが誇る内燃式クルーザーモーターサイクルを補完するものであり、置き換えるためのものではない。

LiveWireは、デザイン、機能、パフォーマンス面においてモーターサイクルファンから主に好意的な評価を受けている。ただし、Harley-Davidson初の電動バイク製造と電動化への包括的な取り組みを採点するには2つの点が欠けている。

同社はEV個別の販売データを公開し、電圧駆動型製品のラインナップにおける次のプランを明らかにする必要があるのだ。

統計

LiveWireのデビューから7か月が経過し、同モーターサイクルが市場でどう出回ったかについて、特にそのTesla Model 3を少し下回る価格設定に関し、多くの憶測がある。

著者は、上場企業として同社が年末と2020年第1四半期の会計報告にEVデータを提供することを望んでいた。

Harley-DavidsonのSoftail Slim

Harley-DavidsonのSoftail Slim(画像クレジット:Harley-Davidson)

しかしそれが実現することはなかった。モーターサイクル販売に関するHarley-Davidsonの報告書には、電動バイク専用の項目が含まれていなかったのだ。その代わりに、販売されたLiveWireユニット数はHDのSofttailやCVOラインの約16種類のバイクモデルが含まれる「クルーザー」部門の統計の中にまとめられていた。この数値から見てHarley-Davidsonの2019年の同カテゴリーの売上高が減少したことは明らかだが、同社のEVデビューが市場でどのような役割を果たしたのかは知る由もない。

Harley-Davidsonの広報担当者にも確認したが、同社はいかなる形においてもLiveWire個別の販売データを公表していないとのことだ。

Harley-Davidsonの2019年第4四半期および通年の決算

ソース:Harley-Davidsonの2019年第4四半期および通年の決算

この情報なしには、たとえばLiveWireの売れ行きは「いまいち」だというReutersの10月の記事など、ディーラーからの不十分なフィードバックをもとに書かれた記事から推測する以外方法がない。米国内のモーターサイクル購入データの主な情報源であるモーターサイクル産業評議会(MIC)がデータを収集したりリリースしたりしていないため、信頼できる電動バイクの統計を見つけることは極めて困難である。

Harley-DavidsonはEV個別の販売数を発表するべきであり、それによって電動製品の進歩に関する基準を提示することができたはずだ。

市場

ウィスコンシン州ミルウォーキーを拠点とする同社は1903年以来、大音量で強力な内燃式二輪車を作り続けており、電動モビリティラインの製造は非常に大胆な動きであった。

LiveWireのデビューにより、Harley-Davidsonは米国で初めて公道用電動モーターサイクルを製造する大手ガソリン車メーカーとなる。

米国のほとんどのモーターサイクル業界と同様に売上が数年下降しており、若年層の顧客への販売において不調が続いている同社にとって、この動きが必要不可欠なものであったということは間違いない。

前回の景気後退以来、米国の二輪車市場は不調続きである。2008年以降の新規販売数は約50%減少。特に40歳未満の購入が大幅に減少し、以来回復の兆しを見せていない。

2019年Harley-Davidsonの電動コンセプトディスプレイ

2019年Harley-Davidsonの電動コンセプトディスプレイ(画像クレジット:Jake Bright/TechCrunch)

Harley-Davidsonの幹部らは、LiveWireおよび同社が計画しているその他のEV製品ラインについて、オンデマンドのモビリティ時代を生きる若い世代に向けた同社の活性剤として期待していると話している

同社はホンダやカワサキなどの伝統的なモーターサイクルメーカーに先手を打ったが、電動二輪車業界に競合は山のようにいる。

ガソリン車ユーザーを電動製品へと転向させ、若い世代を引き付けようと試みる電動モーターサイクルのスタートアップが複数存在するEV産業へHarley-Davidsonは参入したというわけだ。

この業界を率いる企業の1社は、世界中に200のディーラーを抱えるカリフォルニアのスタートアップ、Zero Motorcyclesだ。同社は昨年LiveWireのライバルとも言えるSR/Fを発表。1万9000ドル(約200万円)で販売される同製品は161マイルの航続距離、充電時間1時間、最高速度124mphという性能を備える。イタリアのEnergicaは、米国で高性能電動モーターサイクルの販売を拡大中だ。

またカナダ発のスタートアップDamon Motorsは今年、最高速度200mphのHypersportを2万4000ドル(約260万円)でリリースした。独自の安全性とエルゴノミクス技術を用いて調整可能なライディングポジションと死角検出を実現している。

Harley-Davidson、電動モーターサイクルスタートアップ、大手メーカーのすべてが、モーターサイクル購入意欲における不透明性に直面している。新型コロナウイルス感染症(COVID-19)がもたらした経済環境を考慮すると、2020年以降もこの懸念は続くだろう。

今月Harley-Davidsonは、同社を未来に導くためJochen Zeitz(ヨッヘン・ツァイツ)氏を新たなCEOとして任命した。先月行われた第1四半期の収益報告でツァイツ氏は、同社EV製品の販売や将来についての洞察をさほど語ることはなく、「我々は電動製品への取り組みを前進させることに専心しています」とのみ述べた。

現時点までの成績表

販売数という最終的な製品テストでLiveWireがどのような結果を残したのかは依然として不明であるが、Harley-Davidsonの電動デビューにおける評価を発表する。

マイナス評価から始めよう。同社は2万9000ドル(約310万円)という価格設定で失敗している。当初HDと著者が話し始めて以来、LiveWireの価格背景と製品の位置付けは少なからず変化している。2019年7月、同社の幹部らは、約1万ドル安く販売されているZero MotorcyclesのSR/Fなどの競合製品と比較して、同社「プレミアム製品」の約3万ドルという価格設定がいかに正当かを語っていた

ところがその後しばらくしてHarley-Davidsonの広報担当者は、LiveWireは大衆マーケット向けの価格に設定されておらず、むしろ人々の興味を引くための特別製品として企画されたものだと説明している。同EVバイクの価格設定における背景が実際に何だったのであれ、著者が話したほぼすべての人がこの価格は高すぎるという点で合意している。

称賛すべき点としては、Harley-Davidsonの電動デビューによって達成されたさまざまな重要な要素が挙げられる。少なくとも属性と世間の反応において2つの世界を橋渡しするようなものを製造するという難しいタスクに取り組んだ同社。電動モーターサイクル界のれっきとした新規参入者として、LiveWireは卓越した機能とパフォーマンスを証明する必要があった。その上、EVやTeslaファンではなく、クロームとスチールのアメリカ製クルーザーを愛する忠実なファンにも受け入れられる必要があったのだ。

画像クレジット:TechCrunch

価格設定の件と販売台数不明という点はさておき、Harley-Davidsonは前述の両方を達成したと言えるだろう。著者は丸1日かけて105馬力のLiveWireをテスト試乗し、航続距離(95〜146マイル)や充電時間(60分)など、同バイクのすべての機能について検証し、HDのエンジニアを悩ませた。結果としては、パフォーマンス、デザイン、主要なスペックすべてにおいて素晴らしい出来だと言えるだろう。バイク関連の報道者のほとんどもこれには同意している。

同社はまた、デザインおよびその独特で絶妙なサウンドにおいて、Harley-Davidsonならではの電動モーターサイクルを製造するという点で成功を収めている。50年代からの筋金入りのハーレーライダーである著者の祖父にLiveWireの写真を見せたところ、ぜひ乗ってみたいと好意的な反応が返ってきた。したがって、HDの電動デビューは然るべき群衆から喜ばしい反応を得ることができ、さらなる成長が期待される結果となった。

今後の動き

同社が電動化プロジェクトにおいて直ちにすべきことは、今後のプランを公表するということだ。また次の製品が何であれ、それはミレニアル世代を含むより幅広い顧客を魅了する必要がある。

都会でも活躍するスクーターや、幅広い市場に受け入れられる手頃な電動モーターサイクルなど、同社の次のEV製品のリリースを著者は心待ちにしている。

Harley-DavidsonのEVコンセプト

Harley-DavidsonのEVコンセプト(画像クレジット:Harley-Davidson)

著者が考える同社の次の電動モーターサイクルのスペックシートのあるべき形は、549ポンドのLiveWireよりも軽く、初心者ライダーにとっても乗りやすく、クラウドとアプリに接続可能、価格は約1万ドル(約107万円)で航続距離は少なくとも100マイル、充電時間は30〜40分と言ったところだ。いくつかオフロード機能も備えた、Harley-Davidsonのフラットトラックレーサーを思わせるトラッカースタイルのEVも良いかもしれない。ちなみに同社は昨年このコンセプトのモックアップをリリースしている。

COVID-19に影響を受けた経済環境において、モーターサイクルなどの製品に対する購入意欲は当面の間より保守的になるため、的確なスペック、スタイル、価格設定は一層重要になってくる。

LiveWireによってHarley Davidsonは電動製品への扉を開くことができた。21世紀のモビリティの世界でHDが今後どのように活躍していくかは、同社の次の2輪EVバイクとそれに対する市場の評価次第だと言えるだろう。

関連記事:ハーレーダビッドソンが電動バイクのLiveWireの製造を再開

Category:モビリティ

Tag:ハーレーダビッドソン 電気自動車 / EV

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(翻訳:Dragonfly)