2020年はAI利用の対話型音声広告がブレーク、Instreamaticに注目

テクノロジー界ではAlexaとGoogle Homeデバイスが登場して音声時代が本格的にスタートしたと見られている。2020年には検索の半分がスマートアシスタントなどを利用した音声になると推定されている。若い世代ほど音声検索を使う、ある調査ではティーンエージャーの55%が毎日音声検索を利用していることを考えればこのトレンドは進行する一方だ。

TechchCrunchでは2年前に「2022年までに米国だけでもスマートアシスタントの普及は世帯の55%に達する」というレポートを紹介した。このことは音声によるオンラインショッピングのマーケットの爆発的に成長することを意味している。音声アシスタントとスマートスピーカーの普及は向こう数年で音声経由の消費額を20倍にすると予測されている。スマートデバイスは家庭だけでなく自動車にも搭載されるようになると見られており、これがさらに追い風になるだろう。

音楽からドラマ、映画、ポッドキャストまでデジタル・メディア全体がストリーミング化していることもあり、 オーディオは巨大なブルーオーシャンだ。しかしブランドはこのトレンドに追いつくために苦闘している。それはオーディオで収益化する方法を発見するのが困難なためだ。

こうした中、東欧の音楽ストリーミングのパイオニアであるZvukの共同創業者の1人は、世界中の音楽ストリーミングサービスがどれひとつとして黒字化を達成できていないことに着目した。ユーザーが有料のサブスクリプションへ移行する率は低すぎ、広告主もストリーミングのユーザー体験を悪化させ、現実の購入行動に結びつけるのが難しい音声広告にさほど期待していないからだ。

そこで元Zvukのチームは米国サンフランシスコでInstreamatic(インストリーマティック)をスタートさせた。このスタートアップはスユーザーがトリーミングに挿入される音声広告と音声で会話できる機能を提供する。AIを利用した音声レスポンス機能により音声広告がおなじみのAlexaのように反応するようになるのだ。

 

これまでの音声広告は、伝統的なテレビ、ラジオのCMと同様、一方通行でありデジタル化のメリットが生かせていなかった。しかし双方向AI広告によって消費者と自然に対話できるようになれば効果は大きいだろう。Instreamaticのようなテクノロジーを利用するブランド、パブリッシャーはユーザーの行動履歴から推測して関連性が高いと思われる音声広告を挿入し、エンゲージメントの内容を処理、分析することができる。

またユーザーからの反応を受け取ることができるため、ブランドの広告戦略のオプションが増える。たとえばユーザーが広告に対して「興味ない。この広告は聞きたくない」などのネガティブな反応を返してきたとき、ブランドはこのユーザーに対する広告挿入を一切ストップすることもできるし、コミュニケーション戦略を変更してまったく新しい広告、ないし別製品の広告を挿入してみることもできる。Instreamaticはユーザーの反応を理解し、その後の広告を事前に検討されたシナリオに沿ってカスタマイズすることが可能だ。

スマート音声広告のライバル、AdsWizzはユーザーが挿入された音声広告に興味を持った場合、スマートフォンを振って意思を伝えることができる。最近の調査によると、この場合の反応率は3.95%だった。

これに対してInstreamaticの音声対話方式は興味ない広告をスキップさせ、興味ある広告には詳細を尋ねるなどより自然なユーザー体験を与えることができる。調査によれば13.2%という高いエンゲージメント率を得られたという。

ビジネスモデルとしては、音声広告から売上が発生した場合、広告主はパブリッシャーに対して一定のコミッションを支払うというものだ。Instreamaticはパブリッシャーから売上に比例するライセンス料を得る。

Instreamaticは、現在インド最大の音楽ストリーミング・サービスであるGaanaとパートナー契約を結んでいる。GaanaはInstreamaticのテクノロジーをプラットフォームの一部に組み込む予定だ。Instreamaticは米国のオーディオストリーミングプラットフォームのTriton Digitalとも契約している。Instreamaticは今後、PandoraJacapps、 Airkast、SurferNETWORKなどのストリーミングサービス各社にテクノロジーを提供していく。

パートナーを通じて、同社は米国に1億2000万人、ヨーロッパに3000万人、アジアに1億5000万人のアクティブユーザーを持つという。

Instreamaticは現在サンフランシスコとロンドンにオフィスがあり、モスクワにエンジニアリング・チームを置いている。CEOで共同創業者のStas Tushinskiy(スタス・ツシンスキー)氏はInstreamaticを開設するために米国に移ってくる以前、ロシアにおけるデジタル音声広告のパイオニアだった。同社の共同創業者で国際ビジネス開発の責任者であるSimon Dunlop(サイモン・ダンロップ)氏は、Bookmateと呼ばれるサブスクリプションベースの読書プラットフォームの創業者であり Zvukの共同創業者でもある。

画像:Getty Images

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(翻訳:滑川海彦@Facebook

バーチャルナースが退院後の患者の病状を確認―、Sense.lyが800万ドルを調達

Doctor holding heart in hands, medical concept

サンフランシスコ発のスタートアップSense.lyが、この度シリーズBで800万ドルを調達した。同社は、さまざまな病状に悩む患者や病院のためのプロダクトとして、バーチャルナースを開発している。このプロダクトを利用することで、内科医は退院した患者とも連絡を取り続けることができ、再入院の可能性を低減させることができる。CEO兼ファウンダーのAdam Odesskyは、同社のプラットフォームを「人の健康状態に関する重要なサインを読み取ることができる、WhatsappとSiriの掛け合わせ」のようなものだと説明する。

まず患者サイドから見てみると、ユーザーはSense.lyのナースアバターが行う5分間の「チェックイン」を通して、毎日もしくは2、3日に1回、自分の健康状態をスマートフォンに記録するようになっている。ナースの質問には声で答えるだけでよく、文字を打つ必要はない。また、ユーザーが入力した情報は、医療機関の担当者のみが見られるカルテに記録される。レポートにはそれ以外にも、ユーザーが日常的に利用しているさまざまな医療機器やウェアラブルデバイス、その他のインターネットに接続された機器からSense.lyが引っ張ってきた情報も含まれている。

さらにSense.lyには、MindMeldBeyond VerbalAffectivaなどと似たAIが搭載されており、患者の症状や行動だけでなく、彼らの気持ちも感知できるようになっている。つまり、アプリはユーザーの話を親身になって聞けるようにできているのだ。この点についてOdesskyは、肥満や心臓病などについて真剣に心配している人に対して、冷たいロボットっぽい声やビジネスっぽい反応を返したいと思う人はいないと話す。感情を分析することで、Sense.lyは患者が精神的なケアを必要としていると思われるときや、処方薬や生活の変化から、気分が落ち込んだり不安を感じたりしているときに、医療機関にその状況を知らせることができる。

"Molly" is a virtual nurse app made by Sense.ly.

Sense.lyが開発したバーチャルナースアプリ「Molly」

Sense.lyでは、さまざまな疾患や年齢層に対応できるように、慢性病の診断や治療に広く利用されている医療手続きを参考に、コアコードやルールベースのエンジン、アルゴリズムが組まれている。さらに同社は、主にパートナーシップを結んでいる病院やクリニックから入手した、新しい手続きなどの情報を常にプラットフォームに追加し、アプリが対応できる疾患や人の範囲を広げようとしている。

これまでにSense.lyは、60歳以上のユーザーをターゲットとして、肺気腫や心不全、肥満といった年齢と関係の深い疾患に悩む患者に向けてサービスを提供してきた。一方でSense.lyは拡大を続け、今ではイギリスのNational Health Serviceや、アメリカにある大手病院やクリニックにもプロダクトを提供している。同社の他にも、HealthLoop、Your.md、Babylon Healthなどの競合企業が、AIメディカルアシスタントを開発している。

Chengwei Capitalがリードインベスターとなった今回のラウンドには、Mayo ClinicやBioved Ventures、Fenox Venture CapitalStanford StartXのファンドが参加していた。Chengwei Capitalでマネージング・ディレクターを務めるRichard GuはTechCrunchに対し、Chengwei Capitalは「中国戦略」がとれるようなスタートアップにだけ投資していると語った。つまり、投資先企業のプロダクトが巨大な中国市場でも通用するかや、中国でも再現できるかといった点をもとに彼らは投資判断をしているのだ。

「Sense.lyの中国でのビジネス拡大に向けて、キーパーソンと彼らを引き合わせることができるでしょう。ただ、今回の調達資金はコアとなる研究開発に充ててほしいと考えています」とGuは話す。さらに彼は、Sense.lyのテクノロジーによって、人はより健康に長く生きることができるばかりか、今よりも病院ではなく家にいる期間を伸ばすことができる可能性があると話す。またOdesskyは、アメリカ以外にも医療従事者数の減少で困っている国があることを考えると、Sense.lyによって高品質の医療をもっと安く、たくさんの人に届けられるかもしれないと言う。

一方でバーチャルナースは、人間の仕事を「奪って」しまうのだろうか?Odesskyは、その可能性を否定し「現在Mollyの仕事をしている人はいません。これだけの数の患者に電話をかけて、データを分析するというのは人間にはできないことです。Sense.lyはむしろ、医療従事者が効率的に業務を行うサポートをしており、彼らの生活を脅かすようなものではりません」と語った。

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(翻訳:Atsushi Yukutake/ Twitter